元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

中国の広東省 経験談

学生たちの意欲が高くやりがいの大きい仕事

公開:2018/11/20
Rick(男性・42歳) 
日本語教師歴 6年 (2012年~2018年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(NAFL)
中国の広東省
経験詳細
  • 地域:広東省
  • 月収:17万円(1万元)
    現地で生活をするのに十分
  • 常勤講師(非正規雇用・フルタイム)
  • 3年(2015年~2018年)
    *現在は退職

発展著しい中国での日本語教師の経験は多くのことを学べる機会でした。

私が勤めていた学校は、主に企業への研修を行っている学校で、生徒はほとんど企業のサラリーマンでした。
今後日本での出張、赴任を控え、日本語をブラッシュアップしたり、短期集中で勉強したりといろいろなレベルの生徒がいましたが、どの生徒もおおむね熱心で、学習意欲もあり、これまで学校教育での過酷な受験競争を生き抜いて来ただけあって、丸暗記やペーパーテストのような問題への取り組みは全体にレベルが高いように感じました。

ひたすらペーパーテスト対策をしてきたような「勉強好き」な生徒は、あまり日本のアニメやドラマに接しておらず、ほとんど"日本語耳"ができていないためリスニングや会話の面で苦労しているようで、現場で即戦力になるためにはかなり苦労して会話を身に着けているようでした。

一方、日本のアニメやドラマが好きないわゆる"90後(90年代以降の生まれ)"の若者の中には、オタク文化、日本のアイドルなどに対して好意的な若者が多く、進んで会話し、流行語などにも敏感で、会話などは教えやすいと感じました。

このように、ここ数年でも生徒たちの傾向が変化し、教師の側もその変化に対応していく必要がありました。

私の就労していた教育機関自体が企業を対象としたサービスを提供していたため、給料自体も全体に単価が高く、週五日ほど出勤して十分生活できるレベルの給料をもらえていました。広東省の大都市での生活だったため、家賃や物価はかなり高く、ものによっては日本以上に高いものありました。

さらにここ数年、大学や企業向けの教育機関ではないいわゆる普通の日本語学校での日本語教師の給料は価格破壊が進み、かなり低水準になってきていることから、日本語教師で生活を維持する事は難しくなっているようです。

都市の発展のスピードも早く、生徒たちも仕事や成長することに意欲的で、全体にやりがいのある、日本語教師として学ぶことの多い経験となりました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

中国で流通している日本語の初級教材と、みんなの日本語をはじめとする日本で出版されている教材の学習進度が異なるため、初級の学生を教える場合は、最初の段階でいくらか教え方を工夫する必要がありました。

例えば、中国の教材では「だ・である」などの普通体を先に教え、そののち「です・ます」体を教えていき、て形は”普通体→て形”で覚えていきいますが、みんなの日本語をはじめとする日本の教材では、ます形を先に教え、”ます形→て形”の変換練習をしていきます。

それで、まずはこちらが一通り中国の日本語教材に目を通して内容を把握しておき、学生が以前使用していた教材に合わせて教授法を調整していました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

別の教育機関での就労が決まったので、退職しました。現在は日本語学校や、オンラインの教育機関で就労しています。

今後の発展を考えるとオンラインスクールの分野はまだ成長の余地があり、徐々にそちらの方向にシフトしています。

給与・待遇

月収 月収:17万円
月収内訳 基本給:17万円
基本労働時間 1日7時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 すべて給料に含まれる
教育機関が
用意してくれたもの
すべて給料に含まれる
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

いろいろなことが社長との交渉や、社長のさじ加減によるところが大きく、帰国費用や福利など、基本的には給与には含まれないが、状況に応じて社長に交渉すると場合によっては支払われることがありました。

給与自体は多くも少なくもなく、交渉次第ではもっと増やせるようにも思いましたが、プライベートでしたいこともあったので、仕事はある程度のレベルで抑えて、生活レベルを調整して対応していました。

同業者の中には、給料の支払いが遅れていたり、支払われなかったと嘆いている先生たちもいましたので、海外での就職に際しては、就職する学校や企業の経営など、いろいろと下調べをしておくほうが安全だと思います。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

私の勤めていた企業は企業研修を主に行っていたこともあり、給与や待遇は悪くないように思いました。

ただ、大学での日本語教師は何かと安定していて、ビザの申請なども慣れているようなので、初めて海外で仕事をする場合は毎年教師を雇用し、手続きにも慣れている教育機関のほうがストレスが少ないように思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 プライベートレッスン
学習者の年代 社会人
1日の時間割 授業のある時に授業担当。授業のない時には事務所の事務手続きの手伝い
基本的に週20コマ前後あり。
休日 土日

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

通常の授業のスケジュールは基本的に事務方がしてくれていたので、自分ですることはありませんでした。

ただ、案件によっては企業に出張し、出先で研修することがあり、その場合には短期間毎日客先に出向く必要があり、研修内容、教材等も講師が自分で準備する必要があったためそうした案件があった時にはかなり多忙でした。そうした時の教材は基本的にサービス残業で作成しており、土日を利用して教材作成をする場合もありました。

ただ、そうした出先での企業研修は学べることが大きく、自前の教材なども開発する必要もあったため、日本語教師としてはいい経験になりました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
参考になる書籍
  • 初級を教える人のための日本語文法ハンドブック    
    対象者:初級
    初級文法解説、要点整理のために利用しています。みんなの日本語初級レベルはこれ一冊でOKというぐらいいい教材です。 こちらは中級編も出ていてともに必携です。
  • 外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か    
    対象者:全レベル
    何度も読み返し、こちらも手元に置いている。教材作成や、カリキュラム作成、日々の授業で迷ったときはこの本をパラパラ開きヒントをもらっている。外国語教師なら必ず読んでおいたほうがいい本。
  • 初級日本語文法と教え方のポイント
    対象者:初級
    初級レベルで、少し教え方に迷ったとき、答えにくい質問に出会ったときに参考にしています。いつでも手元に置いて確認したい本で、こちらも必携です。同シリーズで中級も出ていますので、そちらもおすすめです。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

生徒はペーパーテスト偏重の外国語教育に慣れすぎているため、全体に会話力、リスニングなど、ビジネスの現場で必要とされる、より実戦的な日本語を身に着ける面で工夫が必要だと感じました。

ビジネス系の日本語教材でも必要十分ですが、それだけだと内容的につまらなく感じてしまうため、時々ドラマ(半沢直樹など)や歌(世界に一つだけの花など)などのリスニング、シャドーウィング教材を自前で準備していました。

ただ、ちょっと古めだったり学生の趣味に合わなかったりと、今一ついいものがなく、何かいいものがあれば教えてほしいと思っていました。

ちなみに、日本語教師は孤軍奮闘していることが多いので、そういったことを気軽に情報共有などできる場があればいいな、と思います。

就職活動

国選びで重視した点
  • 治安
  • その国の母国語が得
  • 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている
  • 日本語教師が飽和状態である
  • ビジネス会話が得意、翻訳や通訳が教えられる、ネットスクールでの対応が可能など、専門性の高い、応用力の高い教師のニーズが高くなっている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 通勤時間
応募時に
必要とされた資格
選考方法 紹介のため試験なし
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

今後は就労のための日本語習得という従来からある需要に加えて、留学、趣味といった需要での伸びが見込まれると思います。例えば、多くの高校生が日本にあこがれを持っていて、できれば日本の大学(国立、早慶レベル)で学びたいと思っています。

また、中国は全体に親が子供に習い事をさせたいと考えている家庭が多く、現時点で留学の予定はなくても、趣味や特技の一つとしての日本語習得親や子供が希望する場合がありそうした需要が伸びてきています。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

前職では別の企業でのビジネス経験や、以前の仕事での経験が買われ日本語教師として働いていました。

以前の経験からビジネス関連講座や公開講座なども担当していました。

今後、多くの学校や教育機関で必要としているのは、文法知識が豊富な学者肌の先生(ちょっと浮世離れしているような・・・)ではなく、コミュニケーション力や提案力、生徒に好かれるパーソナリティなど、通常ビジネスの現場でも求めれるような資質が、日本語教師にも必要とされきていると思います。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
その他求人情報
  • 友人:その国の外国語教師(英語教師を含め)と知り合いになり情報交換する
  • フリーペーパー:大都市には日系のフリーペーパーがあるため、その中の求人欄をチェックしておくとよい

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

その教育機関で英語教師として働いていた友人が知り合いで、声をかけられました。〇〇先生の紹介なら、という感じで比較的順調に決まりました。

普通の日本語学校とは違い、企業相手の学校だったためビジネス関連の知識がある人ということで面接に呼ばれ、すぐに決まりました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

以前サラリーマンをしていたころから日本語教師にあこがれており、通勤時間を利用して資格をとりました。

その後海外の日本語学校で働く機会があり、これまでしばらく海外で働いてきましたが、海外での日本語教師はエキサイティングで現地の言葉を含め多くのことを学べます。

これから日本語教師を目指す方々にもぜひ、海外での就労を検討してみてほしいと思います。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

うれしいのは生徒が教師を友達のように感じてくれているときで、人生相談や今後の就職に関する相談など、友人としてアドバイスを求められるのも楽しい経験です。

「〇〇先生と話してると楽しいです!」と言われるのが一番の誉め言葉だと思います。

こちらも中国語など、逆にいろいろ教えてもらえますからともに成長でき、学べるのが日本語教師をやっていてよかった!と思う一番の理由です。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

一度もなし。天職だと思ってます。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
日本語教師の勉強に加え、現地の言葉を勉強するのは大切だと思います。日本語教師としての知識は、ある程度短期間で習得できるものかもしれませんが、外国語の習得はそれ相応の時間がかかります。

海外での日本語教師を目指すなら、まずどこに行きたいかを考えて、その後少しづつでもその国の言語を学び始めるのが大切だと思います。

【社会人の方へ】
NAFLの日本語教師養成講座など、良質の通信講座がたくさんありますので、興味のある方はひとまず勉強を始めてみるのがいいのではと思います。

もちろん現時点ですぐに就労する機会がなくても、通信講座終了後は、ひとまず日本語教育のボランティアを始めてみて機会があれば海外での就労の機会を探ってみてもいいかもしれません。

様々な要素で日本は今後外国人の移住や就労が増加するはずですし、今後老後の趣味としてボランティアの日本語教師というのも一つの楽しい選択肢だと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

同国が今後も経済発展を続ける可能性は高く、日中相互の関係を考えると日本語教育市場が縮小することはないと思います。

ただ、急速な経済発展に伴い、生徒のニーズも多様化しており、今後特にビジネス関連の日本語教育のニーズは確実に増えると思います。加えて趣味的な日本語のニーズ(アイドル、アニメ、フィギュアなど)も増加すると思います。

また、教室での授業からネットスクールにも生徒が集まっており、教師の側がいろいろな現場に対応していく必要があると思います。

直接法で教える場合でも、やはりまずはその国の言葉(中国語)を勉強することが必須だと思います。生活上の必要のためだけでなく、日本語教師も外国語を勉強しておくことで自分の日本語教育を客観的に評価できます。

さらに、海外で生活できる対応力と、いろいろな違いを楽しめるポジティブな態度さえ身に着けられれば、海外での日本語教師の仕事から多くのことを学べ、今後にとっても貴重な経験になると思います。

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