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海外日本語教師経験談

台湾 高雄 日本語学校(2021年) 学習者の熱意に応えられるような工夫を

👩 あめさん・ 30歳

総評

  • 台湾 高雄 日本語学校
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間:1.8年 (2019~2021年) *退職
  • 月収:12万円 (2万8,000NTD) *なんとか生活できる
  • 勤務時間:1日4~6時間・週5日勤務   *残業:残業なし

私が在籍していた日本語教育機関は民間の日本語塾(補習班)だったので、年配から高校生くらいまでの幅広い年齢層の方が日本語を勉強していました。

自ら興味を持って勉強しに来る人が多かったので、熱意のある人や真面目な人が多かったです。真面目な分、真剣に教師の話を聞いてくれるので、非常に教えやすかったですが、逆に熱心すぎて思わぬ質問が来たりして、元の授業進度に戻すのが大変だったということもありました。

学習者のニーズに合わせて、質問に答えつつ、素早く教師側のペースに引き戻すといったスキルも求められました。

学習者にとって一番の壁になっているのは「会話力」と「聴解」だと感じています。台湾で勉強するとなるとやはり普段から日本語に接する機会がほぼ皆無なので、どうしても「いざとなると話せない」「日本人の言ってる日本語がさっぱり分からない」という状況に陥っている声をよく聞きます。

検定(読み書き)では満点近く取れるのに、実際にはなかなか話せなくて困っている方が多いようです。そこで教室の中だけでも実際に日本語に多く触れられるように、なるべく教科書を見させない、読ませないような授業を心がけました。

学習者が自分の伝えたい事を自由に言うことができるように、こちらが事前に台湾の日常に関する事などを調べて導入しました。文法だけではなく、台湾の文化や習慣なども頭の中に入れておく必要があると思います。

例えば、台湾は移動手段にスクーターがよく使われているのですが、台湾語ではそれを「オートバイ」と呼んでいます。日本語のオートバイは大型のものを指すので、そのまま使ってしまうとちょっとした誤解が生まれてしまいます。なので、台湾で言う「オートバイ」は日本語では「スクーター」と言うのがいいですよ!というように伝えています。

もちろんこれらの過程は大変なこともありましたが、学習者が「これこれ、これを言いたかったんだ!」という嬉しそうな表情をしてくれた時は本当にやりがいを感じました。せっかく熱意があるのですから、それをこちらがサポートしていくのはとても重要なことだと思います。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

日本国内では日本語のみを使って教える直接法が用いられているところがほとんどなので、台湾でも初めは直接法で教えていたのですが、意味や言いたいことがなかなか伝わりませんでした。

そこで中国語と日本語の両方を使った折衷法に切り替えて教えるようにしました。その結果、授業は圧倒的に進めやすくなりましたが、今度は中国語に頼りすぎて日本語に触れる機会が少なくなってしまいました。

中国語の翻訳が無いと分からなくなってしまうような状態にしないために、媒介語をどのくらい授業に取り入れるか調節するのにとても苦労しました。

なぜこの日本語学校を退職しましたか?

一口に日本語教育機関といっても様々な形態や授業方法があります。今のご時世ではオンライン授業の需要が高まっており、それらをより多く経験していきたかったのと、自らの日本語教育スキルを磨くために退職しました。

給与

月収:12万円 (2万8,000NTD)
なんとか生活できる

海外ですとやはり輸入品は高くなりますが、台湾で日本からの輸入品を頻繁に購入する、というようなことをしなければ普通に生活ができるレベルです。

とはいえ、長く海外生活を続けていると、日本のものが恋しくなる時があると思います。たまに買うくらいならもちろん問題ありませんが、あまり深く考えずにちょこちょこ買ってしまうとあっという間に足りなくなってしまうと思います。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:12万円

月収の内訳

  • 基本給:12万円
  • 個人授業手当:200円
  • 休日出勤手当:200円

待遇

  • 有給
  • 健康保険
  • 医療保険
  • 現地語学レッスン受講

雇用形態

  • 専任講師 *正規雇用

勤務時間

  • 1日4~6時間・週5日勤務   *残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 長期休暇がない

仕事のかけもち状況

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

午前中や午後にまとまった授業があるというわけではありませんでした。ある日は午前に2時間とその日の夜に3時間、またある日は夜のみに授業をするといったスケジュールだったので、空いた時間をどう有効活用するかが課題でした。

授業準備時間と休憩時間(或いは休み)をどのようにメリハリをつけて分配するか考える必要がありました。準備に時間を取られすぎないようにするのを意識しました。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス6人
  • プライベートレッスン

学習者層

  • 学生
  • 社会人
  • 幅広い年齢層

台湾で日本語を教える前に準備すべきだったことは?

その国の言語を少しでも勉強しておく必要があると思いました。日本語のみで教えることも可能ですが、なかなか意味が伝わらないと教師も学習者も疲れて集中できなくなってしまいます。

またその国の文化や習慣、地名などは事前に調べておくと、会話のレパートリーが増えて焦らずに済みます。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • 日本語NET
    教案の書き方、授業の進め方、導入の仕方の流れが全て載っているので、教案作成がなかなか進まない時に参考にさせていただきました。日本語教師になりたての方におすすめです。
  • Langoal
    教案作成はもちろん、イラストや練習問題などがあって、教材に困った時に活用させていただきました。例文が思いつかない時も参考にさせていただいております。新任の先生からある程度慣れている人まで幅広く活用できるかと思います。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き 対象: 初級
    初級からの教え方、どのように話して授業を進めればよいのかが全て書いてあるので、どんな参考書にすればいいか迷ったら、まずはこちらを参考にしながら試行錯誤していくといいと思います。教案(授業)の全体像をとりあえずイメージして組み立てていけるので、この本を使って授業の骨組みを作りながら、また他の参考書やサイトを使って内容を盛り込んでいく、というような使い方をしました。日本語教師になりたての方におすすめです。
  • 初級を教える人のための日本語文法ハンドブック 対象: 初級・中級
    学生の頃からお世話になっている書籍です。初級を教える人にはぴったりで、主に初級の文法解説が載っています。初級だけではなく中級にも繋がる文法もあるので、初級から中級の内容にも対応していると思います。主に学生からの質問に答えるために、自身の教養として活用しました。

就職活動

この日本語学校で働くきっかけ・決め手は?

いくつかの日本語教育機関を見学したのですが、ここに決めた理由は、教え方が決められておらず、教師自身の方法で自由に教えることができるのと、交通手段が便利な立地であったからです。

その他の日本語学校では、教科書がその学校のオリジナルテキストであったり、教師全員が全く同じ教え方でないといけなかったりしました。

私は日本国内の日本語学校で直接法での教え方、および教科書を延々と読むだけの授業にならないような進め方などの研修を受けた経験があったので、その時に学んだ教え方をそのまま活かすことができる教育機関はとても魅力的に感じました。

また電車や地下鉄を使う予定だったので、駅前である立地条件も決め手になりました。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

なぜ日本語教師という職業を選んだのか、経験はあるか、中国語は話せるか、といった事を聞かれました。

日本人と台湾人の二人の面接官がおり、大部分は日本語での面接でしたが、最後に中国語で台湾人の面接官と「日本語教師という職業を選んだ理由」を話してください、という指示がありました。なのでその国の言語は少しでも話せるようにしておいた方がいいと思います。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

企業や大学の必修科目で日本語が必要だ、というよりも、主に個人の興味や趣味で日本語を学んでいる人が多いように感じます。日本への憧れ、日本に住みたい、行ってみたい、アニメが好きだ、という人が大部分だと思います。

また、日本語の人気は昔と比べると少し落ちているそうですが、それでも「ぜひ学びたい第二外国語」としてのポジションは崩されていません。

毎年開催されている日本語能力検定試験に参加する人も減少しているというわけではありませんし、むしろ試験に向けて頑張っている人は増えている一方です。台湾での日本語教育の需要はまだまだ健在だと思われます。

この日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

大学卒業の他に、主専攻が日本語、或いは日本語教育能力検定試験を受けていれば、基本的には大歓迎です。ただし完全に未経験であるよりは少しでも教えた経験があると、更に採用率が高くなりますし、自分が楽になります。もちろん未経験でも研修があるので安心していただければと思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日本語教室の集い
    日本国内外の日本語教師の求人が一度に検索できます。民間の日本語教育機関の求人が多いです。
  • 日本村
    勤務地域や国ごとに分けて検索できるのが特徴です。また求人だけでなく、学校説明会などの案内もあるので、それと併せて情報収集をすることができます。

国選びで重視した点

  • 渡航経験があった
  • その国にもともと住んでいた
  • その国の母国語が得意

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 給与・待遇
  • 通勤時間
  • 利便性の高い場所

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻
  • 大学卒業

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

面接方法

  • 現地にて対面で実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

「は」と「が」の違いは?という質問をされた時、全く答えられなかったのが悔しかった。それが全ての始まりです。普段なんとなく話している日本語について質問されたのに、なかなか答えられなかったのは衝撃的でした。

日本人なのだから、母語なのだから、なんとなく分かるだろうといった考えは通用しないのです。そこで誰もが納得できるように、日本語を楽しく勉強してもらうために日本語教師を志しました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学習者の「わかった」という顔が見られた時がやはり一番嬉しいです。また自分の教え子が日本語能力検定試験で合格したと報告してくれた時も本当に達成感があります。あとは「先生、おもしろい」と喜んで授業に参加してくれるのは、苦労して教案を作った甲斐があると思いました。

そして「は」と「が」の説明を一生懸命して「やっと理解した!」と言ってくれた時は日本語教師をやってよかったと心から思えます。これが私個人の原点ですから。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

日本語教師になりたての頃の教案作成は本当に辛かったです。数時間の授業の為に一週間もかけて準備をしていた時もあり、「本当にこれでやっていけるのだろうか」と悩んだこともあります。

始めてから半年ほど経った頃、いくつか自分用の教案が完成し、それを繰り返し使いながら授業を進めるようになってから、ようやく楽になったと感じました。自分だけの教案や知識のストックが出来上がるまでの辛抱だと思います。

また、予想外の質問攻めにあった時はつらかったです。「わたしは学生です」の文を「わたし は 学生 です」に分解して全ての言葉の意味をとことん聞いてきた時は唖然としたことがあります。教案づくりで忙しいのにまた質問の答えを考えなければいけない…といった忙しさで辞めたいと思ったことはあります。

全ては経験がものを言う業界でもあるので、これも全て経験を積むためだと思って切り抜けました。教案を一度作ってしまえば、一生自使える自分の強みになります!実際今はその頃苦労して作った教案に助けられています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

日本語に関する知識も大切ですが、まずは日本国内の日本語教育機関で教壇実習をするのがおすすめです。

実際に大勢の学生の前に立つのは意外に緊張します。立った瞬間に今まで頭の中に入れておいた文法が全て飛んでいく、というような事態もありえます(実際に私がそうでした)。なので、まずは学生の前に立つという経験をすることをおすすめします。

もちろん日本語教師になる前に社会人経験を積んだ方が、将来の授業の話題が作れるのでこちらもおすすめですが、若い日本語教師の需要もあるので、そのまま日本語教師の道に進むのもいいと思います。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

社会人の方でしたら、420時間養成講座に通うことをおすすめします。日本語教師は文法だけではなく、国ごとの文化の違いはもちろん、日本語教育の歴史や背景、発音記号など様々な知識が必要になります。

仕事を続けながらこれらを全て自分だけで勉強していくのは大変だと思いますから、時間に余裕があるという方はこちらの講座に通ってみることをおすすめします。

そうしてから、日本語教育機関で必ず教壇実習をしてください。実際に大勢の学生の前に立ってみないと、「どこまで教えればいいか」という感覚がなかなか掴めません。

420時間で一生懸命知識を勉強したとしても、いざ学生の前に立ってみると、真っ白になってしまったり、時間内にどの範囲の内容を教えればいいか分からなくなってしまったりすることがあるからです(授業の上手な時間配分を考えるのも日本語教師の腕の見せどころです)。最初の頃はまず色々な経験をしていくのをおすすめします。

また、420時間養成講座に通う時間が無いという方は、日本語教育能力検定試験を受けてもいいと思います。これはもちろん簡単な試験というわけではありませんが、かといって非常に狭き門というわけでもありません。社会人で時間が無くても、毎日少しずつ勉強していけばきっと合格できると思います。

今は参考書や過去問なども各書店の日本語コーナーにたくさん置かれているので、一度見てみるといいと思います。この資格があれば日本語に関する知識を身に付けられるのはもちろん、何より専門性を裏付けることができます。そうしてから教壇実習を受け入れている教育機関で実際に授業をしてみてください。

台湾で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

台湾で日本語を教えたいのであれば、簡単なものでもいいので中国語を勉強しておくのをおすすめします。確かに台湾は親日国(地域)で、日本語が話せる人もいますが、だからといって日本語のみを使って授業をするとなるとあまり通じていない時が多くなってしまいます。

教師と学習者がお互いに疲弊しないためにも、こちらが事前に中国語を勉強しておけばスムーズに意思疎通ができます。完璧にマスターする必要はありません!むしろ「この中国語はどういう意味?」のように話題を残しておくと「先生、教えてあげるよ!」といった学習者とのコミュニケーションがとれて非常に楽しい授業になります。

今後どのような日本語教師になりたいですか?

どんな質問にも答えられる教師になりたいです。もちろん完璧にとはいいませんが、少なくとも授業中に戸惑ってしまうような教師にならないように日々勉強を続けています。

またこのご時世、対面式の授業のみならず、オンライン形式の授業も需要が高まっているので、こちらの方も合わせて試行錯誤しています。対面式と同じように学習者に興味を持ってもらえる楽しい授業になるようにしたいです。

そのためにも、日本語の知識だけではなく、普段から色々な事に対してアンテナを張って、授業の話題になる情報を集めています。

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