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日本国内 日本語教師経験談

国内 企業 授業作りよりも大切なことがここにある

memeさん・ 34歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 7年

総評

  • 国内の企業
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間: 2年(2016~2018年) 退職
  • 月収:30万円

私が勤務した機関は「技能実習生の講習センター」です。
講習センターで学ぶ学習者は技能実習生です。技能実習生として来日した若者達は必ず企業へ送り出される前に「日本語」「日本の生活」「法令順守」等について学ばなければならないと法律で決められています。

技能実習生は母国で約3カ月~10カ月程度日本語を習ってから講習センターにやって参りますので、初級といっても学習者のレベルにばらつきが見られるのが特徴です。

また技能実習生といってもほとんどの者はお金を稼ぐためにやってきたというのが実情でしたので、日本語学習に対するやる気というのはあまり感じません。やらされているという負の感情から授業は始まります。

そのため、まずは「この先生はおもしろい」「もっと話を聞きたい」と、自分自身に興味を持ってもらえるかを何より大切にしました。授業作りでなく、人間関係を構築することに注力していると、1週間ほどで話を聞く姿勢ややる気などに変化がみられたのはとてもうれしかった点です。

この講習センターでの滞在はわずか1カ月です。しかし、ここでの日本語教育とは正しい知識を得てテストで高い点数をとるための教育とは全く異なり、「指示を聞いて、わかること」が最も重要でした。

建築や工場など、どんな職種でも「それを取れ」「あぶない」「そこは行くんじゃない」等、現場で使われる言葉や表現を理解させ、その指示通りに行動させる訓練を繰り返し行いました。私にとっては実務的なこのような指導が向いていたようで、大変やりがいがありました。

最後に、給与や待遇についてですが私は不満はありませんでした。私は教師として専門性を高めるよりも他の業務にも携わりたいと思っていました。それが可能な職場でしたので働き方としても大変満足していました。教師以外の業務としては英語での通訳や買い物の仕方指導等、多岐に渡ります。

教師としてスキルを高めたい人にとっては向いていない場所かもしれませんが、日本語教育を通して外国人に寄り添いたい、このような考え方の人にはぴったりの職場かと思います。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

比較検討はしませんでした。この講習センターで勤務する以前は日本語学校で勤務しており、留学生を対象に指導していたのですが、その時の働き方が自分には合いませんでした。

日本語学校では「正しい日本語を指導」することが求められます。JLPT試験に合格させ、進学させなければならないのも理解できますし、もちろん正しいい本語が使えた方がいいです。

しかしながら、意思疎通ができているにも関わらず、「助詞の使い方が×だからテストではダメ」というような指導方法を取らなくてはならないことが苦痛でした。そのため、はじめから日本語学校以外で勤務することを第一に就職活動しており、その中で出会ったのがこの講習センターでした。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

学習者は技能実習生ビザでやってくる若者しかいませんでした。彼らのほとんどが「技術を学びたい」と言うのですが本音では「お金をたくさん稼ぎたい」という気持ちでした。

彼らと徐々に仲良くなるとそのような本音を話してくれたので、うれしい半面、日本語の勉強自体には全興味がないんだなということも実感していました。

そのため、ここには初めから勉強に意欲的は者はほとんどいないので、いかにやる気にさせるか考えるのに苦労しました。

また学習者は9か国から集まってきていたのですが、彼らの学校のほとんどは日本人教師がいない環境で母国で学習していたので、母国の先生の発音に慣れすぎてしまい、日本人が話す発音が理解できないという学習者も多く見受けられました。

なぜこの企業を退職しましたか?

経営悪化による自己都合退社です。まだ設立まもない小さな会社だったのですが、技能実習生が来日するためには入国管理局からOKが出ないと来日できません。

何らかの事情で入国が遅くなる、もしくは入国できないとなると我々の会社に利益は生まれませんので、キャッシュが入ってきません。最後は会社にキャッシュがほとんどないとう状態になり、退職という苦渋の決断をしました。

実際に給与遅配の交渉を直接されたこともありますし、半ば退職勧奨といった雰囲気もありました。なお、倒産はなんとか免れたようですが、どんなに努力をしても最後は(極端な言い方ですが)入国管理局次第という点が最大のネックとなりました。

給与

給与:30万円/月 ・専任講師 *正規雇用

生活できます。手取り23万ほどになるので、都内で暮らしていましたが特に贅沢をしなければ生活できました。

また講習センターの授業も踏まえて考えると、「指示を聞いて、理解する」ということが主な授業内容ですので筆記テストの実施の必要性のありませんでしたので時間外労働する機会が少なかったです。校内テストや試験対策といった、採点やコピー準備等をすることがないので、プライベートも充実させることができました。

また日本語学校でしたら遠足やイベントの準備などにも追われるかもしれませんが、講習センターとしては企業配属前に外出によってけがや体調不良になるなどといったことはご法度です。あくまで企業に配属されるまで「講習し、お預かりをしている立場」なので、そういったことも基本的には禁止です。

彼らの講習期間中の満足度は決して高いとは言いにくいと思いますが、こちら側からすると各種イベントやテスト等のバリエーションに富んでいない分、準備に追われることがないので定時に帰宅することが可能でした。

給与の詳細 情報を読む...

月収 30万円

  • 基本給:30万円
  • 見込み残業:5万円

待遇

  • 交通費
  • 有給
  • 社会保険
  • 健康診断
  • 残業代

勤務時間

  • 1日8時間 週5日勤務
  • 残業 ほとんどなし

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

給与や待遇面でおすすめできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。

私の職場と同様、「講習センター」と呼ばれる講習施設が良いかと考えます。ただし私もですが日本語教師以外の業務として英語での通訳や、スーパーでの買い物の仕方指導といった、日本語教師以外の業務が講習センターには多岐に渡ってあります。

講習センターで企業配属されるまで共同生活していますので、24時間体制での管理をしています。(私は管理人での職務ではありませんでしたので、夜勤のようなスタイルで出勤することはありませんでした。)

このように教師以外の職務にも抵抗がない場合はおすすめです。

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

日本語学校のように一クラスまで20人といった人数制限がありませんので、一クラスに常に約40人程度在籍していました。その40人にたいし行動訓練を行っていきますので、自分自身の体力をかなり消費します。

また初級といってもレベルに差がありますので、最低限身についてほしいスキルがすでにある学習者から、やっとあいうえおがしっかり書けるようになったような学習者まで混在していたのでそこは苦労しました。

個別では対応しきれないため、あらかじめ文法の宿題をだして理解させておくなどして、運営が滞らないように工夫が必要でした。

受け持ちのクラスの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス40人

学習者層

  • 19~35歳

学生の主な出身地

  • 中国
  • ベトナム
  • ミャンマー
  • カンボジア
  • モンゴル

スケジュール管理で大変だったことは?

ほとんどの学習者がまだ初級なので、授業準備が大変・終わらないという苦労はほとんどありませんでした。

しかし、配属先の企業からの要望で「この一か月どんな態度だったか、何を学んだのか」等のレポートをしてほしいという声が増えたため、このレポートを作成することは大変でした。A4にびっしり記入を多い時で一日に8人分書くこともありました。

1週間のスケジュールを読む...

スケジュール

月曜日
  • 9:00~12:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示を聞く)
  • 13:00~15:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示を聞く)
火曜日
  • 9:00~12:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示通りに行動する)
  • 13:00~15:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示通りに行動する)
水曜日
  • 9:00~12:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示が分からない時)
  • 13:00~15:00  
    初級レベルの文系を使った内容(指示が分からない時)
木曜日
  • 9:00~12:00  
    初級レベルの文系を使った内容(謝罪する)
  • 13:00~15:00  
    初級レベルの文系を使った内容(謝罪する)
金曜日
  • 9:00~12:00  
    初級レベルの文系を使った内容(勧誘・招待する)
  • 13:00~15:00  
    初級レベルの文系を使った内容(勧誘・招待する)
土・日は休日

就職活動

この企業で働くきっかけ・決め手を教えて下さい。

ワーキングホリデーでオーストラリアへ行き、そこで420時間の養成講座を修了しました。帰国後にさっそく日本語教師となるべく、就職活動をし、はじめて勤務したのが日本語学校でした。

しかし「点数をとるための授業」「試験をパスすることに注力した授業」に疑問を感じ、退職。それから、日本語学校ではない違う形で日本語教育に携わることのできる場所を探し、この講習センターへ。求人募集をみて応募、面接をして入社しました。

面接で何を聞かれましたか?

  • 技能実習制度を知っているか
  • 日本語学校とは違う(語彙や文法の観点から、決して高いレベルとは言えない)日本語の授業をすることに抵抗はないか

この2つの質問がありました。私は制度については当時詳しくなかったものの、日本語学校教育に関しての質問には抵抗がないこと、その理由を答えました。

この企業で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

語学レベルでは英語ができることは強みになります。全ての学習者に英語が通じるわけではないですが、それでもほとんどの学習者は初級ですので、意思疎通に限界があることも事実です。

そこでやはり世界共通語である英語が話せることで学習者の誰かに伝えることができ、その学習者が母国語で通訳してくれますので。

TOEIC600点ほどあれば、最低限のコミュニケーションが可能ということで良いかと思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本村
    国内外の多くの求人が集まる

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 給与・待遇
  • どういった教育機関か

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

20代中盤に差し掛かり、そのころ私はフリーターとして遊園地で働いていました。接客はとても楽しく大好きでしたが、日々体を動かし、乗り物を操作し、汗をかく仕事。こころに芽生えた「このまま年をとっても続けられる仕事じゃない」という気持ちでした。

この気持ちが徐々に大きくなっていたある日、仕事でけがをし、出勤できない日が2週間程続きました。そのとき「年をとっても、会社がダメになっても、世界のどこでも働けるスキルが欲しい!」と決意。退職し、日本語教師を目指しました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

一番忘れられないのがあるベトナム人の技能実習生の言葉。

ある日その実習生に文法についての質問を受け、答えているところに同僚であるベトナム人が通りかかり、私達の話を聞いていました。そこでそのベトナム人の先生もベトナム語でその文法について、より理解できるように通訳してくれたのですが、一通りの説明が終わった後にその彼が私達に

「先生、ありがとうございます。ベトナムでは日本人の先生から教えてもらうことも、深い知識を教えてくれることも、ありませんでした。いつも、勉強しなさい、しか言われませんでした。先生は私達を強制しないで、自由と、自分から勉強することを、待ってくれました。」と、辞書を使いながら一生懸命話してくれました。

この時のことは忘れられませんし、また私がいつも意識していた「自分を好きになってもらって興味をひく」ということを、実は彼は最初から気づいていたのかと感じ、涙が出ました。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

授業準備を一生懸命やったのに学習者のやる気が全くない、寝ている等という態度だとこちらもばかばかしいという気持ちになり、その時が一番やめたくなります。やる気を起こさせるためにあれこれ試行錯誤しますが、ダメなときはダメです。

またそれ以外に「先生でいなければ」という意識でいるので、いつも笑ったり元気でいなければいけないというストレスがあり、自分の心に嘘をついて演じているようなことが原因で自分らしくいられず、やめたいと思った事があります。

学生のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

日本語学科でなくてもいいので大学は卒業しましょう!試験をパスすれば確かに教師資格は認められますが、学習者は「先生は何が専門で、どんな勉強をしましたか」等こちらの学歴を聞く人も多いですし、学歴によって判断したり、尊敬するかしないかきめる人も実は多いです。

自分自身のためにも、幅広く知識をつけておくのが良いです。卒業してから、もしくは在学中に420を受講すれば良いです。

社会人のみなさんへ 進路のアドバイスはありますか?

420時間だけでもいいので、修了したらまずはすぐ現場に飛び込むことをおすすめします!

社会人経験がプラスに働けば良いのですが、社会人としてのこれまでの経験や立場の影響で、自分のプライドを捨てきれず、傲慢な授業になっている方をよくお見受けしますし、それはわざとやっているのではなく自然に身についてしまっているというのもあります。

専任以外の働き方もありますのでまずは応募し、現場に出て、そこから修正をするべきか、見極めていくことがよいかと思います。

当サイト人気スクール 420時間養成講座