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海外日本語教師経験談
マレーシア クアラルンプール 日本語学校(2025年) 日本留学という夢をサポートしていました

吉田佳乃さん・
53歳
総評
- マレーシア クアラルンプール 日本語学校
- 雇用形態:常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
- 期間:18年 (2007~2025年) *退職
- 月収:20万円 (6,000リンギット(RM)) *現地で生活をするのに十分
- 勤務時間:1日8時間・週5日勤務 *残業:1ヶ月 計60時間
- 日本語教師養成講座420時間修了 YAMASA言語文化研究所
私が日本語教師を目指したのは、外国に住みたいという不純な動機でした。私は子供のころからなんとなく外国で暮らすことにあこがれていたのです。
私は中学を卒業してから工場などで働いていましたが、27歳の時に定時制高校に進学しました。卒業後は大学に進学し、大学2年の時には韓国に1年間交換留学しました。これが私の初めての海外生活経験でした。大学3年の時には日本語教師養成講座に通い、日本語教育能力検定にも合格しました。大学4年の時に、その学校で少しだけ非常勤講師をしていたのですが、ある企業に派遣されてマレーシア人男性(今の夫)と出会いました。私がマレーシアで仕事を探したのは、彼がマレーシアへ帰国したからです。
私は35歳の時にマレーシアの日本語学校で働き始めました。その学校の学生たちは日本の大学や専門学校への進学を目指しています。日本の大学に入るためには12年以上学校で教育を受けていることが必要です。しかし、マレーシアは小学校が6年間、中学・高校が合わせて5年間なので、そのままでは日本の大学に進めません。日本の大学に入るためには「日本留学準備教育課程」で日本語だけでなく、数学や理科、社会といった科目も勉強することが必要になります。私が勤めたのは、この「日本留学準備教育」を行っている学校でした。
私はほぼ未経験だったので、最初はとても苦労しました。教育担当の先生に教案を見せてはダメ出しをされ、修正する日々でした。当時は教室にプロジェクターがなかったので、紙の絵カードや漢字カードを使っていました。授業は1コマ90分で、週10コマ担当していました。宿題も山のように出し、すべてが正解になるまで何度でも提出させるという学校でした。成績の悪い学生に対する補習もありました。当然学校にいる間だけでは授業準備が終わらず、家に帰ってから深夜まで教案を作成していました。土曜日にも学校へ行って、授業準備をしていました。
受験クラスの担当になると、進路関連の仕事も増えました。学生は日本の学校のことを知りませんから、こちらが学生の条件に合う大学や専門学校を調べて提案することが多いです。学生に募集要項の内容を説明し、必要書類を用意させます。高校の成績証明書や卒業証明書を英語やマレー語から日本語に翻訳するのも教師の仕事でした。志望理由書が必要な場合はその添削をし、面接の指導も行いました。合格したら、入学手続きや留学ビザの申請をしなければなりません。ここでも書類の翻訳などのサポートをしました。
このように、日本留学準備教育課程は授業以外の仕事が多く、本当に大変です。ここで働いていた間、ずっと家でも仕事をすることが当たり前になっていました。ちなみに、残業手当や担任手当はありませんでした。学校には教師を増やしてほしいとか、授業以外の仕事(出席率の計算や成績表の作成、行事の準備など)は事務の人にやってほしいと何度も伝えましたが、状況は変わりませんでした。ストレスも多く、何度やめたいと思ったかわかりません。
結局、私はこの学校で18年間常勤講師として働き続けました。それは何といってもやりがいがあったからです。学生が志望校に合格した時には、それまでの苦労が吹き飛びます。SNSで卒業生が留学生活を楽しんでいる様子や、日本の大学や専門学校を卒業して活躍している様子を見るのは何よりも嬉しいことです。そんな時は、彼らの夢の実現に少しでもかかわることができて本当に幸せだと感じます。今は退職してのんびりと過ごしていますが、また日本語教師の仕事をしたいと思っています。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
成績の悪い学生をどうするかということがいつも悩みの種でした。
海外から日本の大学や専門学校に進学する場合、JLPT(日本語能力試験)N2以上またはEJU(日本留学試験)200点以上が必要です。明らかにその見込みのない学生をどうするか。この学校には留年という制度はありません。学生には留学をあきらめたほうがいいと言いたいのですが、学校からは経営上の問題で退学者を出すなというプレッシャーをかけられます。
退学する学生もいますが、成績不振のまま卒業し、留学できないという学生も残念ながらいました。
なぜこの日本語学校を退職しましたか?
仕事が大変なのに、給料はそれほど高くありません。教師を増やしてほしいとか、授業以外の仕事は事務の人にやってほしいと何度も言いましたが、改善されませんでした。仕事を持ち帰るのが当たり前で土日も仕事という生活をこれ以上続けたくない、もう少しのんびりしたいと思うようになり、退職しました。
給与
現地で生活をするのに十分
マレーシアでは「常勤で給料が5000リンギット(約20万円)以上」でなければ、日本語教師に就労ビザが出ません。ですから、日本人の日本語教師を募集している学校なら、どこでもそれ以上はもらえるはずです。
クアラルンプールでコンドミニアムを借りるのに3000リンギット以上かかりますが、ほかの生活費が安いので、十分生活できると思います。私の学校の先生は、ほとんどコンドミニアム(1ベッドルームまたは2ベッドルーム)を一人で借りています。家賃を安くしたければ、ハウスシェア(コンドミニアムをほかの人とシェアする。自分のベッドルームはあり)か、間借り(オーナーの家の一部屋を借りる)がいいと思います。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:20万円
月収の内訳
- 基本給:19万3,000円
- 交通費:7,000円
待遇
- 有給
- 交通費
- 賞与(給与1ヶ月分)
- 医療保険
雇用形態
- 常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
勤務時間
- 1日8時間・週5日勤務 *残業 1ヶ月 計60時間
長期休暇中の給与保証
- 仕事はないが、給料は支給される
仕事のかけもち状況
- かけもちしていない
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス15人
学習者層
- 学生(高校を卒業し、日本留学を目指す人)
マレーシアで日本語を教える前に準備すべきだったことは?
マレーシアに持ってきてよかったものは、浴衣です。マレーシアでは毎年盆踊り大会が行われますし、日本文化関連のイベントもあるので、浴衣を着る機会があります。盆踊りの時には学生に浴衣を着せるので、浴衣の着付けも習っておいてよかったです。
採用時に英語力は問われませんでしたが、できるに越したことはありません。私の学校は授業では英語を使いません。しかし、進路の関係で保護者と面談する機会があるため、ある程度の英語は話せたほうがいいです。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『かくなび』
漢字の書き順を大きなムービーで見せてくれます。 私は漢字の導入の時にこれを見せていました。 漢字の授業を担当する方にお勧めです。 - 『日本語NET』
日本語教育に関する様々な情報が載っています。 「日本語教師になる方法」も載っているので、これから日本語教師になりたい人にも役立つサイトです。 『みんなの日本語』『げんき』などの教案は、日本語教師になりたての人には大いに参考になるでしょう。 私の場合は、N2やN1の例文を検索し、それを参考に自分の例文を作っていました。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『日本語文型辞典改訂版』
対象:
中級・上級
文型の説明、例文が豊富に載っている本です。 中級以降になると似たような意味の文型も多く、使い分けを説明するのが難しいことがあります。私は文型の説明や例文を考える際にこの本を参考にしていました。 中級以降を教える方には必携の本です。 - 『どんな時どう使う日本語表現文型500』
対象:
中級・上級
中上級の文法の説明が学習者向けにやさしいことばで書かれています。 同じような意味の文型がまとめてあるので、使い分けを教える際に役立ちます。 私は例文を作成するときにも参考にしていました。 中上級を教える方にはこちらもお勧めです。
就職活動
どのように就職活動を行いましたか?
アルクで求人を探しました。「日本村」というサイトが一番有名ですが、当時はそのサイトを知らなかったのです。この学校のほかにもう一校応募しましたが、そこもアルクで見つけました。そちらは東京で模擬面接があったので、その準備をしました。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
面接では経験の有無、なぜマレーシアを選んだのか、なぜこの学校を選んだのかを聞かれました。私はマレーシア人と結婚予定で、長く働きたい旨を伝えました。経験がほとんどなかったにもかかわらず採用されたのは、「長く働く」という点が評価されたのだと思います。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
マレーシアは親日国家で、アニメをきっかけに日本語に興味を持つ人が大勢います。また、日系企業も多く進出しているので、日本語ができれば就職に有利ということで勉強する人もいます。
特にクアラルンプールやその周辺には日本語学校がたくさんあります。ただし、就労ビザを取得するためには3年以上の経験が必要です。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『 NIHON MURA』
日本語教師の求人で最も有名なサイトです。「海外国別リスト」で希望の国の求人を見ることができます。 -
『 日本語教師案内所』
養成講座の情報や、日本語教師事情が得られるサイトです。「海外事情」の4ページ目に「マレーシアで日本語教師になるには?」があります。
国選びで重視した点
- その国の人と結婚予定だったため
現地における日本語教師の需要・将来性
- 人気があり、一定数の学校で求められている
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 通勤時間
応募時に必要とされた資格
- 日本語教師養成講座420時間修了
- 日本語教育能力検定試験合格
- 大学 日本語教育主・副専攻
就職 選考方法
- 書類
- 面接
面接方法
- skypeやzoomなどのインターネットツールを使用して面談
日本語教師全般に関する質問
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
卒業生が日本留学を楽しんでいる様子や卒業後に活躍している様子を見聞きした時に、日本語教師をやってよかったと実感します。
私の教え子の中には、日本の大学でファッションデザインを勉強し、ファッションデザイナーとして活躍している人もいます。また、日本の専門学校で製菓の勉強をし、マレーシアに帰国して自分の店を開いた人もいます。
学生の夢の実現に携わることができるのが醍醐味です。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?
進路関係の仕事が大変で、辞めたいと思ったことが何度もあります。進路指導は学生の人生を左右します。志望校選定が悪かったせいで、私の志望理由書の添削が悪かったせいで、あるいは面接指導が悪かったせいで不合格になったらどうしよう、などと不安やストレスに押しつぶされそうになることがありました。
マレーシアで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
マレーシアは多民族国家で、マレー系、中華系、インド系などの人がいます。そのため、母語もマレー語、英語、中国語、広東語、タミル語など様々です。一つの国で様々な母語の学生に教えることができるのがマレーシアの魅力だと思います。
また、比較的治安が良く、英語も通じる親日国家であるため、生活はしやすいです。
今後どのような日本語教師になりたいですか?
今後はオンラインでプライベートレッスンをしたいと考えています。これまではずっとクラス授業で、学習者一人一人とゆっくり向き合うことができなかったためです。
ただ、今までは学校のシラバスに沿って授業をしていればよかったのですが、プライベートの場合はそうはいきません。それぞれの生徒に合わせて教材を用意し、授業の準備をしなければなりません。10人の生徒を教えるということは、目的もレベルも異なる10のコースデザインをすることになります。これまでとは全く異なるので、今はオンラインでプライベートレッスンをしている方の動画を見て勉強しているところです。
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