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日本国内 日本語教師経験談
国内 日本語学校 自分を成長させられるが、給与が見合わない
夏さん・ 36歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 6年
総評
- 国内の日本語学校
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間: 5年(2016~2021年) 退職
- 月収:28万
高校時代、現代文の授業がきっかけで「日本語」というものに興味を持ちました。文法など日本語学を学ぶために大学に入りましたが、そこで出会ったのが日本語教育でした。在学中に中国へ1年間の語学留学をし、自分が外国語学習者の立場に立ったときに、母語を外国人に教えるという仕事に興味を持ちました。
とはいえ大学卒業後は中国と関わる仕事をしたい気持ちのほうが強く、また日本語教師は歳を取ってからでも始められる仕事だということもわかっていたため、一般企業に就職しました。企業退職後、非正規雇用で大学事務をしていましたが、正規雇用で働きたいと考えたときに視野を広げ、留学生のサポートができると思い日本語学校にも応募をしてみました。日本語教師の資格より、自分自身が留学生だった経験を役立てたいとの気持ちでした。
数校、日本語学校に応募した中で、履歴書を見て「事務より教師をやってくれないか」と電話をかけてきた学校がありました。突然の打診に戸惑い、経験がないことを伝えましたが、経験はこれから積めばいいからまずは面接に来てほしいと言われました。模擬授業もできないと正直に伝えましたが、それでもいいとのこと。面接を経て、教師として勤務することが決定しました。
何をどうすればいいか、どの面でも心配しかありませんでしたが、周りの先生方が見守ってくださいました。先輩の教案チェックや授業見学はほとんどなく、困ったときだけ相談するような形でしたが、それがかえって私にとっては良かったようです。すべて自分で考え、毎回試行錯誤と反省をくり返しながら次の授業に進むことで、自分のやりやすい方法を確立していくことができました。
どの科目も、楽しく学べるようにいろいろと考えましたが、特に頭を使ったのは作文の授業です。最初は細かい間違いをひとつひとつ正していたのですが、読み手にわかってもらえる作文を書くには細かい間違いを正すだけではだめだと考え、とにかく構成を第一に指導するようにしました。「まず」「次に」「たしかに」「しかし」「ですから」など接続詞の使い方を確認し、そのとおりに書けばわかりやすく書けるテンプレートを用意。だんだんそれをなくした状態で書けるように練習をしました。初回はうまく書けなかった学生も、3回ぐらい練習すると上手に書けるようになりました。また、学生によくある文法の間違いをわざと盛り込んだ作文を配り、直す練習をさせたところ、多くの学生が楽しんで取り組み、間違いも減りました。
またコロナ禍におけるオンライン授業では、学生にいかに発言してもらうかに苦労しました。対面授業では活発に意見を出してくれていても、オンラインになると沈黙してしまう学生が多いのです。無理にひとりずつ発言させるより、SNSのように簡単に文字で投稿ができたら意見も出るのではないかと思い、padletを使うことにしました。最初は「書いて書いて!」とこちらから急かしていましたが、慣れてくると学生のほうからどんどん答えを書いてくれるようになりました。教室では静かにしている学生も投稿してくれるので、静かではありますが活発な授業ができるようになりました。
授業での取り組み例を挙げましたが、このように日本語教師は常に考え、模索が必要な仕事だと思います。
どうしたらもっとわかりやすいか、どうしたらもっと楽しくなるか。クラスのレベルや学生たちの国籍、性格によっても違ってきます。ですので、その時々での着地点はありますが、完全なゴールはありません。常に新たなチャレンジをして、それによって自分が成長していける仕事です。
他の教育機関と比較・検討しましたか?
事務職としてですが、他の日本語学校にも応募し、2校面接を受けました。
2校とも、面接での校長・副校長の態度や質問の内容などから、あまり一緒に働きたくないと感じました。うち1校からは内定を頂きましたが、辞退させて頂きました。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
そもそも「勉強のやり方」を知らない学生が来ることに戸惑いました。
例えば新出語彙のテストをするために復習の時間を与えた場合、勉強のやり方がわかっている学生は日本語の欄を隠し、母語の訳を見て読んだりノートに書いたりするのですが、わかっていない学生はぼーっとテキストを見ているだけなのです。
これではテストをやっても意味がないので、ノートを持ってこさせることから始め、書いて覚えるよう指導しました。また、新出語彙のテストの場合は、ひとりで勉強させるとどうしてもやる気や集中力にばらつきが出るため、ペアでの復習(教師役と学生役を決め、教師役がテキストの訳を見て母語を言う→学生役が日本語で答える)に切り替えました。この方法にしたことで、勉強のやり方がわからずテストが白紙だったような学生も、少しずつ点数をとれるようになりました。
なぜこの日本語学校を退職しましたか?
コロナ禍での学校の方針転換や人間関係の悪化により、体調を崩して休職してしまいました。休職を伝えたときや復帰後の対応などから、ここには居続けられないと思い退職しました。
現在は、知人が勤務する日本語学校を紹介してもらい、そちらで働きながら、他業種への転職のために就活中です。待遇面は前任校より厳しいですが、人間関係のストレスは一切なくなりました。
給与
5年勤務してやっと、日本語教師のみで生活できるようになったという感じでした。始めた当初は実家暮らしだったためなんとかなっていましたが、未経験だったため基本給は22万円と低く、進路指導手当もなかったため、一人暮らしは厳しかったかと思います。
勤務校は授業準備や採点などを勤務時間内にやってもかまわないという方針だったため、それが負担になることはありませんでした。ただ進学指導が忙しい時期は2時間以上残業することも多かったため、進学指導手当がついていても納得いかない手取り額でした。
給与の詳細 情報を読む...
月収 28万
- 基本給:26万円
- 進路指導手当:2万円
待遇
- 交通費
- 有給
- 雇用保険・労災保険
- 社会保険
- 賞与 年2ヶ月分
- 年間昇給
勤務時間
- 1日8時間・週5日勤務
- 残業 残業あり 1ヶ月 計30時間
長期休暇中の給与保証
- 勤務している教育機関で給与が発生する仕事がある
仕事のかけもち
- かけもちしていない
授業形態・勤務スケジュール
クラス運営で大変だったことは?
日本語学校に通う全員の志が高いかというと、そうではありません。
日本のほうが稼げるからとアルバイト目的で来ている学生や、親に言われて仕方なく来ている学生など、来日理由はさまざまです。このような学生はどうしてもモチベーションが低いため、目的意識を持って学んでいる学生との学習態度の差は大きく、クラスをまとめるという点では大変苦労しました。
座席を自由にするとモチベーションの低い学生は後ろにかたまって私語が多くなってしまうため、少し大人げない方法でありますが、座席を指定して、状況を少し改善させていました。
受け持ちのクラスの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス20人
学習者層
- 学生
- 社会人
学生の主な出身地
- 中国
- ベトナム
スケジュール管理で大変だったことは?
9~2月頃の進学指導が忙しくなる時期は、毎年本当に大変でした。
自分が午後の授業を受け持っていて、その午後クラスの学生の進学指導をする場合、授業が終わった17時頃からしか指導ができません。2名の指導を終えると19時、それから授業の片付けや翌日の準備をするというようなことも多かったです。
午前クラスの学生指導でも、授業後そのまま進学指導を始めてしまうと、昼食をとるのが15時すぎというようなこともよくありました。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『ちびむすドリル』
日本の幼児~小中学生向けのプリント配布サイトです。主に国語と算数を扱っています。授業でとにかくお世話になったのは、時計のプリントです。初級で時間の言い方を練習するのに練習問題の量が必要だったので、大変助かりました。他にも息抜きに漢字の読み方クロスワードを使ったり、白地図を利用して県名当てクイズをしたりするのに活用していました。一般の日本語教育の教材とは少し違っており、学生たちも楽しく取り組んでくれました。 - 『今月の話題 | J.TEST実用日本語検』
ニュース記事を元にした読解問題が、毎月更新されます。初級・初中級レベルと中級・上級レベルの2種類あり、初級・初中級レベルですとN4~N3レベルから利用することができます。いわゆるJLPT対策の読解問題のみだと学生も飽きてしまうため、週1程度でこちらの教材を使うと楽しく取り組んでもらえました。過去の問題もダウンロードできるので、学生がとっつきやすいものを選んで使うことができます。読解の練習だけではなく、話題を広げて会話の練習もできるので、楽しい授業展開ができます。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『どんなときどう使う日本語表現文型辞典』
対象:全レベル
初級テキストを終え、N3以降本格的な文法の授業の準備で使います。各文法の解説と例文が載っており、この本がなければ授業準備ができない、というくらい活用しています。すべての日本語教師必携の本だと思います。
就職活動
どのようにお仕事を探しましたか?
ハローワークの求人をチェックしており、今回の学校もハローワークで見つけて応募しました。5校程度応募し、面接は3校受けました。
勤務を決めた学校以外の2校は、校長や副校長の面接時の態度が高圧的で、職員室の雰囲気があまり良くないように感じました。また「うちは産休が取れないけど、入社したら3年は働いてもらいたい。結婚の予定はないか」というような質問もされ、その質問をすること自体いかがなものかと感じたため、その学校は辞退しました。
職場の雰囲気は働くうえで本当に大切ですので、長く働きたいなら重視すべきだと思います。
面接で何を聞かれましたか?
とにかく人が足りなかった時期の入社であり、面接というより意志確認といった感じでした。
私の場合講師はまったくの未経験で、大学時代(5年以上前)の模擬授業や教育実習しか経験がありませんでした。入社したらすぐに授業を持ってほしいとのことだったので、教案チェックや研修のようなものはどのようになるのか質問をしました。ですが校長先生の方針は「みんな手伝うし、やってみればどうにかなるから!」と言った感じで、あまり細かい部分には触れてもらえませんでした。
正直不安も大きかったのですが、他に事務職で面接を受けた学校とは校長先生の人柄がだいぶ違い、職員室の雰囲気も働きやすそうだと感じたため、働くことに決めました。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『 日本語オンライン』
国内(地域別)、海外と求人項目が分かれているので探しやすいです。
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 学校や先生の雰囲気
- 通勤時間
- 雇用形態
応募時に必要とされた資格
- 日本語教師養成講座420時間修了
- 日本語教育能力検定試験合格
- 大学 日本語教育主・副専攻
就職 選考方法
- 書類
- 面接
日本語教師全般に関する質問
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
授業の進め方や教材を考え、学生の発話量を増やし少しでも楽しく参加できるように工夫した結果、クラス全員が前を向いて授業を受け、口頭練習に参加してくれたときは頑張って良かったと感じました。
授業後に学生から板書を写真に撮りたいと言われたことも、モチベーションにつながりました。自分に自信のなかった私が、授業での成功体験を重ねた結果、自己肯定ができるようになりました。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?
日本語学校の専任講師は、授業だけでなくスケジュール作成や進学指導、書籍や備品の整理に至るまで業務が多岐にわたります。コミュニケーションも学生とだけとれればいいのではなく、非常勤講師の方とのやりとりも重要です。
これらすべてをうまく回していかなければならないのはかなり大変で、それだけ負担が大きくても給与待遇面で報われないのは、やはり辞めたいという気持ちにつながります。
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