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日本国内 日本語教師経験談

国内 日本語学校 新人教師教育に熱心な学校は学生の質も高い

mimi.taiwanさん・ 38歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 5.3年

総評

  • 国内の日本語学校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間: 3.8年(2016~2020年) 退職
  • 月収:14万4,000円

授業で使用する教科書内容の教師向け勉強会が定期的(月1回)に無料でありました。参加は任意ですが新人を中心に参加していました。成功例や失敗例をたくさん聞けたのが大変良かったです。

また有料ですが、学校で使う教科書を著者自ら解説してくれる講座もあり参加。著者の裏話を授業ですることもあり、学生さんたちは貴重な話と思ってもらえ、授業に付加価値を付けることができました。

勤務校で担当していたコースには国でのキャリアアップ、または日本で就職を考えている人も多く、熱心でまじめな学生さんばかりでした。その分、求められるものも多く、プレッシャーはありました。しかし、彼らが希望の会社から内定をもらえたり、日本語能力試験に受かった報告をしてくれたりすると本当に嬉しかったですし、やりがいを感じた瞬間でもありました。

また、普段なかなか経験できないことをできるのが日本語教師です。
上級クラスの教科書に裁判に関する内容があり、実際課外授業の引率で裁判所へ行きました。自分が気になる裁判を各自傍聴したり裁判官が着用する法服(黒い服)を着たりしました。学生さんたちにとっても貴重な経験になったと思います。

慣れると授業準備の時間もだいぶ短縮されますが、3年目くらいまでは授業準備に追われていました。短縮できたポイントは下記です。

・パワーポイントを有効活用する
・授業中、学生の理解がイマイチだったところや宿題で間違いが多かった箇所をメモしておく
・他の先生に授業見学をさせてもらい自分の引き出しを増やしておく

大変な分、やりがいも大きいと思います。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

養成講座の先生(=現役の日本語教師)から前評判を聞いていたので、他とは比較しませんでした。最初は週2で勤務していたのですが、同じ学校で週4にするか他校と掛け持ちにするか悩んだとき、他校とも比較してみたいと思い、他校の説明会に参加しました。結局同じ学校で週4にすることに。

他校を選ばなかった理由は少し堅苦しさを感じたためです。
説明会で訪れた他校では板書で文字を書く位置などが厳しく決められていました。ただ、学生にとってはどの先生が授業をしてもブレがないので、その点はいいと思いました。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

学生に「先生たちによって板書の仕方が違う」と言われたことがあり戸惑いました。い形容詞を表わす場合「い形」「いadj.」などスタイルが異なりました。実は教師側からもこの話が出ており、定期的に行われる会議(常勤・非常勤全員参加)で話し合い、スタイルを統一することが決定しました。

改善できた理由は職場環境が大きいと思います。普段から同僚の先生方と話す機会も多く、小さな問題や悩みをよく共有させてもらっていました。また、板書の件に限らず、改善策→即実行という考えの上司だったことも大きく影響していると思います。

なぜこの日本語学校を退職しましたか?

家庭の事情でやむを得ず海外移住することになったため、退職しました。

いずれ海外移住することは数年前から決まっており、移住後海外でも働くのに日本語教師はいい職業だと思っていました。

ただ、移住先の国でどのくらい日本語教師として新人教育を受けられるの分からなかったので、教師育成(特に新人教育)に力を入れている国内の該当機関で働くことにし、時期が来たため退職の運びとなりました。

給与

給与:14万4,000円/月 ・非常勤講師

常勤や専任でも待遇は契約社員でした。恐らくボーナスはありません。実家暮らしまたは華美な生活を求めないのであればやり繰りはできるのかもしれませんが、金銭的余裕はあまりないように思います。実際に日本語教師のみでひとり暮らしをされている人もいますので、生活できるといえばできます。

しかし、ほとんどの教師は非常勤講師で定年退職者または既婚者です。主たる収入または自身で他に収入源がある人ばかりでした。

非常勤講師はコマ単位で給与が支給されるのですが、課外学習の日は一日の手当として支給されます。つまり、授業を行った日と課外学習の引率をした日とでは支給額が異なります。ちなみに拘束時間は同じです。

また新人の頃は授業準備に時間がかかります。今となってはその時間も自分にとって勉強にはなりましたが、ある程度学校でパワーポイントや絵カードなど使う教材が準備されてあるまたは作られている学校をおすすめします。個人での作成は大変です。

一方でありがたかったのが、授業で使用する教科書やワークブックは全て学校から無料で提供される点です。退職後も返却不要で自分のものとして使うことができます。学校によっては全て教師負担で購入しなければならないケースも多く、担当するレベルが多いほど金銭的負担も増えるという他校の先生からの声もありました。

給与の詳細 情報を読む...

月収 14万4,000円

  • 1コマ 50分 2,000円
  • 宿題添削 1,000円

待遇

  • 交通費
  • 有給
  • 雇用保険・労災保険
  • 社会保険
  • 年間昇給
  • 添削手当

勤務時間

  • 1日 4コマ 120分(宿題添削)・週4日勤務
  • 残業 1ヶ月 合計5時間

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。

大学で教えるのがいいと思います。

教師間で言われていたのは「給料を上げたければ大学で教えること」。
実際それで大学院に通い、大学で教鞭をとることになった同僚もいます。

また大学であればまとまった研究費が出ることもあり、自身の研究に充てることもできます。そのため、常に研究をし、向上し続ける方も多くいます。

大学で働くためにはある程度の実績が必要ですので、いくつかの日本語学校を経験したり、講座や勉強会で研究内容を発表したりするなど実績を積んでください。自身で講座を開催するのもいいと思います。

学位はほとんどが修士以上となります。

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

具体例を3つほど挙げます。

・教育方法の違い
反復練習が多いと欧米の人はつまらなく感じ、自由な発言をアジアの人に求めると応用があまりききません。しっかり反復練習をすることで応用がきくことをどちらの学生にも説明し、反復練習ではゲームを取り入れ退屈させないよう工夫しました。また応用では学習者にとって身近な場面をいくつか設定し、導いてから発言を求めるとアジアの人たちも発言できていました。

・年齢層が広い
社会人コースでしたが、高校進学を目指す10代~定年退職した60代まで約20名がいました。どんな例文や話題が身近なのか悩んだこともあります。日々、常にアンテナをはっておくことで、幅広い話題や様々な例文を作れるようになりました。

・発言の片寄り
積極的な学生の場合はこちらから指名をしなくてもどんどん発言しますが、控えめな性格の人や発言が恥ずかしいと思っている人などの発言回数は減ってしまいます。週に1回日記を書く宿題があったので、控えめな学生とは特に日記でしっかりコミュニケーションを取ったり、書いてくれた情報を覚えておいて休み時間にそれについて話題にしたりと距離を縮める努力をしました。

受け持ちのクラスの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス5~20人

学習者層

  • 学生
  • 社会人

学生の主な出身地

  • 中国
  • 台湾
  • ベトナム

スケジュール管理で大変だったことは?

新人の頃は常に教案作成に追われており、作成→授業→作成→授業の毎日で、気が休まる時間がありませんでした。事前に作っておいたとしても、前日の先生からの引継ぎで内容修正や付け加えが発生することもしばしば。

大変ではありますが、数をこなすと時間をかけるべきポイントも分かってきますし、それほど負担にも感じなくなります。

場数以外に参加型の勉強会に頻繁に参加し、実践を積むことで時間をかけるポイントが分かってきました。講義形式の勉強会もいいのですが、実際に聞くのとやってみるのとでは違うと感じたため、参加型の勉強会は授業準備の簡略化に繋がり、スケジュールにも余裕ができて自分の時間を作れます。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • かわいいフリー素材集 いらすとや
    初級の学生には言葉だけではうまく伝わらないため、イラストを使用しています。絵カードやパワーポイントで補助教材を作るときに大活躍。文型導入での場面設定や名詞・動詞の意味確認の際使います。 無料で使えて、デザインがシンプル見やすいです。また、ソーシャルディスタンスやマスク着用など時代に合わせたデザインも随時掲載されており、しかも種類が豊富です。 人の表情のイラストもたくさんあるので、例文を提示したときにも話者の気持ちとして魅せることができます。
  • まるごと+(まるごとプラス)
    国際交流基金公式が発行した本「まるごと」のHPです。もともとは海外にクラス日本語学習者用に作られたものですが、実際に日本にある日本語学校でも教科書とともに使用しました。 メインは教科書を使って授業をするのですが、各自または2人1組にパソコンを提供し、文法復習としてサイト内のクイズをしてもらいました。 また、自主学習の方法に困っている学生がいたときにはこのサイトを紹介していました。50音の音声から文法解説、また動画もあるのでたくさん学ぶことができます。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 人と人とをつなぐ 日本語クラスアクティビティ50 対象:初級
    文型によってどんなアクティビティを行ったらいいかを示してくれ、またワークシートもついているので学習者を飽きさせず日本語に触れてもらうことができます。よく考えられたアクティビティばかりで、「クラスの一体感を高めるもの」「自己肯定感を高めるもの」などのテーマにも分けられています。
  • 短期集中初級日本語文法総まとめ ポイント20 対象:初級
    初級の学生が文法確認のために使うのもいいですし、中級の学生が初級復習のために使うのにもおすすめです。イラストとともに英語・中国語・韓国語での説明もあるので理解に役立つと思います。

就職活動

この日本語学校で働くきっかけ・決め手を教えて下さい。

養成講座でお世話になっていた先生がその教育機関で働いており、おすすめされたのがきっかけとなりました。そしてその学校について聞いてみると、サポート体制がしっかりしていることが分かりました。

学校によっては新人でもサポートがないこともありますので、不安な人は面接の際この点も確認しておいたほうがいいと思います。実際、サポート体制については面接でも確認しました。

半年間はメンターの先生がついてくださり、毎回事前の教案チェックと授業後のフィードバックがありました。また、在職3年以内の教師には年1回、ベテラン教師による授業チェックがあります。その他、気軽にいろいろな先生の授業を見せてもらうこともできると分かり、働くことにしました。

面接で何を聞かれましたか?

質問内容:①どんな教師になりたいか②ずっとこの仕事を続けていきたいか③日本語教師になろうと思ったきっかけは。

上記回答:①(社会人メインのコースだったので)教師・学生というような上下関係を重んじる関係ではなく、学生が辛いときや困っているときなど寄り添える教師になりたい。
②働く国や年齢を問わずずっと続けられる職業なので、ずっと続けていきたい。
③幼少期・大人になってからのエピソードや自分と海外との関わりを話しました。

アドバイス:日本語教師は授業中「短く簡潔に分かりやすい話し方」を求められます。結論や言いたいことは何か、聞き取りやすい話し方(声のトーン、ボリューム、話の長さ)かどうか、その辺を意識するといいと思います。

模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

・模擬授業の時間:20分、課題の内容:「て形」導入~例文提示

・工夫した点:教師側からの一方通行にならないよう学生役の先生方3人とやりとりも楽しみました。

・注意した点:限られた時間なのでやりとりは必要最低限にし、今回のポイントをしっかり押さえること。ポイントは赤や大きい文字で示す、大切な箇所は繰り返し伝えるなど気をつけました。

・評価された点:臆することなく、笑顔で明るく前向きに臨んだ点だと思います。3人の面接官にはそれぞれ役割があり、厳しいことを言って絶対笑わない人もいました。その先生からの質問にどう対応するのかという態度を見られていたと思います。あとは「この仕事が好きだ、楽しい!」という雰囲気も評価対象だったような気がします。

この日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

茶道、華道、書道、柔道、剣道など日本の伝統的なものは活かすことができると思います。日本文化に興味のある学生さんも多いですし、教えられる先生は日本語の授業の中にそれらを掛け合わせています。

よく言われるのが「社会経験をしてから日本語教師になるのがよい」ということです。
私は一般企業で10年営業事務を経験してから日本語教師に転職しましたのでビジネス日本語を教えられる自信はありました。

また元新聞記者の先生は文章の要約が素晴らしいです。仕事柄、言葉の違いもよく知っていらっしゃいます。

日本の伝統文化、ビジネスに関する資格や知識はかなり需要があると思います。

実際自分が海外に移住して教師から学生の立場になったとき、楽しく授業をしてくれる先生が理想だと思いました。ただでさえ異国、不安の要素がたくさんです。不安を和らげてあげられる素質のある、優しくて明るい人が向いていると思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • NIHON MURA(日本村)
    日本語教師求人サイトで最も知られているサイトです。国内の求人情報はもちろん、海外の求人情報も豊富に掲載されていますので、海外で働きたい人も要チェックです。
  • 日本語教育学会
    大学を中心とした国内外の求人情報が掲載されています。また、セミナーや講義情報も豊富です。

その他就職活動で有効な手段は?

  • 養成講座
    学校の掲示板やファイルにたくさん求人情報があり、面接を受けた人の体験記も書かれています。リアルな声なのでかなり参考になります。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • サポート体制がある
  • 学校や先生の雰囲気
  • 学校が法務省告示校

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業
  • 筆記試験

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

中学校で英語の授業が始まり、その頃語学や海外に興味を持つようになりました。ふとしたきっかけで日本語教師という仕事があることを知った当時の私は、それからずっとその職に憧れを持つように。

大学も語学系の大学に進学しましたが、ひとり暮らしということもあり、やりがいよりも確実に安定した給料をもらえる一般企業に就職。同じ毎日を繰り返すうちに、人生このままでいいのだろうかとうと考えるようになり、まずは日本語ボランティア教室で日本語を教えることになりました。

やがて教えることの楽しさ、日本語の幅広い表現力や深い意味を知るうちに、「これを仕事にしよう!」と決め、思い言ってメーカーを退職しました。

それから養成講座に約1年通い、日本語教師デビューとなりました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

教え子が夢に向かって頑張っている話を聞くととても嬉しくなります。

日本語がゼロの状態で日本へ来た台湾の男の子がいました。日本の調理学校に入るため、まずは1年日本語学校に通うことに。日本語力も伸びず苦戦していましたが、とりあえず調理学校を受験することに。結果は惨敗。翌年再受験するため、面接のアドバイスをしたりグルメ店などの研究をするよう彼に伝え、二人三脚で頑張っていました。ですが、結局彼は台湾へ帰国し、それから音信不通に。

そしてある日突然その彼から報告を受けました。希望の調理学校に合格した、と。
しばらくはアルバイトと日本語の勉強で忙しかったそうです。

誰かの人生に少しでも役に立ったと思うと、感慨深いものがあります。

また、日本語教師の仕事は普段の生活ではなかなか出会うことのない国・バックグラウンドの人とも知り合うことができるのもこの仕事ならではと思います。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

授業準備がとにかく大変でした。ただそれは自分が完璧主義や心配性の節があるからかもしれません。性格的に向いていないのかと思い、辞めたくなることはありました。

予想されるであろう項目を準備するのはもちろんなのですが、質問されるかどうか分からないことに対しても準備に時間を費やしてしまう傾向があります。

数をこなさないと学生さんたちがどんなことに疑問を持っているかやどこで躓くのかは分かりません。日本語教師6年目の今でも、毎回授業で新しい発見があり、それらは確実に将来の授業作りに活かされます。

前夜作りこんだパワーポイントをUSBに入れ、授業に持って行くのを忘れたこともあります。心配性でおっちょこちょいな自分に落ち込んだことも。しかし、たくさんの学生さんから「先生の授業が好き!」と言ってもらえ、その言葉が大きな原動力となり現在も日本語教師を続けています。

学生のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

大学で主専攻・副専攻で日本語を学び、その後卒業して日本語学校で働きながら大学院で研究するのが最適だと思います。やはり自分の強みを持っておくことは大切なので、文法・音声・教育などを極めることで授業にも深みがでます。

また、元アナウンサーの先生は自分の強みがきっかけで音声に特化した授業が開講されることになったとおっしゃっていました。大学院での学びとともに現場に立ち続けることも大切なので、時間的余裕があれば院に通いながら教鞭をとることをおすすめします。実際にそのような先生も何人かいました。

社会人のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

養成講座をおすすめします。420時間の講座を短期集中で学ぶことができます。またコロナがきっかけでオンライン授業を行う養成講座も増えてきており、忙しい社会人でも会社を辞めることなく講座を受けられます。

ただ、自分の場合はそれだけでは知識不足を感じたため、日本語学校で働きながら養成講座を再履修しました。修了後3年間は無料で授業を受けられるありがたいシステムを活用させてもらいました。授業にも慣れてきた3年目に日本語教育能力検定試験に特化した外部講座に通い、次の年に合格しました。

社会人からのスタートでしたら養成講座と日本語教育能力検定試験の両方の取得をおすすめします。

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