元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

インドの日本語学校 経験談

需要は急上昇。授業の手ごたえもあり

公開:2016/02/29
あっこ(女性・48歳) 
日本語教師歴 7年半 (2007年~2014年)
*休職中
資格・課程 日本語教育能力検定試験
インドの日本語学校
経験詳細
  • 地域:ニューデリー
  • 月収:60,000円(30,000インドルピー)
    何とか生活できる
  • 非常勤講師(非正規雇用・コマ/時間勤務)
  • 7年半(2007年~2014年)
    *現在は退職

元々渡航歴があり、長期滞在を視野にいれていた時に日本語教師の紹介を受けました。

当時は常勤の日本人の先生がおり、その先生より様々の事を学びました(授業の進め方、インド人の学生の特徴など)。

常勤の先生が帰任されたあと、後継の先生が決まったり、すぐに決まらなかったりのタイミングで、コマ数が変化しました。週5日勤務でフルタイムの時期もあれば、週3で数コマだけの時期もありました。フルタイムですと多忙を極めていたため、学生への配慮が行き届かなかったのではないかと反省しています。

インド人学生は教師を始めた当初と現在では学生の質が変化した様に思われます。以前は「お金をたくさん得たいから日系企業に就職したい」という野心家がほとんどでしたが、現在は「アニメが好き」「日本に興味がある」または「親が行けといった」など、経済的にも精神的にも余裕のある学生が増えました。

日本語を話すインド人の需要は増え続けています。特にここ数年、デリー近郊では日系企業のインドへの進出が目覚ましく、供給が追いつかない状態です。

通訳としての雇用が多く、当初はN2(日本語能力試験のレベル)以上を希望する企業がほとんどでしたが、N2保持者は数が少なく売り手市場のため、最近はN3でもかまわない。という企業が増えてきました。

授業自体は非常にやりがいのある濃い内容だと思います。教師や両親など目上の人を敬う国で、先生への態度は大変謙虚です。反面、議論が好きで、分からないところは納得いくまで「理屈」で説き伏せて欲しいと求める傾向にあるため、英語か現地語のひとつであるヒンディー語、どちらかが出来た方が学生の納得を得られる説明が出来ると考えられます。

英語教育が浸透しているので、授業は日本語、英語、ヒンディー語が飛び交います。「奈落」「世話」など仏教を通して日本へもたらされたヒンディー語(サンスクリット語)が多く、それらを交えて教えると学生の食いつきが良くなります。

また、ヒンディー語は日本語と文法が同じなので、英語圏や中国語圏よりは比較的すんなり理解してもらえていると思います。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

インドと日本の教育方針の違いに苦労しました。詰め込み教育&教育熱心な親&苛烈な学歴競争で、いわゆる「思考力を育てる」的な方向へ向かうには時間がかかりそうです。

人口12億人、国民平均年齢24歳という若者パワーが炸裂した国では、合格するかしないかで文字通り人生が決まってしまうため、中国同様カンニングが横行しています。

インドの学生は基本的にボールペンを使います。それに対し、日本語のクラスでは鉛筆でノートを取り、試験を受ける様に指導するわけですが、学生の一人が「先生、鉛筆で本当に大丈夫ですか?誰かが私の回答を改ざんしたりしませんか?」と不安顔で聞いてきた事が忘れられません。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

後任の方がいらっしゃり、クラスも問題なく回りはじめたため、一度離れてみようと思ったのが主な理由です。また、物価の上昇が目まぐるしいにも関わらず、給与は一向に上がる気配がなかったのも理由のひとつです。

ちょうどVISAの期限も迫っていたため、更新せず帰国しました。

給与・待遇

月収 月収:60,000円
月収内訳 1コマ120分:1,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    40,000円(20,000インドルピー)
    ※極端な二極化が進んでおり、平均月収はこの位となります。
  • 最低限必要な月収
    50,000円(25,000インドルピー)
基本労働時間 1日1コマ 週5日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計4時間
事務作業/進路相談/質疑応答/テスト採点/文部省主催のコンテスト参加の準備など
待遇 なし
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 インドのお正月休み:1週間  
クラスの長期休暇中の
給与保証
長期休暇中は仕事をしていない  

少なくとも、インドで日本語を教えよう。とお考えになった方には、教師としてのスキルもさることながら、「サバイブ力」が必要だと思われます。

日本と同じ生活レベルは望めません。アパートはエアコンがないと夏場は苦しいでしょう。お風呂はシャワーのみ(湯船に浸かる習慣がないため)。日本食レストランは高級扱いなので自炊が苦ではない方が向いています。365日3食インドカレーというのは、さすがに苦しいので。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

私のいた学校は他社よりもかなり低かったです。大手学校さんの3分の2程だと思われます。反面、学生の人数も多くはなく、中身の濃い授業が出来ていたとは思います。

大手さんでは40人の学生の宿題チェック×担当3クラスを全てサービス残業として扱うところもあったようです。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス約5から20人
学習者の年代
  • 大学生
  • 社会人
1日の時間割
  • 13:00~20:00  
    前半2コマ、30分程休憩をはさみ、他クラスを2コマ
  • 15:00~17:30  
    クラス2コマ
休日 土・日
休日に取り組んだ仕事:「週末クラス」が始まると、授業をおこなっていました。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

インドは多宗教国家なので、各種宗教ごとの行事があり、この日は、ヒンドゥ教の学生が休み、この日はイスラム教の学生が休み、この日は・・・という風に中々クラスに学生が集まらない時期があります(特に9月から12月頃)

また、インドのお正月などは学生が実家(デリーから電車で片道三日!)へ帰ってしまい、中々戻って来ないなど、やきもきする事もありました。

週末クラスは平日忙しくて来られない社会人が多く、すでに日系企業で働いている優秀なインド人がスキルアップの為に通う傾向にありました。

また、他のインド人の先生が当日急に来られなくなったりするのでその埋め合わせも大変です。あとは、長時間の停電で日が暮れて段々教科書が見づらくなってきて、諦めてクラスを切り上げた事もあります。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
日本語教師のN2et   

て形の表や、絵カードを参考にしました
参考になる書籍
合格できる日本語能力試験N3   
対象者:中級・上級
読解の応用問題と、聴解のCDが使いやすい。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

英語力。生の日本語に触れる時間が圧倒的に少ない現地では、直接教授法だけでは限界があると感じました。議論と理屈を好む傾向にある学生を納得させるのに、日本語だけでは伝わらない事が多いです。特に初級。

よって、英語とヒンディー語も混ぜた間接教授法を使っていました。

就職活動

国選びで重視した点 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 学校の歴史の長さ
  • 紹介案件
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法
  • 書類
  • 面接
  • 紹介のため試験なし
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

ここ数年、デリー近郊への日本企業の進出はめざましく、日本語が話せる現地人の需要も増え続けています。製造業や、工業などの大手企業では自社社員に短期で日本語を教え、その後日本へ研修へと送り込む、という事も多くなっています。

国的には対日感情は悪くなく、親日と言って良いと思います。2015年12月に日本側の提案した新幹線が採用されるなど、増々需要は増えて行くと思われます。

現状、インドでの日本語教師は現地採用を求める傾向にあります。もちろん、日本国内へ募集をかけてはいますが、インドという国に躊躇する方が多いのが辛いところです。

元留学生や、他社、他国で働いていた人など、現地での生活基盤が出来上がっているor生活できるだけのバイタリティがある人が即戦力として求められ、教鞭をとっています。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

何故インドへ来たか、どのくらいいるつもりなのかなど、基本的な質問だけだったように記憶しています。その代わり、世間話が長く(インドのお約束)そこで私の人柄や、会話力などをチェックされていた様に思います。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

英語力。またはヒンディー語、他州ならそこのメイン言語を会話だけではなく、読み書きまでできると学生の尊敬度と理解度が上がります。

先述した様にカンニングが多いのですが、日本人教師に現地語は分からないだろうとヒンディー語でボソボソ教え合っています。そこへ、突如ヒンディー語で「あんたたち、聞こえてるわよ」と一喝すると、劇的に静かになります。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名 日本語教師求人情報
国内外の求人がある。時々非常に条件が良いor目面しいものがある。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

元々渡航歴が幾度かあり、そろそろ長期滞在をと、考えていた時に日本語教師の紹介を受けました。

常任だった日本人の先生にお願いし、ちょうど、先生が不足していたので即採用となりました。当時の自宅が近かった事も理由のひとつかもしれません。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

人の紹介です。パーティの席で人づてに日本人女性が日本語教師をしていると聞き、そんな方がいるのか、と興味を持ちはじめました。

在留邦人は当時デリーとその近郊で2000人といわれており、かなり狭い世界でした(今も3000人ほどなので狭いですが)。その後、クラスを実際に見学に行き、クラスの熱気に魅了されました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

学生がどんどん日本語にハマっていくのを見たときでしょうか。漢字大好きな学生、アニメでスラングを覚え、「先生!”萌え〜”って、なんですか?」「”貴様ぁ!”は敬語じゃないんですか?」と一瞬返答に困る質問をしてくる学生、その熱意を活かし、コンテストや、JLPTで結果を出せた時はやはり嬉しいです。

また、東京で日本のある企業と会議をしていたとき、先方に同席していたインド人ビジネスマンが突如「先生、おぼえていますか?僕です」と言ってきたときです。(大人になっていて全く分からなかった)

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

なし

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
時間がとれるうちに日本語教師の資格を取得されるといいと思います。国内でもボランティアなどで多少経験を積むと、試験が分かりやすいです。

【社会人の方へ】
全くの予備知識無しの場合、日本語教師養成講座420時間がベストだと思います。独学でも可能ですが、モチベーションをキープできる様に学校へ通うというのは手段のひとつです。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

教師になってどこで教えたいのか、を明確にされた方がいいかもしれません。北米か、インドネシアはじめアジア諸国か、はたまた、アフリカやインドなどこれから発展が見込める国か、インドは楽に働ける場所ではありませんが、確実に人生に自信をつけてくれる経験ができると思います。

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