掲載日:

日本国内 日本語教師経験談

国内 日本語学校 どんな苦労も喜びになる

旅猫さん・ 45歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 9.5年

総評

  • 国内の日本語学校
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間: 4.5年(2016~2021年) 退職
  • 月収:20万円

採用された当初、学生は一人だけでした。学校もまだ改装途中で、「大丈夫かな」と思ったのが最初の印象でした。1か月後には9人の新入生を迎え、さらに半年後には70人を超える1年生が入学し、一気に学校らしくなりましたが、全クラスでエアコンをつけるとすぐに停電したり、大雨が降ると雨漏りがしたり、環境としてはとても学校とは言えない物でした。

それでも学生たちは毎日熱心に勉強し、日本語の力をつけるためにがんばっていて、教師はそれに応えるべく授業を行っていました。挨拶がやっとだった学生から、ある時日本語で冗談を言われるなど、どんな環境でも成長する学生にいつも元気をもらっていました。

その前に勤めていた日本語学校は、9割以上が中国人で、クラス内では中国語が飛び交っていましたが、今回の学校はベトナム、ネパール、スリランカと、多様な国の学生がおり、コミュケーションを取るには日本語を話すしかありません。

国籍の異なる学生同士、つたない日本語を駆使して話す姿はとても微笑ましく、今ここにいる学生たちが『日本語』というきっかけがあって出会い、話し、共に過ごしているということを、とても嬉しく思いました。

授業以外にも、様々な行事を企画し、実施しました。学生にとってはもちろん、学校としても初めて尽くしで、日々の授業をしながらの準備は大変なものがありました。

80名を超える団体で活動でき、かつ低予算で楽しめる場所探し、交通手段の手配、宗教を考慮した食事の準備など、本当に苦労もありました。でも、学生たちが写真を撮ったり、日本語で感想を言い合って楽しそうに過ごす姿を見ると、全てがいい思い出に変わりました。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

当時、まだ子どもが小さく、幼稚園への送り迎えが必要だったため、通勤範囲が限られていました。そんな中で偶然この学校の求人を見つけ、自宅から車で15分ほどのところだったため、幼稚園への送迎に支障はないと考え、迷わず応募しました。ここですぐに決まったので、ほかの求人は見ていません。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

新入生の入国スケジュールがまったく読めず、「入国前の大使館の面接がまだ済んでいない」と聞いていたはずの学生が、実は明日の便で日本へ来ることになったなど、急に来日が決まることが多く、教材の準備、授業のスケジュールなど、いつもバタバタでした。

また、入国前にある程度勉強しているのはいいのですが、間違って覚えていたり、話し方にクセがあったりして、学生は「自分はできる」と思っているだけに、直すのが大変でした。特にひらがなのクセはなかなか直らず、苦労しました。

なぜこの日本語学校を退職しましたか?

日本語学校の役割は日本語を教えることだけではないと思います。快適な学習環境を整え、日本の生活習慣や文化を教え、日本が好きで来日した彼らに、もっと好きになってもらうことも大切な役目だと私は思っています。

しかし、経営側の方針は「とにかくJLPTの合格者を増やすこと」、そのためには学校行事は必要ではない、というものでした。確かにJLPTの合格は学生にとっても大切ですが、予備校のようにただ勉強だけをさせようとするやり方についていくことができず、退職を決意しました。

給与

給与:20万円/月 ・専任講師 *正規雇用

専任になれば、一人暮らしなら問題なく生活できると思います。しかし、家族を養わなければならない場合、日本語教師だけでは難しいと思います。

かといって副業ができるかというと、授業準備やテストの採点、出席率の管理、2年生の担任になれば進学指導と、時間外にやらなければならないことがたくさんあり、サービス残業で学校に残ってする、もしくは自宅に持ち帰ってする場合がほとんで、副業するような時間はありません。

給与の詳細 情報を読む...

月収 20万円

  • 基本給:16万円
  • 担任手当:1万円
  • 主任手当:3万円

待遇

  • 交通費
  • 雇用保険・労災保険
  • 社会保険
  • 健康診断
  • 年間昇給
  • 残業代
  • 担任手当
  • 主任手当

勤務時間

  • 1日 6.5時間 週 5日勤務
  • 残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 勤務している教育機関で給与が発生する仕事がある

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

クラスのメンバーのレベルが異なり、分かる問題にはどんどん答えたい学生がいると、その人ばかりが答えてしまったり、学生の性格によって、分かっているのに自信がないから(恥ずかしいから)答えないという人もいたりして、なるべく全員に発言させたいのにと思うことがよくあります。

そんな時に私は、プリントを配って問題をさせた場合など、学生に答えを板書させ、発表させています。特に自信がなくて発言が少ない学生には、机間巡視の際に正解を書いている問題を見つけてそれを書かせ、発表させることで自信をもってもらえるようにしています。

アルバイトに忙しく、眠くなりがちな学生にもこの方法は効果的です。また、文字に癖がある学生については、板書した文字を敢えてほかの学生に読ませて、間違えられることで「みんなが読める字を書かなければならない」という意識づけにも繋がっています。

受け持ちのクラスの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラスクラスにより人数が異なる

学習者層

  • 学生

学生の主な出身地

  • ベトナム
  • ネパール
  • フィリピン

スケジュール管理で大変だったことは?

最初の3年ほどは、教案や教材づくりに追われて、帰ってからも毎日仕事をしていました。週末も使わなければならないことがほとんどでしたが、やってもやってもキリがないので、土日のどちらかは必ずオフにすると自分で決めて、独身だったので、1日はしっかり楽しむようにしていました。

結婚してからは、家事や子供の世話もあり、独身の頃ほど準備に時間を使えませんでしたが、最初のころ作った教案をアレンジしたり、今はインターネットで簡単にイラストや動画が見つかるので、それを活用したりして、短い時間で準備できるようになりました。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • かわいいフリー素材集 いらすとや
    かわいくてシンプルなイラストで、文型導入やロールプレイの場面設定などの視覚教材に利用できます。特にオンライン授業では、教師のジェスチャーや板書が使えないので、イラストは大いに利用させてもらいました。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 教師と学習者のための日本語文型辞典 対象:全レベル
    50音順に文型が紹介されていて、例文が豊富に載っています。似た文型との違いや用法なども詳しく載っていて、初級クラスの学生に文型を導入する際の例文づくりの参考にしたり、中上級クラスには似た文型が出たときに、意味の違いや使い分けなどを説明するときに利用しています。
  • 中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック 対象:中級・上級
    文型の説明・例文とともに、非文の例が豊富で、どのような場合がだめなのか、なぜだめなのかが分かりやすく説明してあります。また、間違いとは言い切れないがしっくりこない例文も紹介してあって、学習項目に当たる部分を見ておけば、学生から出るであろう質問に、事前に備えておくことができます。

就職活動

この日本語学校で働くきっかけ・決め手を教えて下さい。

大学卒業後、すぐに地元の日本語学校で教え始め、半年後には担任クラスを持ち、1年後には専任として教えることになりました。

しかし、社会経験のないまま教師になった私に対し、当時の学生は年上の社会人経験者が多く、「先生」と呼ばれることにだんだん違和感を感じるようになりました。「日本語だけでなく、もっと日本の社会のことを知ってからもう一度先生に戻ろう」と思い、専任として3年務めた後退職し、色々な職種で働きました。

その後、結婚・引越し・出産と続き、日本語教師からは離れて生活していましたが、3人目の子が幼稚園に行きだすころ、もう一度日本語教師に戻りたいと思うようになり、ちょうどそのタイミングでこの学校の求人を見つけ、応募しました。

まだ子どもたちが小さく、幼稚園の送迎も必要だし、低学年の子供がいるので、夕方前には家にいたいと思い、最初は非常勤を希望していましたが、10年以上のブランクがあるにも関わらず、子育てとの両立を理解してくれ、時短での常勤として採用していただけることになり、この学校で勤務することになりました。

面接で何を聞かれましたか?

Q.なぜ、以前勤めていた日本語学校を辞めたのか。
A.社会経験を積むため。言葉だけでなく、実体験としての日本を教えられるようになってから教師に戻りたかったから。

Q.退職後、ブランクがあるのはなぜか。
A.様々な職種を経験した後、結婚・出産・子育て等で働くことができなかったため。

この日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日本文化を何か身に着けていると、役に立つと思います。

私は叔母が三味線を教えていて、大学生の時に誘いを受けて習い始めました。叔母の指導の下、師範の資格まで取ることができ、新年会や卒業パーティなど、機会があれば留学生の前で演奏を披露することができました。

また、発表会等で三味線を演奏する際は着物を着るのですが、叔母から着付も習うことができ、自分で着るのはもちろん、人に着せることもできるようになりました。これを活かして、日本語学校では卒業前に希望する学生に着物の着付を行い、写真を撮って卒業式にプレゼントしていました。留学生にとって浴衣を着る機会はあっても、本格的な和服を着ることはほとんどなく、これは学生たちに大変喜ばれました。

日本語教師に向いている人の資質として、「言葉に敏感であること」があると思います。テレビでタレントが言った言葉や、通勤電車でたまたま耳にした会話などに「この言い方はどうだろう?」と疑問に思ったり、お店で手に取った商品のパッケージにある宣伝文句に「なるほど、面白い表現だ」と感心したり、常に言葉について無意識にアンテナを張っている人が向いていると思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 大谷書店
    福岡にある、日本語教育に関する本の専門店のHP内にある求人サイトです。九州地方・その他全国・海外と幅広く情報が掲載してあり、求人だけでなく、これから日本語教師になりたい人、現役日本語教師の人、どちらにも役立つ情報を色々と得ることができます。
  • NIHON MURA(日本村)
    日本国内(地域ごと)、海外、オンラインの求人が豊富に載っていて、頻繁に更新されています。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 経験を評価してくれる
  • 学校や先生の雰囲気
  • 子育てとの両立への理解

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

英語を勉強するために大学に入り、将来は英語を使って海外と関わる仕事をするか英語教師になりたい、と思っていました。しかし、自分が受験勉強する中で、「受験のための英語を教えるのは違うな」という気持ちを持っていたところに、入学後のガイダンスで初めて日本語教師という仕事を知り、「これだ!」と思いました。

日本語を学びたい外国人に、受験のためではなく、生活のため、将来の夢のために必要な日本語を教えるのです。日本語(国語)も好きだし、本も好きだし、英語を使って海外と関わることができます。こんなにいい仕事はないと思い、その日から私の将来は「日本語教師」に決まりました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

来日した当初はほとんど何も話せないという学生が本当にたくさんいます。きちんと勉強して来た学生との差に、教える側としては最初は苦労しますが、大抵の場合、その差はすぐに縮まり、あるいは追い抜きます。最初は周りから教えてもらう側だった学生が、1年後には教える側になっていることはよくあります。

スリランカから来たAさんは、来日直前に盲腸にかかり、みんなより1カ月以上遅れて入国しました。最初は挨拶すら理解できなかったのですが、毎日真面目に勉強し、宿題もきちんと提出し、アルバイトにも励み、みるみる日本語が上手になっていきました。

最初の頃は、先に入国した友達にいつも通訳してもらっていたのですが、いつの間にかAさんの方が通訳するようになり、1年後にはN3を取れるほどに成長していました。普段はにこやかで穏やかなAさんですが、卒業式の日の最後の最後に泣きながら抱きついて来て、「先生、ありがとうございました」と言ってくれたのは、今でもいい思い出です。

今も専門学校で頑張っていて、時々アルバイト先で出会いますが、会うたびに日本語が上手になっていて、来日時には漠然としかなかった将来像がはっきりしてきており、夢に向かって一生懸命頑張っている姿を見ると、日本語教師は本当にいい仕事だなあと、つくづく思うのです。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

前にも述べましたが、辞めてしまうのではなく、一旦日本語教師を離れて、社会経験を積んだ後でまた戻るつもりで辞めたことがあります。

ほかの仕事しているときも、常に言葉に対するアンテナは張っていたし、どんな経験もいつか日本語教師に戻ったときに役に立つ、と思いながら働いていました。日本語教師そのものを辞めてしまいたいと思ったことはありません。

学生のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

高校生なら、副専攻で日本語教育を学べる大学を選び、専攻は別のものを勉強することをお勧めします。日本語教師は日本語だけ教えられればいい、というものではないからです。自分の経験から、その他の知識や経験は多ければ多いほどいいと思っていますし、アルバイトやインターンでもいいので、企業で働いた経験もあると、もっといいと思います。

社会人のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

大学を卒業されている方なら、養成講座を受けるのが一番早くていいと思います。社会人経験は学生にとってもとても貴重な話として聞いてもらえるので、強みになると思います。

どちらの場合も、ボランティアなどで実際に教える経験を多く積んでおいた方が、実際に教壇に立った時に学生に対応しやすいと思います。小中学校のように2週間の教育実習期間があれば一番いいのですが、日本語教師にはその制度がまだないので、それに代わるものとして、ボランティアでの指導経験があると役に立つと思います。

当サイト人気スクール 420時間養成講座