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日本国内 日本語教師経験談

国内 日本語学校 やりがいが大きく、学生さんと密に関われる

nihongokyoushi2021さん・ 40歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 10.4年

総評

  • 国内の日本語学校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間: 7年(2013~2020年) 退職
  • 月収:10万円

わたしは、養成講座で日本語教師の資格を取ったあと、大学院で日本語教育を専攻しました。日本語学校に入ったきっかけは、理論だけでなく、実際に日本語の授業をして日本語教師としての実践経験を積みたかったからです。

日本語学校を選ぶ際に決め手となったのが、通勤時間です。家から一番近い大手の日本語学校を選びました。生徒の質は、さすが大手ということもあり、まじめに取り組む学生が多かったです。わたしは、一番上のクラスを担当することが多かったので、授業中に寝たり、テスト中にカンニングしたりする学生はこれまであまりいませんでした。過去には、来日したばかりの初級クラスも担当したこともあります。

写真をアップしているのですが、主に初級から中級クラスでは主にこういった日本語の教材を使って授業をしています。大手の日本語学校だと、ありがたいことにテキストは無料で配布してくれます。

日本語教師としてのやりがいは、やはり学生が希望の大学へ進学することが決まったときです。日本語学校に在籍している留学生の大半は、大学および専門学校を目指して、勉強しています。面談を何度も実施して、志望校選び、面接の練習などをします。受験を終えた学生と結果待ちしているときは、こちらもドキドキなのですが、大学から合格通知の郵便が届いた瞬間、学生と一緒になって喜んでいます。また、他のクラスの担任の先生も一緒になって歓声をあげています。

休日に関しては、非常勤だと取りやすいと思います。子育て中の先生も多くいらっしゃいます。家から近い学校に勤務しているため、休日もよくスーパーや100円ショップで学生に偶然会います。大きな声で「先生!!!」と声をかけられます(笑)

他の教育機関と比較・検討しましたか?

新人のころ、ボランティアの日本語教室は検討したことがあります。ただ、「日本語を教えてお金をもらう」形態でないと、自分自身成長しないと思ったので、民間の日本語学校に決めました。教え方を学べるという意味では、大手の日本語学校はベテランの先生方もたくさんいらっしゃるので、おすすめです。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

習慣の違いです。

たとえば、「大学に進学するためには、何をしなければなりませんか?」と面談で聞いたときに「神様に祈らなければなりません。」と返ってきたりします。(←これ、ふざけていないんですよ。)

なので、「神様にお祈りをすることも大事です。でも、これとこれを勉強しなければ大学には入ることができません。」など、学生さんの文化を尊重しながらこちらの意図を伝えるようにしています。

なぜこの日本語学校を退職しましたか?

「退職」というより、「待機状態」です。

新型コロナウイルスの影響で新規の学生さんが入国できないため、現在、非常勤講師は授業を持つことができず、全員待機状態となっています。一時的に「退職扱い」となっています。このまま入国制限が続くようであれば、どうなるか分かりません。

給与

給与:10万円/月 ・非常勤講師

「これで生活していけるか」という点ですが、日本語学校の非常勤講師だとまず無理です。というのも、コマ給や時給だけを見るとよさそうに見えるのですが、この中には準備時間や勉強時間も入っています。大手以外は、テキスト代、絵カード代も自腹です。

そのため、パート主婦には向いていますが、独身の先生、男性の先生はほとんど半年以内に辞められます。月末に支払われる手取りの給料は、留学生のアルバイト以下なので、複雑な気持ちで授業をしています。

常勤講師だと生活はできるのですが、それでも大手以外は一般企業のOLさん以下です。夜も帰りが遅く、22時まで仕事をしている先生もいらっしゃいますが、残業手当はでない学校が多いと聞きます。洋服を買うお金もなく、職員室には毛玉だらけのセーターを着て授業準備をしていらっしゃる先生もみられます。決して、華やかな世界ではありません。

給与の詳細 情報を読む...

月収 10万円

  • 1コマ90分:5,000円
  • 事務作業も時給が発生

待遇

  • なし

勤務時間

  • 1日2コマ 週2日勤務
  • 残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち

  • かけもちしている 他1ヶ所

給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。

一般的に日本語学校では、高学歴(東大、早慶あたり)だと、日本語教師としての経験はなくても比較的レベルの高いクラスを担当できます。また、経営者や主任さんに個別に呼ばれて、「あなただけ時給をよくしておいたから、頑張って」など言われたことがよくあるので、高学歴だと待遇面では有利だと思います。

大学院に進学すると、大学での非常勤講師としての授業が可能になります。ただ、大学での授業は時給はいいのですが、狭き門です。大学院に行ったからといって、必ず大学で授業できるとは限りません。また、大学の経営状態が悪くなると日本語教師は解雇されやすいので、複数の大学での掛け持ちが必須となります。

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

漢字圏の学生(中国)と非漢字圏の学生(中国以外)の合同クラスだと、授業の進め方が難しいと思いました。

漢字圏の学生は漢字の授業が得意で、文章を書くのがとても早いので、他の学生が書き終わるのを待っていなければなりません。一方で、非漢字圏の学生は漢字は苦手ですが、会話は得意なので、授業中たくさん発言してくれます。

それぞれの特徴を活かし、漢字を教えるときには中国人の学生に先生役をやらせてみる、会話の授業の時にはネパール人の学生に主導権を持たせるなど、工夫をしています。

受け持ちのクラスの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス20人

学習者層

  • 20歳前後

学生の主な出身地

  • 中国

スケジュール管理で大変だったことは?

新人のころは、とにかく授業準備に追われていました。週に1コマの授業なのに、1週間、朝から晩まで教案を考えて作っていました。

多くの先生がこれをやってしまっているのですが、授業準備に時間をかけていては他のことが何もできなくなってしまうので、今では「週に1日3時間まで」など、時間を区切って準備をするようにしています。

1週間のスケジュールを読む...

スケジュール

  • 月:1日休み
  • 火:10:30~15:00 中級クラスを2コマ
  • 水:教案作成などの授業準備をしています。もちろん、無給です。
  • 木:10:30~15:00 中級クラスを2コマ
  • 金:1日休み
  • 土・日:1日休み

教案作りで参考にしているサイトは?

  • 日本語教師の教案
    「導入」「練習」「応用」と、基本的な流れが載っています。練習の例も豊富にあることから、新人のことから教案を作る際に参考にしています。また、既習語彙しか使われていないため、いちいち「未習語彙」「既習語彙」など語彙のチェックも不要です。準備時間の短縮になります。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き 対象:初級
    「みんなの日本語」の準拠教材で、手引書、いわゆるマニュアルです。新人のころは、必ず該当する課を確認して授業をしていました。新しい語彙、文型の提示方法、文法など、事前にチェックすることで、絵カードを準備したり、「授業で絶対に教えなければならないこと」を確認しています。この本は、ほとんどの日本語学校に置いてあります。

就職活動

この日本語学校で働くきっかけ・決め手を教えて下さい。

まず、自宅から一番近い日本語学校だったため。また、他の日本語学校と比べて時給が高い点、ベテランの先生が多い点、好きなスタイルで授業をさせてくれる点などから、今の学校を選びました。

大学院で日本語教育を専攻していたので、主任の先生が「先生のいいと思った形で授業していいです。大学院で学んだ指導法をぜひ授業で取り入れてください。」と言ってくださったので、必要と思った教材を追加で足したり、ディスカッション形式に変えて授業したりと、自由度が高い授業を容認していただける学校でした。

また、研究活動にも協力的な日本語学校だったので、論文を書く際のデータを取るのにも嫌な顔をされず、多くの先生方や留学生に協力してもらいました。感謝しています。

面接で何を聞かれましたか?

これまでの職歴を聞かれました。一般企業の面接よりも簡単なものです。また、大学院でどのようなことを勉強しているのかを聞かれました。

日本語学校では、「面接」というよりも「模擬授業」を重視するので、あまり対策はしなくてもいいと思います。よほど変な人でなければクリアできると思います。

模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

「て形」の授業をしてくださいと言われました。

大きく見やすい絵教材を用意すること、自信をもって大きな声で授業することを心がけました。また、分からないことを質問されたら、正直に「分かりません。」と答えるようにしました。

この日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

強みとなる資格は、やはり「日本語教育能力試験」だと思います。

日本語教師としての資質は、「ボランティア精神を持っていること」だと思います。やりがいはあるのですが、給料が安かったり待遇面はあまり良くないので、学生とともに自分も成長したいという人や元々勉強好きな人には向いていると思います。

また、日本語学校の先生はほとんど女性なので、「女性社会でどうやっていけるか」も大事だと思います。中には、いじめなどもあるようです。わたしは被害にあっていませんが、「教え方が悪い」とダメ出しされたり、「教案を提出してください」と何度も教案を突き返され辞めていかれた先生も多くいらっしゃいます。うまく立ち回ることができないときついのかもしれません。

その他就職活動で有効な手段は?

  • 日本語教員からの紹介
    あまり知られていないのですが、日本語教員(同業者)からの紹介が多いと思います。非常勤の先生は基本的に掛け持ちをされていらっしゃるので、「うちの学校、先生が足りないよ」→「主任に紹介しておくね」など、教員間で情報交換しています。その際も面談や模擬授業はあります。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 学校の規模
  • 給与・待遇
  • 通勤時間

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

もともと日本語教師に興味がありました。ただ、給与や待遇が悪いと聞いていたので、大学卒業後はすぐにこの仕事につかず、結婚して生活を安定させてから420時間の養成講座に通いました。

日本語教師養成講座に通う人たちも、はじめはみんなやる気があるのですが、実習が始まるころになると現実を知ってしまうので、3分の1くらいの人しか実際に日本語教師にはなりません。主な稼ぎが自分ではないため、日本語教師になることにしました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

「日本語教師をやっててよかった」と思うのは、卒業した学生さんから連絡がきたときです。

学生が卒業してもFacebookやLineなどでやりとりをしています。学生さんから「結婚しました」「会社を立ち上げました」など、うれしい報告が来たりします。在学中だけでなく、帰国してもずっと学生さんとつながっているというのはうれしいものです。もちろん、同僚の日本語教師ともそれを共有しています。そんな時、「日本語教師をやっててよかった」と思います。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

日本語教師そのものを辞めたいと思った時は、まさに今です。コロナの影響で留学生がまったく入国できないので、日本語教師の授業がなくなっています。おそらく2021年度はもっと減ると思います。

以前、東日本大震災のあとも一時的に留学生が減ったのですが、今回はケタが違います。東日本大震災のときには辞めていかれた先生は新人の先生が多かったのですが、今回はベテランの先生もお辞めになっています。

また、学校の経営も危ないです。学生募集もできないようです。この先、不安しかありません。

学生のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

学生さんだと比較的時間があるので、日本語教育能力試験に合格したほうが早いと思います。420時間日本語教師養成講座はお金がかかるので、大学で日本語教員の資格を取れるなら取っておいたほうがいいと思います。

それから、コロナが落ち着いてから日本語教師になったほうがいいと思います。今資格をとったところで、就職先はありません。

社会人のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

社会人だと資格の勉強の時間があまり取れないので、420時間日本語教師養成講座を受講されたほうがいいと思います。今は通学だけでなく、ほとんどの学校が通信やオンライン授業対応となっているので、仕事と両立しやすいです。

上にも書いていますが、コロナが落ち着いてから日本語教師になったほうがいいと思います。

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