元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

日本語教師経験談 : ブラジルの民間日本語学校

情報公開日:2014/12/02


「授業風景」 自分で文を作って書いている様子です。

海外での日本語教育経験に関する全般の質問

kmmさん(39歳・女性) 
国名 ブラジル
期間 12年 (2002年3月~2014年10月)
派遣先 民間日本語学校:西部アマゾン日伯協会
給料 月 600 レアル/クラス
日本円に換算して 月 3,000円/クラス
*なんとか生活ができる(4クラス位を担当すれば生活できる)
滞在中、派遣先が負担したもの なし
派遣先での日々のスケジュール 月・水 19:00 ~ 20:30
火・木 19:00 ~ 20:30
土 08:00 ~ 10:00 今年はこのクラスのみ担当
土 08:00 ~ 11:00
土 14:00 ~ 17:00
担当の先生が欠席せざるを得ない場合のみ、代理として授業を引き受けています。
授業形態 クラス授業 1クラス 10~20 人ぐらい

Q:ブラジルでの日本語教師経験について総合的な感想

ブラジルでは共通語であるポルトガル語があるので、ポルトガル語を覚えてしまえば、直説法よりも教えるのが簡単です。しかし、ポルトガル語で文法を説明できるようになるまでは時間がかかりました。

日本語の表現でポルトガル語に訳せないもの、反対にポルトガル語の表現で日本語に訳せないものの説明はとても難しく、そういった言葉は文化の違いなども背景にあるので、言葉だけではなく両国の文化もよく知り、授業の他にも文化を見せることができるような行事を入れていくことが大事だと思いました。

ブラジルには親日家が多く、日本に興味がある人も多いので、日本の情報も私自身で常に更新しておかなくてはいけません。今はインターネットを通して、日本のテレビ番組を見たり、マンガを読んだりできる時代になったので、生徒の方が私よりも新しくできた言葉を耳にする機会が多く、急に意味を聞かれても分からないことばも少なくないです。

生徒に納得がいく授業をするためには、いつまでも自分自身の勉強を止めることなく、新しい情報も求めていかなければいけないと学びました。

Q:どのような経緯でブラジルで勤務することになりましたか?

私は17年ほど前に日本語教育養成講座を修了し、2年間札幌のボランティアグループで日本語を教えていました。

しかし、ボランティアで教えるためにはアルバイトの時間調整は必須で、教材などの準備に費やせる時間が限られてしまうので、正式な講師として働ける場所がないかと探していたところ、JICAの日系社会青年ボランティアプログラムのことを知りました。

そして、1999年に応募し、2000年から日本語教師としてブラジルに派遣していただきました。(勤務地の希望は告げませんでしたが、JICAの方でこちらに決定しました。)

契約が終わってから国際結婚し、再び同じ民間学校へ戻って引き続き授業をしています。

Q:ブラジルの日本語教育事情をお聞かせください。

ここブラジルには日系人が多いので、日本人が多く住んでいるところは全国的に日本語の継承教育に力を入れており、日本語に対する需要もかなり高いです。

また、最近はアニメや日本のスポーツなどが好きな生徒が日本に興味を持ち、日本語を勉強するというケースも大変増えてきています。

私が住んでいるマナウス市の場合は、さらにフリーゾーンの工業地帯があり、日系の会社が30社以上も存在するので、従業員として働いている人も日本語を勉強しています。

日本の会社は派遣員が全て日本人なので、その日本人とコミュニケーションを図るためには英語か日本語が必要になってきます。私は以前、日本の会社2か所で授業をしていましたが、一つの会社では、1クラス25人のクラスを4クラス担当するほど日本語に力を入れていました。

もう6年くらい前になりますが、日本の会社で授業を行っていたときは、当時で1クラス辺り1,500レアル(75,000円相当)、4クラスで6000レアル(300,000円相当)のお給料をいただいていました。但し、この中から税金等が引かれますので、実際には手取り4,500レアル(225,000円相当)ほどでした。

このクラスは大人数であったにも関わらず生徒も皆熱心で、私も大変楽しく授業をさせてもらいましたが、私の都合で授業を続けていくのが困難になったため2年ほどで担当を降り、他の先生にお任せしました。

Q:現地でどのような日本語教師が求められると思いますか?

ブラジルの文化や習慣もよく理解し、柔軟な授業ができる人が求められると思います。

ブラジルにいながらも、日本の文化を紹介できるような人、例えば、日本ではひな祭りや子どもの日に何をするかを紹介したり、箸の使い方を見せながら食事のマナーを教えたりすることができることも大事です。

生徒の日本語力もどんどん上がっていきますので、いつも向上心を持ち、生徒に追い抜かされることのないよう努力を続けるようにしておかなくてはいけません。

Q:現地で苦労したことは?

言葉の面では大変苦労をしました。青年ボランティアとしてこちらに滞在していた時は派遣先にも日本人の方が多くいらっしゃったので、ポルトガル語がそれほど分からなくても問題なく生活できました。

しかし契約が終わり、一人でこちらに戻って来たときはポルトガル語が分からなかったので、生活を立ち上げるために、また、立ち上げてからも大変でした。

特にこちらはクレームを言わなければ、相手の都合のいいようにされるケースも多く、例えば賃貸契約なども、入居前に壊れている部分などをしっかりとポルトガル語でクレームしなければ契約書にも記述されないので、賃貸契約が終わりアパートから出る場合に壊れているものを(入居前から壊れていたものも)修理するように言われることも多々あります。

授業においても教材の入手は大変困難です。書籍は全てサンパウロからの取り寄せか日本からの取り寄せになるので、その分の輸送料も高くなりますし、折り紙なども売ってはいますがかなり高額です。習字の道具などはなかなか手に入りません。

Q:現地に行く前にもっと準備すべきだったことはありますか?

ポルトガル語をもっと勉強しておくべきだったと思います。

こちらは日本の学習者とは違い、皆共通言語(ポルトガル語)を話すので、授業を直接法でする必要はありません。ですので文法説明の時間を節約することができますし、学習者の不安を取り除くこともできます。そして、その節約した時間を他のことに利用し、有効につかうことができます。

しかしポルトガル語を覚えていないと無駄な時間も多くなってしまいますし、授業中に気分が悪くなった子どもがいたりしても症状が理解できず、ご両親に電話で伝えることもできません。

旅行などの短期間滞在ではないので、生活はもちろんのこと授業をする上でも、最低限のことは伝えられるようにしておくことは大事だと思いました。

Q:ブラジルの求人情報はどこで得ることができますか?

ブラジルで働きたい方がいらっしゃったとしても、ビザなどの問題から個人的にこちらに渡って仕事に就くのはまず難しいと思います。JICAの日系社会青年ボランティアプログラム、またはシニアボランティアプログラムのように、派遣を行っている団体の制度を利用するのが一番確実で、安心して働けるようになると思います。

また、短期(1年間)であれば、ブラジル日本交流協会もありますが、こちらは100万円弱の参加費が必要です。

Q:ブラジルで今後日本語教師として働きたい人へ、
 どんなアドバイスをしますか?

ブラジルは、地域によっても温度差が違いますが、気候や習慣なども日本とはまるで違います。まずは、こちらの土地に慣れることが第一です。ブラジルは友達になれば、困ったときに色々と助けてくれる人が多いので、友達を作り、生活の基礎をしっかりと築くことが大事だと思います。

そして、毎日を気持ちよく過ごすことができれば、自ずと授業に取り組む意欲も増しますし、生徒との接し方も良くなっていきます。

授業には仕事を終えて疲れてくる人も多いかもしれませんし、こちらの人の性質上、単調な授業ですとすぐに飽きてしまいます。

ですので、クラスの人数に関わらずペア、またはミニグループを作り会話を練習させたり、自分たちで既習事項を使い会話を創作させ、クラス全員の前で発表させたりと眠くならない授業にしたり、生徒がとても疲れていると感じる日は日本語でゲーム(フルーツバスケットやビンゴなど)をして気分転換をしてあげることも大事です。

またブラジルでも一年に一度、日本語のスピーチコンテストがあるので、そういう行事に参加させてみるのもいい経験だと思います。

ブラジル人はとにかく明るくて楽しい授業を好みますので、メリハリをきちんとつけた授業にすることがポイントだと思います。


「日本語スピーチコンテスト」
上級クラスの生徒は参加を義務づけられているので、3ヶ月以上前から練習を重ねます。


「ひな祭りのイベント風景」
歌を歌ったり、折り紙を折ったりして、楽しみながら日本の文化を知ってもらいます。


「絵画コンクール風景」
日本に関連したことをテーマに絵を描いてもらいます。マンガ部門と絵画部門があり、5歳から18歳までの生徒たちが参加します。


「先生のための講習風景」
写真は私が「教案の大切さ」について講習を行った時のものです。先生たちがグループで教案について考え、実際に教案を書き、それに基づいて模擬授業を行いました。

日本語教師に関する全般の質問

日本語教師歴 12年 (2002年3月~2014年10月)
日本国内でボランティア (1997年8月~1999年12月)
*現在も日本語教師の職に就いています
その他の海外教師経験 なし
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(札幌国際日本語学院)
日本語教師へ転職前の職 道庁臨時職員およびフリーター

Q: もともとはどのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

高校生時代にアメリカでホームステイをした際、ホストファミリーから色々な日本語の質問を受け、日本語を教えるのが楽しいと感じました。日本へ戻って日本語教育能力検定試験の存在を知り、過去問題集を買って読んだ時、自分は日本人であるのに日本語をきちんと理解していないことにも気づきました。

大学ではほかの言語を専攻しましたが、やはり日本語を教えてみたいという気持ちが強くあったので、大学卒業後に日本語教師養成学校へ通い、養成講座を修了した後、札幌のボランティアグループで教え始めました。

当時、日本では経験のないものが日本語教師として働くのは簡単ではありませんでしたので、ボランティアで教えた2年は実に掛替えのない大変貴重な経験となりました。

生徒が段々と日本語を覚え、使ってくれることで、「誰かに日本語を教えるために、日本語を勉強し、自分の知らなかったことを発見するのが楽しい」と感じ、日本語教師として生きていきたいと思いました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

普段の授業で生徒が難しい文法や表現説明を理解し、それを上手に使えるようになってくれた時にはいつも喜びを感じます。

また、生徒が何かの結果を残してくれた時、例えばスピーチコンテストで入賞したり、入賞できなくても私や本人が納得できる結果を残してくれた時、一生懸命日本語を勉強していたことで日本へ行くことができ、日本が大好きになって帰ってきてくれた時、私の教えた日本を実際に使ってみて何かの役に立ったと生徒から感謝された時などは、本当に「日本語を教えていて良かったな」と感じます。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

今まで一度も日本語教師を辞めたいと思ったことはありません。

日本語を教えることにより生徒が私に喜びを与えてくれますし、何より自分の勉強になるからです。日本語教師は自分の天職だと思っています。

日本語を教えた小さな生徒が勉強を続けながら大きくなり、数年後に会った時に思いがけず声をかけられ、まだ日本語の勉強を続けていると聞くと、他では得ることのできないような喜びを感じます。

生徒に日本語を通して日本のことを知ってもらい、日本語、日本人、日本が大好きになってもらえることが私の目標です。生徒の日々の成長を見ることが私の毎日の糧になっています。

Q:今後どのような日本語教師を目指したいですか?

常に自分の生徒の将来のことを考えて、授業を進めていくようにしたいです。

一番最初の授業でニーズ調査を行い、生徒とよく話し合った上で、生徒がどのようなものを求めているかを知り、将来必要になりそうなものを推測して慎重に授業の準備をするという自分のスタイルは、いつまでも続けて行きたいと思います。

自分が教えた日本語を、生徒がいつ、どこで使っても恥ずかしくならないように、いつも生きた日本語を教えるようにしていきたいです。

生徒とはいつもオープンな関係で、日本語についてばかりではなく、日本人や日本という国についても疑問や不安があれば、それを取り除くお手伝いができるような関係を保っていきたいです。

Q:教案作りで参考にしている、重宝しているサイトや書籍はありますか?

教案を作る際、何を教えるかによって便利なサイトが変わってきます。

例えば、助数詞などは
http://www5b.biglobe.ne.jp/~aiida/kazoekata/kazoekata-index.html
というサイトが便利ですし、

名詞や形容詞を教える場合は絵カードを使うととても便利なので、私は英語カードの無料ダウンロードサイトなどで使えそうな絵(自分好みのもの)をダウンロードし、それを授業で使っています。

例えば、名詞には次のようなサイトの文字無しをプリントアウトして使用します。
http://eigobatake.x0.com/a4card.html

少し難しい読解問題なども含め、教材を豊富に揃えているサイトとしては「みんなの教材サイト」もお勧めします。
「みんなの教材サイト」 https://minnanokyozai.jp/kyozai/home/ja/render.do

Q:通った日本語教師養成講座420時間コースの感想を教えてください。

日本語教師養成講座420時間コースは、ぜひ修了しておくべきだと思います。日本語を教えることに関し、色々な知識がつくだけではなく、授業の目標を立てるために必要なニーズ調査の仕方、教案の作り方、生徒を公平に評価できるようなテストの作り方、生徒の発音を直してあげる際に必要な発音法など、欠かすことのできない大事なポイントがたくさん詰まっているからです。

クラスの中でグループを決め、実際に教案を書き、教材を作り、模擬授業をしてみるのも大変良い経験になりましたが、私は特にテストの作り方や、発音の指導法を覚えたことが、今でもとても役に立っています。

私の場合、地元の日本語教師養成講座で有名な学校に自宅から簡単に通うことができたので、学校選びが簡単でした。もしもいくつかの選択肢があるのであれば、経験豊富な先生をたくさん採用している学校がいいと思います。先生から色々な経験話を聞き、アドバイスを求めることも大事です。
また、学校に通いながら、あるいは修了してからボランティアか何かの形で実際に授業を行い経験してみることもとても大事だと思いますし、後々、とても役に立つと思います。

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