元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

タイの大学 経験談

生徒たちに助けられた日々

公開:2017/05/19

すずまる(女性・28歳) 
日本語教師歴 2年 (2012年~2014年)
*他業種に転職(本業の合間に、カフェでプライベートレッスンを行っています)
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(アルファ国際学院 大阪校)
タイの大学
経験詳細
  • 地域:パトゥムタニ―
  • 月収:約60,000円(19,500バーツ)
    なんとか生活できる
  • 常勤講師(非正規雇用・フルタイム)
  • 2年(2012年~2014年)
    *現在は退職

既卒の日本語学校からの紹介がきっかけで、タイ国立大学内にある研究所で勤務することになりました。


国立大学なので建物が立派

1年間の予定でしたが、契約更新時に延長を申し入れ、合計2年間タイで日本語教師として働きました。

日本の快適な生活に慣れていた為、交通の不便さや公衆衛生面など気になることは多々ありました。また、タイ独特の香辛料や、料理に慣れるまで時間が掛かりましたが、思っていたより普通の生活を送れました。

大学内のレッスンでは、同大学の学生に関わらず子供から社会人まで誰でも入校することができ、コースは初級から上級までありました。コース毎にカリキュラムは決まっていましたが、レッスン内容は全て自分で考えて作っていました。


レッスン内容も教材もオリジナル

他に日系企業への出張レッスン、プライベートレッスンや課外授業なども行っていました。

大学内でのレッスンについては、みんな一生懸命学んでいました。国立大学ということもあり優秀な学生が多かったので、ほとんど苦労することはありませんでした。

レッスンが上手くいかずに落ち込んだり辛かったりしたこともありましたが、みんなに助けられてどうにかやって来られました。


生徒からの手紙には何度も勇気をもらった

初めて受け持ったコースの生徒達から、「ありがとう。」と感謝のメッセージをもらった日は、家に帰って泣いてしまったのを覚えています。

それとは反対に日系企業でのレッスンでは苦労したことが多かったです。会社から強制的にレッスンを受けさせられている生徒が多く、レッスン中の居眠りやお喋りなどが絶えないこともありました。

現地での生活は、贅沢をしなければ普通に暮らせるといったところでしょうか。しかし、余分なお金はありませんでしたので、洋服などを買うのは我慢していました。

週休2日制でしたが、レッスン準備などで忙しい期間は全く休めない月もありました。長期休暇に旅行へ行ったりして、そこでリフレッシュするようにしていました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

一番苦労したことは、日本に比べてカンニングが多かったことです。

タイでもカンニングがいいという認識はされていませんが、みんなで助け合うこと(相互扶助)が美徳とされているせいか、カンニングが悪いという意識が日本に比べて薄いようでした。

一度、あまりにも露骨にカンニングをしていた生徒に「出ていきなさい。」と言ったところ、なぜか他の生徒から猛抗議を受けてしまったこともありました。

決して推奨されるべき文化ではないと思いますが、「これも文化」と割り切れた方が楽だったかもしれません。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

一番の理由は、大学卒業後に渡タイした為、日本での就業経験が無かったことです。将来的に日本語教師に戻るとしても、日本語教師以外の職種で、正社員として働く経験が必要だと感じていました。

また給料面に不満があったことと、超過勤務時間が長くて心身共に疲弊してしまったことも原因としてあります。

給与・待遇

月収 月収:約60,000円
月収内訳 基本給:約60,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    約30,000円(10,000バーツ)
  • 最低限必要な月収
    約45,000円(15,000バーツ)
基本労働時間 1日8時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計80時間
授業の準備/出張レッスンをしている他の日本人講師の帰社を待つ
待遇 なし
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居提供
  • 家具、電化製品
  • ビザ申請費用
  • 日本との往復航空券
クラスの長期休暇 夏休み:2ヵ月 
クラスの長期休暇中の
給与保証
長期休暇中は別の仕事をしている

贅沢さえしなければ普通の生活が送れました。仕事以外での日常生活(食事や洗濯、入浴など)にも問題はありませんでした。その一方、美容代や洋服代などにはお金が掛けられなかった為、日本にいる同年代に比べるとかなり我慢をしていた方かと思います。たまに街へ出かけたりするのが唯一の楽しみでした。

福利厚生については、行事(クリスマスなどのイベントは勿論のこと、職員の入社・退職祝いやお誕生日、偉い人が来た時など)がある度に決まってお食事会があり、それらには全て参加必須でした。これはタイ人が何かにつけて人と集まることが好きな気質であるからだと思います。時間外で、ダンスや歌などの出し物を考えなければならなかったので、とても苦労していました。

年一回以上の社員旅行もあったのですが、普段行けない所などに行けたので、こちらはとても楽しかったです。日本に比べて、仕事以外のイベントが多かったように感じます。

就職が初めてだったということもありますが、当時、待遇面についてだけ言えば、取り立てて不満や疑問に思ったことなどはありませんでした。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

給与については、他の日本語学校と比べてもすごく安かったと思います。国立大学だったことが原因だと思いますが、民間日本語学校や私立大学などで働いていた日本語教師の方が給与は高かったです。

私としては、現地で日本語教師としてキャリアを積むことを考えているのであれば、国立大学で教えることは有利だと思うので、経験としてはお勧めできるかと思います。また社会的地位も高いとみなされます。

日本や他の国で転職などする際ですが、海外での教師経験は日本で就職する際に役立たない、と言われていますが、同僚の話によると日本での就職活動の際に日本語教師の経験は役立ったと言っておりました。私自身も日本において民間日本語学校へ面接に行った際に、そこを指摘されることはありませんでした。

民間日本語学校や大学以外の小中高で教える良さもあるかと思いますが、私としては大学での勤務もおすすめできるかと思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス5~50人
  • プライベートレッスン
  • 企業研修
  • 現地の小中高生を対象にした日本文化啓蒙活動など
学習者の年代
  • 小学生
  • 中学生
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
1日の時間割 月曜日
  • 11:00~16:00  
    授業準備
  • 17:00~20:00  
    日系企業への出張レッスン
火曜日
  • 11:00~16:00  
    授業準備
  • 17:00~20:00  
    日系企業への出張レッスン
水曜日
  • 11:00~20:00  
    授業準備
  • 17:00~18:30  
    初級クラス
  • 18:30~20:00  
    初級クラス
木曜日
  • 11:00~16:00  
    授業準備
  • 17:00~18:30  
    初級クラス
  • 18:30~20:00  
    初級クラス
日曜日
  • 9:00~12:00  
    中級クラス
  • 13:00~16:00  
    上級クラス
休日
  • 金曜日:基本的には一日休み。レッスン準備をする日もあり
  • 土曜日:日曜日のレッスン準備

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

日曜日に2コマ3時間ずつのレッスンがあり、その準備が大変でした。

週休2日制でしたが、2コマのレベルが違った場合、3時間分の教案を2つ作ることになるので、週1日も休めないことが多かったです。またレッスン以外の課外授業の準備や会議など、他にもやることが沢山あったのでスケジュールは常に埋まっていました。

平日に日曜日の準備を行うなどして、週1日は休めるように頑張っていました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
参考になる書籍

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

大学内ではコピー機や印刷機、プロジェクターなど必要な事務用品は何でも揃っており、インターネットも繋がっていましたので、準備物などについて特段不便は感じませんでした。そこが大学で働くことのメリットかと思います。

あえていうならば、PCにもっとイラストなどを保存しておけばよかったとは思います。インターネットでもイラストの入手は可能ですが、みんな同じものを使っていたので、インターネット以外から入手するイラストが豊富にあった方が良かったです。広い教室を使用する際は、プロジェクターでスクリーンに映しており、自作のイラストや文字カードなどは全く使い物にならなかったので、PCに保存しておくのがいいと思います。事前にその国の発展度や就職先の環境などを知っておくことは大切です。

インターネットでも閲覧できないような、日本にしか売っていない日本語教育関連の参考書は持参しておいて良かったです。ネットと参考書を上手く組み合わせて、調べ物をしていました。

就職活動

国選びで重視した点
  • 気候
  • 時差
  • 日本との距離
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 学校の規模
  • 使用されている教授法
  • 通勤時間
応募時に
必要とされた資格
日本語教師養成講座420時間終了
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日系企業のタイ進出は全盛期に比べて少なくなっていますが、日系企業への就職を希望するタイ人はまだまだ多いです。ですので、今後も変わらず日本語教育の必要性はあるかと感じます。また日系企業への就職はタイ人にとってステイタスでもあるので、そういった意味でも日本語教育の需要はなくなることはないかと思われます。

親日国といわれるタイでしたので、日本人だというと「こんにちは。」などの日本語で挨拶してくれたり、声を掛けしてくれたりすることが多かったです。日本文化(特に食文化とサブカルチャー)がかなり身近に浸透していたので、就職以外の様々な分野でも日本語教育は今後も必要とされるだろうと考えます。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

初めての就職で日本語教師となったのですが、上級クラスになるにつれ、ビジネスの場面を教える機会が増えました。その際に、一般企業での社会人経験があった方がよかったと強く感じました。

語学レベルについては、英語力は必要だと感じました。会議などは全て英語でしたので、英語が話せる上司に任せきりとなっており、悔しい思いをしました。

また、一度だけですが、ある生徒に「一度も他言語を勉強したことのない人に、言葉を教えられたくない。」と辛辣なコメントを貰ったことがあります。確かに、言葉を教えるプロとして、多言語を勉強することは大切なことではないかと気づかされた瞬間でした。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • アジアカモメ転職
    中国を中心にアジア各国の求人が掲載されている。日系企業の求人が多いが、日本語教師の求人も、時々掲載される。
  • 日本村
    日本語教師の求人に特化したサイト。日本全国、また海外の求人が掲載されている。
  • 日本語教師の集い
    日本語教師の求人に特化したサイト。日本とアジアの求人が多い。
その他求人情報
日本語教師養成講座で通っていた日本語学校からの紹介:一番、就職口が得られやすい方法。卒業後も求人があれば知らせてくれることもある。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

既卒の日本語学校からの紹介でした。当初は、英国での勤務を希望しており、1年間の勤務終了後に渡英する予定でした。しかしながら、契約更新の際にタイにまだ居たいという思いが強くなっていた為、更にもう1年契約を延長し、合計2年間のタイでの勤務となりました。

タイ渡航を決めたきっかけは、温暖な国であるということと、初めての海外生活と言うことで、日本から比較的近いという2点からでした。また、日本語学校でできた友達が長年タイに住んでおり、いい国だということを聞かされていたので迷いなく渡航できました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

大学では日本教育史を専門としていた為、元々教師という職業には興味がありました。

大学卒業前、進路を決めなければならない時期、周りの友達は次々と就職先が決まっていく中、どうしても海外で働きたいという気持ちが諦められませんでした。そこで、海外で教育にも携わることのできる仕事はないかと色々調べた結果、日本語教師がいいのではないかと思い、決意しました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

一番嬉しかったことは、レッスン最終日に初めて受け持った初級クラスの生徒達が、つたない日本語で一人一人最後のメッセージを読んでくれたことです。

何時間もかけて教案や教材を作ったものの、決して上手い授業ではなかったと思うのですが、みんなから「ありがとう。」と言ってもらえて、頑張って良かったなと心から思いました。その時にもらった手紙やカードなどは今も大切にとってあります。

また、あまり勉強が得意でなく「辞めたい。」と言っていた生徒がいたのですが、個別でケアするなどしてどうにか最後までレッスンを続けられたときも、教師としてとても嬉しかったです。

生徒達とはFacebookで今でもつながっており、たまに大阪に遊びに来てくれたりもするので、辞めた後でも教師をやっていて良かったなと思う場面が多々あります。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

初めて上級クラスを任された際、なかなかレッスンが上手くいかず、すごく落ち込んだ時がありました。そんな中、特定の生徒からいじわるな質問をされたり笑われたりして、最終的にはいじめにも似たような雰囲気に。何日も徹夜をし、ほぼ寝ずにレッスンを行ったりするなど本当に苦しかったです。中には励ましてくれる生徒もいましたが、もう辞めてしまいたいと何度も思いました。

しかし、このままではいけないと、他の講師にアドバイスを求めたり、改善できるところを徹底的に考えたり、どうにかつらい時期を越えることができました。今でも辛い記憶は残っていますが、自分が至らなかったことを反省し、時には人の力を借りることが大切だと学ぶことができたので、今ではいい経験となっています。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
日本語教師を目指すのは、一度社会に出てからでもいいかと思います。ビジネス場面での日本語や就職指導をする機会も必ずあるので、実際に経験していた方が説得力のある指導ができると考えるからです。

また、歳を取っているとそれだけで説得力があるので、教師として有利だと思います。大学生の方なら、在学中に資格だけ取っておいて社会人経験を積んでから、日本語教師に挑戦するのがベストではないでしょうか。

【社会人の方へ】
社会人としての経験は、日本語教師をするうえで強みになると思います。社会人の方は、日本語教師養成講座に通って資格を取るのが一般的だと思いますが、通学型の養成講座を選ぶのが一番かと思います。

オンラインではまかなえない部分も多いですし、実際にそれで通学型に切り替えた方が沢山いました。また養成講座に通う際は、仕事をしながらの資格取得は困難なので、休職もしくは退職なども視野に入れた方が無難です。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

タイなどの発展途上国に渡ることは、少し勇気がいることかもしれません。しかし、住めば都とはよくいったもので、住んでいるうちに文化の違いなどには慣れていきます。一時期、人も気候も食事もタイの全部が嫌いだ!と思ったこともあった私ですが、友人も沢山出来ましたし、今ではタイが大好きです!

日本語教師というお仕事は、正直大変なことの方が多いかもしれません。それでも、生徒たちの笑顔を見たときやレッスンが上手くいったとき、「ありがとう。」と感謝の言葉を聞けたときなどは、どんな苦労も一瞬で吹き飛んでいました。

タイ人は、ときに怠け者だと言われることもありますが、私はまじめで努力家な人が多かったと感じています。常に全力で頑張っていれば、必ず伝わります。そんな生徒のやる気に応えられる先生になってください!

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