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日本国内 日本語教師経験談
国内 大学 留学生に確実に伝わる日本語表現の重要性

しゅんぺさん・
47歳・
男性
・
日本語教師歴 24年
総評
- 国内の大学
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間: 6年(2019~2025年) 現在も勤務中
- 月収:40万円
大学の学部では英語専攻でした。外国語大学だったので、主専攻の英語のかたわら、中国語など他の外国語も勉強しているうちに、自分の母語である日本語そのものに興味を持つようになりました。同じ大学の修士課程では日本語専攻を選び、日本語学、言語学、日本語教育学など幅広く勉強しました。そんな中、専任教員の紹介で、国際交流基金という日本語教育施設の非常勤講師を始めたのが原点でした。さまざまな国から来た日本語学習者とのコミュニケーションを通じて、本格的に日本語教師をキャリアとして考えるようになりました。
そこから非常勤として13年、その後いわゆるフルタイム雇用になってからは11年間、日本国内の日本語教育施設や大学で留学生に日本語を教えてきました。今勤務している大学は、在籍する学生の9割以上が留学生という特殊な環境です。だからこそ、日本語授業だけでなく、日本語を母語としない学生が講義を理解できるような工夫が必要とされます。
前職と違い、今の大学は視覚資料(ppt)を使って授業をする方針です。そのため、前職ではほぼ触ったことのなかったパワーポイント作成に最初は苦労しました。自分なりに心がけたのは、まず漢字に頼りすぎないこと、1ページの情報量を多くしすぎないこと、読みやすいフォントとスペース配分です。
漢字のことば、特にN2、N1相当のことば、そして人名(日本人の名前の読み方は多くの留学生にとって難しい)にはふりがなをつける、あるいは( )に読み方を書くなどしています。ただし、明らかに留学生でも読める(はずの)漢字にはあえてふりがなをつけず、自力で読むように促しています。
また、1ページの情報量が多すぎると、留学生が音読する際にどこを読んでいるかわからなくなりがちなので、フォントは大きく、スペースを十分に確保し、例文は原則1ページに1つ、といったことを心がけています。
最後に、説明は、日本語を教える教員なら誰もがやっていることですが、長すぎる文章、複雑な言い方は避け、多少聞き取りに難がある留学生でも理解できるように努めています。
以上のように、常に留学生に伝わる授業を目指して授業準備・運営をしています。
他の教育機関と比較・検討しましたか?
13年間の非常勤生活は楽しく、時間の管理も自由で、かつありがたいことに男性の日本語教師は重宝がられたため、コンスタントに仕事はありました。しかし、福利厚生が保証されないこと、次の年の契約が確実ではないことなど、問題も多くありました。
フルタイム雇用を探すとき、民間の日本語学校なども考えましたが、ハードな割には給与が高くないため、家族を養うには不安でした。その点で、基本給が一定以上見込め、比較的時間の自由もありそうな大学にしました。
前職はフルタイム雇用ではありましたが、5年雇い止めの大学でした。現職は基本給は前職より低いですが、各種手当が出ること、かつ無期雇用であることが魅力でした。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
日本語教師の仕事は楽しく、自分では天職だと思っていますが、もちろん大変なことは多々ありました。
まず、ありきたりな言い方ですが「文化の違い」です。教師が当たり前だと思っていることが、日本語学習者にはまったく当たり前ではないことも少なくありません。たとえば、時間に対する考え方、礼儀、教師に対する接し方などです。
もう一つは、「文化の違い」とも関わりますが、当然のことながら「日本語の問題」です。学習者のレベルが低く伝わらない、理解されていないのはもちろんですが、日本語のレベルは低くないのに伝わらない、というのが地味にストレスだったことがあります。それはおそらく、その学習者の価値観そのものが違うためだと頭ではわかっていても、どうしても「言うことを聞かせたい」と思ってしまう自分にいら立つことも。
今はキャリアも年齢も重ね、その点も少し引いて見ることができるようになりました。
給与
フルタイム勤務は大学でしか経験がないので、一概には言えませんが、大学教員なら生活は問題なく維持できると思います。現職は大学にしたら待遇がよいほうではありませんが、贅沢をしなければ普通に生きていけます。また、私立の場合、私学共済に加入することになりますが、私学共済は福利厚生が手厚いのでその点も安心です。
ただ、大学の場合、専任であっても、着任時の職位で基本給が決まり、昇進してもそれほど劇的に給料が上がるわけではありません。私の場合は現職は講師採用でしたが、准教授に昇進した今、講師だった頃と大きく違いがあるわけではありません。有名私立なら給料が大きく増えることもあるでしょうが、そうでない限り、他校に非常勤で出講している教員は多いです。ただ基本的に、他大学への出講は週1日、3コマ(90分×3)までといった制限があるのが一般的かと思います。
日本語教員(ひいては語学教員全般)で、無期雇用の大学教員はむしろ少数派で、研究職ではない場合、3年または5年の雇い止めが一般的です。その点で、待遇はそこそこでも、安定的に収入を得るには、大学教員がおすすめです。ただし、通常修士以上の学歴が必須です。
給与の詳細 情報を読む...
月収 40万円
- 基本給:31万円
- 扶養手当:7万5,000円
- 通勤手当:1万5,000円
待遇
- 交通費
- 有給
- 雇用保険・労災保険
- 社会保険
- 健康診断
- 試験(入試)作成手当
勤務時間
- 1日7時間・週5.5日勤務
長期休暇中の給与保証
- 長期休暇がない
仕事のかけもち
- 以前はかけもちしていた
給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。
繰り返しになりますが、安定した収入を得るには大学がベストです。そのためには、まず最低でも修士号、通常博士号が必要です。
日本語教師であれば、日本語教育能力検定試験合格、養成講座420時間修了、日本語あるいは日本語教育が主専攻、といった経歴があれば可能性はあります。今しばしば話題に上っている登録日本語教師の資格を取っておくと間違いありません。
授業形態・勤務スケジュール
クラス運営で大変だったことは?
大学における日本語教育の難点として、大学である以上、最低でも日本語能力試験N2相当にレベル設定した授業を開講することが求められるにもかかわらず、現実問題として、経営的観点からそのレベルにはほど遠い留学生も受け入れざるを得ないという点が挙げられます。
そのため、N3も不合格になるレベルの留学生にN2基準の授業を受講させるといったケースもよく起こります。そういった留学生のモチベーションを維持させるのは非常に難しいです。
このように、挫折はさせたくないが授業のレベルは落とせない、といったジレンマを、多くの大学の日本語教員は抱えていると思います。
受け持ちのクラスの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス20~25人
学習者層
- 大学生
学生の主な出身地
- 中国
- ベトナム
- ネパール
スケジュール管理で大変だったことは?
とにかく準備に時間がかかります。定時の範囲内ですべての準備が終わることなどほぼなく、たいていは授業後に必死で授業の準備をしたり、持ち帰って自宅で夜作業したりしています。また、授業後も採点や添削に追われていて、少しゆとりを持って仕事ができるのは、大学の場合夏休みと春休みぐらいです。
夏休みも春休みも原則毎日出勤ですが、授業がない分、余裕を持って新学期の準備ができます。なので、パワーポイントだけはざっくりと長期休暇中(教員は休暇などありませんが、暦の上で)に作っておくなど、授業が走り出してから少しでも楽になるようにしています。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『いらすとや』
パワーポイントなどに使えるフリーのイラスト素材が大量に提供されているサイトです。ことばで説明するより、イラストで見せたほうが効率的な場合によく利用します。特に視覚資料を作る際にほとんどの日本語教師が利用していると思います。また、パワーポイント以外にも、絵カードなどを作るときにも便利です。特に、初級クラスを教える日本語教師には有用なサイトだと言えるでしょう。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『みんなの日本語初級II 第2版 教え方の手引き』
対象:初級
王道ですが、授業の進め方が非常にわかりやすく解説されています。みんなの日本語初級Ⅰは、副教材や教具の使い方を工夫すれば授業を進めやすいですが、Ⅱに入ると文法的な説明が複雑になるため、日本語教師でもやりにくい学習項目が増えます(たとえば、自動詞・他動詞など、概念そのものが難しい項目)。 特にまだ経験の浅い日本語教師にはおすすめですが、私の場合、先にざっくりとした教案を考えて、答え合わせのような感じでこちらの指導書を活用しました。指導書の通りに準備しようとすると、楽な反面、教師の個性が出にくくなりますから、それこそ困ったときの虎の巻のような位置づけで活用するといいと思います。
就職活動
どのようにお仕事を探しましたか?
前職の契約が満了するため、次の就職先を探していましたが、いくつか履歴書を送ってみたものの、面接まで進めませんでした。現職のポストは、その年度も終盤に近づいた2月上旬に日本語教育学会の教師募集ページで見つけた公募でした。
まず、当時住んでいた家からのアクセスが抜群に良いこと、応募条件の最終学歴が修士でよかったことが応募の理由でした。正直、その大学については何も知りませんでしたが、ダメ元で履歴書を送ってみたら面接に呼ばれました。面接で分かったのは、留学生が9割を占める大学であること、今回の公募は急遽欠員が出たため、ということでした。
面接で何を聞かれましたか?
今思えば、新年度も始まる直前で、特に何のこだわりもなく応募したわけですが、結局縁があったのか、今もそこに勤務しています。
私を面接した教員と事務長の話では、採用の決め手になったのは、非常勤でも同じ機関で長く働いていたことと、英語ができること、そして幅広い学習者(留学生はもちろん、社会人も)に接したことがあることだったそうです。そういう意味でも、一か所に長く勤務すること、外国語が最低1つできることは有利に働くと思います。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『 公益社団法人 日本語教育学会』
日本語教師ならとりあえずチェックするウェブサイトです。仮に日本語教育学会の会員でなくてもウェブサイトは閲覧できますし、ページ下の「教師募集情報」はログインも不要なので、日本語学校から大学、海外派遣まで幅広く探せます。
その他就職活動で有効な手段は?
-
大学(院)のメーリングリスト
メーリングリストに登録しておけば、公募が出る前の情報(紹介など)を入手できることがあります。特に大学は、教授の紹介などがきっかけになることがまだまだ多いので、おすすめです。
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 通勤時間
- 雇用形態
- 博士号必須ではなかったこと
応募時に必要とされた資格
- 大学 日本語教育主・副専攻
- 修士課程修了
- 日本語教育経験
就職 選考方法
- 書類
- 面接
日本語教師全般に関する質問
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
日本語教師をやっていてよかったと思うことはたくさんありますが、やはりいろいろな外国人と知り合えて、彼らとのコミュニケーションを通して様々な文化を学べることです。
また、他の文化を知ることで、自身の言語使用や文化的背景を見つめ直すこともできて、長年やっていても飽きることはありません。もちろん、文化的摩擦もありますし、それが原因のストレスはありますが、それを上回るやりがいがあります。
また、大学の場合、留学生の4年間の成長を目の当たりにすることができる楽しみもあります。入学したときはいろいろ危なっかしかった学生が、卒業する頃にはしっかりしている。そういう成長の過程を観察できるのもこの仕事の醍醐味です。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?
積極的に辞めたいと思ったことはありませんが、先行き不安でほかの仕事を考えようかと思ったことはあります。それを思い直したのは、やはりお金の面での不安を上回る楽しさ、刺激、学びがあるからですね。
日本語教員のキャリアに興味がある人には、「お金持ちになりたいならやめておけ」とアドバイスしていますが(笑)、逆に言えば、お金持ちになる以上のやりがいがある仕事、ということでもあります。
今後どのような日本語教師になりたいですか?
現職では、日本語を教える練習をする授業を担当しています。ここまで教えてきて、これからこうなりたい、こうしたい、という具体的な希望はありませんが、強いて言えば、日本人でも外国人でも、日本語を教える人材を育成したいという気持ちはあります。学習者としてだけでなく、教師の立場から日本語に向き合う機会を提供できればと思っています。
もう一つは、日本語の教科書を作ることです。こう言い続けて何年も経ちますが、キャリアの後半戦として、自作の教材を世に出したいという思いはあります。そのためにも、もっと幅広く教材を研究していく必要があると思います。
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