元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

日本語教師 経験談 スペインの民間語学学校

生徒の楽しそうな表情がなによりのご褒美

公開:2019/11/19

Hola(女性・43歳) 
日本語教師歴 6.5年 (2010年~2017年)
*現在は他業種に転職
資格・課程 NAFL日本語教師養成プログラム終了
スペインの民間語学学校
経験詳細
  • 月収:4万円(300ユーロ)
    それだけでは生活は難しい
  • 非常勤講師(コマ/時間勤務)
  • 3年(2014年~2017年)
    *現在は退職

スペインで6年半、個人授業、グループクラスの両方で、教えていました。

生徒の大半は、アニメやドラマのファン。クラスメイト同士趣味が共通ということもあり、とにかく皆楽しそうに参加しているのが印象的でした。

教師と生徒との距離も近く、発言や質問もすぐに飛んできます。話の流れですぐ脇道にそれるのもスペイン人気質。雑談が盛り上がり、教案通りのスピードで進めないこともありましたが、学校側も緩かったので生徒たちのペースに合わせていました。

学習に関してですが、入門者は口をそろえて、日本語の文法はあまり難しくないと言っていたことが印象に残っています。もちろん課が進むにつれてこういった感想は減っていくのですが、やはり動詞活用の多い言語の話者には、システマチックな文法ルールに関してはハードルは低いのかもしれません。

こちらの非常勤講師の生活レベルは、決して楽ではありません。時給にすると低い学校で10ユーロほど、高くて30ユーロ。とはいえ毎日一日中授業があるわけでなく、準備には支払われないので、勤め人に比べるとかなり収入は低いのではないでしょうか。

また、私の教えていた私立の語学教室では、1クラスの最低生徒数を切れば、容赦なくクラスが閉鎖されることになっていました。翌月も同じように仕事がある保証はありません。

こんな不安定な状況ではありますが、一生懸命作った教案で生徒たちが楽しそうに授業に臨んでいるのを見ると、苦労も報われます。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

必要に迫られて学ぶ人は少ないため、少し挫折をしたらやめてしまうおそれがありました。でも語学は継続してはじめて身につくもの。

何より興味をつなぎとめるために、指定の教科書の他に、ナマの映像作品やレアリア(日本のチラシ、パッケージなど)をふんだんに使うようにしていました。

この素材探しが大変で、徹夜になったことも。また一時帰国のときには、自分の欲しいものより授業に使えるもの優先でスーツケースがパンパンでした。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

一般企業での採用が決まったため、日本語教師の職を辞めることにしました。教えることは好きだったのですが、やはり金銭面で割が合わないことが決心の決め手でした。

土曜日だけでも教師を続けることも考えましたが、フルタイムの仕事ですので授業の準備に時間を割くのも難しく、生徒に迷惑をかけないためにも転職を選びました。

給与・待遇

月収 月収:4万円
月収内訳 1コマ90分:1,600円
基本労働時間 1日2コマ 週3日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 なし
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 クリスマス期間:14日程度
クラスの長期休暇中の
給与保証
長期休暇中は仕事をしていない

私の場合はコマ数も少なく、一人暮らしのときは節約してギリギリ、というところでした。シェアハウスで家賃も安く、外食やナイトライフにあまり興味がないのでやっていけましたが。

もっとも、スペインは長く不況で失業中の人もまだ多いです。周りを見るともっと生活に困窮した人もいるので、自分が特段貧乏だと感じることはありませんでした。

もちろん実績や運、人脈などで単価高めの学校に入り込むことができれば、また掛け持ちしてコマ数を増やせば、きちんと収入は上がります。実際日本語教師だけできちんと生活されている先生もたくさんおられました。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

勤める学校のタイプにより、待遇は異なるはずです。あくまで予想ですが、大学などの公的機関で常勤教員として採用されれば、公務員に準じたもの(年間保証され、社会保障なども学校の負担ありなど)になるのではないでしょうか。

一方私のように、私立語学教室やコマ・時間ごとの契約の場合、自営業主という立場でやっているケースがほとんどだと思います。

ただ、全体的に日本語の需要が少ないため、前者のようなポストそのものがごく稀です。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス3〜6人
  • プライベートレッスン
学習者の年代
  • 小学生
  • 中学生
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
  • 年金受給者
1日の時間割 月曜日
  • 午前中2時間ほど  
    授業準備
  • 18:00~19:30  
    A2レベル 1コマ(学校A)
火曜日
  • 午前中3時間ほど  
    授業準備
  • 18:00~21:00  
    初心者・A1レベル 2コマ(学校B)
水曜日
  • 午前中2時間ほど  
    授業準備
  • 18:00~19:30  
    A2レベル 1コマ(学校A)
木曜日
  • 午前中3時間ほど  
    授業準備
  • 18:00~21:00  
    初心者・A1レベル 2コマ(学校B)
金曜日
  • 午前中4時間ほど  
    授業準備
  • 18:00~21:00  
    A2レベル 2コマ(学校B)
土曜日
  • 10:00~13:00  
    B1レベル 2コマ(学校A)
休日 日曜日
基本的には休んでいました。時々、授業準備を作りだめしておくことも。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

授業準備は自宅でするため、プライベートとの線引が曖昧になってしまいがちでした。また面白い教案を作ろうと入れ込みすぎると、時間を無限に使ってしまうことも。準備にお金は支払われないにもかかわらずです。

できるだけ図書館やカフェなど、気の散るものの少ない場所で、集中して作業するようにしていました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • 日本語教材図書館
    教案に煮詰まったときに、参考にさせていただいていました。こちらのようなオーソドックスな導入や練習方法が、結局は一番わかりやすいのかもしれません。
  • まるごと
    「まるごと」開発の頃から少し縁があり、出版時から積極的に使うようにしていました。みんなの日本語ほど先輩たちの教材がWeb上にシェアされているわけではなかったので、公式サイトが唯一の情報源でした。
  • エリンが挑戦
    ビデオがちょうどよい長さで、オチもあり、生徒たちも気に入っていました。
参考になる書籍
日本語の教え方ABC―「どうやって教える?」にお答えします    
対象者:初級
日本語教師になり、最初に購入した本です。手放してしまったので具体的な内容は忘れてしまいましたが、はじめのうちはここに書いてあるまま使ってしまっていることが多かったと思います。意外に、巻末の教科書・課の対応表が役に立っていました。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

私の場合は、現地に来てから教師を始めたので、全く準備はしていなかったです。今後来られる方たちには、外国に住むなら日本語教師の勉強はとりあえずしておいたほうがいい、とおすすめしたいです。

また教科書、教材本はおしなべて現地で入手するのは困難です。いらないかなと思っても、日本からできるだけ買って持っていったほうが、煮詰まった時に精神的な支えになるかと思います。

就職活動

国選びで重視した点 すでにスペインにおり、就職のために国を選んだわけではない
現地における
日本語教師の需要
  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている
  • 日本語教師が飽和状態である
教育機関選びで
重視した点
選ぶ余地はあまりなく、欠員が出る情報をキャッチできたらチャンスがある、という状態
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

正直なところ多くはないように感じました。冒頭に書いた通り、教室に来る学習者のほとんどはアニメやドラマのファンで、あくまでも趣味で習っている人ばかり。不況、韓流の勢いなどで年々生徒数も減り、クラスが閉鎖される傾向にありました。辞めてからの数年はわかりませんが…。

大学の専門課程は別として、一般的な語学クラスでは週3時間の学習ペースです。仕事で使えるほどのレベルになるには相当年数頑張らなければならないので、そういう目標を持って入ってきた人も、次第に諦めてしまっていました。もしくは、思い切って日本へ行ってから勉強することにした人もいました。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

教えた経験や稼働可能な時間帯を聞かれたくらいでした。採用する方も日本語のことはわからないので、よっぽど印象が悪くなければとりあえず使ってみて、生徒の反響によってはクビにするつもりだったかもしれません。※あくまでも、私がいた私立の語学教室のケースです。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日本語や語学関連の資格、職歴は間違いなく、書類上では評価されるでしょう。ただ、生徒から見れば、教え方を知っていることは当たり前の前提で、教えてもらいたい教師かどうかは資格の羅列とは関係がないかもしれません。

スペインでは教師と生徒の距離が近く、こちらがオープンマインドであることが「人間として」見られている気がします。また雑談が大好きな人達なのですが、文化的な(特にサブカルチャーや日常習慣、宗教などの)話題に対応できるだけの予備知識は、あるに越したことがないです。

授業を日本語で進めるか現地語で進めるかにかかわらず、こういったフリートークの場では現地の言葉がある程度できたほうが、親しみを持ってもらえると思います。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
スペイン日本語教師会
私は所属していなかったのですが、ワークショップを開催したりされているので、入会すれば情報が集まってくるのでは。ただし会員費がかかります。
その他求人情報
  • 履歴書を学校に送る:
    地域にもよるかもしれませんが、求人サイトにあまり載っているのを見たことがありません。直接現地の語学学校に履歴書を送り、欠員が出たときに連絡がほしいと書いておくと、チャンスはあるかもしれません。ただし就業許可を持っていないと、かなり期待薄です。
  • 現地教師同士の口コミや紹介:
    実際はこれが一番多いパターンだと思います。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

履歴書を送った学校から連絡をもらいました。生徒さんの都合で不規則な日程、しかも午前中という条件だったので、授業ができる先生が他にいなかったとのこと。そのすぐ後も、別の枠を持っていた先生が産休に入るため一年のグループレッスンを引き継がせてもらうことができました。とてもラッキーでした。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

スペインに来たとき、仕事はなんとかなると甘い考えを持っていました。ところが不況もあって、スペイン人にすら仕事がない状態。日本人であることを武器にすることしかなく、一時帰国時に合わせ日本語教師の通信教育を申込み、スペインに持ち帰って勉強しました。

課題の添削をエアメールで対応してもらえたことが本当に助かりました。そこから無償で個人授業をし経験を積んでから、語学学校にアプローチをかけていったという次第です。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

一年のコースが終わり、生徒から「次のコースもHola先生とだよね?」と聞かれたときが、頑張ってよかったと感じる瞬間でした。

毎日の授業では、わかりにくかったかな、楽しくなかったかなと疑心暗鬼になることが多かっただけに、生徒が続けようと思ってくれていることが嬉しかったです。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

何度もあります。満足のいく教案ができず、時間がかかったりしたときなど、「準備にお金も出ないこんな割の合わない仕事なんて、続ければ続けるほど損しているのでは」と思ってしまうこともありました。

実際に低収入が原因で転職しているわけですが。ただ、この産みの苦しみも、クリエイティブな仕事であることの裏返しだと信じていたので、心底嫌いになることは決してありませんでした。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
日本語教師の勉強をしておくに越したことはないと思います。民間の講座は高いので、もし大学の講義があるなら、逃す手はありません。留学生もいるでしょうから、ランゲージ・エクスチェンジで実際に教えてみるとよいのではないでしょうか。学校の図書館に教材もあるかもしれません。

【社会人の方へ】
まず、本当に転職してまで日本語教師がよいのか、よく考えてみてください。国、学校により給与は様々ですが、お金持ちになった日本語教師はあまり聞いたことがありません。国際交流の方法は他にもあります。

それでも日本語を教えたいという場合、お金のあるうちに講座を受け、資格をとる。また英会話教室などにも通い、授業メソッドから盗めるものを盗んでおくといいと思います。私もこちらのスペイン語クラスに通っていましたので、導入方法や活動はもちろん、教師の佇まいまでも参考にしていました。

余談ですが、英語やスペイン語の教科書はかなり進んでいて、みんなの日本語を使い始めたときは、日本語教育環境の古さにカルチャーショックを覚えたものです。

スタートが遅くても、お金で買える近道があるものです。これらの投資は、いずれ元が取れます。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

率直に言って、新しく入ってくる方には明るい未来とは言い難い状況にあります。少なくとも私の地域で聞くところによると、クラス数は減る一方、仕事をしたい教師は相変わらず多く、少ないパイの取り合いのようです。

このような中で自分の食い扶持を確保するには、どれだけ生徒を繋ぎ止められるかにかかっていると思います。そのためには、自分の授業の質を高めるのはもちろん、地域の日本語教師全体の平均点をあげていくような活動も欠かせません。勉強会、教師同士の授業見学(あとで意見交換)など、積極的に企画するといいのではないでしょうか。

また、古くからの教師は、教え方も古いまま来ていることもあります。最近の養成講座ではCEFRを取り入れた教授法なども勉強するのでしょうか。こういった新しいアイデアをシェアすることで、新人さんでも一目置かれる存在になるかもしれません。

応援しています。

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