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海外日本語教師経験談
ベトナム ハノイ 大学(2019年) 授業準備の苦労の分だけ喜びも
👩 じんじパイさん・ 33歳
総評
- ベトナム ハノイ 大学
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間:2年 (2017~2019年) *退職
- 月収:19万円 (3,900万ドン) *かなり生活に余裕がある
- 勤務時間:1日8時間 週5日勤務 *残業:1ヶ月合計15時間
- 日本語教師養成講座420時間修了 アークアカデミー
学生たちは真面目で、理解力も早く、教えやすかったです。人前で質問するのが恥ずかしいのか、授業後にこっそり聞いてくる人もいました。試験の時はどんなに厳しく言ってもカンニングする人がいて、がっかりさせられました。
私自身もベトナム語を勉強しながら、授業中に使ったり、ベトナムについて質問したりすることで、学生たちも親近感を持ってくれているように感じました。
毎回パワーポイントでスライドを作成しなければならず、その準備にとても時間がかかり土日も作業に追われることがありました。印象に残る例文にするために、ベトナムの食べ物や歌手の写真を使ったり、学生の興味関心の高いものを取り入れるよう工夫しました。
あとは、自分自身や同僚の先生の顔写真を使うと、とてもウケました。「新幹線」や「歌舞伎」を映像で実際に見せたり、「花見」や「割り勘」の文化を雑談を交えて伝えたりすることで、言語だけでなく文化も学んでほしいと思っていました。
校舎が古く、エレベーターなしで教室は4階でした。設備もあまり良くはなく、黒板が傷だらけだったり、プロジェクターの不具合でせっかく準備したスライドが使えないこともありました。教員室は別の建物にあったので移動も大変で、ネットの接続環境が悪く仕事にならないこともありました。
教えるクラスが毎日異なり、学生の名前と顔を覚えるのに苦労しました。特に最初はみんな同じ顔つきに見えるので、特徴をメモするなどしました。
教室に行くと、「わーい、今日は○○先生だー」と拍手喝采で迎えてくれたのが、本当に嬉しかったです。私も授業が楽しかったし、学生も楽しんでくれていると実感できました。
ベトナムには「教師の日」があり、この日には学生たち主催でパーティーを開いてくれ、歌を歌ったり、ゲームをしたりました。教室では見られない学生の顔を見られて楽しかったです。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
1つのクラスに対して教師5、6人で担当するのですが、授業の引継ぎもなく、ミーティングもなく、教師間で共有されるべきことがされていないと思いました。
引継ぎやミーティングを行った方がいいのではと意見を出したのですが、ベトナム人教師たちが仕事が増えると嫌がる、という理由でした。
そこで、毎日ではなく気が付いた時に、クラスの気になる点を共有シートで記入するように提案しました。
日本人教師とベトナム人教師との間には少なからず壁を感じました。仕事熱心で残業も厭わない日本人教師に対して、仕事が終わっていなくても定時には帰る、授業に遅れて来る、授業を早く切り上げてしまう、『ほう・れん・そう』の概念がない、と実感することが多かったです。
どうしても仕事に対する考え方が違うので、日本的な価値観を押し付けるのではなく、彼らなりに頑張っている部分を認めながら、お互い気持ちよく働ける環境づくりはとても難しかったです。
私はできるだけベトナム人の先生たちにはベトナム事情について話を聞いたり、積極的に会話をするようにしていました。そうすると、逆に日本語に関する質問を受けたりするようになりました。接するのは学生だけではないので、外国人の同僚とどう付き合うかも考えさせられます。
なぜこの大学を退職しましたか?
他の機関に比べると給与も高めだったのですが、給与昇給の査定条件がとても厳しく、頑張っても認めてもらえないことに不満を感じていました。また、面接で聞いていた仕事内容と違っていたり、会社に対して不信感を感じることもありました。
直接的な理由は、妊娠したことがきっかけですが、産休を取ってまで残りたいと思えなかったのも事実です。
給与
かなり生活に余裕がある
ベトナムでの生活費の安さを考えれば、給与は十分で貯金もできました。住居手当がなかったのですが、安い物件を見つけることができたのが大きかったと思います。住居探しは会社が手伝ってくれました。ベトナムの物件は家具付きなので、それも助かりました。食費は、学食やローカルな食堂で済ませて、日本食レストランなどに頻繁に行かなければかなり抑えられます。
健康診断以外にも、各種予防接種を受けることができたのはありがたかったです。狂犬病の予防接種など、数回にわたって受けました。
旧正月明けに、会社からお年玉をもらいました。それから『教師の日』『女性の日』にも会社からプレゼントをもらいました。(花や、ドライフルーツ、お茶など。)
会社支給のノートパソコンが古く、不具合が多かったので不便でした。またプロジェクターに繋げるためのアダプターは自費で買わないといけませんでした。授業で使う教科書や副教材は、教師の分まで支給されませんでした。自分で買うか、教員室にある共有の1冊をコピーして使っていました。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:19万円
月収の内訳
- 基本給:19万円
待遇
- 有給
- 交通費
- 賞与(年間5万円)
- 保険(ウェルビー)
雇用形態
- 専任講師 *正規雇用
勤務時間
- 1日8時間 週5日勤務 *残業 1ヶ月合計15時間
長期休暇中の給与保証
- 仕事はないが、給料は支給される
授業形態・勤務スケジュール
スケジュール管理で大変だったことは?
授業以外の空き時間は、準備に充てることができたのですが、レポート作成や、カリキュラム作成、その他の雑務に時間を取られて、なかなか進まないことが多かったです。
また、社内で使っていたチャットアプリで頻繁に連絡を取り合うので、やるべきことに集中できないこともありました。
とにかく、自分の中で時間を決めて、あれこれ同時に少しずつではなく、一つ一つを片付けるようにしていました。あまりに疲れた時は、外の空気を吸いに出たり気分転換をするようにしていました。
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
学習者層
- 大学生
スケジュール
- 7:30~11:45 初級クラスを2コマ
- 13:30~15:30 N3試験対策クラス
- 12:30~15:45 初級クラスを2コマ
日によっては授業準備やカリキュラム作成
ベトナムで日本語を教える前に準備すべきだったことは?
語彙以外の画像やイラストを毎回探すのが大変だったので、課(文型)ごとに使えるイラストをまとめておいたらよかったと思います。また、副教材のイラストを写真に撮ってパソコンに取り込んでいたので、小型のスキャナーがあったら便利だなと思いました。たいていのテキストは現地で手に入りますが、教師用の文法書や本は無いので、必要だと思ったら持って行った方がいいです。
ネットから取って来た写真よりも、自分で撮った写真や自分が写っている写真の方がやはり目を引きます。私は実際に自分で撮った京都の写真などを見せました。そういった写真をすぐ探せるように、項目ごとにまとめておくと、後で楽です。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『日本語NET』
ほぼ教案の形として完成しているので、練習の流れが参考になる。活動やゲームも紹介されている。 - 『日本語教師のN1et』
教案の流れが細かい。教える際の留意点が参考になる。教え方のコツなどブログもあって勉強になる。 - 『日本語教師は見た!』
イラストがとても分かりやすいので、どんな絵を使うべきか参考になる。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き』
対象:
初級
定番かもしれないですが、教案を組み立てる時に必ず確認を兼ねて目を通すようにしています。文型の提出順序だけでなく、新出語彙や文型を教える際の注意すべきポイントが書かれてあり、とても役に立ちます。それから『会話』の内容確認の質問事項も参考になります。 - 『絵で導入・絵で練習』
対象:
初級
例文作成のヒントになるし、そのままイラストごと使えます。自分では思いつかない場面設定がたくさんあります。未習語彙を使わないと文が作成できない場合もあるので、使う場合は厳選しないといけません。できるクラスには、応用として使うのもありだと思います。中級でも使えるものがあります。
就職活動
この大学で働くきっかけ・決め手は?
この勤務先以外に3か所の教育機関に応募し内定をもらいましたが、一番の決め手は給与と大学で教えるという点です。
ベトナムでの求人は多いですが、授業コマ数に見合う給与が支払われている機関は多くありません。未経験者でしたら、それでも飛び込んでいく価値はあると思いますが、自分を安売りするようで気が進みませんでした。
また、実習生送り出し機関は昨今あまりいいニュースを聞かないので、できるだけ避けたいと思っていました。大学の求人はかなり少ないので競争率が高いと思います。私の勤めた学校は、学生たちは4年間日本語を学び日本企業に就職するという目標で入学してくるので、それだけ意識も高いだろうと想像できました。
学校(会社)として教師を育てようという意識も面接から感じられたのも好印象でした。他の機関では、面接の時に一方的に話をするだけだったり、ビザや労働許可証について不透明な回答があったりで、信用できない部分も感じました。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
過去所属の教育機関でどのような教材を使っていたか、どのレベルの学生を教えていたか、ベトナム人を教えたことがあるか、どうしてベトナムで教えたいのかということを聞かれました。特に印象に残っているのは、学生のモチベーションを上げるためにどうしたらいいと思うかという質問です。それから、自分で企画してみたいイベントなどのアイデアがあるかどうかも聞かれました。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
日本語教育は非常に盛んで、現地人が経営している教育機関を入れると相当数あります。初級が終わった程度の人や、N3レベルの人でも日本語を教えていて、そのくらい教師が必要とされているのが分かります。
私が教えていた学校では、ほとんどの学生が日本企業への就職希望者でした。一番の理由はやはり給与が魅力的であること、ですが、今の若い世代はドラえもんや、名探偵コナンなど日本のサブカルチャーに親しんで育ってきたこともあり、日本に対する抵抗がないからだと思います。
最近ではあまりにも多くのベトナム人が日本へ留学、就職しているので、親戚や知り合いのだれかが日本に住んでいたり、日本の情報も得やすいようです。将来の実利に関係なく、単に日本が好きだという理由で日本語を独学で勉強している主婦もいます。
その一方で、日本語は英語に比べると非常に難しい言語という認識から、初めから学ぶこと自体を諦めている人もいると聞きました。
この大学で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?
基本的なPCスキルは必須です。教案作成や、スライド作成はもちろんのこと、教師間のやりとりも共有のスプレッドシートを使ったり、カリキュラムやスケジュールの管理もすべてPC上で行います。
現地語ができるのであれば問題ないですが、日本語ができないベトナム人との仕事上のやりとりは英語になるので、ある程度の英語力も必要だと思います。ゼロレベルの学習者への対応にも役に立ちます。ベトナム語の能力を問う所はほとんどないと思いますが、知識として知っておいた方がいいです。少し話せるだけでも学生との距離がぐっと近くなります。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
国選びで重視した点
- 親日国
- 物価の安さ
- 気候
現地における日本語教師の需要・将来性
- 高い人気があり、多くの学校で求められている
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 学習者が学生
- 給与・待遇
- 大学であること
- 実習生送り出し機関でないこと
応募時に必要とされた資格
- 日本語教師養成講座420時間修了
- 日本語教育能力検定試験合格
- 大学 日本語教育主・副専攻
就職 選考方法
- 書類
- 面接
- 模擬授業
- 教案の提出
面接方法
- 現地にて実施
- skypeやzoomなどのインターネットツールを使用して面談
日本語教師全般に関する質問
どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?
元々、言語にも海外で働くことにも興味があったので、高校生の時からなんとなく考えていました。でも大学の4年間を日本語教育に捧げるほどの決意はなく、他に興味のあった分野を選択しました。
卒業して、英語を生かせる仕事に就いたのですが、もっと具体的に誰かの将来に役に立てる日本語教師という仕事にあこがれるようになりました。旅行が好きだったので、海外で働きながら長期的に生活できたらいいなという思いもありました。
自分自身に留学経験があり、日本に留学に来る人のお手伝いができたらという気持ちから、国内で働くことも考えていました。
初めは働きながら通信講座で勉強したのですが、日本語教育能力試験に合格できなかったので、退職して養成講座に通うことにしました。そして翌年の試験には合格し、養成講座も修了し資格を取ることができました。
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
全然話せなかった学生たちが、だんだんと冗談が理解できたり言えたりするようになり、覚えたての言葉を使って話しかけてきたり、日々成長を見られるのが教師としてのやりがいだと思います。「先生の説明は分かりやすい」と言われたのもすごく嬉しかったですが、進路の相談などをされた時の方が教師を超えて人として信頼されている気がして嬉しかったです。
卒業した学生から手紙をもらって、一生懸命自分の言葉で今までの感謝を綴った日本語を読んだ時は感動して泣いてしまいました。卒業しても連絡をくれ、近況を気にかけてくれる学生がいるのも、本当に嬉しいことです。卒業後しばらくして会った教え子が、日本語が更に上達してペラペラになっていて、誇らしく思いました。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?
自宅でも授業準備などの仕事で、プライベートが全く充実できず、せっかく海外にいるのにどこにも出かける時間がなかった時は、むなしいと感じました。そのせいで友人関係も広がらず、職場だけの人間関係だったので、孤独でもありました。
もっと効率的に仕事ができないのか、もっと楽な仕事があったんじゃないかと自分を責めることもありました。それでも授業中はとても楽しかったので、教えることそのものが苦痛になったことはなかったです。
学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。
将来、日本語教師になりたいと明確に決めている人は、大学の日本語教育主・副専攻でもいいと思います。他の選択肢も候補にある場合は、日本語教師は卒業後、就職後いつでも資格が取れるので、大学の4年間を日本語教育だけに費やすのは将来を狭めてしまう危険性があります。
日本語教師は言語を教えるだけでなく、様々な分野の知識も必要になってきますし、社会人経験もとても役に立ちます。私自身も日本語教師という夢を持ちつつも、大学は他の学部を選びました。そして社会人経験を経て、それでも日本語教師がしたいと思ったので、養成講座に通いました。日本語を教えられる以外の強みがあった方が、教師としても幅があっていいかなと思います。
社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。
養成講座に通うのをお勧めしますが、働きながらでは厳しいかと思います。私は退職して、1年間は養成講座に集中しました。(アルバイトはしましたが)資格を取っても結局日本語教師にならない人もたくさんいます。授業料もそれなりにしますし、労力を使いますので、なんとなく資格としてほしい程度でしたら、お金も時間ももったいないかなと思います。
必ず日本語教師になる、海外で教えたいという強い意志がないと、勉強にも身が入らないでしょう。通信講座で独学よりは、養成講座に通った方が、同じ目標を持った友人ができるのでお勧めです。
日本語能力試験合格のためには、養成講座の授業プラス試験勉強が必要ですが、友人たちと励まし協力し合って勉強することができます。さらに、養成講座では模擬授業などの実技も学べるのが将来役に立ちます。
ベトナムで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
親日国で親切な人が多く、日本語教育機関があるのは都市部が多いので、生活に困ることはありません。ベトナム語をマスターして来る必要はありませんが、言語として日本語との違いなどを知っておくと役に立ちます。
働き始めると非常に忙しくなり、異文化体験どころではないので、事前にできるだけ文化、習慣について学んでおくといいでしょう。日本への留学生は増加していますし、将来国内で日本語教師をする場合にも、現地で教えた経験は役に立つと思います。そして何より学生たちは教師をとても慕ってくれます。
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