元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

ブラジルの日本語学校 経験談

日系人に対し、日本人ができること

公開:2018/08/15

jinzinho(女性・33歳) 
日本語教師歴 7年 (2011年~2017年)
*他業種に転職
資格・課程 なし
ブラジルの日本語学校
経験詳細
  • 地域:南東部
  • 月収:2万円(700レアル)
    それだけでは生活は難しい
  • 非常勤講師(コマ/時間勤務)
  • 7年(2011年~2017年)
    *現在は退職

ブラジルで、日本語を学びたいという人は、大雑把に分けて二通りいます。サブカルチャーが好きな人と、日系人です。アニメ、漫画など、サブカルチャーが好きな生徒は、自ら学びたいと思って入学しますから長続きしますが、日系人は自分のルーツが日本だから、という漠然とした理由のため、なかなか長続きしません。なるべく日本に興味を持たせるよう、書道や折り紙、歌など、様々な教材を使って授業を行いました。

日系人の生徒は、多くが日系3世で、祖父母と少し日本語で会話をする程度だが、家ではほとんど話さない、という人が多いです。そのため、日本のニュースや最近の文化についても知識が不足しており、授業中私が話す日本の現代文化や現況の社会問題について、興味と驚きをもって聞いてくれます。

最も印象に残っているのは、日本人の両親を持つ日系2世のブラジル人生徒が、5年以上授業を行ったある日、「先生のおかげで母と日本語で会話することができるようになりました」と報告してくれたことです。

今では希薄になりつつある、日系人の日本への興味を取り戻すことができたとき、大きなやりがいを感じます。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

ブラジル人は積極的で話し好きなので、会話の授業は話がはずみます。しかし、日本人独特の、漢字の反復学習や動詞の活用の丸暗記は苦手なようです。

日本人はどうやって多くの漢字を覚えるのか、とよく聞かれますので、漢字の起源や書道の美しさなど、漢字は魅力ある物だということを伝えた上で、上手に書けるよう、何十回もノートに練習する、と伝えました。

ブラジルでは、過去の日系人の努力のおかげで、日本人は努力する立派な人、というイメージが強いです。人にもよりますが、「私も努力した、あなたもできる」と伝えると結構頑張ってくれます。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

家庭の事情で引っ越すことになり、やむなく退職しました。

数カ月前から引っ越しすることを伝えていましたので、学校側も理解してくれましたし、生徒も送別会を開いてくれたり、とても幸せに退職することができました。

給与・待遇

月収 月収:2万円
月収内訳 時給:500円
昼食代:400円
基本労働時間 1日8時間 週1日勤務 +
1日1.5時間 週1日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇
  • 交通費
  • 賞与(年間2万円)
  • 健康診断
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇
  • 夏~カーニバル休み:60日
  • 冬休み:30日
クラスの長期休暇中の
給与保証
長期休暇中は別の仕事をしている

授業が週に2回のため、教師はほとんどが家庭教師等の仕事を掛け持ちしています。この日本語学校だけで生活することは不可能で、家賃すら払えません。

教師の休職には寛容で、事前に伝えていれば、1カ月ほど休みを頂くことができます。

年に何回か、授業後に日本文化に関するイベント(祭り)を行いますが、教師はボランティアで参加します。その時の給料は発生しませんが、運営側からは無料でお酒や夜食を頂けます。無給ですが、義務でもないので、軽い気持ちでお手伝いしていました。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

給与はとても低く、ボランティアのような気持ちで働いていました。現地の他の私立の日本語学校も、給与は同じ程度かと思います。最もキャリアのある、給与のいい勤務先はやはり大学ですが、募集している確率はとても低いですし、大学院卒など、それなりの資格がないと応募すらできません。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス6人
学習者の年代
  • 小学生
  • 中学生
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
1日の時間割 土曜日
  • 8:00~16:00  
    初級クラスを3コマ
木曜日
  • 19:00~20:30  
    中級クラスを1コマ
休日 日・月・火・水・金
1日休めていました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

1コマ目の授業は8時から始まりますので、少なくとも30分前には着いて、授業の準備をしなければなりません。住んでいる場所にもよりますが、5時起き、という同僚もいました。

ぎりぎりに出社すると、コピー機の前に他の先生方のコピー待ちの行列ができており、授業に遅刻してしまいます。私はなるべく、前の週に次週つかう教材のコピーはとっておく、という方法をとっていました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • 日本語教師の教案
    授業で使用していた「みんなの日本語」という教科書の単語一覧が便利で、どの単語をいつ習ったかチェックするために使用していました。
  • NEWS WEB EASY
    教科書一辺倒にならないよう、日本の最近のニュースをなるべく伝えるようにしていました。このサイトは音声もふりがなもついているので、便利です。
参考になる書籍
みんなの日本語初級I 第2版 初級で読めるトピック25    
対象者:初級
発音練習、スピーチ練習のために読ませていました。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

折り紙と、折り紙の本を日本から持ってくれば良かったと思いました。折り紙は子供から大人まで楽しんで作れる、日本の文化ですので、学校のイベント等で大活躍します。例えば、ひな祭りにはお内裏様とお雛様を折り紙で作り、文化祭で掲示しました。(写真参照)

また、日本の100円ショップで売っている文房具などをたくさん買って持っていくと、文化イベントでゲームを行ったときに、勝者への商品としてあげることができますので、学校の予算に計上することができるのであれば、一時帰国の際の大量買いをおすすめします。

就職活動

国選びで重視した点
  • その国の母国語が得意
  • 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 必須資格
  • 学校の規模
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

ブラジルで、日本語を学びたいという人間は、大雑把に分けて二通りいます。サブカルチャーが好きな若者と、日系人です。

ブラジルでの日本語の教え方は、数十年前は日系人に対する継承教育が主流でしたが、日系人の日本文化離れと、ブラジル人の若者のアニメや漫画等のサブカルチャーへの興味により、外国人への日本語教育にシフトチェンジしていきました。

私が教えていた学校でも、アニメや漫画が好きな若者が全生徒の7割を占めており、教師も日系人ではなく、アニメ等を見て育ったブラジル人でした。それでもまだ、日系人の生徒もいますので、生徒によって継承教育と外国人への日本語教育と使い分けていました。

現地で仕事で使える言語ではないので、英語やスペイン語の需要に比べると格段に劣りますが、日本のポップカルチャーが人気であり続ける以上、需要がなくなることはないと思われます。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

私は語学系の大学を出た日本人というだけで採用されましたが、本来であれば日本語学科の大学を卒業するか、日本語教育能力検定に合格している方が望まれますので、日本語教育能力検定試験は勉強しておいた方が良いと思います。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • サンパウロ新聞
    現地の日系新聞です。現地の日本語教育関連のニュースが掲載されます。たまに求人も見かけます。
  • ニッケイ新聞
    現地の日系新聞です。現地の日本語教育関連のニュースが掲載されます。たまに求人も見かけます。
その他求人情報
紹介(日系協会):現地の日系協会に、日本語教師の仕事を探していますと挨拶にいくと良いと思います。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

私の知り合いの日本人がこの学校で無給で働いていまして、彼が日本に帰国するということでバトンタッチしました。

最初は資格も経験もない身でしたので、ボランティアとして働いていましたが、次第に経験を積み、受け入れられ始めたので、正式に契約する形となりました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

現地では、ナチュラルな日本語を話す日本人と会話の授業をしたいと望む日系人の生徒と、漫画やアニメから日本語を学んだ若いブラジル人の教師、という相容れない状況が生まれていると感じました。

資格も何も持たない私が日本語教師を目指したのは、そんな「日本人の日本語教師」が不足している、と感じたからでした。

外国人の日本語教師は、自然な日本語は話せません。私が必要とされている、という責任感を強く感じました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

日本人の両親を持つ日系2世のブラジル人生徒が、5年以上授業を行ったある日、「先生のおかげで母と日本語で会話することができるようになりました」と報告してくれました。

そのほか、「先生のおかげで日本に旅行に行ったとき、日本人の親戚と緊張することなく話すことができた」と言ってくれた日系2世の生徒もいました。

このように感謝してもらうと、とてもやりがいを感じます。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
しっかりと日本語教師になるビジョンが見えているのであれば、大学の日本語学科を専攻し、大学院で博士合を取ると、色々な国の大学で、日本語教師として生計を立てていくことができるかもしれません。大学卒だと、募集要項によって大学で教えることができない可能性がありますので。

【社会人の方へ】
まずは働きながら、日本語教育能力検定試験合格を目指してください。また、土日などに知り合いの外国人に日本語を教えてみるのも良い経験かもしれません。思っているより日本語は奥が深い、と感じますから、それでも続けたい、と思えたら転職したら良いと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

ブラジルでは、ナチュラルな日本語を聞きたいと望む日系人の生徒がいる一方、先生は漫画やアニメが好きな若いブラジル人、という相容れない状況が存在すると感じました。ですので、日本人の日本語教師は現地ではとても貴重な存在です。

是非、現地の日系人に溶け込める日本語教師になってください。

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