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日本国内 日本語教師経験談

国内 大学 一人一人に向き合いレベルに合った指導

Mikaさん・ 26歳・ 女性 👩 ・ 日本語教師歴 3年

総評

  • 国内の大学
  • 雇用形態:専任講師 *正規雇用
  • 期間: 3年(2022~2025年) 現在も勤務中
  • 月収:23万円

日本語教師を目指したきっかけは、昔からいろいろな国の人と交流することが好きで、日本の文化や言葉を通じて人とつながりたいと考えたことです。大学時代には中国人留学生と授業や休み時間に交流する機会が多く、言葉の意味やイントネーションの違いなどを教えた際に、「先生みたい」「絶対日本語教師向いてるよ!」と励ましてくれたことから、日本語を教える楽しさややりがいを感じ、日本語教師を志すようになりました。

現在は、大学の留学生別科に所属し、常勤講師として3年間勤務してきました。日本語教師としてのキャリアを始めるにあたり、「日本語教師キャリア」や「日本村」などの求人サイトで情報を集めました。当初は日本語学校と大学の留学生別科の違いがよく分からなかったのですが、使用教材や学生数、研修制度などが詳しく記載されていた点に魅力を感じ、現在の勤務先を選びました。

特に、当時初心者だった私にとっては、研修制度が整っていることが重要でした。そのため、大学の座学では学べない現場で必要なスキルを基礎からしっかり経験を積める環境に自分は合っていると思いました。

留学生別科は、大学への進学を目指す学生を支援する場であり、授業は大学と同じ90分単位で行われ、午前、午後2コマずつ授業があります。授業運営や試験も大学の規則に則っています。

私は週に10コマ授業を担当しており、授業では主に『みんなの日本語』を使用しています。授業前準備の段階では、丁寧に文型の分析を行い、導入から定着の段階で反復練習や言葉を代入させる練習などの練習を行い、長文会話を用いてアウトプット活動を行うといった一貫性をもった展開を目指しています。必ず目標設定を行い、たとえば、単に言葉を代入して練習する方法や言葉を変換して行う練習をするだけでなく、学習者自身に教室やレストラン、駅でなど使用場面を想像させ、実際に日常のどのような状況で使うのかまでをイメージさせるように工夫しています。

学生たちは一人ひとり異なる特性を持っており、話すことが得意でも筆記が苦手な学生、逆に筆記は得意でも話すのが苦手な学生など、「話す・書く・聞く・読む」の4技能のバランスもさまざまです。特に印象に残っているのは、一番下のクラスを担当した際、ひらがなも読めずに来日した学生が多く、クラス内でレベルに差が生まれてしまい、全員が同じペースで学べるように授業外で個別にフォローを行った経験です。また、日本語の言語指導だけでなく、生活習慣やマナー、挨拶などについても伝える場面も多くありました。

一人ひとりと向き合うことは決して簡単ではありませんが、学生たちが努力を重ね、日本語力を着実に伸ばしていく姿を見ると、大きなやりがいを感じます。多様な背景を持つ学生たちと日々関わる日本語教師という仕事は、自分にとって非常に意義深く、これからも成長を重ねながら続けていきたいと考えています。

他の教育機関と比較・検討しましたか?

いくつか、民間の日本語学校や大学附属の日本教育センター、また海外の日本語学校も候補として比較し、それぞれの授業内容や研修体制を見比べた後、最終的に現在の学校を選びました。現在勤務している大学の留学生別科では、大学の方針に基づいた正規授業に加えて、選択授業として日本文化やマナーなどを教える機会もある点に魅力を感じました。学生が進学前に幅広い力を身につけられるよう工夫されている点が印象的でした。

一方、日本語学校ではそのようなカリキュラムがない場合も多く、私がやりたいと感じていた「日本語+文化」の指導が難しいと感じたため、日本語学校は選びませんでした。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

日本語教師として最初に戸惑ったのは、大学などで学んだ「教え方」と、実際の現場で必要とされる指導が大きく違っていたことです。日本語の文法や語彙を教えるだけでなく、日本で生活するための基本的なマナーや習慣も指導する必要があると知り、最初は驚きました。

たとえば、消しゴムのカスやお菓子のごみを机に置いたまま帰る学生がいました。「捨てなさい」と注意すると、学生はすべて床に捨てました。お菓子のごみまでも床に捨てたことに驚きましたが、手で拾ってゴミ箱に入れることを指導しました。このようにごみの捨て方や椅子を戻すこと、教室での挨拶の仕方など、日本では「当たり前」とされていることを知らない学生が多く、最初はどう伝えるべきか悩みました。「なんでできないのか」と思うのではなく、「知らないから教える」という気持ちに切り替え、絵や写真、簡単なやさしい日本語を使って、丁寧に一つひとつ説明しました。

その結果、少しずつ学生の行動が変わっていき、言葉と生活の両方を支えるのが日本語教師の大切な役割なのだと実感するようになりました。

給与

給与:23万円/月 ・専任講師 *正規雇用

現在の給与は、業務量に対して十分だとは言えず、正直なところ生活に余裕があるとは感じていません。日本語教育業界では、年齢や経験によって給与が上がるケースもありますが、特に若い世代やこれから日本語教師を目指す方にとっては、一般企業と比べると低い水準だと感じることが多いかもしれません。

「日本語教師だけで安定した生活ができるか」という点については、ライフスタイルにもよりますが、一人暮らしで慎ましく生活する分には可能です。ただ、長期的に考えたとき、待遇や収入の面で将来に不安を感じることもあります。

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月収 23万円

  • 基本給:20万3,000円
  • 残業手当:3万1,000円

待遇

  • 交通費
  • 有給
  • 雇用保険・労災保険
  • 社会保険
  • 健康診断
  • 年間昇給
  • 残業代
  • 休日出勤手当
  • 賞与
  • 住宅手当

勤務時間

  • 1日:8時間・週5日勤務
  • 残業 1ヶ月 計20時間

長期休暇中の給与保証

  • 勤務している教育機関で給与が発生する仕事がある

仕事のかけもち

  • かけもちしていない

授業形態・勤務スケジュール

クラス運営で大変だったことは?

私が「クラス運営や授業形態」で大変だと感じた点は、授業内容をよく理解している学生ばかりが発言し、理解が不十分な学生が発言しにくくなってしまうことです。発言が活発なのは良いことですが、クラス全体の理解度が見えにくく、授業のペースを調整するのが難しく感じました。

また、練習問題に取り組ませる際にも、理解が早い学生と時間がかかる学生の差が大きく、全体のバランスを取るのが大変でした。そこで、早く終わった学生には追加の問題を出したり、他の学生に教える役割を担ってもらったりするなど、次の行動につながる声かけを工夫しました。

一方で、時間がかかる学生には個別に声をかけてサポートし、理解しやすい例を示すことで、少しずつ自信をつけてもらえるように努めました。学生一人ひとりに合わせた支援の大切さを実感した経験です。

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主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス20人

学習者層

  • 幅広い年齢層

学生の主な出身地

  • ベトナム
  • ネパール
  • スリランカ

スケジュール管理で大変だったことは?

私が「日々の日本語教師としてのスケジュール管理」で大変だったと感じた点は、授業準備にかかる時間が想像以上に多く、平日の業務時間内だけでは終わらず、休日丸一日を使い、教案作成やPowerPointでのスライド作成に時間がかかっていました。特に、複数のクラスを担当していた時期は、クラスごとにレベルや学習進度が異なるため、それぞれに合わせた準備が必要で、どうしても持ち帰りの作業が増えてしまいました。その結果、プライベートの時間が削られ、仕事中心の生活になってしまうことも少なくありませんでした。

そこで私は、教案作成やPowerPoint作成の他に、確認テスト作成で30分、宿題作成で30分などのように授業で必要なタスクを分け、Googleカレンダーに予定を入れて管理をしています。また、Googleカレンダー内にTodoリストを作成できる機能もあるため、 準備を終えたらチェックしていき、計画的に進めるようにしています。さらに、過去の教材や自作プリントを整理・蓄積して再利用できる形に整えるとともに、最近ではChatGPTなどAIの力も借りて、語彙導入に使用する画像で画像検索では出てこなかったものを作成してもらったり、練習問題をExcelにまとめてもらったりすることで、準備時間の短縮を図っています。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • 日本語教師のN1et
    教案作成の際には、『日本語教師のN1et』をよく参考にしています。特に、導入や練習の進め方に悩んだときに役立ちます。練習A・B・Cの順に構成されており、教師が話すセリフや、学習者が答えるであろう言葉が具体的に書かれているため、授業に慣れるまでの間はとても心強いです。 日本語教師になったばかりで不安を感じている方にもおすすめできます。ただし、この教案は『みんなの日本語』に特化したものなので、他の教材を使っている場合は、導入や練習のアイデアを部分的に参考にする形になるかと思います。
  • みんなの教材サイト
    このサイトには、教案作成に役立つ文法解説やイラスト、教室活動のアイデアなどが幅広く紹介されています。私が特によく参考にしているのは、授業内で導入文法を使った教室活動を行いたいときです。 例えば、「て形ビンゴ」や「あげもらいパス」、「られるリレー」など、学習者が楽しく参加できるアクティビティが多く掲載されており、実際に授業で活用しています。こうした活動は、文型の定着にも効果があり、学生の反応も良いです。 また、教案に組み込むだけでなく、授業中に時間が余ったときの“ちょっとしたゲーム”としても使えるので便利です。教案を立てる際に時間配分をしていても、特に慣れないうちは予想より早く授業が終わってしまうこともあります。そんなときに、特別な準備がいらないこうした活動を知っておくと、とても心強いと思います。日本語教師になったばかりの方にもおすすめです。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き 対象:初級
    みんなの日本語に準じた内容の指導書となっています。 初めに目標と学習項目が明確に記載されているため、ゴールがわかりやすい。 導入から練習まで流れに沿って記載されているので、私は教案作成で導入方法や練習方法に迷った際に使用しています。 文型の分析がまだできていない新人の方や「みんなの日本語」の教材を新たに使い、慣れていない方におすすめです。
  • おたすけタスク初級日本語クラスのための文型別タスク集 対象:初級
    文型ごとにちょっとしたゲームやロールプレイングなどの活動方法が記載されています。ただ、活動内容がまとめられているだけでなく、目標設定がされており、最終的なゴールも記載してあるので1つの授業内に組み込んで使用するのも良いと思います。私は普段時間が少し余ってしまった。などの余裕があるときに使用しています。 ロールカードやイラストカードなどが付録として付いているので、特にこれといった準備も必要ないので使用しやすく便利でおすすめです。

就職活動

どのようにお仕事を探しましたか?

求人は「日本語教師キャリア」と「日本村」で探しました。どちらもまずエージェントとの面談がありましたが、これは自分に合った学校かどうかを見極めるための場で、適性診断のような形で進められました。面談は5社ほど受けましたが、実際に学校との面接に進んだのは1社のみです。

また、働きやすい職場かどうかを見極めるために、先方からの面接連絡や採用連絡の早さも確認しました。

実際に私が受けた会社から面接をした日の夜に採用連絡がありました。私は初めから1社に絞っておりましたが、他の会社も並行して面接を受けていたのであれば採用連絡は遅くとも1週間以内であると嬉しいと感じます。

準備した書類は一般企業と同様、履歴書と職務経歴書のみでしたが、それに加えて模擬授業用の教案も用意しました。

面接で何を聞かれましたか?

当たり前のことかもしれませんが、私は面接を受ける前に、その学校がどのような方針や特色を持っているかをしっかりリサーチしました。例えば、「多国籍の学習者が在籍している」と紹介されていた学校では、「これまでさまざまな国の方々と交流した経験があるので、それぞれの背景や学び方の違いを尊重しながら指導して行きたい」とお伝えしました。

学校の特徴と自分の経験をつなげて話すと、より具体的に伝わると思います。また、「勤務したのち、どんなことをしてみたいですか?」という質問にも、「学習者が安心して質問できる教室づくりをしたい」「初級レベルでも発話の機会を増やす活動を取り入れたい」など、自分の目指す授業や学校づくりのイメージを具体的に伝えることができたと思います。

これから面接に挑む方へのアドバイスとして、一般企業の面接と違い、日本語学校では「どんな学校づくりに関わりたいか」「どのように学生に貢献したいか」といった思いを熱意をもって伝えることが大切だと思います。そのためにも、事前の情報収集は欠かせません。

面接は緊張するものですが、質問されそうなものをまとめて練習を行ったり、模擬授業の練習を人前で行ってみたりと、しっかり準備をしていれば、自分の言葉で誠実に伝えることができます。ぜひ、「ここで働きたい」という気持ちが伝わるよう、前向きな姿勢で臨んでください。

模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

私が受けた模擬授業は15分間で、「導入から練習まで」を行うという課題でした。指定された範囲は『みんなの日本語』第14課で、「活用」が入ってくる回だったため、限られた時間の中で一から説明するのは難しいと感じました。

そこで、事前にメールで確認を取り、活用の説明は省いてもよいかを問い合わせました。このようなやり取りを通して、課題の意図や期待されている内容をしっかり把握するよう努めました。模擬授業を控えている方にも、わからない点があれば遠慮せず確認を取ることを強くおすすめします。曖昧なまま準備を進めるより、安心して当日を迎えられます。

当日の模擬授業では、緊張のあまり、学生役の先生に質問された内容にうまく答えられず、正直「落ちた」と思いました。ですが、後日採用の連絡をいただき、おそらく事前の確認や丁寧な準備など、真剣に取り組む姿勢が評価されたのではないかと思っています。

模擬授業は、当日どれだけ冷静に進められるかも大切ですが、一番の鍵は「どれだけ準備してきたか」だと感じました。限られた時間の中で何をどこまでやるかを明確にし、何度も繰り返し練習しておくことが必要です。また、学生役からの想定外の質問にも対応できるように、学習者の視点に立って考えておくことも大切だと思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • NIHON MURA(日本村)
    日本語教師の求人が国内から海外まで掲載されているサイトです。最新の求人情報がこまめに更新されているため、希望に合う職場をタイミングよく見つけることが可能です。
  • 日本語教師キャリア
    日本語教師の求人が掲載されており、メールアドレスを入力するだけの簡単な会員登録を行うと、他のサイトでは見られない非公開求人にもアクセスできます。求人タイトルには「適正校」や「フレックスタイム制」などの情報が記載されており、タイトルを見るだけで学校の特徴が一目で分かる点も魅力です。
  • 日本語書店そうがく社
    日本語教師の求人が一覧表で掲載されています。一覧表には学校名だけでなく、勤務地や勤務条件、応募方法、選考方法までが記載されており、一つの表で学校の比較がしやすい点が特徴です。

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 未経験者歓迎
  • 給与・待遇
  • 通勤時間

応募時に必要とされた資格

  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • 日本語教育能力検定試験合格
  • 大学 日本語教育主・副専攻

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業

日本語教師全般に関する質問

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

学生の成長を感じられたとき、この仕事をやっていてよかったと思います。例えば、日本語のレベルがさらにアップした。自分が教えた範囲をしっかり覚えていた。など。また、ひとりひとり面倒を見るのは大変ですが、「先生」と頼ってくれた時は嬉しく、この仕事をこれからも続けようと思えます。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

はい、日本語教師を辞めたいと思ったことがあります。特に学生と接していると、「こんなに注意したのに伝わらない」「教え方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまい、悩むことがあります。

しかし、その度に「教えることは一方通行ではなく、学生とのコミュニケーションの積み重ねである」と考え直すようにしています。うまくいかないときも、一度冷静になって状況を見つめ直し、別のアプローチを試してみることで、自分自身の成長につなげることができると考え、乗り越えてきました。

今後どのような日本語教師になりたいですか?

私は今の学校で勤務を始めてから、ほとんど初級の授業しか担当してきませんでした。今後は、幅広いレベルのクラスを担当できる教師になりたいと思っています。

具体的には、N1やN2レベルの文法や語彙など、まだまだ勉強不足な部分が多いですが、中級や上級の授業にも挑戦したいと考えています。初級には初級なりの難しさとやりがいがありますが、より上のレベルも担当することで、自分のキャリアの幅が広がるだけでなく、転職の際にも授業を任されやすくなると思うからです。

そのために、現在は中級・上級向けの文法書や語彙集を使って勉強を進めています。また、授業の進め方や教材の使い方についても工夫できるように、先輩教師の授業を見学したり、教育関連のセミナーに参加したりしています。