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海外日本語教師経験談

ミャンマー ヤンゴン 技能実習生送出機関(2020年) 日本企業が望む人物に育てる場所

👩 MMさん・ 34歳

総評

  • ミャンマー ヤンゴン 技能実習生送出機関
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:1.2年 (2019~2020年) *現在も勤務中
  • 月収:11万円 (14万5,000チャット) *現地で生活をするのに十分
  • 勤務時間:1日5コマ 週5日勤務   *残業:1ヶ月合計約4~6時間
  • 日本語教師養成講座420時間修了  ASJ青山

ミャンマーの送り出し機関で勤務しており、現在も就業中です。(送り出し機関とは日本で働く人たちに対し日本語教育を行う機関です。)

送り出し機関の役目としては留学生のように日本語力を高めることはもちろんですが、それと同等かそれ以上に学生に求めることがあります。それは「日本人らしさ」や「日本の働き方に合わせることができるか」といった精神や心のあり方を教育することです。

例えば、当校では遅刻厳禁は校内ルールとして当然で遅刻が数回あると当校では退学となります。これは時間にルーズと言われるミャンマー人にとってはすでに厳しいものです。また厳しさだけではなく、授業では日本企業との面接訓練や生活指導も行っております。

これは日本という国がどんな国であるかを教えると同時に、言い方を変えれば「日本の慣習や、日本人の求めるものに合わせなければならない」という事も学生に暗に示しています。つまり空気を読む力・雰囲気を感じ取る力・協調性を重んじることなどを学生に伝えていくことも重要な任務です。

つまり日本語教育以外のことに大きなウエイトを占めているのがこの送り出し機関の特徴と言えるかと思います。

面接訓練では企業の採用担当者として教師側は演じるのですが、わざと「日本での就労が終えたらご実家を継ぐのですか」などと学生が知らない語彙や文法を使い、質問します。ここで大切なのは言葉を理解しているかどうかではありません。この知らない日本語に対してどんな反応ができるかをチェックしているのです。これは日本での就業にあたり、臨機応変な対応ができるかや素直さがあるかが重要であるからです。

このように、対象者が留学生では行わないであろうことを数多く行っているのが送り出し機関といえるかと思います。したがって、積み立て式の日本語教育だけでなく幅広い業務に携わってみたいという方には向いている働き方かもしれません。ただ上述した通り、かなり企業の要望に寄り添って動いている機関ですので、教育の信念は感じられないというのが率直な感想です。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

「これは教育か?洗脳か?」と何度も考えていることですが、日本語授業以外にマナーを教える時間があります。そこで「日本人とは?」「日本の働き方とは?」を伝えているのですが、その内容は日本人は協調性があって、個人よりも集団を重んじるということを繰り返し指導しています。

こうやって彼らに対して個性を失くすことを暗に示しているのだと、また送り出し機関の立場として日本人にとって扱いやすい人物に育てているのだと何度も感じました。

この指導を繰り返す結果として、授業では失敗を恐れ、また個性を出すことはいけないという心理状態になり、積極性がみられなくなっていると感じることが多いです。そのため解決方法としては「自分の授業の時は大丈夫だ」という安心感を与えることしかできませんし、それを今でも継続しています。

給与

月収:11万円 (14万5,000チャット)
現地で生活をするのに十分

生活は問題なくできます。私の場合は自分で家を借りたのですが、手厚い家賃補助があったので、頂いた給与の半分以上は貯蓄に回すことができています。

ミャンマーの物価は安く、自炊を心がければ食費は日本の三分一程度にすることも可能です。しかし一方で住居費用がミャンマーは高く、実はそんなに日本と変わらないレベルです。そのため給与が高いかよりもどのくらい家賃補助があるのか、そしてその物件がどんなクオリティなのかを重視したほうが良いと思います。

なお福利厚生ですが、当校の場合常勤で採用されると「日本への一時帰国往復航空券」の支給もありましたし保険への加入もできます。

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給与

  • 月収:11万円

月収の内訳

  • 1コマ50分:1,200円

待遇

  • 残業代

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日5コマ 週5日勤務   *残業 1ヶ月合計約4~6時間

長期休暇中の給与保証

  • 長期休暇がない

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

送り出し機関では様々な要求が各日本企業側から入ってきます。たとえば「明日から、採用した学生に一日1通メールを送るように」や、「明日は日本語力が落ちていないかのテストをしたいので10時にスカイプをつないでほしい」など、多岐にわたります。そのためその時間に授業に出られなかった学生をフォローすることがよくありました。

また更に大変だったのは学校卒業後です。当校を卒業したといってもビザがスムーズにおりない場合はまだ日本へ行けませんから学生はミャンマーにとどまっていますが、企業側から「日本語力が落ちないように卒業後も指導してほしい」というのも何度もあります。

そのためそういったオーダーに応えるため、卒業後の学生にも指導が必要でした。しかも教科書はもう終わっていたのでオリジナル授業を作る必要があり、これが一番大変でした。はっきり言ってこれに関してはもはや気合いでその都度授業を構築していました。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス20人

学習者層

  • 日本で働く予定の若者 ※男女

スケジュール

月曜日
  • 9:00~11:50  中級クラス3コマ
  • 13:00~16:50  初中級クラスを3コマ
火曜日
  • 9:00~11:50  初中級クラスを2コマ
  • 午後  空き(明日の授業準備)
水曜日
  • 9:00~9:50  中級クラスを3コマ
  • 13:00~16:50  中級クラス 会話テスト
木曜日
  • 9:00~9:50  校内スピーチのための作文指導・添削
  • 13:00~16:50  中級クラス会話テスト
金曜日
  • 9:00~9:50  生活指導(ゴミの分別や捨て方)
  • 13:00~16:50  日系企業面接希望者への面接訓練
休日 土日:出勤したことありません。完全週休二日。

ミャンマーで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

特に感じたことはありませんが、しいて言うなら会話授業で使えるテキストです。

ミャンマーの日本語教育はいかにJLPTのような試験に合格できるかに重きがあるように感じます。実際、ビザ取得のために最低N4が必要だと(実態はどうかは別として)多くの学校がそのように国内でN4取得を目指す傾向があるからです。

そのため現地の書店で手に入るものはほとんどが文型や漢字・試験対策のテキストばかりです。そのため大きな書店にいくつか行きましたが、それでも会話のテキストはほとんど売られていません、ゼロに近いです。

教案作りで参考にしている書籍は?

就職活動

この技能実習生送出機関で働くきっかけ・決め手は?

日本語教師としてミャンマーに来る前に出張でミャンマーに来たことがありました。

その時にミャンマー人の素直さやまじめさが印象的でしたが、それと同時に出張では日本語学校訪問もしていたのですが、あまりにも低レベルな教育を行っているというのが率直な感想でした。

そういったこともあり、この国で働いてみたいと思いました。正確には、どんな考えのもと、どのような教育をしているかが知りたかったというのが本当のところです。

学校へのこだわりはありませんでした。面接が無事通過したので働いているというのが現実です。

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

・志望理由(なぜ応募したのか?なぜミャンマーを選んだのか?他の学校と比較検討したか?)
・どのような理念や考えを持っているか
・ミャンマーそして当校の慣習に合わせられるか
・いつからミャンマーに来れるか
・どのくらい授業に入れるか
・どういった指導経験があるか

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

ミャンマーではどの地域でも現在、日本語が大変なブームとなっており、多くの若者が日本語を習いたいと言います。これは数年前からありましたが、ミャンマーにTOYOTAが工場を作ってから更に熱は上がったように感じます。日系企業は現地企業よりも給与が高いから、が最大の理由です。

普通にカフェやレストランにいるだけで日本人?と聞かれたりすることも多いですし、何かビジネスチャンスにしようと話を持ちかけられることも一度や二度じゃありません。

しかしながら日本人を採用する数が多いかと言われればそうでもないと思います。給与はローカルより高く払うのがネックだと思いますし、やはり試験合格に重きがあるので会話やネイティブとの接点というところを重要視する学校が多いとは言い難いからです。

この技能実習生送出機関で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

特に必要だと感じたものはありません。しいて挙げるならば英語力です。

私の場合ですがほとんどの学生は大卒でしたし、ミャンマーの中でも比較的高学歴に入る子ばかりでした。そのため英語に堪能な学生も多く、わからない語彙を英語で聞かれることもよくありました。そのため必須ではありませんが、英語はできるに越したことはありません。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 国際日本語研修協会
    国内外問わず常に世界各国の求人が見られる。
  • PARTNER
    NGO・NPO関連の案内が多いがその中で「教育」の分野で求人が出ることが時々ある。

国選びで重視した点

  • 渡航経験があった

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 日本語を学びたいという若者は多く、日本語教育は超がつくほどのブームである。しかし日本人の教師も同様に求められているかといったら、そうとは言い難い。日本人を雇用したらやはり高いので。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 給与・待遇
  • 授業における裁量の多さ

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

面接方法

  • 日本国内にて実施
  • skypeやzoomなどのインターネットツールを使用して面談

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

理由は二つあります。

一つ目は、いつか日本を出て海外で働いてみたいと漠然と思っていました。NPO職員になりたいと思っていたのですがその壁は厚く、不採用ばかりでした。そこでやりたいことでなく、自分が勝負できる舞台を選ぼうと方向を変えました。その方向が日本語教師でした。

二つ目は将来への不安でした。将来日本で暮らすのか海外移住するのかは明確に決めていませんでしたが、いずれにせよ歳をとってからもできる仕事を選びたいと思っていました。それも理由です。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

添付した写真の船に関連するエピソードです。

当校の学生の中には、多くはありませんがこの船に乗って向こう側から通学しにやって来る子がいます。決して遠い距離ではありませんが学校がある日はいつもこれに乗って来ます。

ミャンマーの雨季でも炎天下でも、そういった気候の中彼はこの学校に通学するのですが、彼が「この船に乗るのはもう最後です。この船は僕の全部を知っています。」と私に言いました。この学生の日本行きが決定し、ビザをもらった瞬間そう言ったのです。

この船には彼の様々な感情を乗せてきたのだと感慨深い気持ちになりました。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

何度も辞めたいと考えたことがあります。

現在の送り出し機関での教育は、私が思う教育とはかけ離れています。彼らを日本人にとって、また日本企業にとって使いやすい人材に仕立てているに過ぎないと強く感じるからです。

しかしこれは私の想像ですが、どの送り出し機関も皆似たり寄ったりだと強く思っています。どの学校へ移っても同じならばもういっそ辞めていましたいと今でも思っています。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

日本語教師になりたいならまずは大学を出ましょうと一番伝えたいです。何歳からでも目指せる仕事ですので、若いうちは一般企業で勤めるなどの社会人経験を積んだほうが良いです。そのうえで420時間養成講座をしっかり受ければ全く問題ありません。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

給与が一番でないなら、そして海外で働くチャンスが他にないのならば日本語教師になることをおすすめします。

この仕事は授業以外の準備やその他に一番時間がかかり、意外に体力も消耗します。それを理解したうえで目指すならばまず420時間養成講座を受ける、もしくは独学で教育能力試験に合格するのが最短ですし、一番良いかと思います。

この段階で厳しいのであればおそらく教師になってからも「時間がたりない」と嘆くことになるからです。

ミャンマーで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

ミャンマー人は昔の教育方針により暗記することは得意ですが自分で考えることや論理的に考えることは苦手です。また加えて仏教徒が多いという側面もあり、教師という自分より上の立場の人間に物を言ってはいけないという意識が働いているので積極的に質問する・行動するこということもあまりないのが現実です。
よく言えば穏やかですが悪く言えば常に受け身です。こういった学生の特徴を理解したうえで教師側が主導を握るスタイルの授業になることが多いかと思われますので、常に綿密な計画が必要です。

またパソコンを持っている学生はほぼいないと考えておいてください。そのため学生に調べさせる・プレゼンテーションさせるといった幅広い授業展開はできません。どうしても限られた範囲での授業展開になりますのでそこも念頭に置いて置いたほうが良いかと思います。

肌感覚ですが、彼らにとっての日本語教育とは「試験にパスできるかどうか」が重要であり、またミャンマー事体が詰込み式の授業スタイルだという印象なので、「たくさん教えてもらう」ことが善であり、理解度は二の次であるように感じます。そのため、ご自身がどう思うかは別として、おそらくミャンマー人にとっては「知らないことをたくさん教えてくれる先生が良い先生」というイメージかと思います。

そのうえで授業スタイルを確立されていくのが良いかと思います。

南・東南アジアの国・地域別 経験談

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