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海外日本語教師経験談
フィリピン 中央地区 企業(2019年) フィリピン人は語学習得能力はとても高い
🧑 小太郎さん・ 55歳
総評
- フィリピン 中央地区 企業
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間:1年 (2018~2019年) *退職
- 月収:12万円 (6万ペソ) *現地で生活をするのに十分
- 勤務時間:1日8時間 週5日勤務 *残業:1ヶ月合計約15時間
私が勤務した会社は、日本で働くことが決まっているフィリピン人を日本へ送り出すフィリピンの企業です。この会社が日本語研修を始めて2年目に私が入社したのでした。この会社初の日本人です。私のフィリピン人友人からの誘いでした。
率直に感じたのは、フィリピン人は語学習得能力が高いと言うことです。初めのうちこそアクセントがフィリピン訛りでしたが半年もたつ前から日本人からしても違和感が感じないほどでした。学習したことを復習してくる熱心な生徒は本当に成長が早くて感心しました。
英語やフィリピン語はABC~Zまで覚えればその組み合わせで読み書きはある程度できますが、日本語の場合、ひらがな、カタカナ、漢字と3種類あります。しかも、フィリピンの普段の生活では全く使わない言葉です。日本人教師は私だけしかおりません。細かい相談はフィリピン人先生にはできません。
経験のない私ですが就職し担当クラスまで任された以上途中で放り出すなんて事は日本人としての名誉にかけてできません。ユーチューブを見たり、インターネットや書店で日本語の参考書を探したりとにかく情報収集に努めましたが、私にはほとんど参考にはなりませんでした。
目的は会話ができるようになることも当然ですがひらがなの読み書きができるようになることと、簡単な漢字を覚えることだというタスクを会社から与えられています。日本の労働現場ではひらがなで作業指示や注意事項が表記されているとの会社からの情報があったからです。
母音・子音からしてもあいうえおから順に覚えてもらった方が適当だと感じました。
書いた文字を見るとバランスの悪い文字を書く人が日本人でもいますので、書き順から徹底して教えました。文字は記号などと同じで、単なるマークだと私は思います。しかし、日本語の場合書き順を間違えると読む人全員に伝わらない文字になることがありますので教えるときには注意が必要です。
フィリピン人教師からの年間スケジュールを参考にしながら自分の授業の年間を通しての目標を設定し生徒たちに周知し会社にも提出しました。
私の勤務時間は8時間ですが、授業を行う時間7時間です。私はひたすらホワイトボードに描く絵の練習です。書いてもすぐに消してしまいますが書かない事には進まない事が多かったです。同じ文字で同じ読みで意味が全く違うのを教えるのはには本当に苦労しました。この企業にはまともな教材がありませんでした。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
シチュエーションの説明が難しかったです。お辞儀をする習慣に「なぜ?」と問われても返答に一瞬迷いました。
フィリピンでは資産家主義の考え方があります。私は資産があるからお前に売ってやる。のような事です。
スーパーでも小さな個人商店でも売り切れていて在庫がない。これはごく普通の感覚です。仕入れてないから品物がない事に対してなぜ客に謝らなくてはいけないのか?昼ご飯を食べてるから客は待ってろと普通にいいますから。そのような感覚の人に日本の「普通」を教えるのは大変です。
なぜこの企業を退職しましたか?
自分の受け持った生徒が1年間の期間を無事終了したことと、ちょうど私自身の体調が芳しくなかったために退職しました。
せっかく1年間の経験が出来たので、体調が万全ならもう1年頑張ったと思います。やはり、最低1年が一区切りになるので1年間働けそうかを自分の体に問いかけた結果退職の道を選択しました。
給与
現地で生活をするのに十分
給料の面では特に不満には感じませんでした。有給休暇も入社時から付与されましたので満足できました。
1番辛かったのは休めない事でした。私が急遽体調不良で休んだ場合自習するようにと、生徒にはクラス編成後にあらかじめ伝えました。自習する「課題」は常に用意しました。その時々の学習の進み具合で何度も作り直しました。
私は、この企業しか知りませんので何とも言えませんが正担任と副担任がいるのが望ましいと思いました。結局私が休むことはありませんでした。ボーナスもありますのでこの地域としては標準だと思います。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:12万円
月収の内訳
- 基本給:12万円
待遇
- 有給
- 賞与
- 健康診断
- 保険(フィリピンの国民健康保険と民間の医療保険)
雇用形態
- 専任講師 *正規雇用
勤務時間
- 1日8時間 週5日勤務 *残業 1ヶ月合計約15時間
学校が定める学生の長期休暇の有無
- 年間合計20日あるが決定は各担任が行う。私の場合は、私の帰国に合わせて10日間の休みを2回取りました。
長期休暇中の給与保証
- 仕事はないが、給料は支給される
授業形態・勤務スケジュール
スケジュール管理で大変だったことは?
全員の理解度を把握するのが難しかったと感じました。よって、学習する進捗状況を元にスケジュールを作るのは簡単ではありません。
数人ならいいのですが20名だと厳しいです。3名ほど理解の遅い生徒がいましたのでその生徒中心の授業になる日もありました。遅いといってもほかの生徒に比べてです。他の生徒が早かっただけかもしれません。
結局、クラス編成時に掲げたスケジュール通りに1年を終えることができました。
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス20人
学習者層
- 社会人
スケジュール
- 8:45~12:00 2コマ(15分休憩有)
- 13:00~17:15 2コマ(15分休憩有)
- 8:45~12:00 2コマ(15分休憩有)
- 13:00~17:15 2コマ(15分休憩有)
- 8:45~12:00 2コマ(15分休憩有)
- 13:00~17:15 2コマ(15分休憩有)
- 8:45~12:00 2コマ(15分休憩有)
- 13:00~17:15 2コマ(15分休憩有)
- 8:45~12:00 2コマ(15分休憩有)
- 13:00~17:15 2コマ(15分休憩有)
フィリピンで日本語を教える前に準備すべきだったことは?
私が度々思ったのは、動画が欲しいと思いました。
自動販売機でコインを投入して買っている風景。
コンビニに入って出るまでの風景。
列を守って並ぶ風景(横入りする人がいない)。
レジに客が並んだら、もう一方のレジを開ける風景。
携帯電話でチャットしながら仕事をしていない風景。
動画を見ても納得は出来ないが、そういうこともあるのか程度には伝わります。
就職活動
この企業で働くきっかけ・決め手は?
前にも述べましたが、私のフィリピン人の友人からの紹介です。給料は高くはありませんが日本人が生活するには十分で貯金もできる金額でした。なによりも、新たなことに挑戦してみたい気持ちから入社を決めました。日本人がいないことも新たな挑戦にはよかったと思っています。給料はこの地域の相場です。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
・ネイティブな日本語を話せるのか。
・英語は話せるのか。フィリピン語は話せるか。
・健康状態は問題はないか。
・フィリピン人に対して日本語を教えた事があるか。
・今住んでいる場所からの通勤は可能か。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
学ぶためにお金がかからないのであれば日本語を学びたい人は山ほどいます。だが、費用がかからないと言うことはあり得ません。なので、一部の富裕層だけが学び、更に高収入を得る事ができるのです。
これは、既に個人的な問題ではなく「国」としてバックアップするのが必要な課題です。日本はODAでフィリピンに対して様々な協力を行っています。その中には若手行政官等を対象とした日本への留学支援(無償資金協力「人材育成奨学計画」)などがあります。
これは将来の官僚を育てるための事業ですが、日本語教育事業でも同じような提案を国に対して企業は行えるはずです。4年制大学の卒業者のみを対象にするとかです。日本国内のおいても日本語を話せ正しく理解できる外国人人材は必要なはずです。
そうすることにより、日本語教師の需要がもっと高まると考えられます。
この企業で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?
海外で日本語教師をするならどんな経験でも経験の多い人が向いていると思います。自分の頭の中に多くの引き出しがあることが理想です。生徒の興味を自分に向けさせる事が必要になるからです。
授業中も時にはだらけることもあります。そんな時にどうやって生徒の注目を自分に導くのかが資質という点でとても重要なことです。
私は養豚や牛を飼っていた経験があります。フィリピンの田舎の人たちには日常の光景ですが都市部では知らない人も多いのです。豚の赤ちゃんは何頭産まれるの?とか子豚は牙(犬歯)を持って産まれてくるとか。
このような雑談ができる方にはとても向いている仕事といえるでしょう。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
-
『国際日本語研修協会』
これはアジア全体の求人が掲載されます。更新(新着情報)の更新は少ないです(月に1~2回位)しっかりとした機関のようで募集内容が具体的です。
国選びで重視した点
- その国にもともと住んでいた
現地における日本語教師の需要・将来性
- 一部に人気があり、数は少ないが求められている
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 知り合いの紹介・誘い
- 給与・待遇
応募時に必要とされた資格
- なし
就職 選考方法
- 面接
面接方法
- 現地にて実施
日本語教師全般に関する質問
どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?
私の場合新しい何かを求めていただけで、日本語教師を目指していたわけではありません。目指すなら、事前に資格などを取っていました。
ただ、仕事としてではなくかつてフィリピン人に日本語を教えるときにものすごく心地よく感じた事が私の気持ちを後押ししたのかもしれません。
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
フィリピン人は言語を覚えるのが早い。私の組んだ年間スケジュールよりも早く進めることが出来たことは私の気持ちを楽にしてくれました。教室内で日本語の会話が増えてきたときには嬉しく思いましたし、私は生徒にスピーチする機会を多く提供しました。
最後の日に、5分間スピーチを全員にしてもらいました。月に1回行うのは3分間スピーチでした。そのスピーチ内容には驚きました。私との出会いや、私への感謝の言葉の数々。私は涙が止まりませんでした。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?
頭が痛いから仕事に行きたくないとかは思ったことがありますが辞めたいと思ったことはありませんでした。わが息子、わが娘の様な存在になった彼らを私は尊敬します。
私は50歳を超えていました。私を元気づけ支えてくれたのは会社ではなく若き彼らだったのです。
学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。
資格取得は絶対です。多くの日本語教育機関では大学卒業も求められています。これを読んでくださっている方は、日本で生まれ日本で教育を受けた方々だと思います。なので机上の勉強よりも、人をひきつける感覚をみがいてはいかがでしょうか。
誰もやりたくない汚いトイレ清掃を誰かにやってもらうにはどのような言葉で、どのような態度で、どのような目で、どのように伝えればいいのか考えてみてください。
社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。
前述したとおり、1年間(今回の私の場合)という、長い時間生徒たちはあなたを注目しています。
正しい事を教えていても、あなたの熱意を感じることができなければ生徒に伝わりません。伝わらなければやっていることに意味がありません。
教育する立場にある人は、学ぼうとしている方よりも多くのエネルギーが要求されます。そのエネルギーはどうやってできるのか、どうやったら身に付くのかを考えてみてください。相手に何かを伝える場合、あなたご自身が「わくわく」しながら伝える方が伝わりやすいのでお友達やご家族の会話の中で「わくわく」しながら話すトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。
フィリピンで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
絶対に叱ってはいけません。生徒たちは叱られた経験がありません。否定的な表現は避けましょう。
この国の公立学校や教師の事実をお伝えします。(私立学校の詳細は分りません)
この国では、生徒を落第させた場合教師はマイナス評価されます。勉強ができるとかできないとかは全く関係ありません。覚えたとか覚えてないとかは全く関係ありません。先生は自分の評価の為に進級させます。勉強しなさいという親は、ほぼみたことがありません。多くの人が勉強することの必要性を感じていないからです。掛け算の九九も分らない高校生がいるのはそのためです。
そんな中、日本で働きたい。だから日本語を覚えたいと思っているのは特別な人なのです。そんな特別な生徒は叱られただけで落ち込んでしまいます。
ではどうやって、教えるか?
にこにこと笑いながら指摘しましょう。日本へ行きたいよね。しっかりとした収入を得たいよね。だったらこれを覚えましょうと笑いながら話してみてください。
私は、すぐに顔にでる質なので苦労しました。
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