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海外日本語教師経験談

アメリカ ハワイ 小学校(2020年) 準備の苦労と大きなやりがい

👩 よっこさん・ 39歳

総評

  • アメリカ ハワイ 小学校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:10ヶ月 (2020~2020年) *退職
  • 月収:14万円 (1,100ドル) *それだけでは生活は難しい
  • 勤務時間:1日4時間・週3~4日   *残業:5時間

子供と関わるお仕事が好きだったため元々は日本のインターナショナルスクールで保育士をしていました。

主人の転勤でハワイに渡米することになり、そこで出会った知人から小学校で非常勤の日本語教師をしてみないかと紹介され働くことになりました。

私自身アメリカでの永住権を所持しており、現地で保育園の求人をさがしていた時だったので、とても良いタイミングで紹介して頂きました。アメリカはビザのサポートがどの教育機関でもほぼないので、永住権など合法で働けるビザは必須です。

未経験でも大丈夫と後押しされたこと、また時給など待遇もよかったことが入社のきっかけになりました。
残念ながらコロナの影響でクラスは中止になってしまいましたが、約1年間の講師の経験を踏まえて、具体的なクラス内容や大変だったこと、工夫したことをこれから日本語教師を目指す方にお伝えしたいと思います。参考にして頂ければ嬉しいです。

私が就業していた小学校では、曜日によって1時間のクラスを幼稚園から5年生(最年長)まで学年別に教えていました。私は非常勤講師だったため日本のパートと同じ時給制で、1日4時間、週3〜4日、小学校のクラス時間に働くお仕事でした。

ハワイというと日系人も多く日本に馴染みのある子も多くいますが、ほとんどの子は日本語も日本のことも全く知らない子達でした。まず生徒との信頼関係も築くため、読み書きに加えてゲーム、手遊び、歌、折り紙などの活動をクラスに盛り込み、日本語クラス=楽しいクラスと思ってもらえるよう工夫しました。

例えば手遊びは、最初は日本語の手遊びを英語にして歌い、慣れてきたら日本語で挑戦しました。

その他、月の歌として季節にあった歌を1か月歌いました。ハワイは四季がないので子供達も想像がつきにくそうでした。しかし、日本の春は桜が咲くよー、桜はこんな花だよと紹介したりしてローマ字で歌詞を書いた紙をみせて歌ってみると1か月後にはみんな暗記で歌えるようになっていました。

高学年になると、読み書きができるようになってくるので、名前を日本語で書かせてみたり、筆ペンで習字の真似をしてみたりしました。中でも折り紙は皆大好きで、手裏剣は年齢性別問わず、皆忍者ごっこで遊んでいました。またビンゴは数を覚えるのに最適です。

こんな具合で最初の30分はひらがなの練習、次の30分で、折り紙、ゲームなどで体を動かすとメリハリがつき子供達も集中してくれました。

楽しいクラスを作ろうとする反面、準備にかかる時間はほぼ残業になるので、帰宅後はずっと次のクラスのことばかり考えていました。準備作業は日本語教師として働く中で一番大変だったことだと思います。それでも子供達が季節の歌を口ずさんでくれた時などはがんばってよかったと思えました。

日本語教師のお仕事は大変な面もあるけれど、日々学び自身も成長していけるとてもやりがいのあるお仕事だと思います。帰国した現在もまた教師として働けていけたらと思っています。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

学年別でしかクラスが分かれていないため、クラスの中でも子供の理解力に差があったことです。

例えば母親が日本人で家で日本語を話している家庭の場合、どうしても現地のアメリカ人の子と理解力の差がでてしまうので、生徒によって難しすぎたり反対に簡単な内容になってしまいます。全ての子に平等に楽しめる内容で進めることはとても大変でした。

そこで練習問題などは日本語ができる子には少し内容を変えてみました。
またチームで遊ぶゲームは、皆が答えられるよう、できる子には進行を手伝わせたりして、一つのチームばかりが勝ち続けないよう工夫しました。

なぜこの小学校を退職しましたか?

コロナの影響で課外活動であった日本語クラスの継続が難しくなったためです。とてもやりがいのある職場だったので残念でした。

その後は自身の勉強のため他校で日本語クラスをされている先生を紹介して頂き、ボランティアでクラスのお手伝いをしたりしました。ボランティアでしたが、ベテランの先生の教え方を拝見する貴重な機会になりました。

最終的に日本への引っ越しを機に退職しました。

給与

月収:14万円 (1,100ドル)
それだけでは生活は難しい

私が経験した非常勤講師は、働く時間も週に19時間までと決まっていたので、物価の高いハワイでその収入のみで生活するのは厳しいです。反対に一日の就業が5時間以内のため、子供が学校に行っている時間に働きたいという方向けの仕事だと思います。

私の場合は主人と共働きだったため、日本語講師以外の仕事はしていませんが、非常勤で働かれている先生の中には副業されている方もいました。

フルタイムで教師となると、公立学校は学士号が必要になり、専攻で教育科を取得されている方がほとんどでした。日本でも大卒であれば対象ですが、ハワイ州の教員資格が必要だと記憶しています。待遇は公立の学校は正規雇用ですと労働組合もあり、休日の保障や給料も良い方だと思います。

正規雇用に関してのお給料や就職率など詳しいことは分かりませんが、夏休みなどは2か月以上(ハワイは5月末から8月上旬まで夏休み)休暇になったり、国の祝日に加え州の祝日もお休みになるので休みは多いほうだと思います。

また私の知っている限りでは、正規雇用の先生方(日本語教師に限らず)で副業されている方はいなかったので、フルタイムでしたら生計が立てられるかと思います。

またハワイには日本人や日系人の方が経営する民営の日本語塾が多くあり求人もみかけました。しかし、条件としては教員免許や幼稚園教諭などの資格が必須の職場も多く、短時間労働のため時給15ドル以下のパートのお仕事がほとんどでした。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:14万円

月収の内訳

  • 2,600円

待遇

  • なし

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日4時間・週3~4日   *残業 5時間

学校が定める学生の長期休暇の有無

  • 給与保証がない

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち状況

  • かけもちしていない
授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス25人
  • 児童クラス

学習者層

  • 幼児
  • 小学生

アメリカで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

季節の小物はとても役に立ちます。例えば節分に使う鬼の仮面を100均で買っていったのですが、珍しかったのかみんながお面をつけたがりゴムが切れてしまいました。もっとたくさん用意しておくべきだったと反省しました。

また簡易的なひな祭りの飾りなどは子供達も興味津々だと思います。見せながら意味を教えたりすると写真や画像より理解度も更に高まりました。

先任の先生によると、子供用の浴衣や着物をバザーなどで安く買い子供達に着せたところ、みんなすごく喜んでくれたようです。

どれも現地で揃えると高価で種類も少ないので、日本で買っていくことをお勧めします。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • ぬりえやさん
    幼児から小学生向けの塗り絵サイトです。子供向けクラスを担当する方にお勧めです。季節に合わせて行事の塗り絵があるので余った時間やお楽しみ時間に活用できます。中でもひな祭りのつるしびなの塗り絵は、色を塗って切り取りリボンなどに貼り付けると華やかで、簡単な季節の制作にぴったりです。
  • Sumi in Wonderland
    日本語の手遊びを英語に変えて紹介している動画です。幼児や低学年の生徒さんを指導する際に活用できると思います。例えば本を読む前やクラスが始まる前、またクラスがざわついているときなどに手遊びを行うと、言葉で伝えるよりもみんなが注目して静かになるのでお勧めです。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • おひさま [はじめのいっぽ] ―子どものための日本語 対象: 初級
    子供が日本語習得にあたり頻繁に使用する可能性の高い日常の単語がたくさん記載されています。おかあさん、みずいろ、など簡単な単語が多いですが子供達に身近な単語から教えていくのに役立ちました。フラッシュカードをつくり単語を暗記してもらってゲームをする、慣れてきたらその単語で文章を書くなどして活用しました。 海外だけでなく、日本で子供達に日本語を教える方にも日常単語がたくさんあるのでお勧めです。
  • GENKI:初級日本語げんき 対象: 初級
    独学で学べる日本語の初級学習書です。ところどころ英語での解説や問題が記載されています。主に英語圏の生徒さんむけの学習書ですが、単語や簡単な会話文を教えるのに参考にしました。 大人向けの本ですが、比較的簡単な単語や文法が多く、英語での説明もあるためページを印刷してプリントとして配りました。私は小学校高学年のクラスで主に利用しました。

就職活動

どのように就職活動を行いましたか?

はじめはINDEEDなどの現地の求人サイトで日本語教育に関わらず子供と関われる仕事を探していました。
また日刊サンやライトハウスという日本人向けの無料情報誌にも日本人を対象とした求人が多くあるため教育機関の求人に目を通していました。

知人から日本語教師のお仕事を紹介されてからは、校長先生と面接があったので未経験でも日本語教育に対する熱意を伝えるために、前職での経験やそれをこの職場でどう生かすかなど、自己紹介文を作り面接に臨みました。

実際に学校にいってみて驚いたのは、働いている職員の90パーセントが女性だったことです。皆子供好きで優しく家庭的な雰囲気だったためこの職場で働きたいと思いました。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

校長先生との面談でしたが、前職は何をしていたのか、困った場面をどう乗り越えたかを具体的に聞かれました。

日本で保育士をしていたころ、子供達が騒ぎ始め集中力がきれてしまう場面に遭遇することもありました。その時は「大きな声で歌をうたったり、手遊びを始めたりすると教室の空気を自分のペースにもっていけます、こちらでも低学年の生徒にはこの方法が利用できると思います」と答えると、良い考えだね、うちの生徒達にも使えそうだねと同意して頂きました。

面接は英語で緊張しましたが、終始元気よく、熱意が伝わるよう、はきはきと答えました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

私は子供向けの日本語教室の現状しか分からないのですが、ハワイ州は日系人も多く、また子供を現地の学校に通わせながらバイリンガル子育てをしている日本人家庭も多いので日本語教育の需要は高めです。

ほとんどが放課後や週末に行う塾系がほとんどで、公立の小学校でカリキュラムとして日本語を教えているところは少数でした。

その他寺院を母体としたプリスクール(未就学児対象)では、日本語の時間を設けている園もあり、空きがあれば講師として働けるチャンスもあります。講師経験や教員免許をもっている方は有利ですが、未経験でも保育士の仕事と兼務で募集しているところもあります。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日刊サン
    現地に住む日本人向けの無料情報誌です。そこの求人欄に日本語学校や塾の求人が載っていることがあります。

国選びで重視した点

  • その国に親しみがある
  • 渡航経験があった
  • その国にもともと住んでいた

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 人気があり、一定数の学校で求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 未経験者歓迎
  • 学校や先生の雰囲気
  • 給与・待遇

応募時に必要とされた資格

  • 英語能力

就職 選考方法

  • 面接

面接方法

  • 現地にて対面で実施

日本語教師全般に関する質問

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

子供達の成長を感じた時、また日本語クラスが楽しい、毎週楽しみにしていると言ってもらえた時です。

最初は恥ずかしがっていたり、日本語に興味を示さない子もいましたが、毎回様々なアクティビティで日本語を使う体験を繰り返していくことで、少しずつ言葉がでてきた時は嬉しかったです。

日本を全く知らなかった子が『先生、私の好きな色はピンク、日本語でピンクはももいろだよね?』と話してくれた時はとても感動しもっと頑張りたいと思いました。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

私の場合は学習過程が渡されていたわけではなかったので、日々の教案準備や指導の振り返り、次回の準備の繰り返しで残業が増えてしまい苦労しました。

時間内にできるコストのかからない季節の制作を考案して家で準備をしなくてはならず、週末がほとんどない状態が続いたこともありました。もちろん残業代はでません。制作に関しては約100人の生徒の準備を一度にしないといけないため、細かい作業が苦手な方には向かないかもしれません。

とても大変でしたが、クラス内容や生徒の反応などを全てノートに記録していたので、大変なのは1年目だけ、2年目からは授業の骨組みができている分楽になると思い日々励みました。当時の教案は、退職したあとも記録に残り、私の体験を踏まえた財産になっています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

日本語教師といっても大人向けの学校と子供向けの学校では全く異なりますが、いずれの職場でも海外の学校は就労経験を非常に問われます。

私自身も日本で保育士を経験したことが、小学校という違う現場でも子供と関わるという経験として面接で伝えることができました。

未経験の場合、養成講座を受講したり資格をとることは意欲や熱意を伝える一つの目安になると思います。

またお勧めなのは、大学などに在籍中に日本語教室でのボランティア経験です。面接で経験として伝えられるだけでなく、実際の現場の雰囲気を学べる貴重な機会だと思うので今後役立つと思います。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

海外では経験を求められることが多く、たとえ違う分野でもどのような仕事をしてきたのか、何を頑張ってきたのかを伝えることは面接にとても有利だと思います。

実際に他校の日本語教師は元々看護師をされていた方やエアライン出身など様々な分野出身の方が活躍していました。

ただ面接ではどうして転職して日本語を教えたいのかを必ず聞かれると思うので、日本語を教えたい明確な理由を伝えることは重要かと思います。今はオンラインで数社の日本語教育の養成講座が受講できるので、転職前に受講することで、具体的にどのような授業になるのかなどが分かり、面接でもアピールできると思います。

アメリカで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

子供向けの日本語教師の場合ですが、ハワイ州は日本語教育の需要は高めなので教員免許等を保持していれば補習校などの就職にとても有利です。

欠点は補習校や塾などは勤務時間が短くパートの方も多いので、フルタイムの日本語教師のみで生計を立てるのは難しいかもしれません。

もし日本語教師を専門にする場合、州の教員資格を取り、学校で働きながら日本語クラスを行う(学校によっては日本語クラス専門の先生もいらっしゃいます)、または幼稚園などで保育士として入り、園長先生に日本語を教えたいと直談判するという選択肢もあります。

小学校以上の普通校では通常授業に日本語を取り入れている学校は数少ないのと、安定した職場は離職率も低いので求人がみつかりにくいのが現状です。

またアメリカはビザサポートはどの学校もほぼないので、グリーンカードなど合法に働けるビザは必要ですが、学生ビザで入国してもOPT資格(学業終了後、アメリカ政府から1年間働ける許可)を受け入れているところもあります。

北米の国・地域別 経験談

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