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海外日本語教師経験談
パラグアイ アスンシオン 日本語学校(2019年) 日本語を「継承する」ためにできること
👩 asuncion_pyさん・ 32歳
総評
- パラグアイ アスンシオン 日本語学校
- 雇用形態:常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
- 期間:3年 (2016~2019年) *退職
- 月収:2万5,000円 (250ドル) *それだけでは生活は難しい
- 勤務時間:1日5時間 週4日勤務 *残業:1ヶ月 合計10時間
パラグアイ共和国は、周辺の南米諸国と比べるとまだ移住歴の浅い国ではあるものの、今では日系人の子ども達は現在4世〜5世が大半を占めており、ハーフやクォーターも多くなってきています。そのため、日常会話で使用する言語はほとんどの家庭において現地のことば、つまりスペイン語が常となってきています。
そうした現状を踏まえ、日本文化が衰退していくことが懸念されている昨今の日系人社会において、日本語教育により一層力を入れ、日本人としてのルーツの継承を目指していることがこの国の日本語教育現場での特徴といえます。
またパラグアイでは、この日系人社会のコミュニティーが非常に団結しており、運営も活発に行われていることが大きな強みだと感じました。実際、現地の日本語学校の運営も日系人団体が行なっていることがほとんどで、それらのバックアップがあっての教育現場であると前提があります。
私の勤務していたアスンシオン日本語学校では、JICA国際事業団からの日本語教育の専門家の派遣を中心にボランティアや青年海外協力隊などから日本語教師を募っています。さらに近年では、こうした専門家に指導を依頼し、現地の日系人を日本語教師として養成、雇用するプログラムも盛んでした。
この学校では、15年ほど前から国語教育から日本語教育へとシフトし、さらに近年では日本語だけで日本語を教える、「直接教授法」が導入されました。対象である生徒のニーズに合わせてのこうした改革により、教師も今までのように「日本語が話せればいい」ということではなく、より専門性が求められることになりました。
そこで専門家の指導を仰ぎ、研修会を設けるなどして専門性を身につける対策が始まったのです。具体的には、教師だけで月1回模擬授業を行い、それぞれが担当の課の教案を作成し、互いに授業を観察することで基本的な技術を身につける実践的な方法が中心でした。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
対象が子どもたちですので、やはりいかに飽きさせないかが重要でした。低学年になればなるほど歌や遊びを取り入れながら、しかししっかりと身につけさせなくてはいけない、ということに四苦八苦しておりました。
子どもの集中力はもって30分程度です。混乱させないよう、新しい課の導入を行い、テンポよく練習に入り、そして遊びを盛り込んだ実践練習をさせるよう、毎度試行錯誤しました。
また、普段は現地の学校に慣れている子ども達ですので、南米の習慣ではクラスで飲み食いしたり、校内の売店へ行ってお菓子を買ってくることも普通です。またその散らかしたゴミを自分たちで掃除すると行った習慣ももちろんありません。
彼らが間違っている訳ではありませんが、授業以外でこうした日本文化を教えようとすると、子どもたち相手にどのように話をしていいかとても頭を悩ませました。
なぜこの日本語学校を退職しましたか?
結婚のため日本に帰国することになり、退職しました。現在はこの経験を生かし、知人の会社で外国人研修生を対象に日本語の授業を行なっております。
給与
それだけでは生活は難しい
住居の提供はあるものの、実際この金額で生活を賄うことは難しかったです。仮にできたとしても生活の質はかなり抑えなくてはならないと思います。
私は空いた時間に知人の紹介で会社事務などを手伝っていたので、副収入を足して生活していました。しかし、教案の作成や授業準備にはかなり時間が取られますし、個人の能力にもよりますが、私の場合はそれらに当てる時間が長すぎたので、残業として含まずに仕事を持ち帰って作業することが多くありました。
ですので、給与に対してかなりの激務になります。私はこの仕事が好きで、やりがいを感じていたのでできたと思いますが、日本社会の常識からするとかなり割りに合わない仕事だと思います。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:2万5,000円
月収の内訳
- 基本給:2万5,000円
待遇
- 賞与(年間5万円)
雇用形態
- 常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
勤務時間
- 1日5時間 週4日勤務 *残業 1ヶ月 合計10時間
長期休暇中の給与保証
- 長期休暇がない
授業形態・勤務スケジュール
スケジュール管理で大変だったことは?
スケジュール管理において特に苦労することは、やはり日々の授業準備です。
特に低学年は、集中力をもたせるために絵カードや小道具が必須ですので、毎回時間と手間がかかってしまいました。
しかし一度準備して記録をしっかり残すことで、次の年で同じ課を教える時は再利用するなどして工夫し、年々、負担を減らすことはできていたと思います。
また運動会などの行事ごとは授業日数を減らさないよう、日曜日や祝日に行われることが多いので、その準備や連休が取れないなどの苦労がありました。しかし、1年もするとそれが当たり前になってきて、子どもたちとの時間が生活の一部のように感じられ、やりがいが湧いてきたので苦には思いませんでした。
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス10人
学習者層
- 小学生
スケジュール
- 13:00〜18:00 小学2年生を3コマとその他業務、職員会議
- 13:00〜18:00 小学2年生を3コマとその他業務、研修
- 13:00〜18:00 小学2年生を3コマとその他業務、教案作成、授業準備
- 8:00〜17:00 小学2年生を6コマとその他業務、教案作成、授業準備
行事がない限り一日休みでした
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『みんなの日本語教案 日本語NET』
各課の教案を参考にしています。特に導入や練習に使う例文やイラストはとても頼りになります。このまま使うこともありますし、子どもの年齢によってアレンジして使用しています。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『みんなの日本語初級Ⅰ第2版教え方の手引き 』
対象:
初級
教案作成時の参考程度 - 『みんなの日本語初級Ⅱ第2版教え方の手引き』
対象:
初級
教案作成時の参考程度
就職活動
この日本語学校で働くきっかけ・決め手は?
もともと現地に長く住んでいて、知人が働いてたこともあり、声がかかりました。行事ごとには参加していたので職員のみなさんとは顔見知りで、面接もなく、現地らしいラフな形での雇用でしたが、楽しそうな職場に魅力を感じ、働くことを決めました。
実際はなんの資格もありませんでしたが、やってみるととてもやりがいがあり、子ども達も可愛くて楽しかったです。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
パラグアイはもともと国の発展に日本人が大きく関わっていたこともあり、とても親日であり、近年では若い世代を中心に和食や着物、アニメなどの日本文化が根強い人気を誇っています。
そのため日系人社会内での文化の継承はもちろんのこと、最近では全く日本にルーツのない現地の方からも受講のニーズが強まり、日本語教師の需要は非常に高くなってきています。
この日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?
日本語に馴染みのない生徒が対象となってきたこの頃では、より専門性のある日本語教師が必要とされていますので、資格があるとより働きやすいと思います。こうした専門の資格は、その他の資格をもたない教師にとっても、研修をしていく上でコメントもらったり、質問をしたりできるので非常に助かります。
現地の言葉ですが、パラグアイでの生活上、日系人のサポートがあるのでスペイン語はごく簡単な日常会話程度ができれば特に問題はありません。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『アスンシオン日本語学校のFacebook』
アスンシオン日本人会に問い合わせると情報が早いです。
国選びで重視した点
- 親日国
- 渡航経験があった
- その国の母国語が得意
現地における日本語教師の需要・将来性
- 高い人気があり、多くの学校で求められている
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 必須資格
- 学校の規模
- 使用されている教授法
応募時に必要とされた資格
- なし
就職 選考方法
- 紹介のため試験なし
日本語教師全般に関する質問
どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?
当時日本語教師として派遣されていたJICAの方とお話しする機会があり、日本語のもつ素晴らしさとそれらを広めていく姿勢に憧れて、やってみたいと思いました。また、日本語を学んだ生徒がいずれ国同士の架け橋になっていく可能性があることも大きな魅力の一つでした。
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
生徒が日本語能力試験に合格したり、親御さんに喜ばれたり、また「将来は日本に行ってみたい」など目標ができたりと、一人一人の未来に関わっていることが感じられた瞬間が、やりがいを感じる時でした。言葉という見えない財産を培っていく子ども達の姿はとても感動的です。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?
辞めたいと思ったことはほとんどありません。むしろ可能な限りずっと続けたかったです。環境もよかったですが、やはり生きた言葉を継承していくこと、それが誰かのためになっている様は何にも代え難い経験でした。
学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。
せっかくですので、やはり資格を取得することが有益かと思います。チャンスがある時に、とにかく勉強をしていただき、資格を持って現地へ臨むことが自分自身と現地の方にとって一番いいかと思います。そして、日本語だけでなく、その言葉が生まれてきた日本の文化そのものにしっかり触れておくことも重要だと感じます。
社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。
資格がなくても、環境によっては働きながら学ばせていただけるところもあります。今までの経験が意外なところで生きてくるのが、日本語教育の面白さでもあると思うので魅力を感じるのであれば飛び込んでみてください。
パラグアイで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
治安の悪いイメージの南米ですが、パラグアイは比較的平和で、特に日系人の大きなサポートがあります。働きやすさだけでなく、暮らしやすさ、人との繋がり、様々な面で温かく陽気な国です。日本語教育を求めている人がたくさんいるこの国に、ぜひあなたのお力をお貸しください!
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