元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

イギリスの大学 経験談

都市部で人気上昇。月収は少なめ

公開:2015/12/19
ゆーみ(女性・29歳) 
資格・課程 日本語教育能力検定試験
イギリスの大学での
経験詳細
  • 地域:グラスゴー
  • 月収:92,000円(512ポンド)
    それだけでは生活は難しい
  • 1年6ヶ月(2011年9月~2013年3月)
    *退職

大学内にあるランゲージセンターという施設で、別途受講料金を払うイーブニングコースの講師として働いておりました。

卒業単位として認可されない語学コースというだけあって受講する生徒さんは、「日本語を学びたい」という熱意のある方が多いです。

また大学での語学コースのため20歳前後の若い生徒さんが多く、日本のゲームやアニメ文化から日本語に興味を持った方がたくさんいました。

毎年、留学生として在学しているアジア系の学生(中国人、ベトナム人、マレーシア人)がクラスの半数以上を占めていました。日本語コースの受講者数は毎年、右肩上がりで人気上昇中の言語と言えると思います。

元々、人に教える仕事が好きだったため、日本語教師の仕事は人生の中で一番楽しいと思えた仕事でした。

最初は「私は○○です」という自己紹介の授業ですら「?」と頭の上にハテナマークが浮かんでいた生徒さんも、コースが終了するころには「今週末は買い物に行きます」などの未来を表す文や、「週末は友達に会いました」といった過去を表わす文が話せるようになっているのを見ると、仕事のやりがいを感じました。

また多くの生徒さんは日本にとても関心があるため、授業外でも生徒が私のところへ話をしにきたり、質問をしにきてくれたりしたのも日本語講師として楽しいと思える時間でした。

日本のことをまだ何もしらない人に「日本ってこんなに素晴らしい国なんだよ」「日本語ってこんなにも美しい言語なんだよ」「日本語の言語の中にはこういった文化が現れているんだよ」といったことを伝えることができるのは、日本語教師の魅力だと思います。

私立のランゲージスクールと比べ、大学で教えると時給は3倍近く上がり、語学の講師としてはとても良い環境で仕事ができていると感じています。(友人が私立のランゲージスクールで働いていますが時給がポンド11と言っていました。)

また税金などの手続きも大学側がしてくれるので、ややこしい税金関係の手続きや申請をする必要もありません。

また同じ大学のランゲージセンターでは日本語の他にもスペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語など多くの言語コースを設置しています。

そのため他言語の講師の方とも仲良くなったり、授業の相談をし合ったりすることができ、語学教師として分かち合えるものが多かったのも私にとってはとても嬉しい点でした。

ただ私の勤務していた英国スコットランドはまだまだ日本人の数も少なく、日本語の需要も多くありません。グラスゴーや首都エディンバラ、北部の大都市アバディーンでは日本語コースを開講している語学学校や大学がありますが、その他の都市では日本語講師の仕事は皆無に近いと思います。

また日本語講師の仕事が見つかったとしても、毎日授業がある学校は稀で、ほとんどの学校が週に1~2回の授業になるかと思います。日本語講師の仕事だけで得られる収入は多くはありません。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

基本的に英語で日本語を教えなければならなかったので苦労しました。勿論ですが、英語と日本語は文法が違います。

例えば動詞は日本語でも英語でも存在する「動作を表す品詞」と説明しやすいのですが、日本語の格助詞「は」や「が」は英語に存在しないので、それを英語で説明して理解してもらうのはとても苦労しました。

日本語の格助詞「は」は英語ではTopic marker、「が」はSubject markerと言います。

我々日本人は何気なく使い分けている「は」と「が」ですが、教えるにあたっては「は」には2つの使い方(トピックと対比)があり、「が」には5つ使い方があります。

話の中で初めて出てくる情報、文中でまだ知らされていない主題、「~は~が」構文、「(場所を表す)あります/います」構文、「(所有・所持を表す)あります/います」構文)があることを踏まえた上で、それぞれの使い方を時間をかけて練習しました。

概念が多いので、練習量は必要不可欠でした。宿題で何百問も練習問題を出して、生徒さんに悲鳴を上げられた記憶があります。

(参考)
格助詞「は」
・私は日本人です(トピック)

・みんなは行きますが、私は行きません(対比)

格助詞「が」
・昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。(初めて出てくる情報)

・何が好きですか?(文中でまだ知られていない主題。疑問詞の後は必ず「が」になる)

・私は歯が痛いです。(「~は~が…」構文。は=Topic marker、が=Subject marker。)

・机の上にペンがあります。(「(場所を表す)があります/います」構文。英語でいうThere is/are)

・私には姉がいます。(「(所有・所持を表す)があります/います」構文。英語でいうhave)

またスコットランドの英語は「スコティッシュ・イングリッシュ」と呼ばれとても訛りが強いのが特徴です。生徒さんが質問してきても英語の訛りで質問が理解できないことも多々あり、英語の面で苦労は絶えませんでした。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

配偶者の転勤で、勤務が難しい遠方の町に引っ越すことになったことと、妊娠・出産が重なり、出産1カ月前に退職することにしました。

3月末で退職したので会計期ともコース期間とも合致していたのでキリが良かったことが幸いでした。もし配偶者の転勤がなかったら産休を取って、続けていたと思います。

給与・待遇

月収内訳
  • 月収:9,2000円
  • 時給:約5,760円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    378,000円(2,100ポンド)
  • 最低限必要な月収
    180,000円(1,000ポンド)
基本労働時間 1日2時間 週2日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 有給
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇中の
給与保証
  • 給与保証がない
  • 長期休暇中は別の仕事をしている

グラスゴーで賃貸アパートに住むのであれば月ポンド500ほどはかかります。また自炊した場合でも食費は月ポンド200~300ほどかかると思います。

その他にカウンシルタックス(賃貸でも住宅にかかる税金)や光熱費を考えると、週に2回程度の日本語講師の仕事で生活していくのは困難なのではないかと思います。

日本では雇用主が交通費を負担してくれる場合が多いですが、この国では交通費は負担してもらえません。そして電車やバス等の公共交通機関の運賃がとても高いです。

私のしていた週に2回のイーブニングコースの日本語講師だと副業が必要だと思います。

またこちらで驚いたのが、雇用主が交通費を負担してくれないことです。

徒歩で通勤できる場所に住んでいる場合は良いのですが、バスや電車に乗って通勤となると公共交通機関の運賃がとても高いので時給の高い教育機関で働かないと時給の半分は交通費に消えてしまいます。

例えば電車で10分ほどの通勤(8マイル/13kmほど)の往復運賃がポンド3.80(約710円)ほどかかります。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

大学など公立の教育機関は私立の語学学校に比べ、給与が高い(3倍程度)のでお勧めです。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス15~20人ぐらい
1日の時間割 18:00~20:00  
初級クラス1コマ(120分) 休憩10分
休日 土曜日
休日に取り組んだ仕事:2時間ほどかけて次週の授業の用意

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

生徒さんによって語学面でかなり差があることが大変でした。例えば、1回授業に欠席してしまうと120分のレッスンを受けていないことになります。

結果、欠席していた生徒さんが翌週に授業に戻ってきても授業に全くついていけない、ということになり他の生徒さんとのバランスを取るのに、こちらがサポートしてあげなければなりません。

また日本のゲームやアニメなどが好きで、もともと日本語をよく知っている生徒さんから、ゼロからスタートの生徒さんまで出席・欠席とは関係なしに、クラスの中で語学面に差がある場合もありました。

私が工夫していたのは、120分ある授業のうち、前半はいつも前週の復習に充てることです。そうすれば、前週出席していた生徒さんは既習内容を復習できる、前週欠席していた生徒さんは前回の授業内容をサラッとではあるけれど掴むことができます。

これで、後半の60分もなんとか授業についてくることができます。また欠席した生徒さんには学内メールを利用して、授業内容(テキストのページなど)やプリントのファイルなどを送信し、自習するよう声かけをしました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
初級日本語 Genki-online   
対象者:初級 
クラス内のアクティビティをそのまま使用
アルク 日本のキホン   
対象者:全レベル
日本文化への理解を深めるためクラスで記事を読み、ディスカッション。お正月には新しい年賀状をみんなに渡し、筆ペンやスタンプなどで年賀状を作成するなどワークショップとしても利用しました。
日本語学校MLC目黒ランゲージセンター   
対象者:全レベル
授業中の練習問題や宿題用の練習問題リソース(単語、活用、語彙など)を使用。
参考になる書籍
初級日本語げんき   
対象者:初級
Japanese for busy people I   
対象者:初級
大学指定のテキストでした。テキスト通りに進め、文法と会話の練習授業で学習。同シリーズのワークブックを自主または宿題用として使用しました。
Japanese for busy people II   
対象者:初級・中級
大学指定のテキストだったので、こちらを授業中メインに使用し、インターネットから得たアクティビティリソースと併用しました。同シリーズのワークブックを自習・宿題用に使いました。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

事前にもっと身に付けておきたかったのは、やはり日本語を英語で説明できる語学力です。私が日本語教育能力検定試験に向けて勉強していた時は、日本語で日本語を教えるということを前提に勉強していたので「これって英語でなんて言うんだろう?」「こういう説明でいいのかな?」と戸惑うことが多々ありました。

また語学のみならず、生徒さんは日本語のありとあらゆる文化に興味を持っています。そういった面から、語学のみならず色々な日本文化を知っていなければいけないなぁ、と思わされました。

私達が思っている以上に、日本語を学びたい生徒さんはマニアックです。

私はある生徒さんから

「日本のヤクザはどうして指を切るんですか」
「茶道の時に茶碗を何回か回すのには意味があるんですか、何回回すのが正解なんですか」
「日本酒を飲む時のお猪口と杯はどのような違いがあるんですか」
「なぜ日本人は酒を温めて飲むんですか」

などという質問を受けた時はその場で答えられませんでした…。家に帰ってから必死で勉強したのを覚えています。

日本人として文化やファション、流行、政治などありとあらゆる分野にアンテナをはり、情報をキャッチするだけでなくその背景なども学習することがとても大事だと感じました。

就職活動

国選びで重視した点 その国に既に住んでいたから
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 通勤時間
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外(現地)

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

イギリスでもイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで日本語の需要は大きく変わってくると思います。

私の勤務したスコットランドに関して言うと日本語の需要は多いとは言いにくいと思います。グラスゴー、エディンバラ、アバディーンの3都市では日本語コースを開講しているランゲージスクールや大学がありますが、それ以外の都市で日本語コースを開講している学校は聞いたことがありません。

しかし、近年のアニメ文化人気と、近年イギリスにやってきた日本食ブームの影響もあり、私の勤務していた大学では日本語コースの受講者数は毎年右肩上がりで、まだまだ人気上昇中の言語です。

大きな都市では日本語人気は上がってくるのではないかと思います。また大きな都市ではなく、郊外の小さな町では、日本語コースが開講されていない分、プライベートレッスンの需要は幾分かあるかと思います。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

日本語教育の熱意やクラスマネジメント方法、トラブルシューティング方法(どのように問題ある生徒さんをコントロールするか、授業についてこられない生徒さんをどのようにサポートするか、生徒さんのモチベーションをあげるにはどうするか、など)。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日本語教師養成講座420時間や日本語教育能力検定試験は書類選考で通過できるか振り落とされるか重要になってくるので、書類選考で有利になる資格です。

面接では質問の回答も大切ですが、語学力(英語)もしっかりと見られます。私は日本語教育能力検定試験、英検2級、TOEIC 920点、IELTS バンド7.5程度で面接に合格しました。

また日本語のみならず、講師や先生として人に何かを教えたことのある経験は重視されると思います。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
その他求人情報
日本語教師養成講座:アークアカデミー

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

友人がこの学校で日本語講師をしており、ティーチングアシスタントとして授業のお手伝いをするようになったことがきっかけです。

アシスタントを続けていた時に、ちょうど講師の枠に空きが出来、学校側から勧められて面接を受けました。アシスタントとして大学に出入りしていたことや、授業の進め方を既に見て知っていたこと、スタッフとも顔見知りだったことなどが面接で有利に働いたと思います。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

旦那(英国人)と婚約し、英国に住むことが決まった時に日本語教育能力検定試験を慌てて受検しました。もともと留学経験があり、日本語や日本文化に興味を持った方に、日本を紹介することが好きだったので、結婚して渡英した後はこの仕事しかない!と思い必死で勉強しました。

日本語は自分で思っていたよりも奥が深く、日本語教育能力検定試験のために勉強している時は難しくてくじけそうにもなりましたが、海外で日本語講師以外に自分のできる仕事がある気がしなかったことと、渡英の時期が決まっていたので、楽しむというよりは「何が何でも合格しないといけない」といった気持ちで勉強しました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

日本語教師は今まで経験した中で一番やってよかった、と思う瞬間が多い仕事でした。

生徒さんが目指していたJLPT(日本語能力試験)に合格したことを報告しに来てくれた時は、教えている身として言葉にできない喜びを感じました。

初めは何も日本語を話せなかった生徒さんが、いつのまにか日本語をペラペラと話している姿を見るのも大きな喜びです。学生から「先生の授業はとても面白いです」と言ってもらえると、講師としても「この仕事やっていて良かった」と感じます。

また自分でも知らなかった日本文化や意識したことのない文化の面白みを改めて感じることができるのも1つの楽しさの1つです。

特に海外から日本を客観的にみると、日本に住んでいた時とは違った目で自分の国を見ることができます。日本人として自分の国をより深く知ることができるのは、とても貴重な体験だと感じていました。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

気難しい生徒さんの授業態度や言動で辞めたいと思ったことがありました。

日本語コースを受講している生徒さんの目的は十人十色で「日本に旅行に行くから基本会話程度の日本語を学びたい」「日本のアニメを日本語で見れるようになりたい」という学生から「日本に留学したい」「日本で働きたい」という学生までいます。

学習範囲にもそれは現れ、「とりあえず話せるようになりたい」という学生から「平仮名、片仮名、漢字まできっちり学びたい」という学生まで多岐に渡ります。

あるクラスで、「私はコミュニケーションを学びたいからライティング(平仮名、片仮名、漢字)は学びたくない」と言う生徒さんがいて、苦労しました。

同じクラスにはJLPT(日本語能力試験)を受験しようとしている学生もおり、平仮名と片仮名は盛り込む予定にしていたからです。毎回、ライティングをはじめると「私はそんなこと学びたくない」と不満を言い続けられ、挙句の果てには主任にクレームがいきました。

部門内での問題に発展し、心身ともに疲れ果てたコースでした。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
養成講座、大学、日本語教育能力検定と方法は何であれ、履歴書に書ける日本語教育の資格は就職にはとても有利です。

特に大学などの高等教育機関で教えるのであれば資格は必須と考えてもいいかもしれません。とにかく資格は取っておきましょう。

【社会人の方へ】
お金と時間があるのであれば420時間養成講座がお勧めです。実習も組み込まれているので、実際に教えるというのはとても貴重な経験です。

実際に日本語教師になってからも必ず役に立つと思います。ただ経済的な負担と時間の関係で養成講座が難しくても日本語教育能力検定は受けておいた方がいいと思います。私は日本語教育能力検定試験の勉強と一緒に、アルクの「日本語の教え方・短期実践講座」を受講しました。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

一番大切なのは、まず資格だと思います。大学の日本語教育科目であれ養成講座であれ日本語教育能力検定試験であれ、履歴書に書ける日本語教育の資格がないと書類選考で落とされてしまいます。

実際に日本語教師をして感じたのは「日本語が話せる」のと「日本語を教えられる/説明できる」のは別の次元です。日本語を教えるためにはより深い、より専門的な知識が必要です。

日本語教育の資格の勉強をすれば、その知識が得られます。そのためにも資格はとっておいた方がいいと思います。

もう1つ大切なのは語学力です。日本国内で日本語を教えるのとは異なり、英国で日本語を教える場合、多くは英語で説明を求められます。

私の教えていた日本語コースでは授業中、メインとなる言語は英語です。また授業中、黒板で使うのはローマ字です。生徒さんが質問してくる時も全て英語です。勿論、それに対して回答する時も英語です。

テキストに載っている日本語以外は全て英語で授業を進め、説明できることが求められます。そのためにも英語力は必要不可欠だと思います。

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