掲載日:

海外日本語教師経験談

インド 大学・企業(2011年) 続けていて本当によかった

👩 あきんだるさん・ 31歳

総評

  • インド 大学・企業
  • 期間:2.4年 (2007~2011年) *退職
  • 月収: ()
  • 日本語教師養成講座420時間修了

生活環境や受け入れ機関の対応に苦労することはあっても、仕事に感じるやりがいが強く、そのおかげで何とか現地での生活ができていたなと思います。純粋に日本語をもっと勉強したいと思っている学習者が多かったというのが、まずは救いでした。

そして、彼らの反応には全く遠慮がなく、興味のあることにはとことん取り組んでくれますし、逆につまらないことには全く興味を示しません。大人でも、はしゃいだりふてくされたりと、あからさまに態度に出してくれました。

だからこそ、授業でもクラスコントロールでも、工夫し甲斐がありましたし、授業準備に対する意識が鍛えられたと思っています。

もちろんうまくいくことばかりではありませんでしたが、教師と学習者、学習者同士の相互作用が良くも悪くも出やすいという環境で教えられて、本当にラッキーだったなと改めて実感しています。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

外国人登録など、インド政府相手の手続きには苦労しました。順調に事が運ぶことはほとんどなく、これが足りない、あれが足りないと毎回違うことを言われ、何度も足を運ぶ羽目になったり、何時間も待たされたりと、時間も取られましたし、エネルギーもかなり消耗しました。

私が見てきた限りではありますが、公務員だけでなく、何かしらの権限を持っている人の中には、自分にとっての都合、損得、機嫌で動くような人もいて、こちらが「理不尽だ」と言ったところで彼らはお構いなしなので、そのような人に必要なことをやってもらうために苦労することは多かったです。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

スケジュール

インドで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

現地では教材の入手は非常に困難で、企業や学校が所有する教科書や参考書も、何年も前に出版されたものであったり、種類も少なかったりということもあったので、できるだけ多くの教材を自分で集めておけばよかったなと思いました。

あと、英語です。インドに渡った時点では、聞き取りも会話もほとんどできませんでしたし、自信もありませんでした。

授業は直接法で行っていましたが、やはり授業外でのフォロー、特に初級のうちは媒介語が必要で、少しずつ何とか英語でも対応できるようになっていきましたが、渡航前に準備しておけば、もっと早い段階で学習者の心理的な負担を減らしてあげられただろうなと思います。

就職活動

この大学・企業で働くきっかけ・決め手は?

初めて日本語教師として働く、しかも初めての海外生活ということで、できるだけ心配要素の少ない国に絞って求職活動をしていたのですが、「ここなら大丈夫そうだ」と思えるような仕事はなかなか見つかりませんでした。

養成講座を修了して数ヶ月経った頃、やっと「ここなら」と思える仕事が見つかりました。無事採用してもらえたため、赴任前研修を受けながら準備を進めていたのですが、その最中に赴任予定だった国で大きな暴動が起こり、情勢が悪化したため、赴任の話はなくなってしまいました。

その後は再び職探し。そして、そのまた数ヶ月後に、候補国の一つだったインドでの求人が見つかり、「インドは何度か旅行で行ってお気に入りの国だし、これも何かの縁だろう」ということで応募し、採用してもらえたので赴任することになりました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

主に、日系企業を顧客に持つ企業、民間の語学学校で需要があります。また、大学やパブリックスクールに関しては、JICAや国際交流基金から派遣された日本語教師や専門家が活動しています。

日本語教師の給与の相場は、だいたい月15000~40000ルピーで、住居提供や家賃負担があるかどうかにもよりますが、十分生活できる金額だと思います。ただし、他の職種でインドに滞在している外国人就労者に対する待遇と比較すると、3分の1以下の給与です。

インド人労働者の雇用機会を確保するため、2012年6月頃から外国人に対する就労ビザ支給の審査が厳しくなり、“雇用側が外国人就労者に支払う給与は年収25000ドル(月給に換算すると約130000ルピー)以上でなければならない”という基準が設けられました。

しかし、日本語教師の場合は、インド人で人材を確保するのが難しい職種の為、給与額が基準より低くても、例外として就労ビザが支給されています。この点から見ると、外国から雇う人材への待遇としては良くない待遇を受けているとも言えます。

この大学・企業で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

1:学習者が自分を表現できる機会を多く提供できる教師 2:生きた日本語や日本文化に触れる機会を提供できる教師 3:授業以外の業務もこなせる教師

インドでは、実際に日本語が使えるかどうかはあまり問われず、日本語能力試験に合格していれば仕事がもらえるのが現状で、話す、書くといった自分の言葉で表現する事がうまくできない学習者が多く見受けられます。

1は、日本語が使えるようになりたいと思っている学習者に必要とされている教師だと思います。また、実際に日本を訪れる学習者も少ないことから、教科書に載っていないような生きた表現や語彙、習慣や文化などに学習者を触れさせる2のような教師も求められていると思います。

3は雇う側の視点ですが、特に企業では、顧客とのやり取り、翻訳、通訳、総務的な事など、授業以外の事もやってくれる教師、また、会社勤めの経験がある教師が重宝されるのではないかと思います。事務職として採用され、業務の一環として日本語の授業を週に数時間程度行うというような日系企業の求人もあります。

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学では工学を専攻していたということもあり、もともとは日本語教育とは縁のない生活を送っていたのですが、4回生の時にチューターとして入居した留学生寮での経験がきっかけで、思いがけず日本語教師の道へと進むことになりました。

寮に入居していたある留学生。彼は、日本の最先端技術を学びたいという志を持つ新入生でした。しかし、数ヶ月後、部屋に籠りがちになってしまったのです。

話を聞いてみると、「専門科目はもっと勉強したいし面白いのに、わからない日本語が多すぎて授業内容が頭に入らないし、クラスメイトに聞こうにも日本語でうまくコミュニケーションがとれず、授業についていけなくなってきた。学校に行くのが苦痛だ」ということでした。

この学生以外にも同じような悩みを抱える学生も多く、志があるにも関わらず、日本語が障害になってしまうことがあるという嘆かわしい状況を知り、少しでも役に立てるならと思い、日本語に関する質問を受けるようになりました。

しかし、どう説明していいのかさっぱりわからない!とにかく難しい!インターネットで教え方を検索していると、開くページにはだいたい“日本語教師”という文字があり、どんな仕事だろうと調べているうちに、日本語教師をやってみたいと思うようになったのです。

ちょうどその頃は、私自身も進路を考える時期でもあったので、タイミングが大きく影響したというのもあります。違う分野に進むことになるので悩みましたが、海外で働くことにも前々から興味があったということもありましたし、この事がきっかけで日本語教師を目指すようになりました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学習者が、「楽しい!」「おもしろい!」「嬉しい!」と感じている表情を見せてくれた時です。

日本語教師の仕事は、地道な努力が物を言う仕事だと思っています。日々の授業準備と授業運営はもちろん、学習者とのやりとり一つ一つが少しずつ積み重なって、彼らの日本語習得に繋がっていきます。

なかなか結果が見えないので、これでいいのだろうかと不安を感じたり、ああでもないこうでもないと模索したりとなかなか心が休まりませんが、わからなかった事がわかった時に見せるキラッとした表情、試験に合格して嬉しそうに喜ぶ姿、コミュニケーションがうまくいった時に見せる嬉しいとも恥ずかしいとも言えない笑顔、そういう生の表情を学習者が見せてくれた時に、「やっててよかったなぁ」と実感します。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

始めたばかりの頃は何度も思いました。 肉体的にも精神的にも負担が大きいと感じることが多々あったからです。

最初に勤めた教師派遣事業を行う会社が、教師を酷使することで悪名高く、何人もの先生方が短期間で去ったという会社だったからということもあるかもしれませんが(後に同業者の方々から聞きました)、例えば、一つの企業で3時間、その後、往復4時間かかる別の企業で3時間の授業を行っていた時期は、授業準備やレポート、試験作成等で徹夜が続き、会社に相談しても「やらないなら給料は出さない」の一点張りで、何度も何度も辞めてしまおうかと思っていました。

しかし、「私が辞めたいのは、日本語教師でなくこの会社。でも、今辞めてしまったら日本語教師も辞めてしまうかもしれない。

これから教師を続けていくつもりなら、今辞めない方がいいのではないか」と思い直して、何とか契約期間を全うしました。それ以来、辞めたいと思ったことはありませんし、続けていて本当によかったなと思っています。

インドで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

有資格者の日本人日本語教師がまだまだ少ないため、インドに滞在している日本人、また、自身も学習者であるインド人ボランティアから日本語を学び、しっかりとした基礎がないまま日本語の勉強を続けている学習者も多いというインドの日本語教育現場。

そういった背景も影響し、日本語が使えるインド人の需要が高くなってきているにもかかわらず、供給がまったく追いついていないという現状があります。やはり、日本語が使える学習者を育てるためには、教授法や教える為の知識を習得した教師が必要なのです。

いろいろな業務を任されてしまうかもしれませんが、柔軟に物事を捉えて、自分にできる範囲の事をやりながら、将来活躍できる学習者の育成に一役買ってほしいと思います。応援しています!

今後どのような日本語教師になりたいですか?

日本語教師を始めた頃は、いろいろな国に行って働いてみたいと思っていましたが、2年、3年と同じ国での勤務を続けるうちに、長期的にこの国の日本語教育に携わりたいと思うようになりました。

現地の習慣や価値観に触れるうち、学習者が普段どのような生活を送っているのかが少しずつ見えるようになり、授業内容にそれを活かせるようになってきました。

これからもできるだけ多くの授業を丁寧にこなしながら、この国に合ったこの国ならではの教授方法を模索し、より効果的な授業運営ができるようになりたいと考えています。また、いつまでも謙虚に貪欲に日本語教育に取り組んでいける教師でありたいと思っています。

南・東南アジアの国・地域別 経験談

当サイト人気スクール 420時間養成講座