元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

フィリピンの技能実習生の渡日前日本語訓練校 経験談

ちょっと変わった日本語教育機関

公開:2018/05/18
みびち(女性・28歳) 
日本語教師歴 3年 (2012年~2014年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 大学 日本語教育主専攻
フィリピンの技能実習生の渡日前日本語訓練校
経験詳細
  • 地域:ラグナ州カランバ市
  • 月収:40万円(18万ペソ)
    かなり生活に余裕がある
  • 専任講師(正規雇用)
  • 1年(2016年~2017年)
    *現在は退職

2016年から2017年の1年間フィリピン国ラグナ州カランバ市にある日本語教育機関に就労していました。
この学校は普通の日本語学校ではなく、日本で3年間技能実習生として派遣されるフィリピン人生徒たちに対し、日本へ行く前の日本語訓練校です。

生徒数は約2,000人おり、9割が男子生徒です。彼らはこの学校で3か月日本語能力試験(JLPT)のN5レベルを勉強し、試験に合格した者はN4レベルへと進級します。その後機械加工や電気、電子等の技術を学び、技能実習生として日本へ派遣されます。

1クラス35人ほどなので、クラスは常に熱く、うるさい状態です。下は19歳、上は27歳までの生徒がおり、私とも同世代なので仲良くなることができました。

しかし生徒たちは日本語に興味があって入ってくるわけではなく、「日本に行って稼いで家族を支えたい、いい暮らしをさせたい」という動機で入ってくる者が大半なので、日本語を勉強するモチベーションは低いです。

授業は一日9時間と大変長く、一日でいくつもの文型を教えるカリキュラムのため、生徒たちの疲労度も大変高いです。

しかし日本に行くためには所定のカリキュラムを修了するだけではなく、校内定期試験にも合格する必要があります。

残念ながら、「日本にはいきたいが、日本語の勉強はあまりしたくない、日本語は難しい」と言って、退学してしまう生徒が山ほどいるのも事実です。

教えるこちらも長時間の勤務と、モチベーションの低い生徒が多くいるのはつらいところでした。
ただ、ここは企業が作った日本語訓練校なので、お給料は日本と同じ+海外赴任手当がもらえたので、非常にありがたい環境にありました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

現地のフィリピン人教師たちは基本的にその学校の元生徒で、日本で3年間働き、JLPTでN2を取得した人たちでした。そのため日本語教育を勉強したわけでもなく、自分たちが学校で習ったとおりに生徒たちに指導していました。

当然教え方はみんなばらばらなうえに、間違って教えてもらったものをそのまま生徒たちにも教えていたので、それを修正するのが非常に大変でした。

毎日いろいろなクラスに入り、間違っているところは後でこっそりフィードバックという地道な作業をしていくしかありませんでした。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

日本への突然の転勤を命じられたからです。日本にも協同組合があり、そこでの日本語教育に携わるように言われたのですが、私はまだフィリピンで働きたかったこともあり、退職することを決めました。

また通常の日本語学校と違い、日本からいらっしゃる企業様への対応、接待の回数も大変多く、日本語教育以外の点で難しさを感じていたことも退職理由の一つです。

給与・待遇

月収 月収:40万
月収内訳
  • 基本給:20万円
  • 海外赴任手当:15万
  • その他:5万円
基本労働時間 1日9時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計10時間
待遇 有給
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居提供
  • 住居費用負担
  • 家具、電化製品
  • ビザ申請費用
  • 日本との往復航空券
クラスの長期休暇 冬休み:10日  
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される

日本の企業への所属という形態だったので、お給料はとてもよかったです。海外赴任手当もついていたので、その会社の役員と同じぐらいもらっていたようです。

家賃、光熱費等は無料ですし、フィリピンは物価も安いので、全く問題なく暮らすことができました。

社宅は1LDKのお風呂付(通常フィリピンでお風呂はついていません)で、一人暮らしには広すぎるほどの大きさでした。

福利厚生も完備で、保険・年金も心配はありませんでした。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

ここまでいいお給料は、日本国内でも、国外でも日本語教師ではふつうもらえないと思います。日本語教師でなくとも、20代の女性会社員にしては非常にいいお給料でした。ただその分日本語教育以外の業務を求められることも大変多かったです。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス35人
学習者の年代 社会人
1日の時間割 月曜日
  • 8:00~18:00  
    1日中初級クラス 文法、読解、漢字等時間を区切って1日中授業
火曜日
  • 8:00~18:00  
    1日中初級クラス 文法、読解、漢字等時間を区切って1日中授業
水曜日
  • 8:00~18:00  
    1日中初級クラス 文法、読解、漢字等時間を区切って1日中授業
木曜日
  • 8:00~18:00  
    1日中初級クラス 文法、読解、漢字等時間を区切って1日中授業
金曜日
  • 8:00~18:00  
    1日中初級クラス 文法、読解、漢字等時間を区切って1日中授業
休日 土日
一日休めていました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

1日9時間授業と長丁場で、しかも飽きやすくモチベーションの低い生徒たちをどう集中させるか、内容を定着させるかに苦労しました。

しかし逆に言うと様々なことを試せるので、今度はあれをやってみよう、と日本語教師ならではのアイデアをなんとかふり絞って授業をしました。

具体的には、1日の授業の中で「漢字」「読解」「聴解」「音読」と四技能をフル活用する授業を行いました。読解はただ問題を解かせるのではなく、4人ぐらいのグループを作り、グループで意見を出し合い、答えを出させます。その後ほかのグループがどれを選んだのか、なぜそれを選んだのかを発表させます。

そうすることにより、読解をぼんやりと解かせるのではなく「考えて」読ませることができます。

また他の日本人日本語教師にもアイデアやネタを提供してもらい、助け合ってできたのがよかったです。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
日本語教師の教案
使っている教科書が『みんなの日本語』だったので、これに載っている導入の仕方や応用練習を参考にしていました。
参考になる書籍
盗み見教案 きいろいぴよ    
対象者:初級
教案の書き方、ではなく教案そのものを拝見できるので、そのまま使ったり、自分のやり方とミックスするなどして使っています。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

すでに山ほど日本語教材があったので、そのあたりは用意しなくても大丈夫でした。
生徒の興味を引くため、もっと生教材(日本のお菓子や、雑誌、スーパーの広告など)を持っていくべきだったかなと思います。

あとはもともと愛用していた参考書や、これまで得たデータなどを引き続き使えたので、持って行ってよかったです。

就職活動

国選びで重視した点
  • 治安
  • 物価の安さ
  • 気候
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 必須資格
応募時に
必要とされた資格
大学 日本語教育主・副専攻
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外:スカイプ面接

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日系企業が多く進出しているため、社員に日本語を教えてほしいなど需要はあります。実際に同僚のフィリピン人日本語教師が、他企業に日本語教師として転職したのも何度も見ました。ただ、求人はベトナムの方がはるかに多い印象を受けます。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

これまでの日本語教師経験についてや、技能実習生について何か知っていることはあるか、授業時間は9時間だが大丈夫か、現地では安全を考慮して休日で歩くことを禁じられているが問題ないか、などを聞かれました。

日本語教育のことより、現地での生活が大丈夫かどうかの質問が多かったです。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

現地では同僚の日本語教師以外とは英語で話さなければいけないので、英語は必須です。またフィリピン人同士はタガログ語を話すので、タガログ語がわかるとなおいいです。

またどこの国でもそうだと思いますが、日本語教育だけでなくパソコンの資格やスキルを持っていた方がいいです。

パソコンで資料を作ったり、カリキュラムを作ったりとパソコンのスキルがあるだけで仕事の幅が広がります。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
JICAパートナー
フィリピンの場合インターンやボランティアの求人が多いが、時々日本語教師の求人ものります。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

初めての海外での日本語教師が、南米のブラジルだったので、今度はもう少し近い国で日本語教師をしたいと思ったのがきっかけです。

特にフィリピンは行ったことがある人が身近に多くいて、皆が口をそろえてとてもいい国だといっていたので、ずっと興味がありました。

周りの人にもまた海外で日本語教師をしたい、ということを言っていたところ姉が「こんな求人があったよ」と紹介してくれたのが、その教育機関でした。

条件も自分に合うし、待遇もよかったので迷わず応募しました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

短大に通っていた時、国際協力について勉強する機会がありました。そのとき、「お金や物資などを与えることもいいが、それより知識など現地の人が自らの力で成長していくきっかけを与えることが大切だ」ということを学びました。

その時に「自分には何ができるだろうか」と考え、国語が得意だったことがあり「日本語教師を目指してみよう」と思いました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

世界中に職場があるところです。海外が大好きなので、海外就職が非常にしやすい日本語教師になってよかったなと思います。

あとはやはり生徒さんや、同僚の現地人教師に感謝されたときや、生徒たちが成長したのを見たときはなんとも言えない喜びがあります。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

自分の知識のなさを痛感したとき、うまく教えられなかったとき辞めたいと思いましたし、実際に日本語教師を辞めていた時期があります。

しかし、やはり自分が好きなことは日本語を教えることなんだ、とまた日本語教育の世界に戻ることになりました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
もし日本語教育専攻でなければ、今勉強していることをまずしっかりと勉強してください。養成講座や、日本語教育能力試験など日本語教師になる方法はいくらでもあります。

それよりも今勉強していることや、社会に出てからの経験が絶対に日本語教育の現場でも役に経つときがきます。

会社でのビジネスマナー、パソコン技術、それらは私も海外の教育現場で大変役に立ちました。日本語教師になるまえに、一人の社会人になることが後々役に立ちますよ。

【社会人の方へ】
これまで様々な分野でご経験を積まれていると思うので、ぜひ養成講座等を受けて日本語教師になっていただきたいと思います。

どうしてもお給料の面や、雇用形態の面で会社員より不安定になりがちな日本語教師ですが、それ以上に得られるものが多いのが日本語教師の最大の魅力です。

一度の人生やりたいことをやってみてください。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

フィリピンは日本から約4時間ほどで来られるので、心理的にも近く感じられます。初めて海外で日本語を教える方にとっては最良の場所といってもいいかと思います。

気候も温暖で、国民性も助け合いの精神があり、穏やかです。もちろん他国と同様、日本人よりは勤勉さが劣るところがあったり、だまされたりすることもあります。プライドが高い人も、やる気がない人もいます。

しかし大変我慢強く、やさしいフィリピン人のとりこになることは間違いありません。

料理もおいしいですし、生活用品も一通りそろっており、大変暮らしやすいです。とにかくおすすめの場所です。

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