元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

中国の大学 経験談

サブカルチャーを通し日本に憧れる学生達

公開:2015/12/19

アヤ(女性・34歳) 
日本語教師歴 2年8ヶ月 (2013年~2015年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 大学院専攻 外国語学専修 日本言語文化学
中国の大学
経験詳細
  • 地域:広州
  • 月収:162,000円(9,000元)
    かなり生活に余裕がある
  • 常勤講師(非正規雇用・フルタイムで勤務)
  • 1.5年(2014年~2015年)
    *現在は退職

中国・広東省広州市にある大学で1年半の間日本語教師として勤務しました。

日本語専攻のある大学へ社会人入学、大学院を出て先生の紹介で中国へいきました。中国は行きたい国ではなかったのですが、日本が好きで日本語を勉強したいと思ってくれている学生に教えられるならと中国行きを決めました。

授業は週に18コマ(45分/1コマ)で、会話のほかにも作文・リーディング・日本文化の授業を担当し、学生の需要に合わせて、俳句を作る課外授業や日本語音声「ラ行とナ行」の授業を行ったこともあります。

いくら勉強して教壇に立ってもハラハラドキドキしてしまう場面は多く、毎日学生と一緒に日本について勉強している気分でした。

日本に来て日本文化を肌で感じながら日本語を勉強している学生に比べると、中国では漫画・アニメ・ドラマ・映画などから日本を学び、日本に対して大きな憧れを抱いている学生が多く、授業中も文化についての質問がとても多かったです。

「ドラマでも漫画でも、クリスマスのシーンではチキンを食べているけれど本当ですか。先生も食べるの?」など、私にとっても新しい視点で日本を学ぶ機会になり、学生に合わせて、毎週日本のドラマを見るようになりました。

また、学生たちが情報を得にくい日本の流行や昔の日本の事などを教えると、とても喜んでくれました。例えば、江戸時代の日本人の歩き方、文学資料から読み取れる日本人の距離感、それから「師走」の語源など。

ゆるキャラについての授業をしたこともあります。授業後に大学のゆるきゃらをみんなで創作した際には、とても盛り上がりましたよ。

苦労や失敗、学びは尽きませんが、ずっと続けていきたい大好きな仕事です。


ゆるキャラ作り


運動会。クラスで揃えたユニフォーム姿がかっこいいです。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

日本ではプリントは先生が用意して学生に配布するというのが普通ですが、中国では先生がプリントを用意するというのは特別なことでした。

勤務校は大規模の大学でしたが、コピー室は小さくてコピー機も一台のみ、紙も実費で用意する必要がありました。

学生にデータを送ってプリントしてもらう方法もありましたが、それも学生がコピー代を払わなくてはならず、なるべく配布物をしないような授業に作り替える必要がありました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

日本語教師の仕事や勤務先の待遇にはかなり満足していたし、ずっと続けていきたいと思う気持ちもありました。

しかし、大学の立地が悪く、都市部に出るにはバスで2時間かかるなど、生活を続けるためには不便すぎたので、契約終了をもって退職することにしました。

給与・待遇

月収 月収:162,000円
月収内訳 基本給:162,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    162,000円(9,000元)
  • 最低限必要な月収
    72,000円(4,000元)
基本労働時間 1日4.5時間 週4日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇
  • 交通費
  • 賞与(年間の賞与支給額162,000円)
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居提供
  • 家具、電化製品
  • 日本との往復航空券
クラスの長期休暇 夏休み:60日
冬休み:60日  
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される  

中国人の先生方の2倍の仕事量で、お給料は2倍以上いただいていました。

物価も安く、身の回りのもの(携帯電話・生活用品など )を揃えるとお金を使うこともないので、給料の大部分は貯金に充てていました。

住居は、大学内にある教員寮の一室が支給されて、家具も全て大学が用意してくれました。電気代は自己負担でしたが、あとは調理器具・シーツに至るまで全て大学に出してもらえました。

また、到着の日から部屋でインターネットも使うことができ、Wi-Fiも欲しいと言うと後に設置してもらえました。

昼食は社員食堂を利用でき、通常の半額で食事ができます。1食は150円くらいです。

それから、大学が外国人教師をまとめて保険に入れてくれたので、保険料は1年で200元(約3600円:料金は一緒に加入する先生の人数によって変わるようです。)くらいでした。

私は着任時にこのことを知らず、渡航前に1年で八万円位する日本の保険に加入してしまいました。これから行かれる方は見落としがちな保険についても確認すると良いと思います。

また、クリスマスや女性の日など特別な日には、大学からプレゼントをいただきました。クリスマスには絹のスカーフ、女性の日には毛布・トイレットペーパーなど、外国人教師を大切にしてくれている気持ちが伝わり、うれしかったです。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

私が勤めていた大学は、中国でも裕福な地域・広州にあったので、待遇の面ではとても良かったのだと思います。

大学には長期休暇が年に2回あり、実際仕事は1年で8ヶ月ほどしかしませんでした。しかし、休暇中も給料の100パーセントが支給されたので、本当に有難かったです。

同地域の他大学でも同じくらいの給料が支給されているようでしたが、授業のほかにも翻訳の仕事を任されたり、日本との交流イベントの運営をしなければいけなかったり、大変そうでした。

基本的に大学での仕事は、のんびりできる割に給料も高いのでおすすめできますが、大学によっては授業以外の仕事も任せてきたり、休暇中の給料は減額されていたり、航空券の支給がなかったりしますから、契約前には注意が必要です。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス約40人
学習者の年代 大学生
1日の時間割
  • 8:50~10:25  
    中級クラス2コマ
  • 10:35~12:00  
    中級クラス2コマ
  • 14:30~15:55  
    初級クラス2コマ
休日 金土日と祭日
休日に取り組んだ仕事:金曜日は休み、土曜日に翌週の授業を準備し、終わらなければ日曜日も準備に充てていました。


休日を利用して桂林まで小旅行をしました。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

多くても一日に3つの授業(6コマ・4.5時間)をするだけなので、割と時間に余裕がありますから、仕事に追われるということはほぼありませんでした。

しかし、作文の授業を持つと大変です。授業中、学生が作文を書いている間は楽ですが、翌日の授業で返却したかったので、授業後80人分の作文チェックを毎週していたときは頭がおかしくなりそうでした。そんな時は学生の顔を思いだしながら、乗り切っていました。

休日は、翌週の授業の準備は週末が来る前に済ませて、金曜日の朝に出発して日曜日の夜に戻って来られるような小旅行をしました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
初級日本語げんきオンライン
会話の授業では、毎回日本語を使ったアクティビティの時間を設けており、その時の参考にしました。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

学生たちは日本の写真(桜・富士山など)をみると「おお!わあ!」など声をあげて、目を輝かせてくれますし、特に初級の学生たちには、たくさんの言葉でいろいろ説明するよりも、写真を一枚見せたほうが分かってもらえることが多いと着任後すぐに実感しました。

そこできれいな写真を見せてあげたいと思い、パソコンを開くのですが、インターネットが遅くなったり、使えない日があったり、見られないサイトがあったりしたので、授業で使いたい写真を一枚見つけるのに、ものすごい時間を費すことが多く苦労しました。

ですから、日本の生活や風景の写真などは、日本で用意しておけばよかったと何度も思いました。

書店へいけば、日本語を教えるときに使う画像集のようなものがあるかもしれません。そういうのがあると、授業の準備ももっと楽にできたと思います。

就職活動

国選びで重視した点
  • 治安
  • 気候
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 学校の規模
応募時に
必要とされた資格
大学院修了者
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

現在、中国では日本人の日本語教師は重宝されていると思います。日本語学科の学生の授業には他学科の学生も聴講生として参加したり、日本語を学びたい学生が多かった印象があります。

大学卒業後は日本へ行きたいという学生よりも、日本関係の仕事・日本語を使う仕事を中国でしたいと考える学生が多かったです。

また、休日に語学学校へ見学に行くと日本語教師の募集があるという話をよくされました。現地には日系企業も多くありましたから、大学卒業後に現地の日系企業に勤めて、語学学校で語学力を磨き続けたりしているようです。

日本語を学びたい人が尽きませんから、日本人日本語教師は足りないくらい需要があるようです。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

紹介でしたから採用に際して、面接というものはなく、現地に到着すると、学部長や大学の偉い方との食事会を開いていただきましたが、特になにを聞かれることもなく、おもてなしを受けて終わりました。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

授業中、媒介語を使う必要はないと思いますが、現地の言葉が出来ると生活が楽しく豊かになると思います。私は中国語がほぼ話せませんでしたから、食事の注文さえ出来ず、どこへ行くにも学生に通訳をお願いしていました。

これではいけないと思い、現地で中国語学科の学生にお願いして中国語を教えてもらっていました。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

その他求人情報
紹介:大学院の担当教員

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

大学院修了後の進路を考えている時に、担当教員の紹介でこの話が来ました。給料などの待遇は問題なかったのですが、当時は中国の大気汚染・環境破壊が報道を賑わせており、決断の折には大変悩みました。

しかし、山の中の大学で青空もあるし水もきれいだと聞いて心配は少し消え、「学生たちが本当に可愛いくて、日本人の先生が来てくれることを心から待っている」(大学の授業開始時に日本語教師がおらず、私は後期の授業で着任しました)というエピソードが決め手になって、中国へ行くことを決めました。

授業の初日に教室に入ると学生たちは全員席を立ち、大きな拍手で迎えてくれたので「来て良かった。この国でみんなと頑張って行こう」と思ったことを覚えています。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学入学以前は、社会人をしていました。その時にイタリアで三ヶ月間の滞在をしたことがあります。旅行より深く現地の人たちと関わる中で、日本がどこにあるのかさえ知らないイタリア人との出会いの多さに少しショックを受けました。

自分のイタリア好きの気持ちはどんどん育っていくのに、「日本は知らない」。その言葉に自分を否定されている気持ちに・・・。

それから「好きな国の人に、自分の国・日本のことをもっと良く知ってもらいたい!」「イタリアと日本の架け橋になりたい」と考えるようになりました。

しかし、実は私自身が日本のことをよく知らないと気づきました。そして、日本のことをちゃんと勉強してイタリアで日本語を教えたいという気持ちが生まれ、日本語教師を目指すようになりました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

学生と接していると日本に対するとても熱い気持ちを感じます。

貧しい生活の中で、少ないお小遣いを貯めながら日本語の辞書を買って大事そうに持っていたり、日本の一円玉を持たせると裏表を繰り返しながらキャーキャー興奮している姿など可愛くて仕方がありませんでした。

日本に対して大きな夢や憧れを抱いているけれど、まだまだ日本語も上手に出来ないし、日本の事もよく知らない。そんな若者に「はじめての日本人」として接することができるのは、日本語教師だからこそだと思います。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

なし

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
海外での就職を考えているのなら、どのようなチャンスも掴めるために大学院まで出ておくことはおすすめします。また教員免許も持っておくととても有利だと思います。

【社会人の方へ】
日本語関係の専攻出身ではないのでしたら、今後どのように働きたいか(国内・海外、大学・語学学校)を明確にした上で、大学・大学院の日本語科へ行くほうがいいのか、養成講座で充分なのかを検討されると良いと思います。

日本国内の語学学校で日本語をお教えになりたいのでしたら、養成講座で充分だと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

中国に行く前はニュースや新聞を通じて、中国に対するイメージが作られてしまっていました。率直に言えば、悪いイメージです。

それはある面では真実であり、ある面では全くの虚構であることを自分の目で確認できたことは、私が中国で得た有意義な経験の一つでした。

例えば、大気汚染の問題です。これは、中国全土が汚染されているわけではありませんでした。私のいた広州には、毎日きれいな青空と白い雲がありましたよ。

それから、反日思想の問題です。これも、蓋を開けると、思い描いていたものとは違う反応でした。私が日本人だと知ると「すごい!」「私も日本に行きたい!」など、かなり好意的なもので、日本人だという理由で嫌な思いをしたことは一度もありませんでした。

ただし、中国人の危機管理意識というのは、やはり私たち日本人とは全く違うものでした。雨季に大雨と山から流れてくる水でアパートが浸水しそうになったことがあります。

避難したかったのですが、避難先も用意されていませんでしたし、隣人たちもただ水位が上がるのを見ているだけで、その場から離れようとしませんでした。

後に日本への留学経験のある中国人の先生と話したのですが、「中国人はなにかが起こってから騒ぐけど、日本人はなにかが起こる前に騒ぐ」という意見で一致しました。

また、日本語教師の仕事を通じて出会うことができた中国人の学生たちは心が温かく、素直で、ホスピタリティに溢れ、勉強熱心でした。

時には叱らなければならない場面もありましたが、話をすれば聞く耳を持っていて、つき合いやすかったです。

ある学生が自己紹介の時に「将来、日中友好の架け橋になりたい」と言いました。自分の育てた学生たちが、将来日中関係をより良好なものへ導いていくのかもしれない。この仕事には、そういう楽しみもあります。

中国で働いてみたいけれど本当に大丈夫か不安だという方、まずは期間限定で行ってみても良いと思います。不安を感じていた分だけ、中国人の優しさが心に染み入るし、日本との違いがいつか必ず面白さに変わると思います。

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