掲載日:

海外日本語教師経験談

ロシア 日本語学校・大学・他(2009年) コンプレックスだらけだった自分がすっかり変わりました

👩 ひでさん・ 45歳

総評

  • ロシア 日本語学校・大学・他
  • 期間:13年 (1992~2009年) *退職
  • 月収:15万円 (5万ルーブル) *なんとか生活できる
  • 日本語教師養成講座420時間修了  セイコー学院 舞子校

海外で働く醍醐味は、その土地でしか経験できないことをやってみることだと私は考えています。

学生から要望のあった文化クラブの企画や、料理講座、パソコン講座、どんどん意見を取り入れて自分で企画して新しいものを作っていく楽しさ。そしてそれが成功したときの嬉しさ。日本国内にいたときはコンプレックスだらけだった自分が、すっかり変わりました。

氷の湖に飛び込んだり、スキーをしたり、民族楽器を習ったり、余暇もとても充実していました。
うちで水漏れがあったり、病気になったりして困ったときはいつも生徒や同僚が助けてくれました。
生徒や、同僚や近所の人、たくさんの人と今も交流があります。本当に行って良かった。また行きたいと思っています。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

ビザの更新と、そのために必要になる健康診断書を毎年取得するのが大変でした。1、2年の滞在なら心配ありませんが、長期になると、血液検査や精神鑑定、レントゲンなど別々の病院にとりに行かなければならないのが大変でした。

また日本語教師を含め、教師という仕事はロシアでは非常に給料が低く、学校を常に3箇所、家庭教師をしながら何とか生活していました。現地採用の場合は日本への帰国費用まで稼ぐのがたいへんです。日本の機関からの派遣ではそんな問題はないのですが。

あと、教材の入手が難しかったことです。今は海外へも発送してくれる通販会社が増えましたが、郵便事情が悪かったロシアでは5年位前までは教材の入手が困難でした。日本から発送してくれる知人がいる場合は問題ないと思いますが、行き先の郵便事情や、受け入れ先の学校や機関にどの程度教材がそろっているか、事前にチェックが必要です。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス5-25人ぐらい
  • プライベートレッスン

スケジュール

  • 平日8時から17時まで(大学)1日4コマ程度×週3回
  • 平日8時から16時まで(小中学校)1日6時間程度×週2回
  • 平日18時から20時半(専門学校) 週3回
  • 土曜日 プライベートレッスン

ロシアで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

現地で困ったことのひとつは、教えるレベルの教材が現地に全くないことでした。渡航する前に自分が教えることになる生徒のレベルや年齢、到達目標を考え、それに沿った教材を用意しておくことが大切だと感じました。

海外へ荷物を運ぶときにネックになるのが重量。そのため教材を運ぶのにはいつも苦労していました。当時は郵便が当てにならなかったので、自分で運ぶしかなかったんです。

今はネットで注文して現地で受け取ることも可能ですが、必要になる教材の内容、どれだけの教材が勤務する学校に常備してあるのかは知っておく必要があると思います。

教案作りで参考にしているサイトは?

就職活動

この日本語学校・大学・他で働くきっかけ・決め手は?

もともとロシアの音楽や絵が好きで、2回ほどロシアに旅行しました。

ある時、ロシアからの学生のホームステイを引き受ける機会があって、学生たちととても仲良くなって文通を続けていました。その学生の学校の先生から、ロシアに来て日本語を教えてみないかっていうオファーがあったんです。

誘いがあった当時、私は高卒でコンピュータの会社でプログラマーとして働いていたのですが、何の迷いもなくその仕事をやめてロシアに渡る決心をしました。

ところがビザの取得に手間取り、1ヶ月経ってしまった頃、その学校には別の日本人の先生が・・・。

それでもあきらめられず、ロシアへ語学留学し、そのまま現地の大学に入学しました。

当時はちょうどロシアで外国語熱が盛んになり始めた時期。小さな町だったので大学に日本人がいるというのが口コミで広がり、地元の小学校から、日本語を教えてほしいという依頼が来ました。
そのうち今度は小学校からまた口コミで広がり、友好協会や専門学校、大学からも声がかかり、マンツーマンで教えてほしいという人もいて、とても全部は引き受けられない状態でした。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

ロシアは大きい国で、ヨーロッパ側とアジアに近いところで事情は大きく異なります。西側では首都モスクワ、東のほうでは日本に近いウラジオストックやハバロフスクで日本への関心が高く、日本語教育も盛んです。

日本に帰国してから他国からきている留学生と比較してみると、ロシアの学生は一般にレベルが高く、まじめと評価されています。

もちろん学生によって差はありますが、全般にまじめに学習に取り組む学生が多いです。

ロシアの外国語教育の中で、2000年頃には日本語熱が一番高かったように思いますが、日本の経済の影響を受けて、今は中国語、韓国語の学習者のほうが多いと感じます。

この日本語学校・大学・他で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

日本のことをよく知っていてきちんと教えられる教師。といえば当たり前でしょうと言われそうですが、テキストに出てくる地名など「その町の人口は」とか、「その山の高さは?」とか細かいところを聞いてきます。

歴史や文化、電化製品や経済事情、ネットが普及してきたとはいえ、やはり情報提供には責任を感じます。生教材を使った時に、今の日本とこの文章は少し違いますね、など指摘されてしまった、と思うこともあります。

基本はやっぱりその国を少しでも知ろうとする努力、どのくらい生徒のことを考えて行動できるかにかかっているのではないでしょうか。これはどこの国でも同じだと思います。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • 日露青年交流センター
    ロシアへ講師を派遣する期間は要チェック。1年だけとか、短期間を目指すならこういう機関を利用するのがベストでしょう。
  • 日本語教師の集い
    普通の日本語教師募集広告にもたまにロシアの募集が出ています。

就職活動で有効な手段は?

  • 『ロシア語で検索』
    ロシア語ができる方ならロシア語で検索すれば、レア情報が得られます。ただし、現地採用ですから条件が良いとはいえません。

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

元々ロシアのバレエや絵画に興味があって2度ほど旅行したのですが、その時に日本語を勉強しているロシア人の学生と交流会があって、どんな風に日本語を勉強しているのか聞いてみました。

日本語を勉強している、とはいってもその大学では日本人はおらず、教科書もなく、辞書もなく、韓国人とロシア人のハーフの先生が自身もつたない日本語で話していました。

そんな中でもたくさんの学生が日本に興味を持ち、日本語を勉強したいといっていたことにびっくりし、それから日本語を教える日本語教師という職業に興味を持つようになり、実際に自分もやってみたいと思うようになりました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

生徒が誕生日にサプライズでプレゼントをくれたり、地元のお祭りに誘ってくれて一緒に行ったり。学生全員うちに呼んで日本料理講座を開いたり。海外はそういうことが何でも自由にできて、本当に仕事そのものがとっても楽しかったです。

それから毎年行われるロシアでの日本語弁論大会で、学生が校内、市内、全国と勝ち抜いて優勝した時。

何より、自分の生徒が日本語を生かして就職して、立派に仕事をこなしているのを見たり、生徒だったときに話していた夢を実現して、社会で頑張っているのを見た時が一番うれしいです。

日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

一度もありません。
改めて今考えてみても、やめたい理由が見つかりません。生徒とのコミュニケーションは楽しいし、どうやってこのテーマを教えようかなーって考えているときはいつもわくわくします。

嫌な事ももちろんありますよ。生徒が提出したコンテスト用のスピーチ論文が丸ごとネットからのコピペだったり、どんな教え方をしても理解してもらえなかったり、必死で準備したのに全く授業がうまくいかなかったり。
でもそれでやめたいと思ったことはありません。

ロシアで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

ロシアは寒いとか怖いとかよくわからないとか、そんなイメージがあるようですが、ロシア人と実際に身近に付き合えば、全く見方が変わると思います。

日本の大きな機関から派遣されて日本語を教える場合は教科書や渡航費、住居提供、ビザ取得、現地での通訳などいろいろな手厚い保護が受けられますが、現地採用の場合は全くなく、自分で交渉して道を開いていくしかありません。

20代くらいのロシア人は英語が話せる人も多いですが、それ以上の年齢層では英語が全くといっていいほど通じません。街中の表示も英語は期待できないので、ある程度の資金とロシア語力がないと飛び込みは難しいです。

でも苦労をしてこそ、その土地の醍醐味が味わえるような気が私はします。狭き門ですが、ロシアという国に興味のある方にはチャレンジしていただきたいです。

今後どのような日本語教師になりたいですか?

生徒と一緒に成長していける日本語教師を目指します。

10年以上続けていても毎回、授業のなかでいろいろな発見があり、授業のあとはたくさんの反省があります。

生徒の学習環境はもちろん、生活環境や人間関係、そんなプライバシーまで教師には授業を通して見えてしまうんです。どう声かけをしたらいいんだろう、今の接し方でよかったんだろうか、といつも迷います。

グループに教えるときは特に、複数の人間を相手にするわけですから、どの人にも100%合った授業なんてできません。いつまでも謙虚に、生徒と一緒に目指す目標に一歩ずつ近づいていく。精一杯のエールを生徒に送れる教師でありたいと思います。

ヨーロッパの国・地域別 経験談

当サイト人気スクール 420時間養成講座