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海外日本語教師経験談

アメリカ コネチカット州 小学校(2020年) 特別科目として日本語を学ぶ小学生

👩 かっぱさん・ 29歳

総評

  • アメリカ コネチカット州 小学校
  • 雇用形態:常勤講師 *非正規雇用・フルタイム
  • 期間:1年 (2019~2020年) *退職
  • 月収:19万円  (1900ドル) *現地で生活をするのに十分
  • 勤務時間:1日7時間・週5日勤務   *残業:残業なし
  • 日本語教師養成講座420時間修了  ヒューマンアカデミー

アメリカの教育機関はイメージ通りとても自由で、公立小学校での日本語教育は教科書の規定もなく、私の勤め先では教科書を使用していませんでした。授業の内容はとにかく楽しく日本の文化を学ぼう!といったもので6歳7歳にもわかりやすく、歌や映像を沢山使った工夫を凝らした授業となっていました。

私の勤め先は様々な家庭環境の生徒を一緒にしている学校のため、家庭では英語以外の言語を話し、特別に学校で英語を学んでいる生徒もいました。英語を第一言語としていない生徒にとっては日本語を学ぶことは生徒の負担になるかと思いましたが、ある種家庭の言語も英語も忘れられるリラックスタイムとなっているという声を聞き、安心しました。

この小学校では日本語のクラスの立ち位置が音楽や図工のような特別教科で、他の言語から選べる選択授業ではありません。

そのため、全学年の全生徒が日本語を受けるので、普段なかなか日本語教育では出会えない生徒のタイプがあり面白くもありましたが、自分たちが日本語を学びたいと思って授業にきているわけではないのでモチベーションを上げることや、彼らに日本語を学ぶ必要性を見出すのがとても難しかったです。

なんのために日本語を学ぶのかと考えた際に自分自身の英語学習やフランス語学習を振り返りました。そして、自分が学ぶのは必要だから学ぶのではなく、楽しいから学ぶのだということを思い出しました。

教師からの目線だとつい教えることや覚えてもらうことに注視してしまいますが、一緒に学んで楽しさを共感することがなによりの学ぶ必要性を生み出すと思いました。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

毎日スケジュールが違うことに最初はとても戸惑いました。始まる時間が違うだけでなく、授業のコマ数もお昼休憩の時間も毎日変わるので授業のリズムになかなか慣れませんでした。

週に1回、1日に9コマ授業のある日があり、授業と授業の間が5分しかないので片付けと次の準備を5分で行えず、そうすると待っている生徒はおしゃべりを始めてしまい、授業の準備が終わってもおしゃべりがなかなか終わらず、いつも授業の出だしが悪くなってしまいました。

なぜこの小学校を退職しましたか?

任期が1年だったため。

給与

月収:19万円  (1900ドル)
現地で生活をするのに十分

毎日外食をしたり、好きに旅行に行ったりするような贅沢ができるわけではありませんでしたが、家賃補助と車と車両保険の補助費などの待遇があったため生活に不安はなく一年間過ごすことができました。

アパートで1人暮らしを始めたときには学校の先生方が家で使わなくなった電化製品や家具などを持ち寄ってきてくれたり、ウェブサイトなどでも無料で家具を受け渡してくれる方がいたので、1人暮らしの初期費用もほとんどかかりませんでした。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:19万円 

月収の内訳

  • 基本給:19万円
  • 家賃:8万円

待遇

  • 医療保険
  • 健康診断
  • 自動車購入補助費

雇用形態

  • 常勤講師 *非正規雇用・フルタイム

勤務時間

  • 1日7時間・週5日勤務   *残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 仕事はないが、給料は支給される

仕事のかけもち状況

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

授業1コマが25分で、1日に平均7コマ授業がありました。1つ1つの授業の時間は短かいのですが、25分間ずっとテンション高いまま保たなくてはいけないのが大変でした。

授業と授業の間も5分、10分で休む時間がないまま次の授業となり働き始めはヘロヘロになっていました。
そこで25分の間にも自分の中での授業の山場を作り、緩急のある授業を行うようにしました。

授業を見る側からしたら、なにも変わったことがないように見えますが授業を行う教師と生徒には違いを感じたと思います。

たとえ25分でも、小学生の集中力がそんなに長く続くことはないので、ここは50%聞いてねという場所とここは100%聞いてねという場所を作ることで、教師も生徒もメリハリのある授業ができましたし、私自身のスケジュール管理もしやすくなりました。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス20人

学習者層

  • 小学生

アメリカで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

対象が小学生で日本のこともほとんど知らないので、典型的な日本のものに興味を持つかと思いましたが、それだけではなく日本のマクドナルドやアイスクリームなど生徒が知っているものが日本にもあるということにとても興味を持っていました。

そのため、日本のマクドナルドのクーポンなどを持っていけばよかったなあと思いました。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • てあそびドットコム
    てあそびの簡単な歌が沢山掲載されています。子供向けに授業を行う教師の方におすすめできます。 とにかく生徒は歌が好きだったので、なにかほかに良い歌がないかなあというときに利用していました。日本語を覚えるのは難しいけど歌の歌詞はすぐに覚えられるという子が多かったです。
  • 日本語NET
    「日本語を使ったゲーム・活動まとめ」のページには日本語を使って簡単にできるゲームのアイデアや方法が掲載されています。授業の時間が余ったときやモチベーションの下がっているときになにか出来ないか考えている教師の方におすすめできます。 雨が続いて外で遊べないときなどにゲームをするととても盛り上がるので常に1こか2こすぐにできるようなゲームを準備するようにしていました。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • World-Readiness Standards for Learning Languages 対象: 全レベル
    アメリカでの日本語教育を学ぶためにアメリカの言語教育がどのようになっているかを知りたく購入しました。アメリカでは英語が第一言語であるため第二言語を学ぶ必要性について多く問われているようでした。ただ多くの人と話すのが目的なら英語でいいけれど他の文化を学び、他者の文化に入り込むことがいかに自分を形成する上で大事なことかということがよくわかりました。授業のレッスンプラン、ユニットなど大きな流れを考えるときに参考にしました。自分の判断だけでレッスン目標を作成するのではなく、多方面から、このレッスン目標が適正であるかどうか確認するのに役立てました。 日本の教案作成フォーマットに疑問を抱いている方やこれから海外で日本語を教える方におすすめします。
  • まるごと 日本のことばと文化 入門 A1 りかい 対象: 初級
    わかりやすいイラストが沢山載っていたり、授業をするときに効果的な流れなどがわかるので、新しいトピックのレッスンプランを考えるときなどに内容は違っていてもイラストや流れを参考にするために利用していました。また忘れがちなCan-doを思い出させてくれました。JLPT向けだけでなく、身の回りで使える日本語を教えたい方、楽しく、自然に教えたい方におすすめです。

就職活動

この小学校で働くきっかけ・決め手は?

派遣校については自分で選ぶことができませんでしたが、アメリカでの日本語教育には、新たな教育方法をキャッチしたいという気持ちから常に興味がありました。決め手については、VISAや住居などのサポートがあることから安心して働けると考えて応募しました。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

現地の先生のやり方が明らかにおかしいと思った際にどのような対応をするかといったような質問がありました。とにかく相手の話を聞くことが重視されていると思います。

しかし、ただ聞くだけでなく相手の意見を尊重しながら自分の意見を伝えることが評価において重要だったと思います。

模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

4人のグループ面接で模擬授業を行いました。面接日の前に予め用意されていた2つの授業テーマからグループで1つに絞り、その後に授業の流れを話し合い、授業の各パートを1部ずつ切り取って1人3分ずつ、ウォームアップ、導入、練習、確認を振り分けて授業を行いました。

授業を明るくハキハキ行えるかどうかも大事ですが、この模擬授業では主に話し合い方を見ていたと思います。私は、みんなに質問を投げかけながらみんなが希望するような流れを促しました。そして所々、アドバイスをする形で自分の意見を述べました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

日本人の親が多いことから継承教育の需要はとても大きいです。週末に日本語学校に行く子やイマージョン教育という5教科を半分日本語で、半分英語で学ぶような学校も多くあります。

継承教育以外では、高校生くらいになると興味、関心から、または将来を考えた生徒が日本語を選択科目から選び、熱心に学ぶ生徒がいます。

この小学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日常会話レベルの英語はほかの先生方とのコミュニケーションで必ず必要になりますが、現地についてから覚えるのでも問題ないと思います。

日本語教師としては、決まりごとがなく、授業の内容がその場で決まったり、決まっていたことがなくなったりするので臨機応変に対応する能力が必要となります。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本語教育学会
    大学や海外での求人が掲載されているサイトです。待遇がきちんとしている求人が多い印象です。
  • 国際交流基金
    いち早く、国際交流基金からの求人を確認することができます。

国選びで重視した点

  • 治安
  • たまたま条件に合う求人があった

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 人気があり、一定数の学校で求められている

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻
  • 大学卒業

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業

面接方法

  • 日本国内にて対面で実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

フランスに語学留学に行った際に、外国で色んな国から来た人と一緒のクラスで、フランス語を学ぶことががとても面白かったので、今度は自分が教える側となって教室に立ちたいと思い、母語の日本語教師を目指しました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

生徒が日本のことだけでなく、他の国の文化などに興味を持ち、教室の中で多文化共生が生まれたときにとても嬉しく思います。

教師として教室には立っていますが、長い目で見ると生徒は私から学ぶ日本語より、実は教室内の他の生徒から学ぶことのほうが多いのではないかと思います。そういう場を作れたことと、大きな気づきからまた日本語へのモチベーションが上がったことにとてもやりがいを感じました。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

仕事が多いわりに給料は低く、上がることもほとんどないので将来のことを考えたときにやめたいと思ってしまいます。

しかし、今後、より効果的に日本語を学ぶ方法、教える方法がもっともっと増えてくるだろうし自分も考えていきたいと思っています。これからの日本語教育業界を変えていく上でも続けていきたいと思っています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

日本語教師の成功している(楽しんでいる)人のほとんどは転職後に日本語教師になった人たちです。最初から日本語教師になった人も楽しんでいますが、結構文句もいっているのでそういったことを少し見据えて日本語教師にならなかったら何になるか ということも考えて目指した方が長く日本語教師を続けられるかもしれません。

それでも、すぐに日本語教師になりたいと思ったら、どんな学校で働きたいか自分の理想をよく考えてみてください。そして、働く学校を求人サイトやホームページだけで決めずに口コミサイトや実際に足を運んでよく検討してください。気になった学校の日本語教師の方にお話してみるのもいいと思います。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

転職して日本語教師になることはとても勇気のいることでもあり、またリスクもあるので決断の前にオンラインで無資格の状態で数人に日本語を教えてみたり、公民館などのボランティアで教えてみるなど試してみるといいと思います。それから、日本語学校に見学することもおすすめします。勤める学校によってやり方も求めるものも変わってくるのでまずは学校を見て、働きたい学校に向けた準備をするのがいいと思います。

アメリカで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

日本で教えてきた日本語教育とはかなり異なります。そのため、日本の日本語教育を変えていきたい!新しいものを吸収したい方にはとてもいいと思います。

しかし、今までの経験を活かしていきたい人にとっては逆戻りをするような感覚に陥ると思います。どんなことでも成し遂げれば成長と思えるかたは是非アメリカで働いてみてください。

北米の国・地域別 経験談

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