元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

ブラジルの日本語学校 経験談

日本文化の継承教育の一環という姿勢がある

公開:2016/11/18
刈山 美音(女性・32歳) 
日本語教師歴 6.2年 (2010年~2016年)
*家庭の事情につき休業中
資格・課程
ブラジルの日本語学校
経験詳細
  • 地域:サンパウロ
  • 月収:約40,000円(840レアル)
    現地で生活をするのに十分
  • 非常勤講師(コマ/時間勤務)
  • 1年(2010年~2011年)
    *現在は退職

5年ほど前、日伯交流事業の一環で、ブラジル、サンパウロの現地日系団体が運営している日本語学校で教えていました。

日本の日本語学校とは異なり、生徒は3歳~18歳までの子供たちで、日本語レベル別にクラス分けされていました。

ほとんどが日系の子供たちなので、幼い頃から日常生活でも日本語に触れる機会はあるのですが、既に3世、4世の世代となっている現在では、日本語レベルの衰退はもちろんのこと、自分たちが日本人の血を受け継いでいるという意識も低下してきています。

その為、多くの子供たちはサブスクールという感覚で日本語学校へ通っていました。

日本語学校としても、語学教育というよりも日本文化の継承教育の一環として日本語がある、という位置づけで指導を行っているため、語学習得のための授業と平行して、書道などの日本文化体験や、音楽、体育、図画工作等を日本語を使って体験する授業、他の日本語学校との交流活動等にも力を入れていました。

ブラジルは通常の学校教育の中で、いわゆる5教科以外の科目がほとんど行われないため、生徒たちは日本語学校での活動をとても楽しみにしており、熱心に取り組む子供たちが多かったです。

日本語教授のスキル以外にも求められることが多く大変で、戸惑うこともありましたが、ブラジル人の優しい国民性に助けられて概ね何とかなり、楽しく有意義な教師生活を送ることができたと思います。

ただ、日本とはかなりシステムや人々の感覚に違いがあることも事実です。

例えば、日本に比べ上下関係の意識が薄く、何か問題が起こっても責任者が誰なのか曖昧だったり、会議やイベントの段取りを煮詰めることなく本番を迎えることも多く、始めはかなり戸惑う場面も多かったです。

全てのことがやっつけ仕事的で、次回へ向けた反省などを行うこともないため、とにかく今回を乗り切れればそれでOKという雰囲気でした。

これは日本の社会システムに慣れてしまっていた私としてはかなり疲弊するものがありましたが、最終的には「郷に入っては郷に従え」という気持ちで乗り切ることができました。

今ではそういったことも含め、日系移民継承教育の場を経験できたことは、人生の宝になっています。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

日本語教師として大変だったことは大きく二つありました。

ひとつは教授対象が子供であるということ、そしてもうひとつはそれが同時に日系人、つまり通常の外国人とは本質的に異なる環境で育っている学習者である、ということです。

私は初級クラスを担当していましたが、生徒の年齢は7歳から13歳までと幅があり、子ども向けの日本語を使ったゲームや創作活動を取り入れるなど、飽きさせないための工夫が必要でした。

また、日本語を使用する環境の中で暮らしている日系人を対象としているため、外国人を対象とした日本語文法を使った教授法はほとんど役に立たず、どちらかというと国語教育的な手法を用いることが求められました。

例えば、読解の授業には実際に日本で使われている国語の教科書を使用したり、漫画などの生教材を積極的に用いるなど、外国語話者に対する日本語教育と日本語母語話者に対するそれとの中間をうまく取りながら授業を行うことに努めました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

元々日伯交流事業の一環として派遣されていたため、1年間の任期満了を迎えて退職となりました。

前述の通り大変イベントの多い学校だったので、全て1回ずつしか体験することができず、反省を次に生かせないという点で心残りも多くありましたが、大変良い経験をさせていただきました。

給与・待遇

月収 月収:約40,000円
月収内訳
  • 基本給:30,000円
  • 実習手当:10,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    40,000円(840レアル)
  • 最低限必要な月収
    30,000円(600レアル)
基本労働時間 1日7時間 週5日勤務
残業(時間外労働) イベントのため、月の土日の半分以上は終日出勤
待遇
  • 有給
  • ブラジル各地への研修旅行経費
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居提供
  • 家具、電化製品
  • 日本との往復航空券
クラスの長期休暇
  • 夏休み:50日
  • 冬休み:21日
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される  

仕事としては月~金にお昼休みを挟んで午前と午後、それぞれ2コマずつ授業があり、土日もほぼ毎週のように課外活動がありました。ただ、ブラジルは祝日やそれに準ずる休みも多く、夏期冬期休みも長めに取れるため、休日は比較的多かったと思います。

住居は学校内に与えられており、その他に日本円にして月額4万円ほどの給与がありましたが、生活するには全く問題ありませんでした。生活については、全く問題ありませんでした。

住居、光熱費は調理用のプロパンガス代を除いて全て学校を運営している団体が負担してくださいましたし、プロパンガスもかなり安価で、生活に影響してくることはありませんでした。

また、住居が学校の敷地内にあるため通勤費等も必要なかったですし、地域の日系社会と学校がかなり密に関わっているので、保護者の方からかなり頻繁に食料の差し入れをいただき、食費も安く抑えることができました。

更に、参加した交流事業の一環として長期休み等にブラジル各地に旅行に行かせていただきましたが、その際の交通費、宿泊費なども、上限はありましたが、事業実施団体が負担してくださいました。

保険などは自分で掛けた海外旅行保険のみとなりますが、海外での職業体験として行く分には十分すぎるほどの待遇だったと思います。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

その他の学校の待遇に関して情報がないため、分かりません。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス10人ぐらい
学習者の年代
  • 小学生
  • 中学生
1日の時間割 初級クラスを4コマ
  • 8:00~10:00  
    午前授業
  • 11:00~13:15  
    昼休み
  • 14:00~16:00  
    午後授業
授業及び昼休み以外に授業準備、採点等
休日 土曜日と日曜日
休日に取り組んだ仕事:毎週というわけではないが、長期休暇以外の土日には何かしらのイベントが行われる場合が多く、その場合は終日勤務となった。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

最も苦労したところは、学校全体や、他の学校との共同でのイベントがかなりの数に上るにも関わらず、ほとんど有用な打ち合わせが行われないことでした。

良くも悪くも人間関係やその場の雰囲気を重視する文化が根付いているので、イベントなども中身を詰めてより良い物を目指すというよりは、実施することそのものを目的としているため、「適当にしてくれればいいから」という一言でいろいろなことが片付けられてしまうことに、慣れるまではとても戸惑いを覚えました。

しkし、事前に起こり得る問題を自分なりに想定して個人的に準備して臨むなどして乗り切っていました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • 漢字ドリルのJAKKA   
    漢字の練習プリント作成の参考にさせていただいています。
  • Nihongo-pro.com   
    漢字のレベルの確認に使わせていただいています。
参考になる書籍

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

いろいろと考えて日本からテキストなどいろいろと持って行きましたが、実際には思っていた以上に現地に教材は揃っていました。

ただ、直近の雑誌や漫画など、生教材はやはり手に入りにくいので、もう少し用意して行っても良かった気がします。

また、事前には自分がどのようなクラスを担当するのか不明だったので、子供向けの教材は用意できませんでした。もし分かっていたら、日本の小学生向けの教材をもう少し用意できたと思います。

就職活動

国選びで重視した点 日本語教育の現場があること
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
交流事業の一環であったため、選択肢はなかった
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 日本国内:鹿児島県

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

現在日系3世、4世の世代へと移り変わってきているブラジルの日系社会では、日本語そのものの必要性はほとんど失われてしまっています。

だからこそ自分たちのルーツを継承していきたいと、1世、2世の方々が日系団体を地域ごとに形成し、その団体の元で日本語学校が多数運営されているのですが、残念なことに1世、2世世代の減少とともに日本語学校も年々少なくなってきているという現実もあります。

現在は日本政府や日本の団体の支援も受けながら、継承教育を引き継いでいくべく各所で努力がなされています。

移民が開始されてからこれまで、長い時間をかけて日系人の方々が培ってきた信用によって、ブラジルでは日本や日本人に対する親愛や尊敬の念が深く根付いています。

最近では日系人のみならず、それ以外のブラジル人も日本語学校で学ぶ機会も増えており、継承教育の場であるのと同時に、日本文化を広める場としても期待されていることは、今後のブラジルにおける日本語教育の希望となっているように感じました。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

面接では、主に志望理由やこれまでの経歴、経験について質問されました。

日系社会への派遣ということは既に決まっていましたが、日系社会についての知識は特に問われなかったと記憶しています。

日系社会というある意味狭い世界に溶け込めるような人物であるかということと、海外生活への適性を測る面接内容だったと思います。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

私自身、前職は専門商社の会社員で、特にそれが役立ったということはありません。

語学力も、むしろ日本語教師をする上ではない方がいい場合もあります。あまりに語学が得意だと、子どもたちは日本語を使おうとしないことも多いです。

継承教育の場なので、日本の伝統文化、つまり書道や華道、空手や柔道などについての知識や経験があると生かせると思います。また、図画工作や音楽の授業、イベントも多数あるので、そういったスキルがあるとより良いかもしれません。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • 国際交流基金   
    日本語専門家/日本語上級専門家/日本語指導助手の募集あり。但し、ブラジルに派遣されるとは限らない。
  • ブラジル日本語センター   
    直接の募集はないが、ブラジルの日本語教育の現状について知ることができる。また、現地日本語学校一覧を見ることができるので、そこから直接日本語学校にコンタクトを取れば、採用されるケースもある。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

新聞に日伯交流事業での実習生募集の記事が出ていて、以前から日本語教育に興味があったため応募しました。

派遣先は事業主により指定されたので、特に自分から何かアクションを起こすことはありませんでしたが、何も予備知識がない中で飛び込むことも面白いと思い、参加させていただきました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

学生時代から日本語教育の世界に興味はあったものの、それだけでは生活が難しいという話を聞いていたので、一旦はあきらめ、一般企業に就職しました。

しかし、仕事をする中でやはり海外とのつながりを持って生活したいという思いが強くなり、時を同じくして参加した交流事業の募集を目にし、思い切って応募してみました。

応募の時点では日本語教師の経験も資格もありませんでしたが、ブラジルで過ごすうちにやはりこの仕事をしていきたいという思いが強くなり、日本に帰国してから本格的に勉強を始め、現在に至ります。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

やはり一番は学生の目標を達成するお手伝いができたと実感したときです。

日本語能力試験や留学試験の目標値へ向けての努力が実ったり、志望していた学校に入れたりしたときは大変喜びを感じます。

それから、自分が授業内で創意工夫して指導したやり方が成果を上げたときも嬉しいです。

直近では、学生に膨大な量の単語を覚えさせるために、学生自身にフラッシュカードを持たせ、学生同士で確認させるという手法を用いたところ、単語の記憶率が飛躍的に向上しました。

これは学生からもかなり好評で、自分たちが問題を出す側にも答える側にもなることにより、楽しみながら勉強できるとの声をもらいました。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

どの世界にもそういう側面はあると思いますが、殊日本語教育業界においてはその閉鎖性及び特殊性が大きな問題としてあり、時にそれがストレスとして降りかかってきます。

主婦の方や退職後の楽しみとしてされている方も多く、授業やそれに伴う雑務の質は担保されないことも多いです。

人的にも業界的にもアナログで、未だに引き継ぎをFAXで行っていたりするところも少なくありません。

また、非常勤講師が多いため、いろいろな働き方を希望している方がいらっしゃり、よく言えば仕事に対する価値観の相違を認め合う社会なので、教育に関する意識の統一も困難です。

それが高い授業料を支払っている学生への還元を妨げているような場面もあり、そのような葛藤を感じたときには辞めたくなることもあります。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
まずは一般企業への就職をお勧めします。というのも、日本語教師の仕事というのは、単純に日本語を教えるだけではないからです。

学生たちは最終的に日本での就職を目標としている場合が多いので、日本語と同時に日本の企業で働く上で必要なスキルも紹介していく必要があります。

また、日本語教育業界はほとんどの場合が非常勤講師からのスタートになります。

その場合、新人教育などはほぼ無いに等しいため、社会人としての基礎知識が身につかないまま仕事をしていくことになってしまいます。

大きな問題だと思いますがこれが現実ですので、まずは他業種で働いてみて、それから日本語教師を目指されることをお勧めします。どんな仕事でも日本語教師をしていく上では必ず糧となると思います。

【社会人の方へ】
最初に確認していただきたいのは、やはり、生活できるかどうかということです。日本語教師はほぼ、まずは非常勤講師からのスタートとなり、それだけで生活していくのはかなり困難です。

特に初めのうちは授業準備にも時間がかかり、そんなにたくさんのコマ数をこなすことはできません。

最初の2~3年は安定した収入は得られないという覚悟で、それなりの貯蓄があるか、あるいはあまり大変でない副業があるか、とにかく生活の基盤となるものの準備が必要です。

結婚していらっしゃる方には両立のしやすい業種ではあると思いますので、パートタイマーで働きたいという方にはいいかもしれません。

いずれにしてもよく情報を収集し、現在のご自身の状況を踏まえての判断が求められると思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

日本語教師は、日本という場所に来た外国からの学生が初めて本格的に触れ合う日本人です。いわば日本人の代表と言ってもいいかもしれません。

私たちが薄っぺらければ、日本人全体も薄っぺらく見られますし、逆に人間的魅力が持てれば、日本そのものを好きになってもらえると思います。

日本語教師とは日本全体の利益に資するような外国人の育成を目的として働くものだと私は考えています。

それは単純に日本のために働いてくれる、ということではなく、後世に渡って日本と友好な関係を築いていきたいと思ってくれる人を世界中に増やしていく、ということです。

世界情勢が不安定になっている昨今において、今後海外との関係をどのように築いていくかは益々重要な問題になってくると思います。

その中で自分自身が教師として何を果たすべきかよく考え、人間として、日本人として、魅力溢れる人間になれるよう日々努力していくことができれば、素晴らしい日本語教師になれるのではないかと感じています。

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