アメリカ カリフォルニア州 日本語学校（2020年） 海外で日本語を教えるという事は先生の挑戦である

私は日本語学校で主に小学生に対して、日本語を保持し伸ばすという立場で教壇に立っておりましたが第一言語が日本語ではないという生徒に、限られた時間で日本語を教えるという事は、とても難しい事だと感じました。

多人種多言語があふれるアメリカの生徒の背景は、親や親類が日本人、日本が好き、日本のアニメが好きというように個々に違いましたが、何らかの形で日本語に繋がっている生徒が日本語学習に興味を持っているようです。

ただ、会話はできるけど、日本語の漫画は読めない、日本にいる親戚や祖父母に手紙が書けない、又日本語を学んでいないと、親や親族との会話もままならなくなる様で、日本語で聞かれても英語で答える等の話しは日常的に耳にします。

高校以上の限られた公立学校でないと学校で日本語を学ぶ事はできないので、早いころから習得意欲のある生徒は学校外で民間の日本語学校に通うしか学ぶ場がありません。その為、日本語に触れる機会が日本語学校に来る時しかないという状況が多いのです。

日本語を学ぶという事は、本人の習得に対する意識とご家庭の協力がなければ、継続して学ぶという事は難しく、次の授業迄一切日本語に触れないという事も多々起こります。

そのため宿題は重要でした。保護者の協力を得て、一緒に取り組む、音読や、絵日記をとりいれたり、独自で取り組める様な復習を中心にとした独自プリント、楽しく学習して次の授業にも来てもらえるよう毎日少しでも日本語に触れる機会を作って、継続できるよう心掛けました。習得意欲を強めるに必要な、生徒自身に自信をつける事も重要です。

一生懸命考えて言いなおしたり、書き直したり、疑問が理解できた時、わからない友達に説明する事ができた時、テストで100点取った時は、本当に嬉しそうに「できたぁー」と言ってくれます。出来ると熱心に取り組み始めるので、それが周りの生徒にも良い影響となって相乗効果が期待できました。

日本の四季や日本の行事を教える時はとても時間を要しました。土地柄、春夏秋冬に大きな気温差が無いので、どの程度寒いのか？等は絵や写真を使って説明しました。それでも冬と雪だるまが結びつかない等、季節と絵を結ぶ単元は時間を要しました。

また、学期始まりの違いなどから、春に入学式や学年が上がる事に関しても、理解しずらいようで、桜がなんで入学式と関係するのか？という様な疑問もありました。

コロナウィルスによる自宅待機発令により、学校が閉鎖した為

私の勤めていた日本語学校は、土曜日しか開講していない為、多額の報酬があるわけでは無かったので、それだけで暮らしていく事は到底できませんでした。

私の同僚は、平日は企業に勤め副業という形で日本語教師をしていました。給料の支払い方がユニークで、初旬と中旬で支払われていたので給料が月に2回ある感じでスケジュールが組みやすかったです。

ただ、日本では一般的に交通費の支給があるようですが、こちらではそれが無かったので、ガソリン高騰の時は少し痛手でした。

授業の中でメリハリをつけるような授業スケジュールを組むのが重要だと感じました。年間のカリキュラムが決まっているので、それに基づいて各回の単元を授業していく事になります。新しい単元を進めながら復習を取り入れると、どうしても肉厚な授業になります。

ただ、それをきちんと習得させるためには、1つの方法ではなく、体を動かしたり、工作を取り入れる事を盛り込みました。一人ひとりどのような学び方がいいのか異なるので、色々な方法を取り入れることで理解させることができました。

漢字や言葉は覚える事で点に繋がりますが、文法はそれらが書けた上で使っていく事になるので話し言葉でそのまま書くと、「わ」「は」や「え」「へ」の間違えが多く習得に時間を要しました。

簡単なカードを作って説明したりしたので、自分で作る教材が結構多くなりました。事前に文法などのカードなど用意すればよかったと思いました。後は文化の説明で、日本の行事の写真や、人気のゲームの物など、子供たちの興味がわくものを用意すればよかったと思いました。

知人を通して紹介してもらい、職に就きました。決め手は、継承語として教えるシステムだったからです。あとは学習者の中に日系人が多かったことと、海外で日本語を教える経験をしてみたかったことです。私がこの学校に出会い職につけたのは、あまり類がないようです。アメリカは人脈が一番だという事を知りました。

英語が母語の人は外国語を学ばなくても世界中で英語が通じる傾向がある為、需要は多くはありません。

しかし、私のいた日本語学校では、継承教育が中心でした。日本の行事を知る為に、新年にはお餅つき大会を実施し、実際に杵と臼を使ってもち米を焚いてみんなでついたり、筆や墨をつかって好きな字や漢字を書いたりと、日本や日本語に対する興味を続けて持てるように工夫していました。

各学校によってだと思いますが、日本語教員免許がある事、何らかの形で講師をしていたという経験がアピールポイントだと思います。

一番重要なのは、教育に関する熱意とあきらめない意志だと思います。それに加えて必要なのが、新しい事に挑戦する気持ちです。母国で母語を教えるという事と他国で母語を教える事は新しい事や想定外の事が沢山起こります。それらの気持ちがあれば、一つ一つ乗り越えられるからです。