掲載日:
日本国内 日本語教師経験談
国内 大学 出会いと人脈によって、今の私があります

日本語教師Fさん・
53歳・
女性
・
日本語教師歴 22年
総評
- 国内の大学
- 雇用形態:非常勤講師
- 期間: 15年(2008~2023年) 現在も勤務中
- 月収:20万円
大学では中国語を主専攻、英語を副専攻として学んでいた。大学四年生の時に、偶然ある日本語教師の書いた記事を読み、その情熱とやりがいを感じている筆者の姿に非常に感銘を受けた。
その人は、外国で日本語を教える傍ら、学生のためのテキスト開発をしていた。慣れない外国での自分の授業とテキストの作成、それだけでもすごいことなのに、出版を目の前に、その原稿を不慮の事故で失ってしまう。しかし、その人は諦めず、最後までテキスト作成を断念することはなかった。その時、それほどまでに情熱を注げる日本語教師という仕事はどんなものなのか。その熱の元を知りたいと思った。
すでに、その当時出身大学の言語学系の大学院への進学を目指していたが、まだ専攻を何にするかは漠然としていた私は、その記事をきっかけに、日本語学科に進学することを決め、日本語教師への道を進むことに決めた。そして、大学院への入学後は、日本語教育を副専攻に選び、言語学を学ぶと共に日本語教育にも情熱を注いだ。
新しい勉強は非常に刺激的で、大学院の同期にも恵まれ、同じ学び舎に集まった日本語教師経験者のアドバイスや経験談に刺激を受け、ボランティアなどで日本語を教え始めた。しかし、大学院卒業後は、バブル崩壊後の経済不況によって就職難となり、なかなか職に有りつくことができなかった。
当時は派遣事業を展開する日本語学校に在籍し企業などにプライベートでレッスンする仕事や、友人を介して短期の日本語講座の講師などを請け負っていた。数年後、都内にある日本語学校に採用され、本格的に日本語教師の仕事が始まった。その後大学での短期の仕事と平行しながら、主に日本語学校で働いていた。
二人目の子どもを出産後、しばらくは仕事から遠ざかっていたが、末の子どもが1歳を過ぎてから仕事を再開する。これも大学院時代の同期からの紹介で、現在の大学で仕事を請け負うこととなった。その大学は日本語のクラスを立ち上げたばかりの黎明期で、職場の同僚と試行錯誤をしながら日本語科目のカリキュラムを作っていった。ここでの仕事はやり甲斐もあり、自分の成長にも繋がったと思っている。
大学院時代の同期はみな、新しいことを取り入れることに貪欲で、どんどん道を切り開いていく方々が多かったせいか、私自身、日本語教師になってからも、職場の人たちと新しい教育手法を取り入れ、学び、自分の授業にも活かしていくという姿勢を常に忘れないようにしている。
シャドーイングという練習方法は大学時代に知っていたが、これが話題になったときは、そのテキストをいち早く同僚と共に取り入れ、自分の授業でも行なった。シャドーイングとは、途切れることなく聞こえてくる日本語の音声をそのまま囁くように口にするという練習方法だが、学習者のハードルを下げるために少しだけ本来のやり方を変えてみたり、ゲームのように学習者同士を競わせてみたりして楽しく学習できるように工夫した。
また、世間でピア活動(学習者同士の相互的な関わりによって自ら学ぶ手法)が流行り始めると、現在のアクティブラーニングにも通じることかもしれないが、教師が答えを示すのではなく学生同士で答えを見つけていくような授業形式にするなど、常に教室活動の方法は変化し、進化している。そして、教師経験の中で取り入れた指導法から取捨選択を行ない、学生の気質やレベルなどを加味しながら、現在の教え方になっている。
最近の留学生は昔に比べるとメンタル面が弱く、社会的側面のスキルを学ぶことが必要なことも多いので、その辺も注意しながら指導を行なっている。私が教員を始めた頃のアジア圏の学生は国が貧しく、本人自身とてもハングリーで、どんな困難にも負けない強さがあったが、国が豊かになるにつれ、日本の学生同様、基本的な生活のスキルが身についてなかったり、自分で責任を持って大学での諸事に対応する能力が低かったりすることも多くなった。日本人の大学生が初めて、親から離れて学生生活をするのと同様、彼らにも同じように、社会、特に大学で生きていくためのスキルを身につけさせる必要性を感じている。また、それが異文化と言うこともあり、文化的に対応できなかったり、習慣が違ったりすることから、学生たちに対してはなるべくはっきりと言語化して、教えるように気をつけている。
在学している大学の学生は、日本語のレベルによって大学生としての学習スキルも違い、日本語の出来具合にそのスキルレベルが正比例している場合が多いので、下のレベルのクラスを担当した場合は、大学で生き残る学習スキルも養えるように細かく指導することが多い。
また、メンタルに問題がある学生の場合は、そこに寄り添いながら、他の学生と同じように評価できるよう指導して行くことが重要だと考えているので、教員と学生の着地点のすりあわせにも気を使っている。このように手がかかった学生が、年次が進むたびに成長が見られたときや、その学生が立派に卒業していく姿を見たときは感慨深いものがある。まさに、そこにやり甲斐があるのかもしれない。
他の教育機関と比較・検討しましたか?
大学で大学生のレポート指導をする仕事があり、やってみたいと思ったが、その仕事は常勤職で今の仕事を辞めないとできないので、応募をしないことにした。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
最近は国際情勢や国同士の政治的な関係が、クラス運営にも大きくかかわってきているため、ディスカッションのテーマ決めやクラス編成のときなどに気を使う。
クラスの活動時には特に中国語圏の学生には気を使う。大陸出身の学生と、その他の地域の学生の国に対する認識の違い、また教員がそれをどう扱うのかなど、問題が山積みである。険悪な雰囲気にならないように、言葉を選んでいるが、なかなか難しい問題だ。ある学生から非常に非難を受けたこともあり、こちらも慎重になってしまう。
また、同じ国出身でも人種や社会的階層の違いなどで相容れない学生もいるので、その扱いも難しい。
給与
我々が日本語教師になったときから現在まで言われていることだが、日本語教師の仕事だけで生活して行くのはきびしいと思う。特に非常勤の場合はどのくらい仕事があるかによるだろう。常勤職でも、普通のサラリーマンの方が金銭的に楽なのではないだろうか。
また、この仕事は福利厚生の面でも弱い。生活保障がどこまでされるのか、ここも大きな問題だ。実際、私のコマ給は他の大学に比べても高めだが、月給制でなく、福利厚生などの保障も全くないので、仕事がなくなったら終わりだ。年金も国民年金で、医療保健も国民保健なので、経済的な負担は大きく、社会的な保障は少ない。
最近はインボイス制度が始まるなど、非常勤の場合の今後の不安は大きい。
給与の詳細 情報を読む...
月収 20万円
- 90分15,713円
待遇
- 交通費
- 会議費、補助費
勤務時間
- 1日1~2コマ・週3日勤務
- 残業 残業あり:計20時間/月
長期休暇中の給与保証
- 給与保証がない
仕事のかけもち
- 以前はかけもちしていた
- 日本語教師以外の副業に就いている
給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。
やはり、大学院を卒業して修士以上の学位を取得し、大学機関に勤められるなら、その方が生活が安定するのではないか。また、専門学校の常勤の日本語教員などもいいのではないだろうか。なぜなら、大学や専門学校の教員の授業単価は民間の日本語学校に比べて高いことが多いからだ。
卒業後すぐに教育機関で働くよりも、ビジネス経験がある方が、より幅広く活躍できると思う。知り合いは、企業専属の日本語教員になったので、そのような道も考えられる。
授業形態・勤務スケジュール
クラス運営で大変だったことは?
やる気がなく、レベルが低めのクラスを担当したときは大変だった。
一事例だが、そのクラスでは多読を授業の初めに取り入れた。多読とは、ごく簡単な、対象言語で書かれたナチュラルな文(絵本などから始まり小説や説明文までを含む)を読むという活動のことで、学習者が気に入ったものを好きなように読んでいくのであるが、これを授業に取り入れ、授業開始20分は教員が準備した多読用の読み物を自由に読ませた。すると、脳内のアドレナリンが落ち着くのか、騒ぐ学生がいなくなり、その後の授業にも集中するようになったという経験がある。
受け持ちのクラスの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス15~25人
学習者層
- 大学生
学生の主な出身地
- 中国
- 韓国
- マレーシア
スケジュール管理で大変だったことは?
はじめは経験が浅く、アイデアも乏しいために準備に時間がかかった。文法の教え方を調べたり、教えるための道具を準備したり、休日もほぼそれに費やしていたように思う。しかし、先輩教員のアドバイスや学生からのフィードバックによって、教材をより改良し、慣れも出てくるのでより短時間で色々準備できるようになった。
また、学生の募集人数が増えた時期などは、一クラスの学生人数が20人以上になり、クラス運営や授業後の処理、採点などにも時間がかかり、時給は変わらないので、大変だった。今は、コロナの影響もあり、数は落ち着いている。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『日本語多読道場』
日本語学習者向けの読解教材があるサイトで、無料で読むことができる。コロナの時は、授業でよくこのサイトを利用していた。学生に読みたいものを好きに選ばせて読後の感想を聞いたり、ストーリーテリングさせたりした。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『コピペと言われないレポートの書き方教室: 3つのステップ』
対象:中級・上級・全レベル
大学でのレポートの書き方を学ばせるために活用した。コピペを切り貼りしたようなレポートを書かないために、何がダメで、どうすればいいのかを端的にまとめているので、ここから引用して、レポートの書き方を教えている。テキストとして買わせているわけではない。大学でアカデミックライティングを教える人向けの本だ。 - 『日本語能力試験N2文法 必修パターン (日本語能力試験必修パターンシリーズ)』
対象:中級
日本語能力試験N2の文法をまとめているテキスト。N3からの復習もあり、N2対策としては重宝している。特に敬語などを上手にまとめているので、能力試験対策以外でも使用している。なんとなく中級レベルで止まっている学生を、もうワンランク上の段階に引き上げるための復習として活用することが多い。
就職活動
どのようにお仕事を探しましたか?
主に、日本語教師向けの求人、当時は日本語の凡人社の掲示板や知り合いからの紹介などが多かった。現在の職場は、知人の紹介で職を得た。日々の研鑽や教師としての経験を積むことも大事だが、日本語教師の場合は、同期や同僚などからの紹介も多いので、日頃から教師仲間を持っておくことが大事だと思っている。
面接で何を聞かれましたか?
面接では、大学院で研究していたことや日本語教師としての経験、また語学スキルなどを話したと思う。今までどんなところで、どんなレベルの学生を教えてきたかなど、話した。やはり、人にアピールできるスキルなどが必要なので、日本語教師の経験を積むだけでなく、広く活動していること、スキルを持っていることが大事なのではないだろうか。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『 イノベーション創出を担う研究人材のための キャリア支援ポータルサイト JREC-IN Portal』
大学機関で働きたい人の求人サイト。国内の大学や教育機関などの求人が載っている。 -
『 Indeed』
普通の求人サイトだが、日本語学校や大学などの求人も載っている。
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 学位や資格を評価してくれる
- 学校や先生の雰囲気
- 給与・待遇
応募時に必要とされた資格
- 修士課程修了
- 日本語教育経験
就職 選考方法
- 書類
- 面接
- 紹介のため試験なし
日本語教師全般に関する質問
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
学生との関係だろうか。日本語学校時代は、年も近かったので、学生の部屋に呼ばれたり、一緒にご飯を食べたり、こちらも家に招待したりしていた。
現在の大学では、学生の悩みを聞いたり、相談に乗ったりして、学生が成長していく姿を目の当たりにすることが一つの楽しみとなっている。若い人の成長は大きく、こちらも元気をもらえる。また、学生と懇意になって、自分の子どもを紹介したりして家族ぐるみで仲良くなることもあるので、人間関係が豊かになる。
「先生のおかげで」と、お世辞ではなく本心から言われると、やっていてよかったな、としみじみ感じる。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?
日本語教師を辞めたいと思ったことはないが、辞めざるを得ないと思ったことはある。出産して子育てが大変だったときのことだ。預け先もなく、子どもに手がかかって、日本語教師の職から遠ざかったときがある。私自身はこの仕事は天職だと思っているが、日本語教育の仕事自体も手のかかるものなので、家庭との両立に悩む人は多いのではないだろうか。
今後どのような日本語教師になりたいですか?
学生のメンタルサポートもできる教師になりたいと思っている。
昔から、そのような気持ちでこの仕事に取り組んできていたが、最近は、大学の学生に発達障害の学生がいたりするので、そのようにメンタル面に障害や疾患を持っている学生のサポートもしていきたいと思うようになった。
コロナ前から、通信制の大学院の心理学系統の科目を履修し、勉強している。資格取得というよりは、知識を得て仕事に役立てば、という気持ちで勉強している。
当サイト人気スクール 420時間養成講座
- 1位
-
ヒューマンアカデミー
最大手で人気No1!
無料説明会もオンライン対応 講座の40%が実技授業- 北海道から沖縄まで全国23校舎
- 授業は理論科目がオンライン
- 自分のペースでじっくり理論を勉強した後、通学で実践科目が学べる
- 開講3ヶ月前には満席になるクラスも
- ママと学生は最大28,620円割引
→ ヒューマンアカデミーの資料請求はこちら
- 2位
-
KEC日本語学院
1人50回以上の演習が出来る
- 理論より演習に重きを置いた講義
- 教案作成など演習の準備は大変だが指導技術を数多く学べる
- 6教室 新宿1校/他関西5校
- 3位
-
アルファ国際学院
充実の教育実習80時間
- 経験豊富な一流の専門家講師陣
- フレキシブルな受講スタイルで単位取得可
- 5教室 東京/大阪 他