元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

日本語教師 経験談 タイの大学

楽しい授業は諸刃の剣

公開:2019/11/20

ルンコー(男性・52歳) 
日本語教師歴 16.5年 (2002年~2019年)
*現在は他業種に転職
資格・課程 大学卒業資格のみ
タイの大学
経験詳細
  • 地域:ナコーンパトム
  • 月収:約12万円(3万3000タイバーツ)
    それだけでは生活は難しい
  • 専任講師(正規雇用)
  • 15年(2004年~2019年)
    *現在は退職

私が日本語を教えた大学はタイでは上位レベルに入る国立大学でしたので真面目な学生が多く、勉強しない学生に日本語を教える苦労はありませんでした。

担当科目は日本語初級会話と聴解、中級会話と聴解、初級レベルの作文、ビジネス日本語などです。

給与は当初1万5千バーツ(5万円強)とかなり安かったですが、2年後には3万バーツ強(12万円弱)になりました。

土、日は基本休みです。月曜から木曜までの4日間に授業を詰め込み、金曜日は宿題のチェックや次週の授業の教案作りというスケジュールです。

授業はタイ人の先生方数名と日本人の先生数名で担当していました。

タイ人の先生方は文法を中心にした筆記科目中心、日本人の先生は会話を中心とした実践的な日本語を中心に教えるという割り振りです。

日本語学習者の多くは日本のアニメや歌手など日本のサブカルチャーが好きで学習している学生が多いのですが、学校の成績が卒業してからの進路に大きく影響するので、成績の良し悪しをとても気にしています。

ここでは文法を中心とした筆記科目の学習負担が大きかったため、「会話」や「聴解」という科目には大学としてあまり熱心でないという印象を受けました。

また、それが嫌で日本語の学習を止めてしまう学生も少なくありませんでした。

そこで私が心がけたのは学生に勉強という意識を極力持たせないような「授業の楽しさ」です。

会話パターンの練習例もコメディー的要素の強いものにしたり、早口言葉、しりとり、連想ゲームなどをして学生に日本語を楽しんで聞き、話すことを促しました。

手前味噌ですが、楽しさを通じて学生は日本語を話す、聞くことに少しづつ慣れていってくれたのではないかと思っています。

ただ、この教え方は日本語を語学学問として専門的に勉強したい一部の学生や一部のタイ人の先生方の間では真面目に教えていないという印象を持たれていたようです。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

タイ人の先生方と日本人の先生方の間で仕事上のコミュニケーションがなく日本語を教える上で問題の共有化がはかれなかったことです。そのため、大学の日本語教育の方針やポイントが十分把握できず戸惑いました。

また、学生も日本語の学習を続ける上で色々な問題を抱えますが、タイ人の先生方と日本人の先生の間での会議やミーティングが皆無なので、学生の個々の問題に応じた対応ができなかったりしたことは残念です。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

家族があるので、日本語教師だけの給与では家計を維持することができず、そのため副業を始めましたが、「日本語教師の仕事」と自分の副業を両立させるのは時間的にも体力的にも無理がありました。

また、日本語教師の副業も報酬は良くなく、そのため日本語とは関係ない副業をしていましたが、それが学校側から見れば教師らしくないと捉えられ、暗に退職を勧められたことも理由の一つです。

給与・待遇

月収 月収:約12万円
月収内訳
  • 基本給:7万円
  • 住宅手当:2万8000円
  • 交通費:1万500円
基本労働時間 1日8時間 週4日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇
  • 交通費
  • 保険(社会保険)
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居費用負担(一部)
  • ビザ申請費用(一部)
クラスの長期休暇
  • 前期休み:約70日
  • 後期安み:約30日
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される

給与は日本人がタイ人と同じ生活レベルで一人生活するなら問題ありませんが、日本料理は現地では値段が高く、たまに恋しくなって食べに行くとか、ストレス解消にスポーツジムに通う、友達と日本の居酒屋に飲みに行くなど、ちょっとした贅沢をすると生活が苦しくなります。

結婚して家族ができると到底家計を維持できる給与レベルではありません。

賞与もなく、勤続年数に応じて昇給という制度もないので、この仕事で将来的に経済的な展望を持つのはかなり難しいです。

給与から天引きされる社会保険で医療費は安いですが、指定された病院でしか使えない制度でしたので不便でした。私の場合はその指定病院が自宅からかなり遠かったので使ったことはなく、自宅近くの病院に行きましたが、タイは医療費が高いのでそれも経済的負担になりました。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

大学で教える前に私立商業高校で非常勤で日本語を教えていました。

1コマ50分150バーツ(500円)の授業が1週間5コマ程度で1か月の給与3000バーツ程度でしたので、この国立大学の給与と比べるとかなり安かったです。

また、非常勤ですから当然保険もなく、ビザ申請代金も全部こちらで負担しました。ビザ申請手続きは学校がしてくれましたが、手続きミスで後日オーバーステイが発覚しかなりの罰金を課せられこれも私が全部負担しました。

これと比較すると国立大学は給与、待遇面はしっかりしていると思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス20~30人
学習者の年代 大学生
1日の時間割 月曜日
  • 8:30~10:15  
    初級会話クラスを2コマ
  • 12:10~13:50  
    中級聴解クラスを2コマ
  • 13:55~14:45  
    中級会話クラスを1コマ
火曜日
  • 10:20~12:05  
    初級作文クラスを2コマ
  • 13:00~14:45  
    中級会話クラスを2コマ
  • 14:50~15:40  
    初級聴解クラスを1コマ
水曜日
  • 9:25~11:00  
    初級聴解クラスを2コマ
  • 12:10~13:00  
    中級会話クラスを1コマ
  • 14:50~16:30  
    初級会話クラスを2コマ
木曜日
  • 8:30~10:15  
    中級聴解クラスを2コマ
  • 11:15~12:05  
    初級聴解クラスを1コマ
  • 13:00~14:45  
    初級作文クラスを2コマ
金曜日
  • 次週の授業の準備や宿題などのチェック
休日 土日

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

特に会話試験のスケジュール管理がたいへんでした。

限られた時間の中で、一人一人テストをし評価していくのですが、タイの教育システムが減点式評価なので学生が失敗を恐れ、なかなか積極的に喋らないのでいつもテスト時間が大幅にオーバーし、指定のテスト時間内で全員のテストが終わりませんでした。

そのため、自身の授業スケジュールと個々の学生の授業スケジュールの空いている時間を調整してテスト時間を捻出したり、積極的に話さない場合は減点という加点方式に評価を変えたり、指定のテスト期間の1週間前からテストを開始するなどの工夫をしました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • 日本語ネット
    会話練習のゲーム・活動のアイデアを考える時や会話練習の際、どの文法を使うか決める時によく活用しました。
  • NihonGo
    会話教案を作る際、ここに掲載されている資料やイラストを参考に実際使う教案を考えました。
参考になる書籍
  • おたすけタスク初級日本語クラスのための文型別タスク集    
    対象者:初級
    文型別に様々なゲームやコミュニケーションが取れるカードやシートがあるので、それを使って、クラスの中でグループを作り、会話練習をしました。
  • クラス活動集101―『新日本語の基礎1』準拠    
    対象者:初級
    シチュエーション別、文型別や文法別に使える絵があるので、それを使って会話教案を作成したりしました。
    またその絵をヒントに自分で絵をアレンジしたりして、シチュエーションを変えた教案を作成もしました。
  • 続・クラス活動集131―『新日本語の基礎2』準拠    
    対象者:初級
    シチュエーション別、文型別や文法別に使える絵があるので、それを使って会話教案を作成したりしました。
    またその絵をヒントに自分で絵をアレンジしたりして、シチュエーションを変えた教案を作成もしました。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

日本語教師の仕事が目的でタイに行った訳ではありませんので、教師の仕事に関してタイに行く前に「これを準備した」ということはありません。

日本語教師の仕事を始めてからも準備しつつ試行錯誤を繰り返して教え方を確立していきましたので、「何かを準備するべきだった」という概念はありませんでした。

就職活動

国選びで重視した点
  • 親日国
  • 渡航経験があった
  • 物価の安さ
現地における
日本語教師の需要
  • 人気があり、一定数の学校で求められている
  • 日本語教師が飽和状態である
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 学習者が学生
応募時に
必要とされた資格
大学卒業資格
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日本のアニメや歌手などのサブカルチャーは大人気で、また日本企業も多く進出しておりタイ企業より給与の高い日系企業で働きたいタイ人は多いです。そのため日本語はタイ人には人気がります。さらに日本に遊びに行くため、日本語を勉強したいという若者も多く日本語教師の需要はかなり高いです。

ただ、政変がよく起こる国であり、現在は軍事政権で、日本企業が今後の投資拡大に懸念を示しているため、日本語を使う仕事の雇用が現在頭打ちです。それと並行し日本語教師に関する需要も横這い状態というのが現状です。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

  • 大学では何を勉強していましたか?
  • 大学を出てからどんな仕事をしていましたか?
  • タイにどのくらい住んでいますか?
  • 日本語を教える何か資格はありますか?
  • 日本語を教えた経験はありますか?
  • どのくらいこの仕事を続けるつもりですか?
  • 日本の出身地はどこですか?

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

大卒以上の資格がなければ、この国では高校や大学などの正規教育機関で日本語教師になることは非常に難しいです。

また、近年は大卒ではなく大学院卒の語学教育の専門教育を受けた者しかタイの大学では日本語教師になれない傾向が強まってきています。

また、現地で教師を続けながらも、語学教育研究の論文を書くとか、日本語教育セミナーにも参加し日本語教育のテーマ研究をする人材が求められています。

従って現在求められる人材は大卒以上の教員資格保有者か語学を専門に勉強した者が普通になってきており、更に大学院卒の資格を持っていればかなり有利になります。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • 日本語教師の集い
    国内外の日本語教師の求人情報が掲載されている。
  • カモメアジア転職
    アジア各国で働きたい人の色々な求人情報の中で、日本語教師や日本語教師経験者の求人もある。
  • Career Link
    東南アジアの求人サイト。日系企業の求人が中心ですが、日本語教師の求人もあります。
その他求人情報
  • 国際交流基金バンコク日本文化センター:
    施設内の図書館付近の掲示板に随時求人が貼られている。
  • Daco(現地のフリーペーパー):
    求人情報ページの中に日本語教師の求人もある。
  • 紹介(現地の日本語教師):
    現地在住日本人コミュニティーの中に日本語教師がいるので、時々紹介される。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

高校で日本語教師をしていましたが、現地の日本人コミュニティーの中で知り合った大学日本語教師が家庭の事情で急遽、日本に帰国することになり、後任の依頼をされました。

バンコクから離れた地方大学なので、日本人が誰も行きたがらず困っているということで私に話があり、面接に行くと、後任がすぐ決まらないと授業の運営に大きな支障をきたすということで、すぐに採用が決まりました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学を卒業してから日本の某企業で働いていましたが、激務で心身不調になり退職。

療養を兼ねてタイに滞在している時、知り合ったタイ人の中に学校経営をしているオーナーがいて、日本語を教える日本人先生がいないので、やってほしいと頼まれて始めたのがきっかけです。

教師経験もなく、そのようなキャリアでもないので、最初はとても不安でした。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

多くの学生と知り合え、彼らが卒業してからも、どこかで偶然会った時、親しみを込めて笑いながら「先生!!」と駆け寄ってきてくれ一緒に写真などを撮った時などは、その人間の中で自分が価値ある人間だったと思え、やってよかったと思いました。

正直、日本語を話せ、使えるようになってくれるのは嬉しいですが、それ以上にタイ人と人間としての関係性が作れたと感じれる時は日本語教師をやってよかったと思いました。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

教師はこの国では社会的ステータスは高いものの、給与、報酬は安く、更に拘束時間が長いので経済的に将来の展望がもちにくいというのが日本語教師を止めた大きな理由です。

特に家族ができると日本語教師だけの収入だけでは家計を到底、維持できません。それでどうしても副業などをしなければならなくなります。

日本語関係の翻訳や勤務時間外の日本語教師の仕事であれば、本業の大学でもキャリアアップを兼ねて日本語関係の仕事をしていると認めてくれますが、勤務時間外でも日本語とは全く別方面の副業をすると「日本語を教えることに熱心でない。」と受け止められます。

また、タイは階級社会ですので、先生方の中でもヒエラルキーがあり、授業方針でも、教え方でも自分より立場が上のタイ人先生に意見を言ってはいけないという不文律があります。

意見を述べ議論したくても真剣に取り合ってくれない時などに辞めたいとよく思いました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
色々な求職サイトや求人情報で日本語教師の職を求めるのも一つの方法ですが、自分が教えたいと思っている国で教師経験のある人を見つけて話を聞くなり、アドバイスを受けることが大切だと考えます。

そういう人は、どういうところに行けばいい求人情報があるかとか、日本では分からない現地の事情や慣習なども知っているので、そういうところから日本語教師になる方法を探していくのがベストだと思います。

【社会人の方へ】
タイでも最近は大卒の資格を持つ日本人というだけでは、日本語教師になるのは難しくなってきていますので、日本語教師養成講座に通い日本語教育の専門資格を持つことが大事だと思います。

その上で、求人サイトで職を探したり、人材エージェントに登録して職を探せば、自分の条件に合った日本語教師の仕事を紹介されると思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

タイは親日国で、タイ人も親しみやすい気質なので教えること自体に大きなストレスは感じません。

ただ学生の勉強の仕方が、先生に言われたことだけをやる、日本語の勉強でもいい成績をとるために一生懸命勉強するという学習の仕方ですので、いかに自主性を持たせるか、問題意識をもって学習させるかという部分で苦労するかもしれません。

そこで強制したり、叱ったりすると萎縮してしまう傾向が強いですので、「楽しい授業」を心がけることでそこは乗り切れると思います。ただ、それもやり過ぎると不評になりますので、バランスをとることが大事です。

最後に、この国で日本語教師の仕事の給与は決してよくはありませんので、一つの経験としてこの仕事をやるのか、続けるのならどういう形で将来やっていくのかを考えていかなければならなくなるでしょう。

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