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海外日本語教師経験談

フランス リヨン近郊 エンジニアスクール(2025年) 日本語学習の目的は学生によって異なる

👩 みみさん・ 43歳

総評

  • フランス リヨン近郊 エンジニアスクール
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:1.5年 (2024~2025年) *現在も勤務中
  • 月収:10万5000円 (640€) *それだけでは生活は難しい
  • 勤務時間:1日2時間・週2日勤務
  • 日本語教師養成講座420時間修了  アークアカデミー

フランスのエンジニアスクールで日本語を教えています。

学生の頃、第二外国語でフランス語を学んでおり、その際にフランスという国にとても興味を持ちました。大学の休みを利用してフランスでボランティア活動に参加したり、旅行をしたりしました。その後も、フランスへの憧れが消えず、現地で生活したいと思い始めました。

渡仏後は、現地の企業で働いたり、インターナショナルスクールで指導をしたりしました。10年ほど前から学校や個人で日本語を教えています。フランスでの日本語教師の求人は多くはありませんが、現地の斡旋業者やインターネットのサイトで見つけることができます。今勤務している学校は、インターネット上で応募し採用に至りました。非常勤で週に4コマ担当しています。

現在勤務している学校では、20歳代の学生がエンジニアを目指して日々勉強しています。私のクラスは、仕事のために教養を深めたい、趣味で日本語を学びたい、そのような思いをもった学生が日本語の授業を受講しています。

この学校で働き始めて1年半ほどになりますが、学生は、日本が大好きな人たちばかりで、様々な日本についての話を深めることがとても楽しいです。日本を好きになってくれて、日本語は初級レベルですが、日本での仕事が決まった学生もいます。

一方で、この学校での苦労は、もっと日本語を学びたいと望む学生と、もっと日本を知ることを楽しみたいと望む学生がいるということです。彼らの日本語学習に対する目的の違いを受け止め、どちらにも有意義となるような授業を組み立てなければならないという点にとても難しさを感じています。どちらの希望にも応えられる授業として、具体的には、「学んだ文型が実際にはどのように使われているのかをアニメの中で探す活動」や「旅行で使われる表現について、習った文型を示しながら確認する授業」などを行っています。日本文化を知りたい学生と文の構造を理解したい学生の両方が目的を達成できますので、どの学生もこれらの活動は好きなようです。

また、フランス人は要領よく勉強することを大切にしていて、がむしゃらに勉強に時間を費やすことをしません。日本語学習においては、ひたすら書いて文字を覚えるということも時には必要だと思うのですが、フランス人にとってはそれはとても理解しがたいようです。ひらがなを覚える段階で文字学習を断念してしまった学生もいます。とにかく楽しく日本語に触れてほしいという思いから、強要はしなかったのですが、今となっては、ひらがなくらいは覚えてもらったほうがよかったと思っています。ひらがなを覚えることで語彙が頭に入りやすくなり、語彙が増えることで日本語力が上がるという当たり前のことをきちんと説明する必要があったと感じています。

様々な難しさはありますが、フランスには親日家が多く、日本語学習を決断する人たちは、日本を理解したい、日本人と話したいという気持ちで学習をしていますので、授業はとても進めやすいです。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

日本とフランスの学習に対するスタンスの違いには、最初戸惑いました。楽をしたい、でも結果は出したい、そういった考えの学生が多いです。要領よく勉強するという意味では素晴らしいですが、やはり言語学習はコツコツ根気よく向き合う必要があると思います。

また、フランス人はコミュニケーションをとても重視します。一度学生の名前を度忘れしてしまい、次の授業からその生徒が来なくなるということがありました。安価なものですが、お詫びのプレゼントを準備し、心から謝罪をしました。それからは、距離感がぐっと縮まりました。

給与

月収:10万5000円 (640€)
それだけでは生活は難しい

今回ご報告させていただいているエンジニアスクールでは、時間給以外は何も出ませんが、教育施設によって異なります。エンジニアスクールとは、フリーランスとして契約しているため、時間給のみの支給です。
病欠等で休んでしまった場合には、振替をする必要がなくただ休ませてもらえますが、その分の給料は出ません。

エンジニアスクールの他、高校で正社員として雇用されています。フランスでは、非常勤であっても無期雇用であり社会保障の対象になる社員を正社員として扱います。私も高校との契約はフルタイムではありませんが、正社員として契約しており、長期休暇の間も給料が支払われます。

その他、個人レッスンや出張レッスン(小中学校や図書館等施設でのイベント等)を行っています。

フランスで日本語教師として働いた場合、決して贅沢はできませんが、1校にフルタイムで雇用される、もしくは数校かけもちをすれば、日本語教師だけで生活できると思います。
どこにお金をかけるかは人それぞれだと思いますが、私は、普段は自炊をしながら節約を心掛け、月1くらいで行きたかったレストランに行ったり、バカンス時には旅行をしたりします。

フランスでは、日本語に興味を持っている人はたくさんいて、日本語の授業を提供している機関も増えてきてはいますが、まだまだ日本語教師として採用されるのは難しい状況ではあります。しかし、確実に求人は増えていますので、根気よく探す、または自分から教育機関にコンタクトを取ることでチャンスをつかめるかもしれません。

私立のスクール等では、各校が採用基準を設けていますが、高校までの教育機関では、フランスまたはEU内の大学卒業が必須の場合が多いです。私は、現地の大学を出てはいませんが、日本の大学で教育学を学び、日本語教師の資格を取得し、フランスで教えるだけのフランス語を身に着けているということを書面でアピールし、教育委員会からの承諾を得ました。フランスは、法律や制度を重視する国ではありますが、それ以上に個人が個人の幸福のために戦うことを認めてくれている国です。私の場合も、自分自身が教師として働きたいという強い思いをもっていること、私の経験や技量が絶対に社会や日本語教育には必要だということを訴えました。

給与の詳細を読む...

給与

  • 月収:10万5000円

月収の内訳

  • 時給6,500円

待遇

  • なし

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日2時間・週2日勤務

長期休暇中の給与保証

  • 給与保証がない

仕事のかけもち状況

  • かけもちしている 他2ヶ所
授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス15人

学習者層

  • 学生

フランスで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

教材は、ほとんど手に入りません。最近は、インターネット上で様々なイラストを入手できるのでそれほど困りませんが、それでも日本に帰国するたびに本屋さんや百均を回ります。ひらがなやかたかなのカードがあるととても便利ですし、幼児用に作られた食べ物カードなども授業を盛り上げるのに役立ちます。どこの国でも同じかもしれませんが、フランス人は食べることが好きです。食べ物の絵や写真を見せるだけでテンションが上がります。寿司という言葉を今や世界中の人が知っているように、食べ物の名称は頭に残りやすいのだと思います。食べ物とひらがな・かたかなを結びつけて覚えてもらうのは、とてもいい方法だと思っています。

前回買ってきてよかったものは、百均で売っていたビンゴゲームマシーンです。数字を楽しく勉強できました。他にも日本のゲームなどがあるとよいと思います。今欲しいのは、花札です。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • いらすとや
    ・様々なシチュエーションのイラストが手に入ります。 ・パワーポイントなどの教材を作るときに使用しています。 ・教材を自作する人におすすめです。
  • GENKI文型ビデオ集
    ・様々な文型を動画にしているサイトです。 ・習ったことを復習する際に使用しています。 ・日本人が教師一人しかいない場合におすすめです。会話の様子を見せることができます。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • みんなの日本語 初級Ⅰ 対象: 初級
    ・日本語文法を学習するための定番テキストです。 ・みんなの日本語をもとにオリジナル教材を作成しています。 ・この本を学習者に使用させてもいいし、教師だけが使ってもよいと思います。
  • まるごと 日本のことばと文化 入門 A1 りかい 対象: 初級
    ・日本の生活の場面で使える表現が多い本です。 ・文法を学ぶために使用したり、文法を学んだあとに活動の補助として使用します。扱う文法事項がみんなの日本語と異なるので、まるごとに載っている文法を見たり、みんなの日本語で学んだ文法の活動用に使用したりしています。 ・みんなの日本語だけでは退屈してしまいそうな学生におすすめです。

就職活動

どのように就職活動を行いましたか?

フランスの求人サイトや日本でいうハローワークのようなサイトで探していました。
インディードやFrance travail
エンジニアの仕事は、フランス版インディードで見つけました。
応募したのはこの1校のみです。
採用まで時間はかかりませんでした。書類を見て探している人材にマッチしたと電話で連絡がありました。電話で話した際、フランス語に問題がないからすぐに来てほしいと言われました。

フランスでは、書類がとても大切です。決まった型はないので、アピールできるように内容を吟味しました。面接なく即採用となることもあるので、伝えておきたいことは全て書いておくのがよいです。

待遇や時間などについては、はっきりと希望を伝える必要があります。能力が見合っていれば、難しい希望を伝えたとしても、それが合否に関係することはありません。話し合いでお互いの希望をすり合わせていきます。採用する側もされる側も対等な立場で発言する必要があります。そのためにも、フランス人と問題なくコミュニケーションが取れる語学力は必要です。フランス語の資格云々よりもフランス人に言い負かされないだけの会話力と度胸を持ち合わせていることが重要だと思います。

きちんと主張しないと希望の時間に授業を入れてもらえなかったり、他の教師より低い給料を設定されたりしてしまいます。私は、日本語がネイティブである点、日本語教師の資格(養成講座修了)を持っている点、日本語だけでもフランス語を介してでも授業ができる点をアピールし、交渉しました。

高校に関しては、日本語授業が開講されると噂になっていた高校の校長先生に直接連絡しました。そのときはすでに教師を手配しているということで断られましたが、1年後に、ポストが空いた旨連絡をもらいました。その際、私がフランスの大学を卒業していないことがネックとなり、様々な書類を準備したり、学校や教育委員会を説得したりする必要がありましたが、熱意が伝わり採用に至りました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

フランスはとても親日家の多い国です。アニメ等の影響で、日本文化のファンとなった人はたくさんいます。最近では、日本へ旅行する人も多く、旅行会話を学びたい大人の方が増えています。

学校としては、日本語を第三外国語として学ぶことのできる高校が増えています。まだまだ他の言語に比べると数は少ないですが、確実に需要は高まっていると言えると思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • インディード
    世界的に有名なサイトですが、そのフランス版です。 professeur japonais などのキーワードで検索します。日本語教師の求人は少ないですが、ときどき出てきます。
  • France travail
    日本でいうハローワークのようなサイトです。誰でも利用できます。

国選びで重視した点

  • その国に親しみがある
  • 渡航経験があった

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 給与・待遇
  • 通勤時間
  • 利便性の高い場所

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教育経験

就職 選考方法

  • 書類

日本語教師全般に関する質問

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学生が、日本旅行に行って、おいしかったものや楽しかったことを嬉しそうに報告してくれたとき、日本語教師をやっていてよかったと思いました。実際に習った日本語が使えたと言ってくれたり、注文を日本語でできたと教えてくれたりしたときは、とても嬉しかったです。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

学生の名前を覚えるのは得意で、普段は忘れることは絶対にないのですが、その日は度忘れをしてしまいました。軽い感じで済むと思っていたのですが、その日を境に、その学生は授業に来なくなりました。まさかその一件が原因とは思いもしなかったので、初めは気にしていなかったのですが、後に他の学生から事情を聞き、大変なことをしてしまった思い、辞めたいと思うくらい悩みました。

どうするのが一番良いかと考え、お詫びとして、日本の雑貨とお菓子に謝罪のメッセージを添えたものを他の学生から渡してもらうことにしました。すると、次の授業の時に来てくれました。

フランスで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

フランス人は、話をすることがとても好きです。いろいろなテーマでディスカッションをすることができます。日本文化について、それぞれの持つイメージなどを言い合ったりするのはとても楽しいです。一方で、恥ずかしがり屋な部分もあります。音読や会話の練習などでは、異常に照れて拒否する生徒もいるくらいです。

また、プライドがとても高いです。ですから、間違うことを嫌います。きちんと理解したことを確認したうえで答えさせるようにし、他の学生の前で恥をかくような場面を避けてあげる必要があります。

今後どのような日本語教師になりたいですか?

私は、日本の文化や伝統の中にある日本人の美徳を伝えられるような教師になりたいです。武士の精神であったり、生け花や茶の湯などの伝統文化であったり、また自然の中や普段の生活の中など、様々な所に日本の心があります。アニメの中だけではわからない、日本の美しさや素晴らしさを伝えられる教師になりたいです。

たとえば、日本では幼稚園児も自分たちで掃除をするという話をすると、フランス人はとても驚きます。フランスでは、校舎の掃除は業者が行います。そのため、自分たちが学ぶ教室でさえ、きれいに使おうという意識がありません。

日本とフランスは、似ている部分と異なる部分があります。その違いを示すと学生はとても興味を持ちます。普段からそれぞれの文化や伝統について学び、いろいろなことを敏感にキャッチできるように意識しています。

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