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日本国内 日本語教師経験談

国内 大学 安定しなくても、やりがいにあふれる仕事

月蜂さん・ 29歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 5.5年

総評

  • 国内の大学
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間: 5年(2014~2019年) 現在も勤務中
  • 月収:10万円

私は所属機関で韓国人学生だけのクラスを担当していましたが、日韓関係が緊張しているときも、学生は母国である韓国と留学先である日本の報道の違いを目の当たりにし、同級生である日本人学生が自分たちや韓国に対してどのように考えているのか、自分たちはどのようにふるまえば偏見にさらされないかなど考えていました。

これを見て、私は日本語の授業ではことばの上達のみならず、日本社会は自分たちをどう見るか、身近な日本人たちは社会と同様なのかといった異文化理解的態度の養成も必要だと感じました。

私は同僚教師とともに、韓国人学生がこのようなデリケートな話題について日本人学生とじっくり話せる機会を授業内でつくりました。参加した学生は良くも悪くも想像と違った現実にショックを受けた様子でしたが、その日以降、彼らは非常に客観的に自分たちを見つめるようになりました。

通常の授業を行うだけであれば、ある程度経験を積めば休日も授業準備に追われることなく、担当する授業数×1時間程度の準備時間がとれれば十分で、自分の時間をもつこともできます。

しかし、通常の授業以外にこのような課外活動的な授業を計画することは、非常勤講師である私や同僚にとって、休日返上での準備が必要でとても大変なものでした。それでも、当日の学生たちの様子から、非常に有意義な活動だったと感じました。

大学での仕事のポストは基本的に非常勤での雇用が多く、不安定な雇用状況ではありますが、このような「ことばの問題」以上のものを解決する手助けができるのが日本語教師だと感じ、このような体験をするたびに日本語教師をしていたよかったと感じます。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

日本語教師として求められる要件を満たしたとき、どの教育機関で働くか迷い、日本語学校、大学、外国人児童の支援塾、自治体、NPO法人などさまざまな教育機関で経験をしてみました。

最終的には学校教育機関の求人が多かったことから、正規雇用である日本語学校の専任と比較検討しました。日本語学校に非常勤で勤めていた時、学生の入学、卒業、生活指導など、日本語指導以外の業務が多すぎて日本語の授業準備に専念できないと言っていたのを聞き、日本語学校での業務の多用さを目の当たりにしました。

同時に勤めていた大学では常勤の先生がカリキュラムやコーススケジュールなどを一手に引き受けてくださり、非常勤は自分の担当コマに集中して取り組むことができました。収入が安定しない不安はあっても、非常勤で日本語の授業に集中したいと考え大学に勤め始めました。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

所属する機関によって機関のねらいや学習者の様子が大きく異なることです。

日本語教師としての経験を積もうと思い、様々な機関で経験してきましたが、日本語学校ではとにかく内容をこなしていくことが求められ、大学ではことばの授業であっても抽象的な議論ができるような「大学らしい授業」であることが求められ、企業では即効性の学習効果が求められました。

一口に「日本語教師」といっても、大学の実習などで学んだことはほんのごく一部で、それ以上の工夫などは機関の様子や学習者の様子を見て、自分で試行錯誤せざるを得ませんでした。書籍やホームページを参照しても、自分の所属する機関にぴったり合うものは少なく、多少なり自分のアイディアで試さなければなりませんでした。

特に学習者については、日本語学校では高校を出た若者から、日本での就労を目指して一念発起し仕事を辞めてきた2,30代の人まで幅広く在籍していたり、大学では日本や日本語が好きで留学してくる人、英語を教えたいと思い、日本へ来たものの、自分が日本語を学ぶ必要性はあまり感じていない人がいたりと、同じクラスでも多様な人が一緒に学んでいました。

興味関心が違う中、モチベーション高く学び続けてもらえるように工夫することには常に頭をなやませました。

給与

給与:10万円/月 ・非常勤講師

週10コマ程度の授業を担当すれば、大学非常勤でも十分生活が成り立ちます。非常勤であれば拘束されるのは基本的に担当する授業の時間だけで、付随する業務(シラバス作成、テスト作成、採点等)は自分の時間があるときに行えます。そのため、副業などもしやすく、最低限以上の生活を維持することも可能だと思います。

ただし、その月の授業実施回数で給与が支払われる大学が多く、授業がない8,9月、2,3月分の給料が発生しません。短期プログラムの仕事を回してもらえる場合もありますが、すべての大学で実施しているわけではありませんし、その年の予算によって変動するのであてにするのは危険です。

その期間の収入がないことを見越して多くのコマ数を担当するか、その期間だけ副業をするかして、年間の収入を調整する必要があり、その点は意識してスケジュールをくまなければなりませんので、面倒に感じます。実施予定分の全額を学期の月数で割って、月給制で支払ってくれる大学もありますので、求人の待遇面を見るときはそこを確認するようにしています。

授業外の業務は大学により負担感が異なります。常勤の先生がすべてシラバスを作成し、スケジュールを組んで下さる大学もあれば、非常勤がそれを行わなければならない大学もあります。

学期初めのミーティングも無償だったり会議謝金つきだったりとまちまちで、自分が働き始めるか、そこで働いている人に聞かなければわからない部分も多く、新しい大学で勤め始める際は非常に気をもみます。

給与の詳細 情報を読む...

月収 10万円

  • 1コマ90分:7,500円

待遇

  • 交通費

勤務時間

  • 1日3コマ 週1日勤務
  • 残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち

  • かけもちしている 他3ヶ所

給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。

給与、待遇だけであれば企業内での研修講師が一番よいと思います。学校教育機関とは異なり、即効で実務的な効果が求められますが、時間外で求められる労働が少なく、発生した場合もきちんと事務作業として手当をくれるところが多いです。

求人数が少なかったり、生活を支えるだけのコマ数はもてなかったりしますが、1コマ当たりの給与単価が一番よかったのは企業での研修講師でした。

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

ある程度日本語でコミュニケーションがとれる「上級~超級」であったため、日本語自体を学ぼうというモチベーションは低く、日本語を使って何かを学びたいという意識が強かったため、授業には様々な工夫をする必要がありました。

教科書を使った場合にも、文法表現を学ぶことを主眼においた教科書では、学生はモチベーションが保てませんでした。そのため、動画やコラムなど生教材を使い、学生が知らない、うまく使えないだろう表現などが含まれ、内容的にも学生が興味がもてるものを常に探すことが日課になりました。

ただ、クラス内で関心が大きく違うとクラス運営が難しく、どの学生も満足度を高く授業を行うための工夫は毎回求められました。

受け持ちのクラスの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス5人

学習者層

  • 大学生

学生の主な出身地

  • 韓国

スケジュール管理で大変だったことは?

学生の課題提出を前提とした授業を行っていたので、人数が多いときや学生の提出がおそいときはチェックに追われ大変でした。学生の思考レベルが高い場合は、協働学習で、学生同士でお互いの作品をチェックし、コメントするピアフィードバックを行いました。

もちろん学習効果も高い教授法ですが、私が基本的な誤り(言語的なもの)をチェックする手間を省くという意味でも、非常に効果があったと思います。

1週間のスケジュールを読む...

スケジュール

  • 金:8:45~14:30 同一クラスで科目名の異なる授業を3コマ
  • 土:学生の課題の添削や、テスト問題の修正、実施したテストの採点、次回授業の準備などを行っていました。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • みんなのCan-doサイト
    シラバスや授業を組み立てるときに、学生が何ができるようになるのか具体的な記述である能力記述文(Can-do statements)で示しています。そのとき、このサイトで検索することで、そのまま活用したり、自分で文言をアレンジして使用したりすることができます。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 外国人と対話しよう!にほんごボランティア手帖 対象:全レベル
    外国の方と「対話」するための手引き書です。ボランティアの方向けに書かれていますが、学生さんと接するとき、教師と学生のやりとりが「ことばの練習」にとどまってしまう場面が多々あります。この本に書かれていることを参考にすることで、それが防げると思います。

就職活動

この大学で働くきっかけ・決め手を教えて下さい。

大学院の指導教官が求人を出すときに声をかけてくださり、紹介で試験なしで着任することになりました。着任以前よりどのような指導がしたい、どのような教育経験がしてみたいなどと話していたため、担当科目や担当コマ数なども含め、非常に考慮していただけてました。

この教育機関が初めて大学生相手に授業を行う仕事でしたが、指導教官がプログラムの統括だったこともあり、細かなことまで相談できるだろうという想像もできていたので安心して着任でき、非常に働きやすい環境でした。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • JREC-IN
    研究職、講師職の求人が掲載されている。全分野の研究職の求人が掲載されているが、語学講師も多く載っている。
  • 日本語教育学会
    教師募集情報で大学や日本語教育関係の求人が掲載されている。日本語教育関係の書籍に関する求人などもあり、幅広い分野から日本語教育に関係する求人が集まっている。

その他就職活動で有効な手段は?

  • 大学の教授や先輩からの紹介
    仕事を探している地域や条件などを伝えておくと、求人があった時点で声をかけてくださる。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 使用されている教授法

応募時に必要とされた資格

  • 大学 日本語教育主・副専攻
  • 修士課程修了

就職 選考方法

  • 紹介のため試験なし

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

高校2年生の夏に市民講座で日本語教師の体験講座があり、受講してみました。

その中で行われていたのはどちらかというと日本文化を外国人に伝えるような講座でしたが、自分が英会話塾に通っていた時、ネイティブの先生から直接法で教わる方が楽しいと感じていたこととつながり、自分もネイティブとして言語を教える仕事したいと思い、目指し始めました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学生からのアンケートなどで、私の授業が一番面白い、先生の中で一番いろいろな話が聞けるなどの意見を書いてもらえた時、授業準備などが大変だったことも忘れ、次からも頑張ろうと思います。

また、Facebookなどで学生の近況を見るとき、もともとは英語だったものが日本語になっていたり、コメントで日本人と交流していたりするのを見ると、学生の成長を感じ、これからも頑張ろうと思えます。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

常勤講師と教育理念が合わないとき、非常につらい思いをしました。

特に自分が大学院までまなんできた分野について、あまり尊重されていないときなど、少しでも改善しようと意見をいっても聞き入れてもらえず、学生のためにまだできることがあると思いながら言われたとおりに授業や評価を行うことに非常に罪悪感があり、その期間は働くのが非常につらかったです。

学生のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

生涯の仕事にしたい場合は大学院(修士課程)への進学をお勧めします。学部で学べることは入門・基礎的な部分が大きいですが、大学院では最新の情報を手に入れるすべを含め、非常に多くのことが学べます。また、大学院で修士の学位を持っていれば、教授からの紹介で仕事をもらいやすいです。このような人脈を作る意味でも、大学院への進学をお勧めします。

また、留学生との交流イベントなどがあれば積極的に参加し、日本語の授業の様子などを聞くとよいと思います。学習者目線で授業の事を聞くのは、教師という立場では難しくなりますが、同じ学生という身分であれば聞きやすいと思います。

社会人のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

まずは420時間の養成講座などをお勧めします。知識の面はもちろん、実習などもあるので、まったくの初学者の方でも基礎をおさえることができます。

また、地域の日本語教室などに参加してみて、実際に外国の方と接する機会を増やすと、学習者がどのようなことでつまずくのか、そのつまずきに接したとき、どのように自分が動けるのか考えるきっかけになると思います。そのような接触経験の多寡はその後学生さんとうまく接する上で影響を与えると思います。

 

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