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海外日本語教師経験談

韓国 釜山 大学(2021年) 日本語教育以外の知識と経験が自信になる

👩 yukopusan21さん・ 52歳

総評

  • 韓国 釜山 大学
  • 雇用形態:常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
  • 期間:17年 (2004~2021年) *現在も勤務中
  • 月収:25万円 (270万ウォン) *なんとか生活できる
  • 勤務時間:1日8~12時間 週4日勤務   *残業:残業という概念はない。週12時間の講義の伴う業務・その他の業務が終われば退勤できるし、週末でも行事があれば出勤する

私は現在大学の日本語学科で教えています。日本語学科の学生はもちろんですが、それ以外の学科でも日本に興味があって勉強している学生が驚くほどたくさんいます。ニュースで見聞きする日韓関係の悪さは、あまり体感することはありません。

授業は週12時間で、会話と作文を教えています。学期中は時間があまりないため、主に休み中に教材・副教材・パワーポイントの作成を行っています。

授業以外には、スピーチ・ディベート・演劇といった大会に出場するための指導もしています。私自身はこのような大会に出た経験がないので、最初は出来るかどうか不安でしたが、学生と意見交換しながら一緒に準備をしていく中で要領を得てきて、入賞も出来るようになりました。指導のせいで夏休みの間も出勤しなければなりませんが、忘れられない、とてもいい想い出になっています。

近年、韓国では日本に就職する学生が増えています。その指導をするに当たって、私自身も一般企業に勤めていた経験があるので、そのことが大いに役に立っています。

日本語教師として働き始めた当初は、周りは日本語教育専攻者ばかりで、引け目を感じることが多かったのですが、大学教員としては日本語以外にも、社会に出る準備として、備えなければならない素養や常識を教えなければならないということを痛感しています。今ではすこし遠回りしたことが、結果的には良かったと考えています。

他の学校の先生方でも、歴史や人類学などを専攻した方もいらっしゃいますが、とても考え方が柔軟で、時には斬新な授業をなさるのを見て、感嘆することも多くありました。

もちろん、日本語教育の知識は必須です。しかし、将来日本語教師になりたいと思っていらっしゃる方々には、日本語教育以外の、色んな経験や知識があるほうが、学生達に興味を持ってもらえるし、自分の引き出しも増えて、より面白くて新鮮な授業が出来るということをお伝えしたいです。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

中学の時から日本語を学んでいたり、中には大学入学時にすでに日本語能力試験のN1を取得している学生もいます。交換留学に行って来くるとその後の大学の専攻授業では物足りないと感じる学生にとって、どんなことをしてあげたらいいのかが、長い間の私の悩みでした。

そのために翻訳の勉強を一緒にして見たり、校内のスピーチ大会を企画してみたり、他校の先生方と協力し交流会やてワークショップ、ディベート大会の運営にも携わりました。その度に新しい仕事や作業、そして勉強することも増えて、授業との両立が大変な時期もありました。

しかし、恐らく日本語教師をしていかなったら、このような勉強をすることもなかったし、体験をする事もなかっただろうと思います。

学生のためにと思って努力したことが、結局自分のためにもなっていることを感じています。

給与

月収:25万円 (270万ウォン)
なんとか生活できる

外国人教員は契約制で、契約書を1年ごとに交わさなければならないので、雇用が安定していません。特に今年から18歳人口の減少が始まっていますので、いつ契約を切られるかわからない状態です。

勤務開始から10年までは2年に一度、1万円の昇給がありましたが、それを過ぎると昇給しなくなります。物価上昇率を考えると、むしろ減給になっている感覚です。韓国人教員と比べて業務は半分ではないのに、給料は半分以下、一番高給な教授とは3倍もの差があるので、相対的に不満を感じる場合は多々あります。

ただ、健康保険と私学年金に加入できますし、家族がいる人は家族手当や、子供の教育費、同校に子女が入学した場合、授業料全額免除などの待遇はあります。

現地では大卒の初任給の平均と同じくらいの給料です。同年代の同学歴者に比べるとかなり少ないと言えるでしょう。ボーナスもありません。その代わりに長期休暇には4週間の休暇が与えれらますので、日本に帰省したり、長期の旅行に出かけられることは、会社員では得られない大きなメリットだと思います。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:25万円

月収の内訳

  • 基本給:25万円
  • 年俸契約:15,000円/年
  • 住宅手当:38,000円/月

待遇

  • 有給
  • 健康保険
  • 健康診断
  • 私学年金
  • 本人・家族教育費

雇用形態

  • 常勤講師 *非正規雇用・フルタイム

勤務時間

  • 1日8~12時間 週4日勤務   *残業 残業という概念はない。週12時間の講義の伴う業務・その他の業務が終われば退勤できるし、週末でも行事があれば出勤する

学校が定める学生の長期休暇の有無

  • 夏休み:9~10週/冬休み:9~10週

長期休暇中の給与保証

  • 仕事はないが、給料は支給される

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

講義の時間以外は基本的にはフリーなので、自己管理が大変です。私は新学期に時間割を決める時に、なるべく午前中に講義を入れてもらうようにして、朝から出勤しなければならないようなスケジュールにしておきます。そうすれば講義の後はデスクに座ることになるので、自然と仕事を日中に終えることが出来ます。

金曜日には必ず、次の週のスケジュールを立てて、各曜日にしなければならないことをリストアップしています。今はそれが習慣になっていますので、特に大変なことはありませんが、始めた当初は、どの作業にどのくらいかかるか分からないので、夜遅くまで作業することもありました。

また、新しい科目を担当した時には、やはり時間内に終わらず、残りを課題にしなければならなくなり、予定がくるってしまうことも…。

今は一度使った講義のデータは全て保存してあるので、それに手を加えて他の科目に応用しています。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス15~25人

学習者層

  • 大学生

スケジュール

月曜日
  • 10:00~12:00  
    初級作文2コマ
  • 13:00~15:00  
    中級会話2コマ
  • 15:00~17:00  
    作文添削・次回の授業準備
  • 17:00~18:00  
    LMS確認・業務連絡確認
火曜日
  • 10:00~12:00  
    授業準備
  • 13:00~15:00  
    中級会話2コマ
  • 15:00~17:00  
    初級作文2コマ
  • 17:00~18:00  
    作文添削
水曜日
  • 10:00~12:00  
    基礎会話2コマ
  • 13:00~15:00  
    研究会・勉強会指導
  • 15:00~18:00  
    LMS確認・業務連絡確認・授業準備 (必要に応じて残業)
木曜日
  • 研究日(用事がなければ自宅で仕事をしても構わない日)
金曜日
  • 10:00~12:00  
    ビジネス日本語会話2コマ
  • 13:00~17:00  
    課題・レポート添削 (必要に応じて残業)
休日
  • 土曜日:大会や行事がある時以外は休み
  • 日曜日:一日休めます

韓国で日本語を教える前に準備すべきだったことは?

文法書はもちろんですが、授業に使う活動集のような書籍を日本で準備して来た方がいいと思います。こちらでは韓国の出版社の物はたくさんありますが、日本人教師が使えるものはあまりありません。

自分一人で考えても中々いいアイデアが浮かばない時には、出来るだけたくさんの本があったほうがヒントになると思います。

準備しておいてよかったと思うのものは、着物と、伝統遊びの道具です。日本文化の行事を任されることが多いので、とても役に立ちます。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • みんなの教材サイト
    主に初級のドリル練習のアイデアがたくさんある。そのまま使えるものは少ないので、自分でアレンジして使っている。
  • まるごと
    会話強化のための教材なので、素材作成のヒントにしている。

教案作りで参考にしている書籍は?

就職活動

この大学で働くきっかけ・決め手は?

私は日本ではなく、韓国で大学院に進学しました。韓国では初め学院で働いていましたが、待遇や勤務時間などから長く出来る環境ではないと判断し、修士号を取って、大学に就職したいと思ったからです。

修士を終えて、まず短大で非常勤と専任講師をそれぞれ1年経験した後、大学院の指導教授の勧めで現在の大学に勤務することになりました。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

まず、この大学で教えたい理由を聞かれました。私は、新しい大学なので、新しいプロジェクトや、色んなことに挑戦しやすい環境だと思っているからだと答えました。

また、韓国のどんなところが好きなのか、韓国人の学生に対してどう思っているか、どのくらい勤務する予定なのかといった質問でした。他には教員になる前の経歴や家族のことについても質問がありました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

日本語教育の需要は大いにあります。大学でも日本語の教養科目は人気です。

中学・高校生は日本文化への興味から日本語を学び、大学生は将来の選択枠を広げるために、そして社会人にも一定数、日本語学習を趣味や業務上の理由から継続的に学びたいと思っている人は多い印象です。

最近では大学卒業後、日本就職を目指して一から日本語学習を始める人が目立ちます。

この大学で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日本語教育能力試験には合格しておいた方がいいと思いますが、大学ではほとんど要求されません。それよりも大学院卒なのかどうかが最も重要というか、最低条件です。修士は必須ですが、最近は博士号がなければ、韓国の大学に就職するのは難しいと思います。

学部は日本語教育ではなくても構わないようです。実際に現在釜山で大学教員をしている人の半分近くは学部は違う人も多く、院も違う専攻の人もいます。

職歴としては、これからはIT関係の経歴があると大変な強みになると思います。日本のIT企業への就職が最も盛んなので、今後求められる人材になることは間違いありません。

国選びで重視した点

  • 日本との距離
  • 渡航経験があった
  • 食事が合う

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 日本語教師が飽和状態である

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 給与・待遇
  • 通勤時間
  • 学校の将来性

応募時に必要とされた資格

  • 修士課程修了
  • 韓国の他大学での教授経験

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

面接方法

  • 現地にて実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

一般企業での業務に行き詰まりを感じ、将来について悩んでいたころ、1つ上の先輩が海外で日本語教師になると言って退職しました。それを見て自分も中学校や高校の時に国語が一番得意だったことと、漠然と憧れていたけど諦めていた夢が教師だったということを思い出し、チャレンジしてみることにしました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学生の実力が上がっていくのを感じる時です。もちろん、私の授業のせいではなく、本人の努力の結果なのですが、学期の終わりや卒業した後などに、「先生の授業、面白かった」とか「先生の文法の説明が一番分かりやすかった」、「先生の授業が今仕事で役に立っている」という言葉を聞くと、とてもやりがいを感じます。

また、授業以外にも日本語関連の大会に出場するために、一緒に準備しながらご飯を食べたり、夜遅くまで学校に残って練習したりしたことは、共に時間を過ごしたかけがえのない思い出になっています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

学生の時から日本語教師を目指すのであれば、日本語教育を専攻したこと自体はとても大きな強みになります。

ただ、それ以外に、自分も外国語をマスターするために努力した経験は必須だと思います。
学習者が外国語学習においてどんな点で苦労するかなどが実感できるからです。また、日本の歴史、文化に関する知識も必要です。また、芸能情報にも詳しい方が学生達と仲良くなれます。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

社会人の方は、社会での業務経験自体が強みになります。学生は経験が豊富な先生に教えてほしいと思っているからです。最近は日本人が文法を教えなくても、独学で学習する方法が発達しています。

それよりも日本人教員が求められるのは、多様な知識と経験に基づいて様々な話題を提供できること、そして何よりも包容力だと思います。

韓国で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

韓国は現在、大学に関しては18才人口の減少が始まっており、人文系の学科では募集定員を下回っている状況で、今後日本語だけでなく、大学教員の求人は減ると予想されます。

しかし、ここ数年の日韓関係の悪化により、日本商品の不買運動や、コロナ以前は日本旅行自粛といった雰囲気も見られましたが、実際にはまだまだ日本語人気は衰えていないと感じています。日本就職を支援する機関での需要は増えています。

韓国は日本とも近く、物価差もなく、食べ物も日本人の口に合うものが多く、美味しいです。日本語を話す人も多いので、初期の定着も比較的スムーズですし、週末を使って日本に一時帰国することも出来ます。言葉も比較的習得しやすいので、海外勤務を試してみたい方には最適な国ではないかと思います。

アジアの国・地域別 経験談

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