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海外日本語教師経験談

フランス ブルゴーニュ地方・ディジョン市 日本人子女 補習校(2017年) 語学としての日本語よりも、まずは日本文化を伝えたい

👩 sugevreyさん・ 49歳

総評

  • フランス ブルゴーニュ地方・ディジョン市 日本人子女 補習校
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:2年 (2015~2017年) *退職
  • 月収:2万2,000円 (170ユーロ) *それだけでは生活は難しい
  • 勤務時間:1日2時間 週1.5日勤務   *残業:残業なし

補習校の教師になったのは、国籍も文化もダブルという少々特殊な状況下にある子供達に、せっかくだから母国語を忘れないでいて欲しい、幼少時から学んだら少しでも記憶に残るかしら、思ったのがきっかけです。(まずは自分の娘が生徒として在籍していたのもありますが。)

小学部は各学年2~3名ずつの少人数クラスで、文科省配布の日本と同じ教科書を使用するため、敢えて学年は混ぜずに教えていました。母親が日本人で父親がフランス人の家庭が大半です。とくに幼少時は母親と過ごす時間が長いからか、聴き取りと理解はよくできるものの、やはり読み書きを定着させることに苦労しました。

学年が上がるに従い、漢字を覚えきれないという問題ではなく、教科書のお話の内容そのものが理解できない、住んでいないから見たこともない、という問題が出てきます。そのため上級生クラスでは、教師がフランス語で解説を加えたり(このメトッドは賛否両論ありますが)、Youtubeや日本のDVDなどを採り入れ、少しずつ教科書から離れたテーマとなっていきました。

補習校であるため、生徒達は現地校の授業がない日に、週1日だけ通学してきます。またフランスならではですがヴァカンスが長く、1年間に5回もあるため、授業時間が圧倒的に不足しています。そのため、教育内容もかなり絞らざるをえませんし、教師としてもフルタイム勤務ができず、収入を補う何かしらの方法を探さなくてはなりません。

多くの制約はありましたが、中には日本文化そのものに興味を持ち、書道や茶道、柔道などを個人的に始めてくれる子供もいて、「日本を好きになってくれた」ことだけは報われていたように思います。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

担当したのが日仏国籍を持つ子供達で、日本の小学校で体験入学も経験したことのある生徒が多く、日本式の勉強法にはすぐに馴染んでくれましたので、さほど苦労した点はありません。問題といえば、授業時間や宿題をする時間が不足していたことに尽きるでしょうか。

なぜこの日本人子女 補習校を退職しましたか?

生徒達は全員が現地校に通学しており、授業のない水曜午後や土曜に、補習校の授業を行っています。そのため教師としては勤務時間数が少なく、どの教師も他の仕事と掛け持ちをしていました。そちらに専念するために、補習校は退職することになりました。

給与

月収:2万2,000円 (170ユーロ)
それだけでは生活は難しい

時給17ユーロ(税込)で雇用されていました。授業時間数が少ないため、これだけで生活はしていけませんが、仮にフルタイム(週35時間で有給休暇あり)で計算すると月給2300ユーロあまり、フランスの一般的なサラリーマンと変わらないレベルかと思います。

日本の源泉徴収にあたる制度はなく、全雇用者が確定申告にあたる手続きを自身で行う必要がありました。

日本の待遇と違う点は、フランスでは交通費が一般的には支給されない点です。(私共の学校では支給がありましたが、むしろ例外だと思います。)

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給与

  • 月収:2万2,000円

月収の内訳

  • 時給:2,200円

待遇

  • 交通費
  • 保険(皆加入の国民健康保険・失業保険・年金)

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日2時間 週1.5日勤務   *残業 残業なし

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない
  • 長期休暇中は別の仕事をしている
  • 長期休暇中は別の仕事をしている

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

時間管理で大変さを感じたことは、とくにありませんでした。年間スケジュールが決まっていますし、フルタイム勤務でもないので、空き時間をうまく利用するのは容易だったと思います。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス2~3人

学習者層

  • 小学生

スケジュール

  • 水:14:30~16:30 小学1年生クラスを2コマ
  • 隔週土曜日:10:00~12:00 小学生全学年合同クラスを2コマ
  • 月・火・木・金・日 休日に取り組んだ仕事:授業ではありませんが、自宅で授業準備・授業後の報告書作成など(1週あたり30分~1時間ほど)

フランスで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

日本の風景・文化・風習などが分かりやすい写真集(解説が仏語のものは殆どないので英語版でも)、習字道具、茶道具、きものや浴衣、かわいい文具類、お菓子など。里帰りのたびに大量に持って来ますが、毎回かなり役に立っています。

逆に不要なものは、教材類。インターネットで何でもダウンロードできます。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • 小学校における学習支援コンテンツ
    おもに国語と社会科について、学習指導要領の補完として「工夫例」を参照。活用できそうなオンライン教材のリンク集も頻繁に利用。
  • NHK NEWS WEB EASY
    小学4年生以上の授業で使用。教科書の内容が難しくなってくる学年で、時事問題のほうが日常生活の中でよく見聞きしていて取り組みやすいため。
  • ちびむすドリル
    主に小学校低学年の漢字練習プリント、中学年の日本地図などを利用。

就職活動

この日本人子女 補習校で働くきっかけ・決め手は?

生徒達は日仏家庭の子女が大半で、日本語のベースが既にあります。小規模校のため1クラスは2~3人程度。保護者が積極的に運営に関わる、アットホームな雰囲気でした。経験の少ない私にとって、他の同僚のように、大学の教室で数十人のフランス人に教えるのはストレスが大きいですが、この補習授業ならお引き受けできるかと思いました。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

履歴書の提出はとくになく、ごく簡単な授業見学と面接のみ。日本での職業経験、フランスへ来た経緯、また今後のビジョンなど(補習校の給与だけでの生活は難しいため、他にどういった仕事をするかなど)。知人の紹介であったため、ほとんど雑談というか人柄を見るだけのような簡単な面接でした。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

継承教育の観点からは、日本人子女を対象とした学校(日本人学校、日本語補習校)がフランスには20校近くあり、各地に万遍なく分散しているので、募集数は少ないながらも、教師の職が見つかる可能性はあると思います。

日本のマンガ・アニメブームの後押しもあり、フランス人からの需要が増えていると思います。各地の大学に日本語学科や、社会人向けの日本語講座が設置されており、いずれも入学時は定員オーバーの人気ぶりのようです。(しかしながら、やはり勉強が難しいためか、3ヶ月後には半分程の人数まで減るそうです。)

また、日仏協会といった類のアソシエーションがある街も多く、日本文化(書道・華道・茶道・柔道・合気道などが人気)を学ぶ講座、日本語教室などは、現地の日本人が講師として呼ばれる場合が多いです。

こういった場である程度の経験を積み、フリーランスとして自宅からオンライン授業を行っている元同僚もいます。

この日本人子女 補習校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日本語教師養成講座、日本語教育能力検定試験、大学での日本語教育専攻など、やはり経験として持っていたほうが良いようには思いますが、実際には、そこまで問わない学校も多いです。(上記のような有資格者は、日本の機関からの派遣で来ている方が多いので、日本に居ながら就職先を探すのであれば、必要かもしれません。)

フランス・欧州レベルで、日本語教師が集まる勉強会も複数開催されており、他校のケースを聞いて学びつつ、経験を積んでいくといった印象です。

現地の外国人に教える場合は、対等に会話ができるレベルの現地語の能力が必要です。(逆に日本人子女、とくに小学校低学年クラスでは、現地語が話せないフリをしてくださいと言われました。)

意外と役に立つ資質としては、日本文化で得意な分野があると、普段の授業にも息抜きとして採り入れたり、イベントを企画するときに役立つと思います。フランスでは、書道・生け花・茶道・柔道・合気道などが人気で、興味をお持ちの生徒さんも多いです。

就職活動で有効な手段は?

  • 『各都市の日本語補習校・大学・日仏協会など』
    HPから連絡先を調べて直接連絡(新学年は9月より)

国選びで重視した点

  • その国にもともと住んでいた
  • その国の母国語が得意

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 必須資格
  • 学校の規模
  • 学習者数

応募時に必要とされた資格

  • なし

就職 選考方法

  • 面接

面接方法

  • 現地にて実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

我が家も日仏家庭ですので、0歳児のときから、子供に母語を定着させようと工夫を凝らしてきました。

国籍も文化もダブルという恵まれた背景を持つ子供達に、せっかくだから母国語を忘れないでいて欲しい、幼少時から学んだら少しでも記憶に残るかしら、思ったのがきっかけです。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

子供達が、自然と日本人らしさを発揮してくれた時、日本人としての誇りを身に付けてくれた時が、教師としてのやり甲斐を最も感じました。

例えば、現地校で自らすすんで日本のことを紹介した、日本の祖父母に手紙を書いた、書道を習ってみたい、授業後の教室掃除・・・など。

毎回の授業は、音読や漢字練習のルーティンワークも多く、生徒達にとってはつまらない部分も多いかもしれませんが、言語だけに捉われない日本人的要素も吸収してくれたと思った時が、嬉しかったように思います。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

若いうちに海外で暮らしてみることをお勧めしたいです。日本で外国人に教える、海外で現地人や日本人子女に教える、いずれにしろ日本語教師は外国語に堪能であることが必須です。日本語教師養成講座などは、その後からでも間に合うように思います。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

現在の職業に関連することでも、趣味でも、何かしら日本文化に関する得意分野を見つけておくことをお勧めしたいと思います。養成講座の受講が可能なら良いと思いますが、実際の就職には、資格がなくても大丈夫な場合も多いように思います。

フランスで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

フランスでの生活は、居場所が定まるまでの2~3年が大変だったように思います。役所の手続き、自分のフランス語のレベル、さすが自由主義・個人主義の国で、バラバラの個性が各自勝手に動いているような印象で、溶け込むのに苦労したような記憶があります。

ですが、長年住んでみると居心地が良いのも確かで、人種や性別、年齢による就職差別もなく、本音と建前もないので、フランス人は理解しやすくて対等に付き合いやすいと言えると思います。

私自身は先に現地在住で、自分の条件から可能な仕事として日本語を教えることになりましたが、教える場所はどの国でも可能だということに後から気づきました。

これから日本語教師を目指される方は、とても広い可能性をお持ちだと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

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