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海外日本語教師経験談
台湾 桃園県 大学(2012年) 親日で日本語ニーズも高く教えやすい
👩 らんさん・ 35歳
総評
- 台湾 桃園県 大学
- 雇用形態:専任講師 *正規雇用
- 期間:2年 (2010~2012年) *退職
- 月収:18万5,000円 (5万3,000台湾ドル) *現地で生活をするのに十分
- 勤務時間:1日10時間 週5日勤務 *残業:1ヶ月合計20時間:授業の準備
大学職員として働いていた時に日本語が流暢な台湾人留学生たちと知り合ったことがきっかけで、大学卒業の時に一度はあきらめた日本語教師を目指すことにしました。
日本語教育を専門とする大学院に進学し、修士号を得たのち、台湾の姉妹校から卒業生派遣の要請があり、教授から紹介をいただいて赴任しました。
大学一年生から四年生までの会話のクラスを受け持ち、一週間で13コマ程度の授業がありました。一部の学生は日本語を話すことにとても熱心で、授業以外の時間も私を訪ねてきてフリートークをし、いろいろな話題を通じて自発的に日本語を向上させようという姿勢が見られました。
そういう学生と話すのはとても楽しかったですし、自分が日本語ネイティブとして役に立っていると感じられました。
一方で、大学入試の点数の関係で何とか入れる日本語学科を選んだ学生もおり、日本語にあまり興味がなく、授業中も寝ていたり練習をしなかったりという態度もちらほら見られました。そういう学生を前に授業をやることは精神的にしんどかったです。
身分は大学の講師だったため、給与面や待遇に不満はなく、日本にいるのとほぼ変わらない生活を送ることができました。夏休みや冬休みも学生と同期間休めるので、旅行に行くことも可能でした。
台湾は親日国で、日常生活で日本語に接する機会も多く、また学生も日本に対する知識が豊富です。就職で日本語が生かせる機会も多いので、本当の意味で日本語が使える人材を育てたいと思う人にはとてもいい環境だと思います。
日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?
特に朝の授業では、朝ご飯を食べながら授業を受ける学生が多くおり、それが当たり前だということなのでなかなか注意もできませんでした。会話のクラスだったので、できるだけ飲食は控えてもらいたかったのですが。
また、毎学期の初めに他大学からの転学生がクラスに入ってくることがありました。転学生は総じて日本語能力が高く元々のクラスのレベルと差がありすぎたため、通常のクラス授業を受けたくないという学生がほとんどでした。
他の先生方に聞いたところ、自分の裁量で評価を行い単位認定してもよいとのことだったので、授業の空き時間に研究室にひとりずつ来てもらい、好きなテーマでプレゼンをしてもらったり、ロールプレイをしたりする個別授業を行いました。
なぜこの大学を退職しましたか?
規定の教科書はありましたが、その内容を授業に落とし込む作業が精神的に負担になってしまったからです。
教える文型は単元ごとに決まっているものの、会話クラスだったので、どのように導入して、どのようにドリル練習させて、どのように応用練習させるか、毎回アイデアをひねり出すのに苦労しました。
給与
現地で生活をするのに十分
給与面では全く問題なかったと思います。平日の食事は学校のカフェテリアで様々な料理が手ごろな値段で食べられますし、私の場合は学校の近くのアパートを借りてもらっていたので家賃も発生せず、少し貯金ができるくらいでした。
また、土日は基本的に休みで、冬休みや夏休みも学生とほぼ同等の長さで取れたので、旅行に行ったり日本に帰ったりしていました。もちろん給与は保証されます。
ただし、仕事をしながら通う夜間部のクラスを週二回は担当しなければならず、一日の拘束時間が長くなる時もありました。
給与の詳細を読む...
給与
- 月収:18万5,000円
待遇
- 有給
- 健康保険
- 賞与(年間の賞与支給額175,000円)
雇用形態
- 専任講師 *正規雇用
勤務時間
- 1日10時間 週5日勤務 *残業 1ヶ月合計20時間:授業の準備
長期休暇中の給与保証
- 仕事はないが、給料は支給される
授業形態・勤務スケジュール
スケジュール管理で大変だったことは?
寝ても覚めても、授業の具体的な進め方やアイデアを考えなければというストレスがあったので、土日のどちらかは完全休みにして頭の切り替えを行うようにしていました。
また、授業の空き時間を利用して日々の小テストや課題の添削を行い、だらだらと研究室にいないように心掛けました。
授業形態やスケジュールの詳細を読む...
主なクラスの授業形態
- クラス授業 1クラス約40人
学習者層
- 大学生
スケジュール
- 8:30~ 学校到着。教案の見直し、教材やプリントの準備。
- 9:00~11:00 初級会話クラスを2コマ。
- 11:00~12:00 午後の授業準備。
- 13:00~14:00 会話練習サロンで学生とおしゃべり
- 14:00~17:00 中級、上級クラスを2コマ。
- 18:00~20:00 日によっては夜間部授業
台湾で日本語を教える前に準備すべきだったことは?
教材はネットから無料使用できるものも多かったので、もっと準備すべきだったと思うものは特にありませんでした。
また、生教材としてユニクロなどのチラシを持っていき、買い物の会話教材として使ったところ、学生の反応が良かったのが印象的でした。
教案作りで参考にしているサイトは?
- 『台湾で日本語を教える毎日』
「みんなの日本語」の内容について、課ごとに自身の経験や授業内容をシェアしてくれているので、授業アイデアに詰まった時などよく参考にさせてもらいました。
教案作りで参考にしている書籍は?
- 『会話に挑戦!中級前期からの日本語ロールプレイ』
対象:
中級・上級
会話クラスのロールプレイの題材や、中間・期末テストの会話テスト題材として使用しました。 - 『シャドーイング 日本語を話そう』
対象:
初級・中級
毎回授業の初め10分間ほど、日本語の口語体に慣れてもらうためにシャドーイングの練習をしており、この本からプリントを作成して学生に配布しました。 - 『改訂版 どんなときどう使う 日本語表現文型200』
対象:
中級・上級
中上級のクラスでの文型説明、例文作成の時に参考にしました。
就職活動
この大学で働くきっかけ・決め手は?
卒業した大学院の姉妹校から、卒業生を一人派遣してほしいという要望があり、教授から紹介を受けました。
日本語教師を目指したのが台湾人学生との出会いだったこともあり、是非台湾で日本語教師をやりたいと思っていたので、派遣を希望しました。他に希望者もいなかったので、そのまま姉妹校への派遣が決まりました。
派遣先は教育実習で訪れたことがある大学だったので、少し現地の事情が分かっていたこともポイントでした。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
卒業した大学院の姉妹校への紹介派遣だったので、特に聞かれたことはありませんでした。逆に自分の方から、受け持つ授業の内容、レベル、一クラスの人数、教室設備、他の先生の授業見学の可否、授業以外の雑務などについて詳しく質問しました。
現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?
大学などの高等機関では求められているが、語学学校では募集が減少。
エンターテインメント方面では韓国に押されているとはいえ、台湾はまだまだ立派な親日国です。大学の日本語学科も数多く存在しており、民間の語学学校もいたるところにあります。
日本のドラマやアニメも人気が高いので、日本語学習需要はまだあると言えると思います。
この大学で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?
大学で教えたいのなら、修士号以上の学位は必須です。私の教えていた大学では、日本語教育以外の修士号を持っている先生もたくさんいたので、文系専攻で修士号さえあればどうにかなるという印象を受けました。
民間の語学学校であれば、日本語教育能力検定試験の合格者かどうかを一応問われるようですが、さほど影響はないようです。また、クラス単位で教えるのであれば、授業の円滑な進行のために現地語ができるに越したことはないと思います。
就職活動で参考にしたウェブサイトは?
国選びで重視した点
- 治安
- 親日国
就職 教育機関選びで特に重視した点
- 学校の規模
- 給与・待遇
応募時に必要とされた資格
- 修士課程修了
就職 選考方法
- 紹介のため試験なし
日本語教師全般に関する質問
どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?
大学卒業時に日本語教師を目指そうと思いましたが、経済面での大変さを聞き断念しました。その後大学職員をしているときに、日本語を流暢に話す留学生たちや日本語を教える先生と触れ合う中で、自分も日本語教師になって海外で日本語の良さを広めたいという思いが再び強まり、退職して日本語教師を目指すことにしました。
経済面の安定を考えて、まずは日本語教育関係の学位を取るために大学院に進学しました。
「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?
なんといっても、学生が自分で能動的に日本語を話してくれるときが一番嬉しかったです。
授業中に覚えたての文型や単語を使って一生懸命自分を表現してくれたり、授業時間以外にわざわざ会いに来て会話練習をしてくれたり、そういった学生の積極的な姿勢を見た時に、少しは役に立てたのかな?と思えました。
また、日本語を使ってアルバイトや就職を勝ち取ったり、日本の大学院へ進学したり、人生の幅を広げていく姿を見た時も、この仕事やっていてよかったと思いました。
日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?
学生のためになるべく良い授業を、分かりやすい授業をという心掛けが、逆に毎日のプレッシャーになっていました。
導入方法から基本練習は何をどのように言うか、どのように示すかを一言一句まで考え、応用練習では実際の使用場面になるべく沿うようなものを考え…起きている時間はいつも授業の組立てを考えるようになり、精神的に疲弊してしまいました。
学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。
日本語教師として安定を求めるなら、やはり日本語教育を専攻できる大学又は大学院に進学することをお勧めします。高等教育機関に職を得ることが安定の一歩ですし、それには学位が必須です。また、姉妹校や提携大学に派遣される道もあります。
社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。
学生の方と同じになってしまいますが、日本語教師に転職するということであれば、大学院進学を目指すことをお勧めします。
それが無理なら、働きながら養成講座を修了するか、検定合格でも、民間の語学学校なら働き口があるかもしれません。
いずれにせよ経験を積まないとなかなか働き口がないので、日本語学校を併設している養成講座を受講して、卒業後の就職のチャンスを広げることも必要だと思います。
台湾で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。
台湾は昔から親日国で日本語を学びたいという人は一定以上存在しますし、在住日本人も多くいます。そのぶん語学学校も先生も供給過多で、待遇面では日本国内同様、あまり良い状況とは言えません。
ただ、日常生活も日本とほぼ変わらない環境で過ごすことができ、何より学んだ日本語を使える機会が多いところなので、日本語を教えることで台湾人の人生のチャンスを広げてあげたいと思える人には、とてもいい場所だと思います。
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