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日本国内 日本語教師経験談

国内 日本語学校 日本語教師は日本と世界を繋ぐ仕事である

ONさん・ 29歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 3年

総評

  • 国内の日本語学校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間: 3年(2019~2022年) 退職
  • 月収:3万円

日本語教師という職業を知ったのは高校時代、出身大学のオープンキャンパスに参加した時です。それまでの私は漠然と「言語」「異文化交流」「教育」というジャンルに興味を抱いていましたが、該当学科で日本語教師という職業を知り、自分が学びたい分野、目指したい職業はこれだと直感しました。その直感に従って受験、入学を経て、卒業後すぐ国内の日本語学校の非常勤講師として、日本語教師の職に就きました。

私が就職した日本語学校は、法務省告示校の民間の日本語学校です。主として日本で専門学校や大学に進学することを目的とした学生を指導の対象としていました。学生の出身国は中国、韓国をはじめとしてアジア圏が多かった印象です。授業内容は、文法や漢字、会話、作文と日本語の習得・運用にかかわる範囲全般です。上級になると、学生がグループに分かれ任意のテーマに従って調査を行い、スライド等にまとめて発表を行うプロジェクト遂行型の授業等もありました。

私自身の経験としては、初級から中級の学習者への日本語指導を経験しました。ひとえに「初級」「中級」といっても、当然ながら学習者それぞれの能力や性格は違います。学習内容への興味関心やその日の心身の調子等も授業態度に大きく関わってくるため、「全員が授業に参加している」状況を実現するには持てる知識と技術を総動員し、創意工夫をこらした指導が必要でした。

例えば、漢字テストの返却時に教師が手本を示すのではなくあえて学生を指名して正答を発表してもらったり、作文の授業時に発表順をあみだくじで決めてみるといった内容です。新鮮さや、教室に教師と学生が揃っているからこそ可能な体験を提供する姿勢が必要だと感じました。

残念ながら、日本語教師という職業は待遇の悪さで有名です。日本語教師の資格を得るのに必要な時間や費用、いざ仕事を始めてからの日夜の労力を鑑みると、「見合っていない」と感じる現職、前職の方々が多いのも納得できます。

しかし私自身は、日本語教師を目指したことも、日本語教師として働いたことも、後悔したことは一度もありません。自分の不甲斐なさに悔しい思いをすることはあっても、目の前の学生と真っ正面から向き合い、彼ら彼女らの熱意や意欲にその時点の自分の精一杯で応えることがどれだけ私の財産となり、武器となり、生きがいになったか。そこには計り知れないものがあります。

ただ、私がそう振り返ることができるのは、心に余裕のある状態で働けていたことが大きいと思います。例えば、実家暮らしの独身という立場であったこと。仮に私が扶養する相手のいる妻帯者であったなら、少なくとも非常勤講師ではやっていけないでしょう。

日本語教師になりたい、日本語教師に興味があるという人がいること、これから出てくるかもしれないというのは、とても嬉しく、未来に希望を感じます。日本語を学びたい、日本と祖国の架け橋になりたい、そんな思いを持つ将来の学生たちに真摯に向き合う日本語教師の存在は、該当の学生にとってだけではなく、勤務先の日本語学校、学生の進学先や就職先、ひいては世界の財産になると思います。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

日本語教師としての就職先を決める際、法務省告示校である民間の日本語学校以外は選択肢に入れませんでした。

学部卒であり応募できる教育機関が限られていることや実家から通える範囲でないと勤務が難しいという状況もありましたが、私の考える「ザ・日本語教師」の姿が日本語学校において対面で日本での進学や就職を希望する学生を指導するというものであったことが大きかったと思います。学生との距離感、指導する内容等、自分が挑戦してみたい要素が揃っていました。

結果的に、その選択は間違っていなかったと感じています。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

日本語教師として働いていたときに苦労したのは学生間の温度差の把握やそれを踏まえた調節です。学生も人間なので、教師と同じように、育ってきた環境も違えば、能力や性格、その日の気分、日本語学習への熱意や意欲が異なります。全員が全員足並みをそろえて授業を受けるというのは現実的には厳しいと思います。

私が心がけていたのは、「まじめに前向きに頑張っている学生が損をしない授業」です。どんなに温度差があるとしても、全体説明の時に私語をやめて前を向いてもらったり、課題にきちんと取り組むということは必要です。適宜注意や目配りを行い、そんな空間の実現を目指していました。

なぜこの日本語学校を退職しましたか?

勤務先の日本語学校を退職した理由は結婚と引っ越しです。結婚だけなら日本語教師を続けるという選択もできましたが、県外に引っ越すということで、通勤の面から引き続きの勤務を断念しました。寂しさもありましたが、在職中一生懸命取り組んだ結果、後悔や未練はなく退職しました。

給与

給与:3万円/月 ・非常勤講師

非常勤講師、それも未経験という立場で一コマ3000円を超える給料をいただけたのは幸運であったと思います。授業準備や打ち合わせについては全く賃金が発生しないという面はありましたが、非常勤講師は基本的に授業にかかわること以外の業務はないので、特に無理した働き方だとは感じませんでした。

ただ、「実家暮らしの独身で家から通える範囲の勤務先に勤める」という条件でなければ、少々厳しかったかもしれないとは思います。

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月収 3万円

  • 時給:3,600円

待遇

  • 交通費
  • 年間昇給

勤務時間

  • 1日1コマ・週2日勤務

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

授業形態で苦労したのは、全員前を向いて文法の説明を聞くといった場面ではなく、ペアワークやグループ活動の場面です。

学生一人ひとり能力も性格も異なり、熱意や意欲もさまざまで、課題の遂行にかかる時間や課題遂行のための話し合いの活発さなどにばらつきがありました。教師が気づいて声かけをすることで状況が改善される場合は良いのですが、雰囲気作りや各ペア、グループへの促しに失敗すると、クラス全体の空気も悪くなるので大変でした。

私の場合は、なんでもかんでも教師側が教示・操作するのではなく学生を指名して指示文等を読んでもらったり、主体的に活動に参加できるよう各自の得意分野を考えて助言を行ったりしました。また、学生にとって新鮮な体験と公平な選考を兼ねた「あみだくじ」を発表順を決めるのに使うといった工夫も取り入れ、結果的にクラスが盛り上がり、前に出て課題の発表を行うというハードルを楽しく乗り越える姿が見られました。

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主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス10〜15人

学習者層

  • 専門学校生

学生の主な出身地

  • 中国
  • 韓国
  • ベトナム

スケジュール管理で大変だったことは?

スケジュール管理という面において大変だったのは教案作りの終着点の決定です。

授業のための教案は、工夫すれば工夫するだけよいものができますが、当然ながら、その分時間がかかります。時間をかけられるだけかけられるときは良いのですが、たとえば次の日授業があるという段階でなかなか終着点が決められないときはさすがに焦る気持ちに駆られました。

そういった時は、スモールステップの構築や、わかりやすく丁寧な説明という部分をクリアしているかという観点から終着点を決めていました。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 日本語教師の7つ道具シリーズ1授業の作り方Q&A78編 対象:全レベル
    教案作りにおいて生じる疑問点や初心者の「なぜ?」「どうしたらいいの?」に応えてくれる書籍です。特に初期の教案作りにおいて、「いろは」を学ぶために使用し、その後も教案作りでなにか迷うたびにページをめくりました。特に日本語教師初心者の方におすすめできます。

就職活動

どのようにお仕事を探しましたか?

よく閲覧していたのは「日本村」の求人情報です。主に通勤可能な範囲の日本語学校について情報収集していました。

就職先の日本語学校はもともと知っていた学校で、大学の先輩から勧めてもらったこと、自分が働いてみたい民間の日本語学校であることが大きなきっかけになりました。応募したのはその一校のみです。

就職活動の際は、未経験がマイナスに働かないよう、とにかく明るく元気に自信を持って振る舞うこと、自分の持てる力全てを出し切ることを心がけていました。

面接で何を聞かれましたか?

大学での主専攻が日本語教育であったからか、履歴書の内容から多くを把握してくださったのか、質問数は少なかったです。

具体的には、「なぜ日本語教師を目指したのか」「実習等の経験はあるか」を尋ねられ、主に自分の「それまで」を振り返る解答をお伝えしました。

面接では、履歴書の内容との整合性に気をつけました。また、「これまで」「今」「これから」の状況や展望を自分の中ではっきりさせるようにしました。

模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

模擬授業は就職先の日本語学校の通常授業と同じ時間の90分設定で行いました。課題の内容は、特定の文法についての指導です。数名の外国人の方を相手に行い、教案や教材は評価や助言のため、先方と共有しました。

模擬授業ではとにかく「授業が“できる”人間である」と感じてもらうことを意識しました。未経験であろうとなんだろうとそこさえクリアすれば大丈夫だと思っていたからか、変に気負うことなく、授業に集中することができました。

「授業が“できる”人間である」という評価の内容は人それぞれだと思いますが、私の場合は「自分が作った教案について、流れや活動の内容を現場で実践できるレベルで把握した状態にしておく」「教案に沿った授業を行うのは大前提として、その場の学生の反応や発言を適切に拾った臨機応変さも大切にする」といった点に気を配りました。

その他、大きく明るいはっきりとした声で発話をする、きびきびとした動きで授業を進めるといった、基本的な部分も大事にしていました。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本村
    都道府県別に現在求人を出している日本語学校等の情報を得られるのがとても便利です。日本語教師説明会の情報も随時掲載されています。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 未経験者歓迎
  • 学校や先生の雰囲気
  • 学校が法務省告示校

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業

日本語教師全般に関する質問

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

日本語教師をやっていてよかったと実感するのは、学生の反応によるところが大きかったです。「わかった!」を引き出せた時、笑顔で楽しそうに課題等に取り組む姿を目にした時は本当に嬉しかったです。

また、日常の何気ない一コマを一生懸命伝えてくれたり、できるようになったことを教えてくれたり、距離が縮まったと感じた時も同じく嬉しかったです。自分の存在や指導が学生の役に立っているという気づきはなにものにもかえがたいものであったと考えています。

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