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海外日本語教師経験談
ポーランド ワルシャワ 日本語学校(2022年) 学生と一緒にクラスを作っていける環境です
👩 ねおんさん・ 27歳
総評
- ポーランド ワルシャワ 日本語学校
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間:2年 (2020~2022年) *現在も勤務中
- 月収:10万円 (3,500zł) *現地で生活をするのに十分
- 勤務時間:1日 2~3コマ・週5日勤務
私が日本語教師を目指したきっかけは、高校2年生の時にモンゴルからの留学生に出会ったことでした。当時「日本語教師」「日本語教育」という分野を全く知らなかった私ですが、彼女に出会って一緒に過ごしていくうちに彼女の日本語がみるみる上達していく過程に触れ、それまで興味のなかった「日本語を学ぶ」という分野に惹かれ始めました。そこから日本語教育の勉強ができる大学や学部を探し、大学で本格的に学ぶことにしました。
学生時代に東ヨーロッパでの留学を経験し、スラブ語の面白さに惹かれ、スラブ語圏で日本語教師になることを夢見るようになりました。なかなか求人が出ないヨーロッパですが、奇跡的に第一希望であったポーランドでの日本語学校の求人を見つけ、働けることになりました。
後々聞いた話によると、求人が出る半年前にすでに採用が決まっていた方がいらっしゃったのですが、コロナの影響でビザの給付がストップしてしまい、ビザ取得の目処が立たないため辞退されたそうです。そのため、ビザの取得が可能になった半年後に再度求人が出て、ポーランドで働けるチャンスを掴むことができました。
コロナ禍ではありましたがワーキングホリデービザを取得し、無事渡航できたのは良かったのですが、ポーランドで働き始めてから半年後、「就労ビザ申請」の壁にぶち当たりました。おそらく、どの国でも苦労する点だと思いますが、担当の弁護士さんとのやりとりや必要書類の収集などに思ったよりも時間がかかり、また、移民局の予約がなかなか取れなかったりと予想を上回る時間を要したのを覚えています。
また、最近は就労ビザの更新のために再び同じ手続きを踏む必要があったのですが、ウクライナ侵攻の影響で移民局がパンクし、予約が数ヶ月先でないと取れない状況になっていました。幸いキャンセルが出た時間に予約ができ、ポーランド政府も状況を把握して申請場所を増やしたりと対応が進んできたので、無事申請することができました。
早めに準備をしていても、言語の壁があったり、保証人(基本は弁護士)が必要だったりして自分一人では申請にはいけないので、私も含め、なかなか上手くいかずに苦労している人が多い印象です。
ビザ関係で紆余曲折ありましたが、仕事の方は専任として採用され、約2年間勤務しており、学生たちとのやり取りの中で日々様々なことを学んでいます。
私が勤務する学校は、趣味で日本語を学んでいる学生が90%以上を占め、年齢も10代から60代まで幅広いのが特徴です。また、「今日の授業でこのレッスンまで終わらせないといけない」といったノルマがなく、学生たちのペースやニーズに合わせて進められるのが最大のポイントだと思います。そのため、学生たちから「この文法をもう少し勉強したい!」「これまで勉強した漢字の復習がしたい!」といった要望も多く寄せられ、教師一同、学生のニーズに応えるための工夫を常にしています。
一方で、要望が難しかったり、一部の学生はそれに賛同していないといった場合もあるので、全員が満足いくような授業を心がけるのが苦労する点です。それでも、お互いの意見をしっかり言い合い、上手く妥協点を見つけていくのがポーランド人の性格なので、教師と学生が意見を出し合い、一緒になってクラスを作り上げていく楽しさを日々感じていますし、一番のやりがいだと思っています。
また、私が勤務する学校では「話せるようになること」に重きを置いているので、文法を勉強する際は必ず「会話」の時間を設けています。ただ、幅広い年齢層の学生がいるため理解度に差が生まれやすく、一部の学生に付きっきりになったり、常にフォローをしていなくてはならない場合があります。その際、ペアワークのペア割りを工夫して、学生同士が教えあったりフォローし合ったりできる環境を作り、できる学生は人に教えることで自分の理解度を再確認でき、ゆっくりめの学生も他の学生と話しながら理解を深めていくことができます。
学生全員が「一緒に前を向いて頑張れるクラス」作りに貢献し、学んでいけるのが理想の形だと思いますし、常に心掛けています。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
私はポーランド語ができないので、日本語とポーランド語で異なるニュアンスのある言葉の説明に苦労しています。
例えば、「引退する」という日本語の言葉は「現役を引退する」といったように「ある仕事から100%退く」イメージがあります。ポーランド語でこのニュアンスがあるフレーズが「iść na emerytuję」です。この言葉は文字通りには「年金をもらう人になる」といった意味があり、日本語で言うと「定年退職する」と言う言葉に当てはまります。つまり、ポーランド語では「定年退職する=引退する」になってしまい、「定年退職する=引退する」ではない日本語について説明するのに苦労しました。
給与
現地で生活をするのに十分
日本語教師としても給与としては、ポーランドの中では高い方なので生活に困ることは今のところありません。しかし、海外の日本語学校ではよくあることですが、夏は学生たちが休暇を取る場合が多く、7月-9月はコマ数が繁忙期の半分程度に減るため、夏前までにしっかり貯金をしておかないと夏に生活が厳しくなるという問題があります。
また、給料だけで普通の生活は問題なくできますが、住居費や交通費の補助もなく、ボーナスも年によってはない場合があるので、日本で働いている会社員と比べると貯金をしたり毎日外食したりするのは難しいかなと思います。
というのも、ポーランドは物価が安いという印象があると思いますが、野菜や果物以外は日本とほとんど値段が変わらないので、給料に対して考えると物価は高めだと思います。家賃も一人暮らしであれば約70000円、シェアハウスで約30000円と、給料は日本の半分以下であるにもかかわらず家賃は高めです。そのため、私も含め同僚は全員シェアハウスに住んで出費を抑え、その分娯楽に充てている印象です。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:10万円
月収の内訳
- 1コマ 60 or 90分 1,800 or 3,000円
- シフト作成:6,000円
待遇
- 健康保険
- 医療保険
- 賞与 年間30,000円
雇用形態
- 専任講師 *正規雇用
勤務時間
- 1日 2~3コマ・週5日勤務
長期休暇中の給与保証
- 給与保証がない
仕事のかけもち状況
- かけもちしていない
授業形態・勤務スケジュール
スケジュール管理で大変だったことは?
仕事や学校を終えたあとに通う日本語学校のため、授業スタートが夕方だという点に慣れるのが一番大変でした。自分の中でルーティンを決めておかないと、午前中だらだら過ごしてしまって半日無駄にする羽目になるので、授業は夕方からでもきちんと起きる時間や朝やることを決め、日々過ごすようにしました。それからは自分の自由な時間もうまく確保できるようになり、1日を充実した形で過ごせるようになりました。
その他に、授業準備にかかる時間がどのぐらいかかるか予想がつかなかった点もあります。私は日本語教師としての経験がなかったので、この学校で一から学びました。そのため、先輩の授業を見学して自分で授業を組み立てていくのですが、自分のキャパシティも学生のレベル感も最初は分からず試行錯誤したのを覚えています。
しかし自分の中で「漢字の準備には〇〇分くらい」「この文法は〇〇分くらい」とかける時間を予め設定し、その中で集中してどのぐらいの準備ができるかを確認し始めてからは、授業準備にメリハリが出て効率的に進められるようになったと思います。
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス1クラス 8人ぐらい
- プライベートレッスン
学習者層
- 高校生
- 社会人
- 幅広い年齢層
ポーランドで日本語を教える前に準備すべきだったことは?
いろいろな教材に触れておくべきだったと思います。現地に着くと、手に入れられる教材に限りがあり、学生の要望に合った教材を見つけるのに苦労しています。
また、教材のバリエーションが頭の中にないため、「こういうテキストがある!」と学生におすすめしたり、会議で持ち出したりすることができないのが悔しいなと感じています。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『日本語NET』
文法1つ1つの説明が、例文とともに細かく書かれているサイトです。中級以上の文法を教える際、使用教材の文法の説明が不十分に感じた時にこのサイトを使って詳しく調べています。「この文型が登場する教科書」という項目があり、どのテキストにこの文型が載っているか確認したい時にも重宝しています。まだ教えたことのない文型を教えることになった場合、このサイトはシンプルで分かりやすくまとめてくれているので、日本語教師初心者の方におすすめできるサイトだと思います。 - 『まるごと 教師用リソース』
学校で『まるごと』を使っており、この教師用リソースの中にある「教え方のポイント」という項目をよく使っています。この「教え方のポイント」では、テキストに書かれてある文型や活動をどのように説明したり、行ったりすると効果的かが書かれています。私は中級以上のクラスを担当する際(A2/B1以上)、文型の教え方に不安がある場合に参考にしています。また、似ている文型をどのレッスンで勉強するかも記載されているので、学生が似ている文法を既習か未習かもパッと判断できるのもいい点だと思います。『まるごと』を初めて使う方におすすめしたいです。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『教師と学習者のための日本語文型辞典』
対象:
全レベル
全レベルの文型と説明、例文が記載されている辞典です。中級以上の文型を教える際、詳しく意味や使い方を知りたい時に使っています。また、文型の副教材プリントを作成する際も、インターネットの情報と合わせて使っています。これ1つあれば文型の意味や使い方はカバーできるので、日本語教師初心者の方から使える書籍だと思います。 - 『どんなときどう使う日本語表現文型辞典』
対象:
全レベル
全レベルの文型を辞典形式で調べて、意味や用法を確認できる書籍です。『教師と日本語学習者のための日本語文型辞典』と似ていますが、文字が大きく見やすいのと、説明がよりシンプルなのが特徴です。英語や中国語、韓国語の訳もあるので、学習者にも手に取りやすいものだと思います。私は、授業準備の段階で文型の使い方などを調べたい時に使っています。使われている語彙が分かりやすいので、学習者への説明も教師の方でしっかり噛み砕く必要がなく、説明しやすい印象があります。様々な文型を辞書的に調べて、すぐに意味や用途を知りたい方はもちろん、中上級の学習者にもおすすめです。
就職活動
どのように就職活動を行いましたか?
私はスラブ語圏での求人を探していたので、まずは学生時代に留学をした国の日本語教師会に問合せをして、現地の日本語教師求人状況に関する情報をいただきました。しかし当時求人がなかったので、インターネットの「日本語教育学会」や「日本語教師の集い」というサイトを常にチェックしていました。
それでもアジア圏が多く、ヨーロッパを諦めて学生時代に興味を持った「国際交流基金」のEPA日本語教師という仕事に応募しました。しかし、新型コロナウイルスの影響で採用プロセスがストップしてしまい、再度インターネットで仕事探しを始めました。
求人が出ていたアジアの学校2校に応募したところ、1校は返答がなく、もう1校はコロナの影響でビザが下りないため、採用が難しい状況にあると連絡が来ました。コロナ禍でなかなかいい求人に巡り合えなかったので、一度実家に帰って考え直そうと思っていた矢先、奇跡的に今の学校の求人を見つけ、応募することに決めました。
就職活動をする際、私の場合は日本語教師としての経験がなかったのですが、学生時代に日本語教育に関係のあることを多く行ってきたので、自分のアピールポイントとしてその強みを生かしたPRをしていきました。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
面接では、①志望動機 ②自己PR について聞かれました。また、これまでにどのように日本語教育に関わってきたか、なぜポーランドなのかなどについても追って聞かれました。
面接を行う上で、とにかく「自分らしさ」をしっかりめに出そうと心に決めて臨みました。というのも、簡単には帰れない異国の地でこれから一緒に働くとなると、「指導力」はもちろんですが「人間力」を特に評価されると思ったからです。日本語教師としてのスキルはアップできますが、「人としての魅力」はなかなか変えることができないものなので、一緒に働きたいと思っていただけるように、自分の人となりをしっかり出そうと心がけました。
模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?
私のときは未経験者だったため、「上手・得意・苦手・下手」の違いと「ものの授受」の2項目について模擬授業がありました。
模擬授業を行う上で、①媒介語を使わないこと ②イラストを用いたシンプルな説明 ③学生の理解度を確認するためのチェーンを入れる ④会話練習を入れる の4点に気をつけました。学校の方針として「話せるようになる」というものがあると分かっていたので、その理念に沿える授業を心がけました。
評価してもらえた点は、シンプルで分かりやすい説明です。効果的なイラストや例を入れることによって分かりやすく伝えられていると評価していただきました。また、不意な質問に対しても正確に且つ誠実に対応していた点も評価していただけました。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
親日国ということもあり、各都市に日本語学校はもちろん、いくつかの大学でも日本語専攻がある国です。
学生の話では、1990年代にはテレビで日本のアニメが見られる環境にあり、子供時代日本のアニメとともに過ごした方が多いとのことです。そのため、日本に興味を持つポーランド人は多く、日本語教育の需要の高さを感じます。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『日本語教師の集い』
世界中の日本語学校の求人が掲載されているサイトです。「日本語教育学会」のサイトが有名ですが、そこには掲載されていないものが「日本語教師の集い」には多くあります。
国選びで重視した点
- 治安
- その国に親しみがある
- 友人がいた
現地における日本語教師の需要・将来性
- 人気があり、一定数の学校で求められている
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 学校や先生の雰囲気
- 学校の教育方針
- 給与・待遇
応募時に必要とされた資格
- 日本語教師養成講座420時間修了
- 日本語教育能力検定試験合格
- 大学 日本語教育主・副専攻
- 英語能力
就職 選考方法
- 書類
- 面接
- 模擬授業
面接方法
- skypeやzoomなどのインターネットツールを使用して面談
日本語教師全般に関する質問
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
学習者とのコミュニケーションの中で、「あ!分かった」と学生が反応してくれた時に、日本語教師をやってよかった!準備に時間をかけてよかった!と思います。また、「今日の授業楽しかった!」と言ってもらえた時も、同じ喜びを感じます。最近では、初回のクラスで担当した学生たちに「この学校を選んでよかった」と言ってもらえたのが心に残っています。
ポーランドで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
「ポーランド」という国は、「歴史」に様々な場面で影響を受けている国です。政治に関する考え方で家庭や友情が壊れてしまったり、偽りと真実の境目が見えにくくなったりと、ポーランド人と生活してみないと分からない部分が多くあります。
「ヨーロッパ」ではなく「ポーランド」という国で働きたいのであれば、歴史についていろいろな知識を予めつけておくことをおすすめします。上級クラスだと政治や経済の話もできますが、日本と違ってその場合、歴史が100%関わってきます。その際、学生たちとより良い議論を深めるためにも歴史の知識をつけておくことがベストだと思います。
今後どのような日本語教師になりたいですか?
私は「学習者の立場に立って、一緒に前を向いていける教師」を目指しています。教師よがりの日本語教育では、学習者は伸び伸びとした勉強に励めないと思うからです。また、教師と学習者の関係も深いものが築けず、学習者が教師に対して思いや要望を伝えにくくなる可能性もあると思っています。
そのために、私はもっと文法的な知識とともに教材のバリエーションを頭に入れておく必要があると思っています。学生が「こんな勉強がしたい」と言ってきてくれた時に100%のお返しがしたいので、そのための準備として文法や教材の知識を蓄えていきたいと思います。
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