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海外日本語教師経験談

タイ コンケン 大学(2021年) 勤務条件がそれほどよくない中での奮闘ややりがい

👩 greenさん・ 44歳

総評

  • タイ コンケン 大学
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間:2年 (2019~2021年) *現在も勤務中
  • 月収:10万6,400円 (3万5467バーツ) *なんとか生活できる
  • 勤務時間:1日8時間・週5日勤務   *残業:命じられる残業はありませんが、授業準備や研究活動など時間外に多くやっています。

タイ人学習者の日本語レベルは、漢字圏の学習者ほどではないと感じますが、日系企業で働くためにがんばって勉強している学生が多いです。アニメが好きだから勉強していて、将来との関連づけが明確ではない学生もいます。

タイ人学習者は素直で教師に意見することが少なく他人を認めることに長けています。自分の意見を持ち話すことに消極的な面もあるので、日本語習得や社会生活を送るには自分の意見をもち、伝えることも大切だと日々伝えています。

年長者を敬う文化があるため話を聞いてメモするという受け身の学習になりがちで、自分から実際の言語使用例を探してルールを見つけ出すことが苦手な学生が多いです。教師の説明を聞くのではなく自ら使用場面を見て気づかせるためにどうすればいいか、そこに苦労しています。

ネット上で日本人の日本語を聞いたり直接日本人とやり取りできるので、学生から「教科書と実際に日本人が使っている日本語が違う。」というような声も聞きます。今は技術も発達し、日本人の語彙や文法の使用がすぐに調べられ、それが実は教科書の使われ方とは違うことが分かってきています。教師である自分は母語話者ですが、自身の個人的な言語使用を話さず、データを使って日本人の使い方の傾向を伝えるようにしています。

やりがいは、自分が「習得」について研究しているので「どうすれば習得を促進することができるか」を考え実践することが原動力になっています。また、がんばっている学生に良い授業で応えたいと思うことも力になっています。

日本語教師の収入は、駐在員よりはかなり低いです。タイで生活するのに足りないということはなく多少の貯金はできますが、日本円で考えればかなり少ないです。そのようなデメリットに対して自分はどんな努力をしていくかが大切だと思います。日本ほど恵まれた環境ではないタイでたくましく生きているタイ人を見ると考えさせられることも多いです。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

自分の仕事に責任を持つという意識や、問題が起きないように準備するという意識がないので、教室のエアコンが故障しても修理しようとしなかったり、学期開始に向けてエアコンを点検・整備しなかったりするスタッフがいます。

日本人からみればイライラすることもありますが、根気強く伝えていくことが必要だと思います。自分がこの国の人々の意識を変えようと思っても限界があります。ときにはいい意味であきらめることや嫌なことばかりに意識を向けないようにすることも大切だと思います。

給与

月収:10万6,400円 (3万5467バーツ)
なんとか生活できる

その国で生活することだけを考えれば問題はありませんが、病気になったときのための保険や老後を考えたり日本で任意で年金に入ることを考えたら、足りないと思います。

タイで外国人労働者が入ることを義務付けられている社会保険は、失業保険にもなり将来年金ももらえますが、年金は1か月1万円くらいの微々たるものです。

また、病気になったときにこの社会保険が使えるのは登録している一つの病院だけで公立病院です。タイの公立病院は、日本の病院とくらべて医療体制はかなり劣りますが、自身で私立病院で使える医療保険に入るとけっこうかかります。

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給与

  • 月収:10万6,400円

月収の内訳

  • 基本給:79,400円
  • 家賃手当:2万4000円
  • 業務評価による手当:3,000円

待遇

  • セミナー・研修費
  • 食事補助

雇用形態

  • 専任講師 *正規雇用

勤務時間

  • 1日8時間・週5日勤務   *残業 命じられる残業はありませんが、授業準備や研究活動など時間外に多くやっています。

長期休暇中の給与保証

  • 勤務している教育機関で給与が発生する仕事がある

仕事のかけもち状況

  • 日本語教師以外の副業に就いている

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

その機関に赴任してすぐは、授業準備などに追われてしまうと思います。できる限り赴任前や授業開始前に準備しておいたほうがいいと思います。

海外では自分と異なる文化を持つ学習者に教えるわけですが、教師のほうが少数派になります。文化的背景により分かってもらいにくい例文などを作ってしまわないように気をつけないといけないと思います。

また、タイ人は計画性がなく「明日〇〇があるから来てください」と突然言われることもあります。スケジュールには余裕を持っておくことが大切です。

スケジュール管理ではないですが、初めは慣れない生活から体調を崩す人をよく見ます。無理をしないことも必要です。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス20~30人

学習者層

  • 大学生

タイで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

大学で専門的な内容を教えているので、日本の浴衣や茶道の道具が必要になるなどのことはありませんが、まわりでは「日本に一時帰国したときに浴衣を購入した」という日本語教師もいました。

現地に行ってから現地人の先生に日本のものが欲しいと言われて困らないように、行く前に聞いておくといいのではないでしょうか。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • NINJAL-LWP for TWC(略称NLT)
    このサイトは、語彙がウェブ上でどう使われているかという使用例を集めたコーパスです。中級以上になると、語彙の使われ方や似た意味の語彙の使われ方の違いが重要になってきます。例えば「素材」「材料」はタイ語では同じですが、日本語では使われ方が違います。このサイトを使えば、意味だけでは見えてこない「素材」「材料」の使われ方の違いが分かります。また「コミュニケーション」と言う言葉が分かっても、文としてどう使うか学習者にはわかりにくいです。「コミュニケーションする」以外にも「コミュニケーションをとる」という使われ方も自然です。このような名詞と動詞の共起も調べられます。初級から上級まで、語彙を教えるときや例文を作るときに役立ちます。
  • コーパス均衡アプリケーション中納言
    「書きことば」「話し言葉」「学習者」などに分かれた、実際の使用例を集めたコーパスです。教科書での使われ方と母語話者の実際の使用が異なる場合もありますが、このサイトでは例えば「~(よ)う」という意向形が母語話者にはどう使われているか、学習者と母語話者では、この「~(よ)う」の使い方が違うのかどうかなどが調べられます。エクセルにダウンロードしてピボットテーブルで集計することができるので、全体的な傾向が分かります。どのレベルを教える人にも役立つと思います。実際の使用傾向を見せることで、教師がこうだと言わなくても、学習者に気づかせることができるところがメリットです。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 場面とコミュニケーションでわかる日本語文法ハンドブック 対象: 初級
    教える際に必要な文法知識や主な教科書との対応だけではなく、母語話者の使用実態、誤用例などもあり、学習者がつまづきやすいところとそれへの対応策を考えることができます。国際交流基金が作っているCanDoを用いたレベルA1〜B1程度の場面やコミュニケーションに結びつけて示されているので、「この文法を使えば、この程度のコミュニケーションができる」ということも学習者に示せます。母語話者の使用実態が分かるので、それをもとに(自分の使用に偏らず)授業で使う例文を作ることができます。また、すべてにルビがふってあるので、非母語話者教師にも役に立ちます。

就職活動

この大学で働くきっかけ・決め手は?

タイへ行くことになった理由は、タイ人と結婚したからです。タイへ来てから今の勤務先ではないところで働いていましたが、そこで「契約は更新しない」と言われました。今の勤務先の先生(現在の同僚)と知り合いで人を探していることを聞いていたので、応募し採用されました。

応募する前からその先生に勤務について聞いていましたが、いいことばかりではありませんでした。しかし、言語や文化の壁はなくてもぶつかることや思い通りに行かないことがあるのはわかっていたので、特に迷うことなどはありませんでした。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

前の職場でどんなことに取り組んできたか質問されました。担当した日本語のレベルなどではなく、授業以外に学生や機関のためにしたことです。強制はできないが、決められた仕事以外にも日本語に関する仕事に協力してほしい、と思っているのだと思います。

現地で日本語教師の需要はどのくらいある?

学習者の話では、日本語より中国語のほうが高校や大学では重視されているようですが、タイでは日系企業も多く進出しているので、日系企業に就職するチャンスは多いです。通訳というポジションではなく営業やマーケティングの部署で働く機会もあります。

4年生後期には学生たちは日系企業にインターンシップに行き、そこで認められ就職するケースも珍しくないです。決して日本語能力だけではなく、一生懸命さや仕事に対する誠実さを企業が認めてくれています。

この大学で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日本語学校や高校は別として、タイの大学や高等教育機関では修士号が必須になりつつあります。修士号を持つ人がさらに多くなれば博士号も必要になるかもしれません。修士号があっても、大学で教えていくには研究活動が求められます。年度末に授業や研究活動、出版物などを書いたレポートを提出し、それが契約更新や業績による手当につながっています。

語学に関して、タイ語は必要ではないですが、タイ語が分かればタイ人が間違えやすいところやタイ語と日本語との違いがわかり、授業に役立つと思います。スタッフとのやり取りは英語でもかまいません。ビザなどの業務をしてくれるタイ人スタッフは英語が分かることが多いです。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • NIHON MURA(日本村)
    求人があれば、自分のメール自動的に届くように設定しています。国内外での求人情報を見ることができます。
  • 日本語教育学会
    国内外の大学を中心とした求人情報です。日本語学校や企業での日本語教育の仕事も少ないですが、あります。

就職活動で有効な手段は?

  • 『大学院の先生の紹介』
    最近、修了した大学院の先生から直接聞いたことですが、修了生にいろいろな大学の非常勤講師の仕事を紹介しているそうです。自分は海外在住のためお話はいただいていません。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 学位や資格を評価してくれる
  • 給与・待遇
  • 通勤時間

応募時に必要とされた資格

  • 修士課程修了
  • 日本語教育経験

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

面接方法

  • 現地にて対面で実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学の専攻が日本語教育でしたが、英語が好きで外国人と関わる仕事に興味があるという漠然とした理由でした。学部のときに奨学金をもらいタイに留学する機会があり、その時に今の主人と出会って結婚することになりタイで日本語教師になりました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

もちろん教えた学習者がJLPTに合格したり日系企業に就職できたりしたときは、うれしいです。ただ教育はすぐに答えや成果が出るものではないと思っているので、嬉しいことがあるから続けるわけではなく、自分が決めたことをやり遂げようと日々授業をしています。

言語能力向上を目的とした授業ではないのですが、協同学習の手法で今後の自分や社会の生活をよくすることを目的としたディスカッションの授業をしました。さまざまな経験をもとに意見交換する学生を見て、日本語能力は高くないけれどこんなにもいろいろなことを考えているのか、と感動しました。日本語能力のための授業をしているだけではできない発見をしました。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

日本語教師としての仕事に行き詰まって辞めたいと思ったことはありません。しかし苦しいことももちろんありました。上司から「学習者があなたの授業に苦情を言っている」のように言われたときなど、落ち込むこともありました。

でも苦しいときに逃げるのではなくどう乗り越えるかが大切で、そこでその人の価値が分かるのだと思います。その時に自分にできる最大限のことをやることを意識しています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

大学の日本語教員養成過程で学んだり、民間で開講されている420時間の講座を受けることなどいろいろあると思います。一番いい方法は、その人が自分で決めた方法だと思うので、これが一番と言うことはできません。

大学院のとき、その大学に交換留学している留学生に教えるという科目がありましたが、教えた経験がない人がその授業を履修せず、日本語教師経験者や大学院と並行して日本語学校で教えている人が履修していました。チャンスがあってもやらない人もいます。真に学ぼうという気持ちが第一だと思います。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

学生の方への意見と同じですが、社会にいったん出るとまた大学に入り直すことは難しいでしょう。大学院の同期の人で、会社を退職し、日本語教師になる講座を受けて海外で教え、学び直したいと大学院に来ていた人がいました。人のバックグラウンドはそれぞれですが、やる気が一番大切ではないでしょうか。

タイで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

タイ人学習者のレベルが高くないがゆえに学生とタイ語でコミュニケーションをとったり、時間を守らないタイ人を見て授業に大幅に遅れて行く日本人教師を見たことがあります。

日本人としてタイで教えているからには、自分に求められている役割を考えるべきだと思います。タイ人学習者は教師に意見することは少ないですが、それでも教師をよく見て評価しています。一つの国でしか通用しない教え方よりも、どこで教えてもやっていける教え方を身につけるほうがいいと思います。

また、国内海外を問わず、仕事でうまくいかないことは多いと思います。その中でも「自分にできることは何だろう」と考え実行していくと、前に進めたりまわりの人が手助けしてくれたりします。

南・東南アジアの国・地域別 経験談

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