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海外日本語教師経験談

台湾 台北 語学学校(2020年) 日本オタクがいる日本語大好きな国

👩 たーしょんさん・ 59歳

総評

  • 台湾 台北 語学学校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:3.5年 (2017~2020年) *退職
  • 月収:7万2000円 (2万台湾ドル) *なんとか生活できる
  • 勤務時間:1日1.5時間 週2日勤務   *残業:残業なし
  • 日本語教師養成講座420時間修了  拓殖大学語学研究所

現在の私があるのは、日本語教師という仕事に出会ったおかげだと思っています。この仕事のおかげでいろいろな経験をすることができ、人間的にも成長できたと感じています。

台湾で日本語を教え始めたきっかけは、夫の国であるということ、そして何より子供が成長し独立したことが一番大きな理由です。

日本語教師となったからには、一度は海外で現地の人に教えたいという気持ちも持っていたので、子供の独立は本当にいいきっかけでした。

台湾に来て四年半の間に幼稚園や高校、企業、民間の塾などで教えました。台湾の人の日本好きは、「哈日族」(日本オタク)と言われる人がいるほど熱いです。

そのため日本語学習熱は高く、大学や民間の塾以外に、家庭教師や中国語と日本語の言語交換イベントなど、さまざまな学習方法で日本語を学んでいます。仕事で必要な人以外、趣味で勉強している人も、とても熱心に取り組んでいます。

台湾でもこの仕事は金銭的にも時間的にも余裕はありません。ですがとてもやりがいがあります。私は台湾で日本語教師の仕事ができてとても幸せです。

日本語教師という仕事はどこにいても、何歳になっても、やる気さえあれば続けられる素晴らしい仕事、私にとってのライフワークだと思っています。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

まず第一に苦労したことは、生徒が時間通りに集まらないことです。

私が教えていた企業は、2時間の昼休みのうち1時間半を利用しての授業でした。台湾は昼休みが長い企業が多く、その時間を利用していろいろな活動をしています。

昼休みということもあり、授業はまず時間通りには始まりません。
1時間半の授業ですが、正味1時間ぐらいしかできないのが実情でした。

台湾では日本ほど時間に厳しくないため、時間通りに来る生徒はほんの数名でした。ある程度集まるまで授業を進めることはできないので、それまでの間にやることを毎回準備していきました。

日本の歌や行事、ニュースなどをわかりやすく作り直したものを準備して使いました。

次に苦労したことは、レベル差です。

クラスに申し込む際のレベルは、生徒の自己申告です。そのためクラスのレベルに合わず、ついて来られなくなり、途中でやめてしまう人もいます。授業について来られないからといって、自主的に勉強してくる人はほとんどいません。

授業中はとても熱心に参加するので、なるべく楽しく参加できるようタスク、ゲームなどの活動を多く取り入れました。

発言させる場合の指名の順番やゲームのペア作りなどにも、できない生徒が嫌にならないように気を遣いました。

さらに教室の環境についても大変だったことがあります。授業は社内の会議室を使用していました。時々、会議などで使用できないことがありますが、当日行ってみなければわかりません。

事前連絡などはないので、現地で対処しなければならず、それがとてもストレスでした。

授業に使用していた会議室は、設備的には申し分なかったのですが、急にパソコンの設定やセキュリティが厳しくなるなどして、今まで使えていたものが使えなくなることも度々ありました。

そういった変更に関する事前連絡が派遣元の機関からも、授業先の企業からもないので、時間をかけて準備していったPowerPointの教材が使えないこともありました。

なぜこの語学学校を退職しましたか?

この教育機関をやめた理由は、夫が台湾で起業することになり、その手伝いのため、週2回の日中の授業時間が取れなくなったためです。

50音から教えてきた生徒達で、みなさんとても熱心に授業に参加してくれたのでとても残念でした。

給与

月収:7万2000円 (2万台湾ドル)
なんとか生活できる

日本教師の給料でも贅沢しなければ十分生活はできます。ただ時間講師の仕事だけだと、急にクラスがなくなったりするので、非常に危険です。数校掛け持ちしたり、ほかの仕事をしたりしている人もいます。

私の場合は、この教育機関の他にも仕事があるので、クラスが減っても生活には支障ありませんでした。

日本人が台湾で就労ビザを取る際に企業が払わなければならない最低賃金は、47,921元(約172,000円)です。

しかし、なぜか日本語教師にはその規定がありません。台北の日本語学校で専任の月給が約3万元、南部の方では2万元台のところもたくさんあります。待遇に関しては、各機関によって様々だと思います。

私が勤務していたこの教育機関では、月1回の食事会や忘年会、中秋節や端午節の時の菓子等の福利厚生が他の所より充実していたと思います。しかし教材や学生に配布するコピーに関しては、自分で負担しなければならない部分が多かったです。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:7万2000円

月収の内訳

  • 時給:約1,950円

待遇

  • 交通費
  • テスト作成費

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日1.5時間 週2日勤務   *残業 残業なし

学校が定める学生の長期休暇の有無

  • 長期休暇なし

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

一番大変で時間を取られるのは、授業準備です。1.5コマ(90分)の授業準備にまる一日かけることもあります。時間がかかり大変ですが、授業の様子を想像しながら準備を進めるのは、楽しい作業でもあります。

同じレベルのクラスを教える時に楽なように、一度教えたところの記録を取っておきます。

しかし、実際は生徒が違うとアプローチの仕方も違うので、やはり時間を使って準備する必要があります。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス17人

学習者層

  • 社会人

スケジュール

  • 月・木曜日:N4クラス 90分 (12:30~14:00) 企業の昼休みに授業
  • 火・水・金曜日:他の仕事に従事
  • 土・日曜日:授業の準備

台湾で日本語を教える前に準備すべきだったことは?

日本事情や日本文化の授業に使えるものを、もっと準備すればよかったと思いました。例えば年賀はがきや暑中見舞いの葉書等です。こちらでは現物が手に入りません。一時帰国した時にはその時期は過ぎていることもあり、なかなか実物が手に入りません。

それから七夕の笹も同様です。クリスマスやバレンタインデーといった日本と台湾共通のイベントであれば、関連商品など手に入れることもできますが、日本独特の行事だと台湾といえども入手するのは困難です。

七夕の笹に関しては、子供用のプラスチックの笹を買っておけばよかったと思いました。

準備しておいて良かったと思うものは、和紙の折り紙です。夏のお祭りの活動で浴衣を折ったり、七夕の短冊飾りに使ったりしています。
それから正月のポチ袋などを和紙で折るなど、様々な活動で使えます。台湾でも多少手に入りますが、高いし種類も少ないです。

日本の方が安くてきれいなものが手に入るので、一時帰国のたびにいろいろ買って帰ります。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • みんなの教材サイト
    主に授業で使えそうな素材やタスク探しに使います。実際に授業で使った感想も載っているので、使う時の参考になります。
  • まるごとプラス
    日本事情や会話の動画があります。練習に変化をつけたい時に使います。
  • 時雨の町
    台湾の東呉大学出身の方が日本語教育について書いているサイトです。中国語の説明などの参考にします。
  • 出口日語
    台湾で教えている出口仁先生のサイトです。『みんなの日本語初級』を流暢な中国語で解説しています。授業で文法説明を中国語でしたい時に参考にしています。

教案作りで参考にしている書籍は?

就職活動

この語学学校で働くきっかけ・決め手は?

現地の人が見る「台湾掲示板」に募集が出ていたので書類を送りました。

それ以前に応募した学校もいくつかありましたが、時間給が安かったり専任講師の募集だったりして、お互いに希望が合わなかったため、採用には至りませんでした。

今回レポートした教育機関で働こうと思ったのは、他の教育機関より時間給がよかったこと、大手の語学学校で安定していると感じたからです。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

授業の際に大切にしていることは何か、ということを聞かれました。そこの教育機関では幼稚園もありましたので、幼稚園と企業両方で教えられるかということも聞かれました。

さらに企業で教える場合、生徒は成人であるので、子供扱いしない、学生扱いしないで尊重して接することができるかということも聞かれました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

日本語教師の需要は常にあります。日系企業が多く、また日本で働きたいと考えている人も多いので、日本語学習者は常にいると思います。

仕事目的以外でも、アニメやドラマ、漫画を日本語で理解したい人、旅行先で日本人と日本語で交流したい人、日本文化に興味がある人など多くの人が日本語を勉強したいと考えています。

この語学学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

教える教育機関によって異なりますが、基本的には大学卒業、養成講座修了または検定試験合格といった日本国内同様の資格を求められるのが通常です。

機関によって短大卒でも良しとしているところもありますが、その際は研修が課せられたりします。教えた経験が給料に加味されるところもあります。

中国語はできた方が良いですが、必ずしも必要ではありません。中国語で指導している教育機関もありますが、そういう場合でも日本人の教師は会話担当で、台湾人の教師が中国語で文法の説明をするといったやり方を採用しています。

現地に行ってから中国語を勉強しようという姿勢は評価されます。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本村
    国内求人の他、海外、在宅のページがある。 海外は国ごとに分けて掲載されている。
  • 日本語教師の集い
    日本国内、海外、在宅、オンラインの区別なくまとめて掲載されている。
  • 台湾掲示板
    台湾在住の日本人が使っている掲示板。 住まいや仕事、不用品を売るなどの情報が載っている。 日本語教師募集は多くはないが時々掲載される。

就職活動で有効な手段は?

  • 『凡人社』
    最近は行っていないので分からないが、以前は麹町店の店内に募集広告が貼ってあった。

国選びで重視した点

  • 親日国
  • 渡航経験があった
  • 夫の国

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 人気があり、一定数の学校で求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 使用されている教授法
  • 給与・待遇
  • 学習者が社会人

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 大学卒業

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業

面接方法

  • 現地にて実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学卒業後は教員になるつもりでしたが、採用試験に受からなかったためアルバイトをしていました。その時偶然書店で日本語教師の仕事を特集している雑誌を見ました。それがきっかけです。

語学が好きで、教員だった母の影響もあり、教えることにも興味があったので、日本語教師になろうと思いました。日本語教師の仕事に学校教員にはない可能性を感じて、わくわくしたことを今でも覚えています。

さっそく養成講座に通い始め、そこで自分でも一から何か語学を学んでみると学習者の気持ちが理解できるとアドバイスをもらい、中国に語学留学をすることを決めました。

初めての海外、初めての寮生活、そこで現地の言葉を学んだ経験は、人間として視野が広がったばかりでなく、その後の日本語教師の仕事、ひいては私の人生に大きな影響を与えたと言えます。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

まったくの初心者だった生徒が、グループLINE上に私が日本語で書いた連絡事項を「この日本語わかる」と言った時、とても嬉しかったです。

また、ビジネス関連の指導をしていた時、電話のロールプレイの練習がとても役に立ったと言われたことがあります。その時もとても感動しました。

このように自分の指導が実を結んでいると実感できた時、この仕事を続けてきて良かったと感じます。

写真は、授業の最終日に食事会をした時のものです。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

今まで日本語教師を辞めたいと思ったことはありません。

しかし日本で教えている時、学習意欲のない生徒に教えなければならなかったり、授業以外の業務が忙しくて授業準備に十分時間が取れなかった専任教師時代は、他の学校に移りたいと思ったことがありました。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

大学に入る前であれば、日本語教育学科を選ぶという選択肢もあると思います。しかし日本語関係の学科でなくても日本語教師にはなれます。

英語学科であれば英語で教えられる位の英語力を身につければ、直接法だけでなく間接法でも教えられるので、勤務できる学校の選択肢が広がります。

もし、大学に副専攻で日本語教育の科目があったら、ぜひ受けておくことをお勧めします。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

社会人の方の場合、まずはやはり養成講座を受けることが必要だと思います。日本語教育検定試験の準備もしたほうがいいですが、私は実習の時間を多く取っている養成講座を優先することをお勧めします。

時折養成講座へは行っていないが、検定試験に合格しましたという方がいます。そういう方の場合、日本語をゼロから教える授業がどのようなものかが想像できないことがあり、実際に教壇に立った時にとても苦労します。

検定試験合格は必ず必要ではありませんが、持っていると就職率は高くなります。

それから現在の日本語教育は多様化しているため、どこで誰のためにどのような形で教えるのかを明確にしてからそれにあった養成講座を探して、その後就職活動を進めたほうが効率的だと思います。

社会人の場合、今までの仕事の経験が活かせる教育機関を選ぶのも早く就職につながる方法です。

台湾で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

台湾はとても親日的な国で、日本語熱もとても高いです。日本語の教材も豊富にあり、台湾で独自に発売されている良質な日本語のテキストもたくさんあります。

このように海外で日本語を教える国としては、とても恵まれていると言えます。初めて海外で教える場合、台湾は安心して取り組める場所だと思います。

ただ金銭的には楽ではありません。日本語学校でビザを取って働くのであれば、副業などする時間はないと思います。しかし現地の人と同じような生活をしていれば、そんなに困ることはありません。

生徒はどこの教育機関であっても基本的に真面目で礼儀正しいです。経験がゼロでも受け入れてくれる教育機関もあるので、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います。

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