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海外日本語教師経験談

アメリカ ペンシルバニア州 企業(2015年) 人生観が大きく変わります

👩 うさぎさん・ 38歳

総評

  • アメリカ ペンシルバニア州 企業
  • 雇用形態:非常勤講師
  • 期間:2年 (2014~2015年) *退職
  • 月収:19万8,000円 (1,800ドル) *なんとか生活できる
  • 勤務時間:1日2コマ 週3日勤務   *残業:残業なし

日本語教育を通して得た経験は、それまで日本で暮らしていた中では経験することのできない事ばかりでして。文化、言葉、また考え方の違いは1つの壁でもありましたが、私の教師としてのやる気を奮い立たせたものは、生徒さんたちの日本語への熱意でした。

私は東日本大震災を機に、何か私でもできることはないかと探し考えた結果、海外の人達に日本の事をもっと知ってもらおうということでした。

授業を始めた最初のころは、授業の進め方や教え方にばかり意識が集中してしまい、生徒さんの立場になってあまり考えていませんでした。また、私自身の余裕のなさに生徒さんにまで気を使わせてしまうなどもしていました。しかし、授業の回数を増やしていく間で、生徒さんは何のために日本語を習いにきているのか、また何を先生に求めているのかを落ち着いて考えられるようになりました。その頃から、授業中も笑い声も出てくるようになりました。

日本語教師という仕事は、日本語を勉強してくれる生徒さんの人生の可能性を増やすことにも関わられ、とてもやりがいのある仕事だと思います。渡米する前までは、雑誌やテレビで得ていた情報だけで日本語教員の仕事をイメージしていましたが、実際に働くとそれを上回る価値のある仕事だと思いました。

人生の中で一度経験すると、人生観が変わると思います。ただし、給料は決して高いとは言えず、昇給もほとんどないため、ある程度貯金をしておくと海外での生活も安心できると思いました。

日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

苦労したことは主に3つあります。

まずは、英語です。初級のクラスでは、ほとんど英語で説明しなければなりません。特に、同じ生徒さんに何回も同じ文法を質問されたときには、どう説明すればよいのか分からなくなりました。私はバイリンガルではないため、ネイティブの自然な英語の表現方法が分からなくなることもありました。

さらに説明方法を変えても理解してもらえない時は、少し落ち込みました。授業前、一通り説明文は考えるのですが、生徒さんが授業中に何を聞いてくるかは予測できないので、毎回が必死でした。

次に苦労したことは、クラス内のグループになかなか入り込んでいけない生徒さんがいたことです。グループワークは毎回の授業で行っていたのですが、一人だけ引っ込み思案の子がおり、その子はあまりグループを作っても発言はしていませんでした。

語学の授業は、話す事がとても重要な活動ですので、そういった場合はグループ活動後に一人一人の生徒さんを名指しして、質問に答えてもらうようにしました。

最後は、同じクラス内でも、生徒さんの日本語の聞き取りレベルが違っていたことです。レベルの高い生徒さんに合わせると授業はどんどん進めていけるのですが、そうすると聞き取りが低いレベルの生徒さんは授業についていけません。そのため、私が授業で話す日本語の内容を、平均の生徒さんより少し下げて話すようにしました。

高いレベルの生徒さんには授業が物足りなくならないように、追加の練習問題などを与えたりもしました。これは勘ですが、生徒さんの表情をみていると、私の説明が理解できているかどうかは、なんとなく分かりました。

なぜこの企業を退職しましたか?

日本語教師は、仕事としてはとてもやりがいのある仕事です。しかし、給料があまり高くなく、一生日本語教師としての給料だけで生活していくには大変だと思ったからです。

ちなみに私は2年間働きましたが一度も昇給はありませでした。また、2年間の間にも日本語を教える先生の入れ替わりが多かったため、先の将来に不安も覚えました。

給与

月収:19万8,000円 (1,800ドル)
なんとか生活できる

正直、福利厚生などの待遇はほとんどないといっていいくらいです。これはその学校や企業によると思うのですが、メインの収入はほとんどが授業のコマ数をいくつこなすかにかかっていると思います。

日本との待遇の違いは、アメリカでは年齢で基本給が上がることはないという事です。給料は自分の仕事のスキルに直接関係してきます。

アメリカでは、健康保険の内容によって病院で支払う金額が変わってきます。そのため、勤め先で保険に加入することを勧められても、保険会社がどの範囲の病気まで治療代をカバーしてくれるかを確認したほうがいいです。個人で加入したほうが、いい場合もあります。

私の勤め先は徒歩圏内でしたので、交通費はありませんでした。交通費を支給されている人達は出勤する日数分の往復のバスや電車代を受け取っていました。

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給与

  • 月収:19万8,000円

月収の内訳

  • 1コマ120分:8,800円
  • 食事手当:1,100円
  • 不定期でイベントチケット:5,500円

待遇

  • 健康診断
  • 現地語学レッスン受講
  • 勤務先の近くでイベントが開催されると、そのチケットを無料でいただきました

雇用形態

  • 非常勤講師

勤務時間

  • 1日2コマ 週3日勤務   *残業 残業なし

学校が定める学生の長期休暇の有無

  • 夏休み:12週間・冬休み:5週間

長期休暇中の給与保証

  • 長期休暇中は別の仕事をしている
  • 長期休暇中は別の仕事をしている

授業形態・勤務スケジュール

スケジュール管理で大変だったことは?

予定通りに授業のスライドが作れなかった時は大変でした。より分かりやすくスライドを作ろうとすると、スライドが多くなってしまい、作業が深夜になることもありました。

定期的に、スライドは出来る限り新しい情報のものに差し替え、常に新しい情報をアップデートしました。根気のいる仕事でした。

苦労は絶えませんでしたが、スライドの内容に楽しんでくれる生徒さんたちを見ることで、次のやる気につながりました。

授業形態やスケジュールの詳細を読む...

主なクラスの授業形態

  • クラス授業  1クラス10人

学習者層

  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人

スケジュール

月・水・金曜日
  • 朝9時から授業開始時間までは、授業の準備
  • 3:30~5:30・6:00~8:00 初級と中級クラスを2コマ ※クラスは天候、デモなどでキャンセルされることもあります。
日曜日
  • 基本的に休みです。日本語関連のイベントを行う際は、任意で出勤することもありました。
火・木・土
  • 授業のスライドをパワーポイントで作成、宿題の添削や作成、授業の説明内容の練習、授業内のゲームや課題などの作成。
  • 土曜日:勤務先のアメリカ人と、次の週の授業内容の最終チェック ※自分が授業内容に不安がある時のみ。授業の準備が終わっていれば、休みです。

アメリカで日本語を教える前に準備すべきだったことは?

準備しておいて良かったものは、日本で購入した日本語教授法や文法の本です。海外では日本のテキストブックなどは高い金額で販売されており、さらに本の種類が少ないです。日本に居るうちにある程度の本を揃えておいたので、授業の準備にとても役立ちました。

逆に準備すべきだったと思うことは、英語力です。日本で英会話スクールに通ったのは、大学生の時と渡米する3か月間のみで、現地についてからしばらくは英語で苦労しました。特に聞き取りが難しかったので、渡米前にもっと英語を聞いて慣れておくべきだと思いました。

教案作りで参考にしているサイトは?

  • みんなの教材サイト
    このサイトは文法の教え方を分かりやすくするために役立てました。日本語を初めて習う人にとって、導入部部はどうすればいいか、などの参考にさせて頂きました。一般のサイトからイラストを探すよりも、このサイトのイラストを使うほうが何を説明したいのかが簡単に説明できました。
  • NHK World
    中級のクラスには、このサイトにある日本の時事問題のひらがな記事を読んでもらいました。内容を日本語で理解することは、学習者にとって決して簡単なことではありません。しかし、授業内で教えた文法や単語などがどう使われているかを確認してもらうことで、学習意欲を高めました。
  • Genki-Online
    授業で使用するテキストブックのオンラインサイトです。テキストブックに書かれていない、授業で使えそうな情報などを収集しておりました。

教案作りで参考にしている書籍は?

  • 初級日本語 げんき I 対象: 初級
    初級の文法や単語から書かれており、日本語学習者がはじめて使用する本に適しています。 新しい文法の使い方を学ばせるために、この本の練習問題を授業中にたくさん解かせました。 単語は宿題で何回も書かせ、本の各課で出てくる文章は暗記してもらいました。また、何回も繰り返すことで、日本語の上達を図りました。
  • 初級日本語 げんき II 対象: 初級・中級
    敬語などの使い方も説明されており、中級と上級の日本語学習者に適している本です。 単語は何回も書かせ、文章は暗記してもらうようにしました。授業ではミニテストを行い、どのくらい漢字を書けるようになったかもチェックしました。 本についてくるCDを活用することで、日本語の読む、書く、話すことに全て対応しています。
  • 初級日本語文法と教え方のポイント 対象: 初級
    日本語の69種類の基本文法の使い方が説明されています。 授業では上記のGENKIを使用していたのですが、GENKIの説明だけでは物足りないと感じた時に、この本で補足しました。 この本は、それぞれの文法についての指導法も書かれています。そのため、先生にとってはもっていると便利な1冊だと思います。

就職活動

この企業で働くきっかけ・決め手は?

いくつかの日本語民間学校に日本語教師として応募していました。そのうち1つの学校で、退職する先生がいたため、履歴書送付後に面接をし、その結果採用して頂きました。

応募する際には、以前アメリカで高校の日本語クラスのボランティアをしていた時の主任の先生から推薦状を頂き、その推薦状を応募時に履歴書と一緒にオンラインで送りました。

また、日本で教員免許を取っていたため、それも採用のきっかけになったと思われます。
(知人によると、日本語学校では教員免許は語学系に限らず、持っていると面接時に印象が良くなり少しプラスになるそうです。)

面接ではどのようなことを聞かれましたか?

面接は日本語クラスを取り仕切っているマネージャーさんによって、日本語と英語の両方で行われました。

主な内容は、

・どうして日本語を教えたいのか
・日本語を教えた経験はあるのか
・アメリカにどのくらい滞在しているのか、また、滞在する予定か
・どう授業をすすめていくのか
・英語はどのくらい話せるのか

などでした。

マネージャーさんは日本で英語を教えていた経験もあり、マネージャーさん自身の経験談などを交えながら和やかに面接が終了しました。

現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

アメリカでは日本語を学ぶことは、一部の人達を除いてはそれほど重要視されておらず、日本語学習者の人数が急激に伸びるという事も考えられませんでした。日本人が世界の共通語の英語を学ぶとは感覚が違うように感じました。

しかし、日本の企業で働きたいという人達は、生徒さんの年齢に関係なく熱心に日本語を勉強していました。また、日本の文化が好きで、日本に会社を立ち上げたいという方も何人かいました。

この企業で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

強みになる資格は、教員免許や日本語教育能力検定試験合格、日本語教師養成講座420時間です。職歴は、学校教師が一番好まれていると思いました。

現地でいくつかの日本語民間学校に見学に行って、オーナーや採用担当の方と話したのですが、よく聞かれたのが「(日本語以外でも)何か科目を教えていたことはありますか。」でした。

日本語教師としての資質は、

・相手の立場で物事を考えられる
・困難に出会っても、それを乗り越えるパワーがある
・すぐにあきらめない

などです。

持っていたほうが良い資格は、その現地の言葉に関係する資格です。決して、絶対もっていなくてはいけないというわけではありませんが、履歴書にその国の母国語の資格を持っていると書くことで、面接官の印象はよくなるでしょう。

語学レベルは、民間学校においては、現地の言葉で簡単な会話ができることです。ほとんどの面接官は現地で生活する中で語学のレベルがアップするだろうと思っています。なので、ペラペラ話せるレベルでなくでも、採用されている人はたくさんいました。

しかし、大学の就職を目指している方は、それ以上話せないと採用は難しいでしょう。

就職活動で参考にしたウェブサイトは?

  • indeed
    日本語教師だけでなく幅広い職種の求人広告を出している。使い方は、What の欄にやりたい職種のキーワードを書き、Where の欄に仕事をしたい場所を書き込む。
  • SimplyHired
    現在募集している語学教師の一覧が出てきます。だたし、アメリカ全ての機関がこのサイトに登録しているわけではありません。表示されるのは、アメリカの語学学校の一部です。それぞれの学校の採用条件などが書いてあります。
  • jobrapido
    アメリカ内での日本語教師の募集を表示しています。サイト内から他の日本語教師求人募集のサイトも掲載されています。

就職活動で有効な手段は?

  • 『NYジャパン (New Yorkで働きたい方)』
    企業広告もしくは求人の欄に、日本語教師の求人が時々掲載されています。
  • 『週刊NY生活 (New Yorkで働きたい方)』
    企業広告もしくは求人の欄に、日本語教師の求人が時々掲載されています。
  • 『紹介』
    (民間学校に関しては、)知人で日本語教師をしている人から直接紹介してもられると、採用される可能性が高いです。

国選びで重視した点

  • 親日国
  • 渡航経験があった

現地における日本語教師の需要・将来性

  • 一部に人気があり、数は少ないが求められている

就職 教育機関選びで特に重視した点

  • 必須資格
  • 学校の規模
  • 給与・待遇

応募時に必要とされた資格

  • アメリカでの公共施設や学校での日本語教師経験。日本もしくはアメリカでの教師免許。

就職 選考方法

  • 書類
  • 面接

面接方法

  • 現地にて実施

日本語教師全般に関する質問

どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

日本語教師になろうと思ったきっかけは、東日本大震災です。海外からたくさんの応援や援助が送られてきた中で、自分にも海外の方達に直接恩返しできるものはないかと思ったことです。

それまで募金をしたりもしたのですが、具体的に何に使われているのかが分からず、満足感などはありませんでした。また、その頃の会社勤めでは、毎日同じようなの業務だけに追われており、もっと新しい経験をしたいと思っていました。

それと同時に、海外への挑戦はできるだけ動けるうちのほうがいいと思い、会社を退職しました。30代を超えてからの挑戦でしたので、上手くいかなかった時のことをかなり覚悟しましたが、震災がきっかけで、とにかくやってみようという思いで渡米しました。

「日本語教師をやってよかった!」どのような時に実感しますか?

やって良かったと実感するのは、授業中に笑いが絶えない時です。生徒さんも授業を楽しんでくれている時は、自分の準備した授業内容(スライドやグループワーク、ゲームなど)に満足してもらえているのだなと実感できました。

また、クラスの中で少しレベルが低い生徒さんでも、一生懸命やってきた宿題を提出されると、自分自身も頑張って教えようという気持ちになりました。

自分のクラスをアシスタントしてくれる先生が病欠したときに、その先生に生徒さん全員が自主的に手紙を書いているのを見た時は心が温まりました。その時は、心の優しい生徒さんを教えられることを有難く感じました。

同僚の先生とは、授業の進め方や生徒さんへの対応の仕方で意見が一致した時などはとても安心しました。

学生のみなさんへ 進路についてアドバイス。

大学生活のうちに短期間でもいいので、(働いてみたい国に)語学留学に行ってほしいです。もしくは旅行でもいいです。そこで、現地の日本語学校を訪れて、あらかじめコネを作っておくのがいいでしょう。

時間があれば、学校の勉強と同時並行で日本語能力検定試験で合格を目指すのもいいと思います。この知識は教える時に必ず役に立ちます。

その他、現地で意思疎通ができるか、現地で生活できそうか、どのくらい日本人がいるか、日本語クラスはどのくらいあるのかを事前調査しておくと良いでしょう。学生のうちは貯金があまりない人が多いと思うので、現地での生活費をどう維持するかをよく考え、バイトで生活資金を貯めておくのが良いでしょう。

社会人のみなさんへ 進路についてアドバイス。

現地を訪れて、生活をやっていけそうかを自分の目で確認するのが大事だと思います。その際、日本人教員の募集がどのくらいあり、その条件が自分にあてはまるかをチェックしてみてください。

現地での採用は、年齢給などはないため、給料は日本にいる時より下がることを予想して下さい。それも踏まえて、今までの貯蓄でも、現地でお金がなくなったときに生活が賄えるかを考えておくといいでしょう。

履歴書には、今までの仕事で少しでも教育に関連しそうな事があったら、詳しく説明を加えると良いでしょう。

アメリカで日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

日本語教師は、日本では得られない特別な経験だと思います。この経験を通して、今までの生活スタイル、さらに物の考え方なども変わるきっかけにもなります。人生にとって、確実にプラスになる経験だと思います。

ただし、日本語教師は決して楽な仕事ではありません。異国での生活は、想像を超えるストレスがたまることもあります。常に、自分が何故日本語教師として働きたいのかを思い出し、自分の精神状態をコントロールするのも大事になります。

決して、安易な決断で始められる仕事ではありませんが、人生で価値のある経験になることは間違いないです。

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