元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

日本語教師 経験談 パラグアイの日本語学校

日本語を「継承する」ためにできること

公開:2019/11/21

asuncion_py(女性・32歳) 
日本語教師歴 2.9年 (2016年~2019年)
*現在は他業種に転職
資格・課程 日本語教育能力検定試験合格
パラグアイの日本語学校
経験詳細
  • 地域:アスンシオン
  • 月収:2万5000円(250ドル)
    それだけでは生活は難しい
  • 常勤講師(非正規雇用)
  • 3年(2016年~2019年)
    *現在は退職

パラグアイ共和国は、周辺の南米諸国と比べるとまだ移住歴の浅い国ではあるものの、今では日系人の子ども達は現在4世〜5世が大半を占めており、ハーフやクォーターも多くなってきています。そのため、日常会話で使用する言語はほとんどの家庭において現地のことば、つまりスペイン語が常となってきています。

そうした現状を踏まえ、日本文化が衰退していくことが懸念されている昨今の日系人社会において、日本語教育により一層力を入れ、日本人としてのルーツの継承を目指していることがこの国の日本語教育現場での特徴といえます。

またパラグアイでは、この日系人社会のコミュニティーが非常に団結しており、運営も活発に行われていることが大きな強みだと感じました。実際、現地の日本語学校の運営も日系人団体が行なっていることがほとんどで、それらのバックアップがあっての教育現場であると前提があります。

私の勤務していたアスンシオン日本語学校では、JICA国際事業団からの日本語教育の専門家の派遣を中心にボランティアや青年海外協力隊などから日本語教師を募っています。さらに近年では、こうした専門家に指導を依頼し、現地の日系人を日本語教師として養成、雇用するプログラムも盛んでした。

この学校では、15年ほど前から国語教育から日本語教育へとシフトし、さらに近年では日本語だけで日本語を教える、「直接教授法」が導入されました。対象である生徒のニーズに合わせてのこうした改革により、教師も今までのように「日本語が話せればいい」ということではなく、より専門性が求められることになりました。

そこで専門家の指導を仰ぎ、研修会を設けるなどして専門性を身につける対策が始まったのです。具体的には、教師だけで月1回模擬授業を行い、それぞれが担当の課の教案を作成し、互いに授業を観察することで基本的な技術を身につける実践的な方法が中心でした。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

対象が子どもたちですので、やはりいかに飽きさせないかが重要でした。低学年になればなるほど歌や遊びを取り入れながら、しかししっかりと身につけさせなくてはいけない、ということに四苦八苦しておりました。

子どもの集中力はもって30分程度です。混乱させないよう、新しい課の導入を行い、テンポよく練習に入り、そして遊びを盛り込んだ実践練習をさせるよう、毎度試行錯誤しました。

また、普段は現地の学校に慣れている子ども達ですので、南米の習慣ではクラスで飲み食いしたり、校内の売店へ行ってお菓子を買ってくることも普通です。またその散らかしたゴミを自分たちで掃除すると行った習慣ももちろんありません。

彼らが間違っている訳ではありませんが、授業以外でこうした日本文化を教えようとすると、子どもたち相手にどのように話をしていいかとても頭を悩ませました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

結婚のため日本に帰国することになり、退職しました。現在はこの経験を生かし、知人の会社で外国人研修生を対象に日本語の授業を行なっております。

給与・待遇

月収 月収:2万5000円
月収内訳 基本給:25,000円
基本労働時間 1日5時間 週4日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計10時間
待遇 賞与(年間50,000円)
教育機関が
用意してくれたもの
住居提供
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

住居の提供はあるものの、実際この金額で生活を賄うことは難しかったです。仮にできたとしても生活の質はかなり抑えなくてはならないと思います。

私は空いた時間に知人の紹介で会社事務などを手伝っていたので、副収入を足して生活していました。しかし、教案の作成や授業準備にはかなり時間が取られますし、個人の能力にもよりますが、私の場合はそれらに当てる時間が長すぎたので、残業として含まずに仕事を持ち帰って作業することが多くありました。

ですので、給与に対してかなりの激務になります。私はこの仕事が好きで、やりがいを感じていたのでできたと思いますが、日本社会の常識からするとかなり割りに合わない仕事だと思います。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

南米全土で見ると、パラグアイはずば抜けて日系人社会のまとまりがありますので、生活はしやすいと思います。現地の言葉ができなくても、日系人を頼っていけば大抵の生活ことは日本語で済んでしまうほどです。

こうした強固なバックアップがあることは、身の安全や精神面での大きなサポートになりますし、お金には代え難いところです。また、その中で務めることで人の温かさや、交流の楽しさは一層感じることができたように思います。給与的には安いですが、その分楽しく、安心して仕事ができる環境がありました。

特に、アスンシオン日本語学校はおすすめです。他の日本語学校の多くは日本人の移住地にあり、ほとんどが日本と変わらないほどの日本語能力をもった生徒が対象で、多くが日本の教科書を用いた国語教育です。

それに比べ、アスンシオンは移住地ではなく、街中にあるので、普段現地の生活をしている生徒がやってきます。そのためパラグアイ文化を感じながら、かつ日本語教育を行うことができ、とても有意義な環境だと思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス10人
学習者の年代 小学生
1日の時間割 月曜日
  • 13:00〜18:00  
    小学2年生を3コマとその他業務、職員会議
水曜日
  • 13:00〜18:00  
    小学2年生を3コマとその他業務、研修
金曜日
  • 13:00〜18:00  
    小学2年生を3コマとその他業務、教案作成、授業準備
土曜日
  • 8:00〜17:00  
    小学2年生を6コマとその他業務、教案作成、授業準備
休日 日・祝日
行事がない限り一日休みでした

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

スケジュール管理において特に苦労することは、やはり日々の授業準備です。
特に低学年は、集中力をもたせるために絵カードや小道具が必須ですので、毎回時間と手間がかかってしまいました。

しかし一度準備して記録をしっかり残すことで、次の年で同じ課を教える時は再利用するなどして工夫し、年々、負担を減らすことはできていたと思います。

また運動会などの行事ごとは授業日数を減らさないよう、日曜日や祝日に行われることが多いので、その準備や連休が取れないなどの苦労がありました。しかし、1年もするとそれが当たり前になってきて、子どもたちとの時間が生活の一部のように感じられ、やりがいが湧いてきたので苦には思いませんでした。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
みんなの日本語教案 日本語NET
各課の教案を参考にしています。特に導入や練習に使う例文やイラストはとても頼りになります。このまま使うこともありますし、子どもの年齢によってアレンジして使用しています。
参考になる書籍

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

どの参考書も例文などが日本での生活を中心とした設定なので、やはり現地の生活リサーチが必要です。普段生徒が見慣れているもの、聞き慣れている単語、商品名、場所などをあらかじめよく調べて使用することで導入にかかる時間が大幅に節約できますし、子ども達も大喜びです。

就職活動

国選びで重視した点
  • 親日国
  • その国の母国語が得意
  • 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
強い人気があり、多くの学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 必須資格
  • 学校の規模
  • 使用されている教授法
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

パラグアイはもともと国の発展に日本人が大きく関わっていたこともあり、とても親日であり、近年では若い世代を中心に和食や着物、アニメなどの日本文化が根強い人気を誇っています。

そのため日系人社会内での文化の継承はもちろんのこと、最近では全く日本にルーツのない現地の方からも受講のニーズが強まり、日本語教師の需要は非常に高くなってきています。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日本語に馴染みのない生徒が対象となってきたこの頃では、より専門性のある日本語教師が必要とされていますので、資格があるとより働きやすいと思います。こうした専門の資格は、その他の資格をもたない教師にとっても、研修をしていく上でコメントもらったり、質問をしたりできるので非常に助かります。

現地の言葉ですが、パラグアイでの生活上、日系人のサポートがあるのでスペイン語はごく簡単な日常会話程度ができれば特に問題はありません。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報
アスンシオン日本語学校のFacebook:
アスンシオン日本人会に問い合わせると情報が早いです。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

もともと現地に長く住んでいて、知人が働いてたこともあり、声がかかりました。行事ごとには参加していたので職員のみなさんとは顔見知りで、面接もなく、現地らしいラフな形での雇用でしたが、楽しそうな職場に魅力を感じ、働くことを決めました。

実際はなんの資格もありませんでしたが、やってみるととてもやりがいがあり、子ども達も可愛くて楽しかったです。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

当時日本語教師として派遣されていたJICAの方とお話しする機会があり、日本語のもつ素晴らしさとそれらを広めていく姿勢に憧れて、やってみたいと思いました。また、日本語を学んだ生徒がいずれ国同士の架け橋になっていく可能性があることも大きな魅力の一つでした。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

生徒が日本語能力試験に合格したり、親御さんに喜ばれたり、また「将来は日本に行ってみたい」など目標ができたりと、一人一人の未来に関わっていることが感じられた瞬間が、やりがいを感じる時でした。言葉という見えない財産を培っていく子ども達の姿はとても感動的です。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

辞めたいと思ったことはほとんどありません。むしろ可能な限りずっと続けたかったです。環境もよかったですが、やはり生きた言葉を継承していくこと、それが誰かのためになっている様は何にも代え難い経験でした。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
せっかくですので、やはり資格を取得することが有益かと思います。チャンスがある時に、とにかく勉強をしていただき、資格を持って現地へ臨むことが自分自身と現地の方にとって一番いいかと思います。そして、日本語だけでなく、その言葉が生まれてきた日本の文化そのものにしっかり触れておくことも重要だと感じます。

【社会人の方へ】
資格がなくても、環境によっては働きながら学ばせていただけるところもあります。今までの経験が意外なところで生きてくるのが、日本語教育の面白さでもあると思うので魅力を感じるのであれば飛び込んでみてください。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

治安の悪いイメージの南米ですが、パラグアイは比較的平和で、特に日系人の大きなサポートがあります。働きやすさだけでなく、暮らしやすさ、人との繋がり、様々な面で温かく陽気な国です。日本語教育を求めている人がたくさんいるこの国に、ぜひあなたのお力をお貸しください!

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