元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

国内の大学 経験談

グローバルな環境と中上級ならではの楽しさ

公開:2018/05/24
しゅんぺ(男性・40歳) 
日本語教師歴 16年 (2001年~2018年) 
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程
大学での
経験詳細
  • 月収:35万円
  • 常勤講師
  • 4年(2014年~2018年)

勤務は週4日で、夏期休暇と春期休暇はほぼまるまるもらえるので、学期中は忙しいですが、公私のバランスの取りやすい職場です。

初年度から今年度まで、同じ大学でも2つのキャンパスを掛け持ちしています。そのうち一つの、京都の世界遺産に指定されている寺院が徒歩圏内のキャンパスで担当している授業は、主に私の勤務する大学が提携している海外のさまざまな大学から受け入れている交換留学生の授業です。

現時点で担当しているレベルとしては日本語能力試験N2を目指す中上級レベルです。日本語での意思疎通はほぼ問題なくできるので、教師としても、教えていて楽しいと感じるレベルですが、中にはとても頭のいい学習者も多いため、質問への対応や授業運営に関して、教師としての力量が試されるレベルでもあると思います。

初級だと、そもそも学習した項目が少ないので、学習者も「覚えるしかない」というケースが多いですが、中上級になると既習事項との「違い」を質問してくる学習者が少なくありません。そういった場合、教師がどれほどきちんと準備していても、はっとさせられる瞬間があります。その場で答えられない場合は、その質問を持ち帰って、後で調べて改めて説明することもあります。

しかし、そういった予想外の事態を含め、学習者との密なコミュニケーションを通して授業を構築していくプロセスは、他のレベルにはない楽しさだと思います。

Q:他の教育機関と比較・検討しましたか?

今の職場に巡り合うまでは、やはり大学でのポストを目指していました。1年ごとの更新であっても、給与が固定的であることと、長期休暇が保障されているため、授業準備に十分な時間がとれることが魅力だと感じていたからです。

あと、正直に言えば、日本語学校などに比べると、大学は待遇もよく、私学共済にも加入できるので、家族を養うためには、大学以外の選択肢はありませんでした。

Q:日本語教師として苦労した事、戸惑った事はありますか?

現在の職場に入るまでは、非常勤しかやったことがなかったので、同僚たちと連携しながら1つのクラスを運営するだけでなく、その責任者をつとめるということに、最初は少なからず戸惑いを覚えました。

しかし2年ぐらいでそれにも慣れ、同じクラスを担当する同僚たちとも雑談を交えながらコミュニケーションを密に取れるようになったので、今はこれといって苦労していることはありません。

今最も頭を悩ませていることは、留学生の多様性です。特に、精神的な問題を抱えている学習者、何らかの学習障害を抱えている学習者が年々増えているので、授業を教えるだけでなく、そういった学習者とどのように信頼関係を築き、問題に対処していくかが最大の課題だと思います。

たとえば、去年担当した学生は、日本語自体はよくできるのですが、自分には直接関係のないことを教師や他の学生が話し始めると、落書きをし始める学生でした。

私はその態度に苛立ちを覚え、厳しく注意してしまったのですが、それが単に性格によるものなのか、あるいは何らかの障害なのかは、最後まで分からずじまいでした。今思えば、その学生の態度をもっと注意深く観察し、適切に対処できたのではないかと悔やまれます。

給与・待遇

月収 35万円
月収内訳 基本給:35万円
基本労働時間 1日4時間 週4日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計40時間
待遇
  • 交通費
  • 賞与(年間3ヶ月分)
  • 保険(私学共済)
  • 健康診断
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される
仕事のかけもち かけもちをしている:大学(計2校に勤務)

年限付きの講師としては、待遇はいい方だと思います。月収にすると約35万円ですが、授業準備には十分すぎるほどの長期休みはほとんどまるまる取れますし、夏と冬には賞与もあります(合わせて100万円)。

福利厚生は、特に優遇されているわけではありませんが、十分だと思います。私の場合、任期中(3年目)に子どもが生まれたのですが、私学共済から出産一時金などが出て、助かりました。

ただ、あくまで「所帯持ち」として正直なところを言えば、住居手当と、教材の購入に充てる研究費が出ないのはちょっときついです。日本語の教材は、長く使えますが決して安くないので、必要な教材をすべて購入するのは難しいです。たとえ小額でも、教材購入に使えるお金が出ればいいのですが、私の職位ではそこまでの待遇はありません。とはいえ、非常勤を掛け持ちするよりはずっと安定した身分なので、基本的には不満はありません。

Q:給与や待遇面でお勧めできる、国内のその他教育機関を教えて下さい。

やはりせめて修士号は取得して、大学で教えるのが最も効率的だと思います。日本語教師養成講座420時間修了も立派な経歴ですが、大学で日本語を教えるためには日本語分野の修士号が必須ですし、たとえ非常勤でも、他の形態に比べれば授業1コマあたりの単価はずっと高いです。

あと、今後の「グローバル社会」に備えて、外国語が1つでもできると有利だと思います。必ずしも英語でなくても構いませんが、1つの外国語に熟達していると、外国語を学ぶことの経験から、学習者に寄り添った指導ができるのではないかと思います

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス15人
学習者の年代 大学生
主な学生の出身地 中国
1日の時間割 火曜日
  • 10:40~14:40  
    中上級クラス(交換留学生)を2コマ
水曜日
  • 10:40~16:10  
    中上級クラス(同上)を1コマ、上級クラス(正規留学生)を2コマ
木曜日
  • 10:40~14:40  
    上級クラス(正規留学生)を1コマ、日本人学生と留学生の合同クラスを1コマ
金曜日
  • 10:40~16:10  
    上級クラス(正規留学生)を3コマ
休日
  • 土曜日:半日はのんびりして、夕方ぐらいから翌週の授業準備をすることが多いです。
  • 日曜日:家のことをやったり、家族で出かけたりすることが多いです。

Q:クラス運営(授業形態)で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

交換留学生は、レベル的にも基礎学力のある学生が多く、日本語学習のモチベーションもそこそこ高いので、それほど大変なことはなかったのですが、各学部に所属する正規留学生は、そもそも日本語学習へのモチベーションが高くないうえに日本語科目は必修で、しかもレベルにばらつきがあるので、運営には毎年苦労しています。

特に私が所属するキャンパスは理系の学生が多く、専門科目に忙殺されていて、日本語授業への取り組みが雑になりがちで、本当に難しいです。

対策というほどではありませんが、特に口頭表現の授業では、テレビのニュースを実際に見せてディスカッションのきっかけにするなど、生教材を必ず導入して授業を行っています。生教材が問題なく理解できるレベルに達していない学生もいますが、それなりに理解できる学生のくいつきは悪くないです。

そうすることで、日本や世界の事情にも興味を持つようになるし、聞き取りの練習にもなるため、学習意欲を多少なりとも刺激できているのではないかと思います。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

非常に個人的な事情なのですが、職場が遠いことがスケジュール管理を難しくしていると思います。どちらのキャンパスも通勤に片道1時間半から2時間程度かかるので、残業しない限り、夜遅くに翌日の準備をすることになります。

それを避けるために残業して、帰宅する時間が遅くなることが最大のストレスです。もともと要領が悪いというのもあって、この点だけは4年経ってもなかなか改善されません。

就職活動

教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 学校の規模
  • 学習者が学生
応募時に
必要とされた資格
大学 日本語教育主・副専攻
選考方法
  • 書類
  • 面接
  • 模擬授業
Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

応募した時にはキャンパスの正確な場所も知りませんでしたが、自分なりに経験を重ねてきたのと、それまでの非常勤講師としての仕事に限界を感じ始めていたこともあり、たとえ年限つきであってもフルタイム雇用を探していた矢先にダメ元で履歴書を送りました。知り合いが働いているわけでもなく、それまで何の縁もなかった大学ですが、採用され、2014年4月から勤務しています。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

今の職場に入るまでは、10年近く非常勤である独立法人で日本語を教えていたのですが、そこで開設されているコースの1つが、ODA諸国の若手外交官や公務員にゼロから日本語を教えるものでした。そこでどのような経験をしてきたかをいろいろ聞かれたのを覚えています。今思えば、私が、それまでどの程度多様な学習者のニーズに対応してきたのかを知りたかったのだと思います。

Q:模擬授業では、どのような課題が与えられましたか?

『みんなの日本語初級Ⅰ』の第14課の「て形」の導入をするという課題でした。多くの学習者が最初に直面する壁である「て形」の準備として、動詞のグループ分けの際、動詞のカードをグループごとに黒板に貼ってもらうという流れでやりました。パワーポイントではなく、自分の手でカードを持って、それをルールに従って分けていくという作業を通して、学習者に「参加」してもらう授業を心がけました。

Q:この教育機関で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

まず、日本語教育能力検定試験には合格しておいたほうがいいと思います。私は大学院時代に受験し合格したのですが、きちんと勉強すれば合格できる試験ですし、いわゆる「日本語教員免許」がない現状では、最も説得力のある資格の1つだと思います。あと、くり返しになりますが、外国語ができることは重要です。私は、英検準1級、TOEIC910点を取得しています。

Q:日本語教師(国内)の求人情報は、どこで得ましたか?
求人情報のサイト
  • 日本語教育学会
    やや敷居が高いものも含めて、日本内外と問わず、広範囲に日本語教師募集が掲載されている。
  • JREC-IN Portal
    日本語教育学会の教師募集には掲載されていないものもあり、有益。

日本語教師全般に関する質問

Q:もともとはどのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

学部の専門が外国語(英語)だったのですが、主専攻である英語以外にも様々な外国語を勉強するうちに、自分の母語である日本語に興味を持つようになりました。

大学院は日本語専攻に進み、文法を研究していたのですが、同級生の留学生の日本語使用を目の当たりにし、最初は漠然とでしたが、実際に日本語を教えてみたいと思うようになりました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

やはり、世界各国から来た人々と出会えることが、この仕事、特に日本国内で日本語を教えることの醍醐味だと思います。様々な文化を持つ人々とコミュニケーションを取ることで気づかされることも多いです。

日本人として、日本寄りの考えしかなかったことに気づいたり、なるほど、そういう考え方もあるのか、と感心させられることも少なくないです。もちろん、異文化間の摩擦はつきものですが、それ以上の見返りがある仕事だと思います。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?それはどうしてですか?

切実に辞めたいと思ったことはありませんが、やはり将来性を考えると不安になることはあります。現場で教え続ける日本語教師にとって、安定した身分はなかなか保障されないからです。

そのためには、日本に来る「外国人」がますます多様化している今、いわゆる「語学教師」が、将来に不安を抱くことなく、モチベーションを高められる社会になってほしいし、なるべきだと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

【学生の方へ】
やはり、大学院に進学し、より深く日本語を学ぶことです。それだけではなく、修士号を取得することで、仕事の幅はもっと広がります。既に大学院に在籍している人は、できれば博士号を取得することが望ましいですが、修士があれば大学の現場で教えることができます。修士号を取ってとりあえず経験を積み、そのあと博士号、という選択肢もあると思います。

あと、私は経験がないのですが、在学中に海外で教えておくと、その後の職探しに有利になると思います。

【社会人の方へ】
フルタイムで働きながら日本語主専攻を修了するのはかなり難しいと思います。ただ、時間がかかってもよいのであれば、日本語教師養成講座を420時間受講し、それをキャリアにつなげていくという方法もあると思います。

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