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日本国内 日本語教師経験談

国内 専門学校 学習者に寄り添って楽しく学べる工夫を

kmさん・ 30歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 5年

総評

  • 国内の専門学校
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間: 5年(2018~2023年) 退職
  • 月収:20万8,000円

私が日本語教師を目指したきっかけは、高校生です。高校2年生の時、ヨーロッパの国から来た同じ年ぐらいの女の子が短期間ですが同じクラスで勉強することになりました。もともと英語や外国の文化が好きだった私はたくさん話しかけました。私の未熟な英語で意思疎通できるのは本当に嬉しかったのですが、ある日、彼女に「これは日本語で何ですか」と聞かれて答えると、彼女が本当に嬉しそうに「ありがとう」と言ってその言葉を使って他の人と話していました。私はその表情と、一生懸命日本語を話す彼女を見て、自分が英語で意思疎通できたときよりも嬉しかったのを覚えています。高校生でちょうど進路も考えなければいけなかった私は、外国人に日本語を教える仕事ってないのだろうか?と探しました。そうして見つけたのが日本語教師という仕事でした。

大学で副専攻で日本語教育を学び、大学院を修了してからすぐには日本語教師になることができませんでした。ですが、教育には関わりたいと思っていたので臨時職員として教育委員会で働いていました。1年間の契約だったのでそこで働きながら、日本語教師の求人を探し、ちょうど契約が終わるころのタイミングで教師の募集が出たので、応募を決めました。

日本語教師はシンプルに言えば日本語を母語としない人に日本語を教える仕事なのですが、新米の日本語教師だったころは「教える」ということを意識しすぎてたくさん失敗しました。とにかくまくしたてて説明して学習者を置いてきぼりにしてしまったり、学習者がやっと自分の話をしそうになっているのに待てずに教師が発話の機会を奪ってしまったりです。結果、時間をかけて準備して有益なことを教えたつもりでも分からないと言われてしまいました。そんなときにふと、高校生のころを思い出しました。学んでいる人からの質問や考えをしっかりと聞いて、教師はそれに答える。学習の主導権は学習者にあり、教師はヒントを出したり、学びのための道しるべを作ってあげたりする存在にならなければいけないのではないかと思いました。

一方的な授業では学生のやる気も、授業に参加しているという感覚も薄れ、結局実際の生活の場面で習った日本語が使えないということにも繋がります。もちろんカリキュラムは決まっているので100%学生主体というのは日本語学校では難しいですが、学ぶことに対しての必要性や、教室内での活動の意義を理解させ、楽しく学べるよう導くのが教師の必要なテクニックだと思います。つまり、いかに学習者が話したいと思う仕掛けが作れるか、発話を促す工夫が出来るかが大切だと思います。

私の場合は、できるだけ学習者の生活に沿ったシチュエーションを持って来るということを授業づくりのポイントにしています。例えば文法導入であれば、学習者が一度は経験するであろう場面を持ってくるようにしています。その場面を提示した後しばらく学生に考えさせるのですが、ほとんどが場面に合った適切な日本語では話せないので、そのときに「こういうとき何て言うんだろう」という学習欲が湧いたり、「いつもどう言えばいいか困っていたけどこう言えばよかったのか」という必要性を感じたりすることができます。あまり自分の生活や状況に身近でないことは「これ意味ある?」と思われがちです。そうならないために学習者たちとコミュニケーションを取って、彼らの状況を把握しておくことを毎日欠かさずしていました。

これから日本語教師を目指す方には「教える」というよりも、学習者との「やりとり」を重視して、相手の意見をしっかりと聞き、理解し、日本語や日本文化を伝えることを大切にしていただきたいと思います。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

他の日本語学校と比較はしましたが、地元の子どもたちへの異文化理解促進など、地元で日本語教師として働きたい気持ちが強かったので、比較はしたものの地元以外の日本語学校に行きたいとは、あまり思いませんでした。また、かなり激務であることを想像していたので、通勤のしやすさという点において立地は重視しました。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

ある国の学習者が、「明日は母国のお祭りなので休みたい」と言ってきました。もちろんその日は日本では平日ですし、体調不良や事故などの理由で休む以外は厳しく指導していました。また留学生という身分である以上学校の出席はかなり重要です。将来日本に住んで働きたい、日本で頑張りたい、そう思うなら日本の慣習や文化の中で生活しないといけないよという話を理解させるのは本当に大変でした。大半の学習者は気を落としながらも「分かりました」と言って学校に来るのですが、それでも休む学習者はいました。

日本の文化や生活に適応できない学習者へのサポートや、相手の国の文化を尊重しつつも、日本にいるなら日本のやり方で、ということを理解してもらうのも、日本語の理解が難しい相手だと非常に苦労します。ですが、日本語教師としては大切なことだとも思います。難しいですが学習者が理解していけるように時間をかけてサポートするのが大切だと感じました。

なぜこの専門学校を退職しましたか?

地元に貢献したいという理由で選んだ学校だったのですが、自分が未熟で、地元に還元できることが少ないと感じていました。そのためにももっと色々な場所で経験を積まなければならないと思い一度離れることにしました。現在はフリーランスとしてオンライン授業を受け持っています。

給与

給与:20万8,000円/月 ・専任講師 *正規雇用

給与は仕事内容や量に比べて高いとは言えないと思いますが、常勤講師の場合日本語教師のみでの生活は可能です。そんなに贅沢もしなければ毎月の貯金も可能だと思います。

私の場合は一人暮らしでしたが、外食も2か月に1度くらいはできていました。ただ、役職手当はあまり期待できないかなと思います。また残業が毎日のようにあり、帰宅しても夜遅くまで次の日の授業準備などしていたので、体力的に少しきつい部分があると思います。

給与の詳細 情報を読む...

月収 20万8,000円

  • 基本給:17万8,000円
  • 担任手当:1万6,000円
  • 役職手当:1万円
  • 通勤費:4,000円

待遇

  • 交通費
  • 有給
  • 雇用保険・労災保険
  • 社会保険
  • 健康診断
  • 年間昇給
  • 残業代
  • 休日出勤手当
  • 担任手当
  • 賞与:年2回 1ヵ月分

勤務時間

  • 1日:7時間40分・ 週5~6日勤務
  • 残業 1ヶ月 計30時間

長期休暇中の給与保証

  • 勤務している教育機関で給与が発生する仕事がある

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

Max20人のクラスを受け持っていたこともあったので、やはりクラス内でのいざこざが起こることもありました。気に入らない人ももちろんいますし、国同士が複雑な関係の学習者もいるので正直みんな仲良くというのは難しいです。

学習者は基本的にはもう大人なのでそこまで大変な事態に発展することも少なく、教師も個人間の問題には必要以上に関与しませんが、稀に授業中他の学習者に悪影響が出たり、本人が日本で留学を続けられなかったりなどの可能性がある場合は、教師も解決をサポートします。

私はそういう場合は一人で対処することなく、他の日本語教師や生活サポートの先生にアドバイスをもらいながら対応しました。問題がある学習者の互いの意見を聞きながら話し合いの場を持ち、学校ができる限りの手助けを行いました。複数の教師の目で見ることで自分の思い込みや偏見などもなく対応ができるので、複数で対応するのはとても大切だと思います。普段から学科内で先生方とコミュニケーションをしっかり取っておくのが非常に大切だと感じました。

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主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス15~20人

学習者層

  • 専門学校生

学生の主な出身地

  • 中国
  • ベトナム
  • ネパール

スケジュール管理で大変だったことは?

台風や大雨などの自然災害で学校が臨時休校になった場合の対応が大変でした。学生への連絡、翌日からの授業スケジュールの組み直しなど、担当が変わった他の先生への連絡など迅速に行わなければいけませんでした。今はICTや様々なデジタルツールを使い、連絡などもスムーズにすることができています。また、授業スケジュールも担当箇所をあまり細かく決め過ぎず大まかに組むことで、柔軟に対応できるようにしました。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • かわいいフリー素材集 いらすとや
    説明が必要ないほど日本ではおなじみの絵柄で、分かりやすくシンプルに描かれたイラストが特徴です。文型導入時の場面設定や口頭練習のときに提示する絵として使用しました。欲しいイラストの90%はあると思います。自分で絵を描くのが苦手な方にはおすすめです。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 初級日本語文法と教え方のポイント 対象:初級
    初級で出てくる文法の違いなどを説明してくれています。日本語教師を始めたばかりの人にも分かりやすく書かれているので勉強になると思います。私も初級の文型導入時に読んで参考にしました。
  • くらべてわかる日本語表現文型辞典 対象:上級
    中上級~上級向けの日本語文法の辞典です。似ている文型の違いを説明してくれているのですが、例文が豊富で非常に分かりやすいです。中上級〜上級を教える時に参考にしました。N1、N2レベル文法など違いをうまく説明できないと思っている方におすすめです。

就職活動

どのようにお仕事を探しましたか?

就職活動の際は、インターネット(日本語教育学会と日本語教師の集い)と地元新聞の求職情報欄をよくチェックしていました。

当時日本語教師の経験もなかったので応募できる求人は限られていました。具体的には、未経験でも可能であること、専任講師であること、学校が地元企業や大学と連携するなど地元への貢献を大切にしていること、通勤時間が長すぎないことを条件として考えていました。ある日、偶然見つけた地元新聞の記事に私でも応募可能で、考えていた条件に近い求人が掲載されていたので応募しました。

面接で何を聞かれましたか?

面接では、大学院でどのようなことを学んだのか、どんな日本語教師になりたいか、といったことを聞かれました。大学院では経営学を学んでいたので、自分が書いた論文について答えました。どんな日本語教師になりたいかという質問に対しては、とにかく経験がなかったので色々なことを全て吸収し、あらゆることに柔軟に対応していける日本語教師になりたいと答えました。

私は採用側としても少し関わったことがありますが、うまく教えられること、経験があることはもちろん大切なのですがそれと同じくらい、その学校の雰囲気や考え方に合うこと、その学校の価値観を理解して、共感してくれることも大事だと思っています。面接ではそういった部分を面接官に伝えられれば面接する側も、この方と一緒に働きたい!と思うのではないかなと思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本語教育学会
    大学からNPO法人まで様々な機関の求人が多いサイトです。
  • 日本語教師の集い
    海外の日本語学校や大学などの求人が多いサイトです。
  • 日本村
    国内日本語学校の求人が多いサイトです。

その他就職活動で有効な手段は?

  • 紹介
    日本語学校で日本語教師を探すとき、大学の先生に「教え子でいい学生さんや卒業生はいませんか」と情報を聞くことがあります。運が良ければ大学の先生から紹介してもらえることもあると思います。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 未経験者歓迎
  • 通勤時間
  • 雇用形態

応募時に必要とされた資格

  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

日本語教師全般に関する質問

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

室で学んだことを学校外で使っているのを見たり、聞いたりしたときが本当に嬉しく、やっていてよかったと感じます。私が初めて教えた学生で、その日は午前中授業、午後は近くの施設での活動でした。午前中は勉強し、午後その文型を使って施設の日本人と実際に話してみて「先生、話すことができました!」という嬉しそうな本人の表情を見ると、たくさん授業準備をしてよかったなという気持ちになります。もっとこういう成功体験を学生にさせてあげて、次の学びにつなげてあげたいと思います。

また、日本語学校を卒業して働いている学習者が頑張っていると近況を教えてくれたり、進学先の先生からとても優秀で素晴らしいといった声を聞いたりするのも、彼らの夢を実現するお手伝いができているんだな、本当によかったなと感じます。とてもやりがいのある仕事だと思います。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

新人の日本語教師の頃、全くうまく授業ができず「またこの先生の授業を受けるんですか?」と言われたことがショックで、やっぱり自分には無理なんじゃないかと思ったことがありました。ただ学習者は理由なくそういったことは言わない、必ず理由があると思いました。そこで、他の日本語学科の先生に自分の授業を見学してもらい、フィードバックを受け、もう一度授業をする。それを何度も繰り返し、少しずつ改善していきました。見学と指導をしてくださった先生の的確なアドバイスで私も少しずつ学習者から信頼してもらえるような授業ができるようになりました。

今後どのような日本語教師になりたいですか?

ICTやデジタルツールを日本語教育に活用できる教師になりたいです。教師の負担はより軽く、学習者はもっと楽しく効率よく学ぶことができるような授業が提案できるようになりたいと思っています。デジタル化する部分とアナログの必要がある部分を見極める必要があるとも思うので、もっとオンライン授業や海外経験などを通して勉強していきたいと思います。

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