元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

イギリスの企業 経験談

社会人学生は、日本に対する知的好奇心が旺盛

公開:2018/08/20
サリー(女性・39歳) 
日本語教師歴 8.4年 (2010年~2018年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程
イギリスの企業
経験詳細
  • 地域:ロンドン
  • 月収:2万円(240英ポンド)
    それだけでは生活は難しい
  • 非常勤講師(コマ/時間勤務)
  • 1.5年(2014年~2016年)
    *現在は退職

夫の仕事で家族で滞在していたロンドンで、現地の政府系団体で2年弱ですが、週1回、日本語を教えていました。これまで、日本で日本語学校での非常勤講師の経験はありましたが、実際に海外で教えた経験は無く、私の日本語教師生活の中では、本当に貴重な経験になりました。

夫の職場にフランス人の同僚(女性)がいたのですが、そのご主人が日本語を勉強したいので先生を探していると聞いたのが発端でした。お話を伺うと、そのご主人はロンドンにある政府系の団体にお勤めなのですが、実は職場に複数名の学習希望者がいるからということで、結局、その団体の非常勤職員として、職員の福利厚生の一環として毎週1回、2時間オフィスの会議室で日本語を教えることになりました。

生徒は常時5,6名、全員初級です。決して職場やそれ以外の場で日本語が求められるような環境ではないにも関わらず、みなそれぞれに「日本のアニメが好き」だったり「日本へ旅行したらとてもよかった」等のプライベートな理由から、日本語を趣味として勉強している方でした。

本業のお仕事に負担がない程度に、でもこの2時間は楽しく日本語が勉強したい、というのがみなさんの要望でした。そんな中、私なりに、この2時間の授業プランを毎週考えるのは大変でもあり、楽しみでもありました。前半の1時間強は教科書(主に『げんき』など)を基本に主にアウトプット(会話)中心の練習、後半の1時間弱はちょっとしたアクティビティを取り入れて飽きのこない授業にしました。

1番思い出深いのは、「筆ペン」を使ったお書初めアクティビティ。初めて見る「筆ペン」がすっかり気に入ってしまい、夢中になって書く練習をしていました。「筆ペン」は現地では調達が難しく、日本の100円ショップで購入したものを日本から送ってもらい、準備しました。勿論、お書初め本来の毛筆とは異なるわけですが、「筆ペン」でのお書初めがこんなに盛り上がるとは、驚きの経験でした。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

全員が社会人なので、とても熱心に勉強していましたが、やはり急な仕事の都合などで、お休みされる方も多かったのは事実です。課題を出しても2,3回お休みが続くと、すっかり忘れてしまうこともしばしばでした。

ある方からは、「1回完結型」のレッスンにしてほしいという要望が出たこともあります。でもさすがにそれでは毎週出席している方が面白くなくなってします。みんなのニーズを満たすように調整しながら試行錯誤の連続でした。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

夫の日本へ帰国が決まったことが、退職の理由です。私としてはもう少し長くロンドンに滞在し、教えてみたいなという気持ちも正直ありました。結局、私の後任は立たず、会社内での日本語レッスンは、現在は行われていないようです。日本語以外にもスペイン語や中国語のレッスンが開講されていたようですが、こちらも同様で、定常的に先生を雇っているわけではないようでした。

給与・待遇

月収 月収:2万円
月収内訳 1コマ120分:約5,000円
基本労働時間 1日1コマ 週1日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 交通費
教育機関が
用意してくれたもの
  • 筆ペン等の授業に必要な用具
  • テキストのコピー
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

イギリスの物価はとても高く、また英ポンドがとても高い時期でもありましたので、日本語教師の非常勤のお給与で、決して生活できる状況ではありません。自分の美容院代くらいにしかなりません。

ただし、一度だけ、交通機関のストライキと重なり大幅な(ほとんど授業ができない程度の)遅刻をしたことがありました。(ロンドンでは地下鉄のストライキが頻繁にあります)日本ですと、非常勤講師は授業ができなければお給料も払われないかと思いますが、こちらでは交通機関のストライキが理由ということで授業分の給与が支払われたのには驚きでした。

この他、政府系団体ということで非常勤職員も、職場で開かれる季節ごとのパーティー等にはご招待いただき、家族で参加させてもらいました。もちろん参加費や飲食代は無料です。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

やはり大学の非常勤講師の給与や待遇と比べてしまうと、いくら日本語学校ではなく民間企業の非常勤職員とはいっても、劣って見えるのは仕方ないかなと思っています。ただし、イギリスの場合は、学習者が少ないので、民間の日本語教育機関の話はほとんど聞きませんでした。仕事の機会としては、プライベートレッスンの方が多いのかなと思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス5人
学習者の年代 社会人
1日の時間割 木曜日
13:30~15:30  
初級クラスを1コマ
休日 月・火・水・金・土・日
一日休めていました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

特にイギリスだからという理由ではありませんが、週1回のお仕事とはいえ、子どもを託児所に預けて働いていましたので、仕事の日に子どもが具合が悪くなることがないよう、子どもの健康には十分に気を付けていました。

特に日本のように病児保育制度があったり、急にシッターさんに連絡して来てもらったりということがフレキシブルにできない環境だったのが大変でした。事前に医療機関にかかり、薬をもらっておくことや、仕事前日は(翌日具合が悪くならないように)保育時間を短くし、早めに家に帰って休ませる等の工夫をしながら、週1勤務をこなしていました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
やさ日チェッカー
ある文章が、どの程度「やさしい」のかを判定してくれます。補足説明等を日本語でする際、これで通じるだろうか、分かりやすいだろうか、を判断するときに使います。
参考になる書籍
おたすけタスク初級日本語クラスのための文型別タスク集    
対象者:初級
基本的な初級文型を扱った授業の最後に、その文型を使用してどんな活動ができるか、という活動事例が盛り込まれているので便利です。2人でできる活動から、10人前後でできる活動まで幅広く取り上げています。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

手元に『みんなの日本語」『げんき』の2冊だけは持っていたので、初級の日本語を教えるという話があった時に、すぐにスタートできたのは心強かったです。現地でも購入はできますが、日本語のテキストはお値段も2倍から3倍で高額です。

日本から持っていけばよかったのは、例えば100円ショップの面白グッズ(なんでもいいと思いますが、例えばゆで卵を作る時に一緒に入れると色が変わって半熟たまごの出来上がりを知らせてくれるアイテム等)ちょっとした時に日本の面白いものを紹介できるアイテムがあると便利です。

就職活動

国選びで重視した点 家族の駐在
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 通勤時間
  • 学習者が社会人
応募時に
必要とされた資格
選考方法 面接
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日本語の需要は、大学の日本語学科などを除き、かなり限定的だと思います。町中には中国語の語学学校はよく見かけましたが、日本語学校はほとんどありません。ただ、現地(イギリス人)と限定しなければ、案外、イギリス在住の別の国の方で、日本語を勉強したいと思っている人は、多いのではないかなと思っています

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

ロンドンに駐在している経緯、家族のこと、日本在住時の経歴や職歴、(大学院を休学していたので)研究内容などを聞かれました。特別に難しい質問や、日本語の知識を試すような質問は一切ありませんでした。ただし、英会話力は見られているような気がしました。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

何といっても英語力です。いくら直説法で教えるといっても、ゼロ初級の人には、やはり英語を使って補いながら授業を進めていかなければいけませんので。日常会話は勿論ですが、その日扱うトピックや文型についても英語で補足説明が十分にできる必要があります。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
国際交流基金ロンドン文化センター
イギリス全土の日本語教師関係の求人が掲載されている
その他求人情報
各大学の国際交流室:ロンドンの各大学の国際交流室には、日本語チューターを募集の求人が貼ってあります。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

主人の職場の同僚の家族に、日本語を勉強したい方がいると聞いたのがきっかけです。正直、プライベートレッスンならばお断りしようかと思っていましたが、職場に複数名の受講希望者がおり、福利厚生の一環として日本語クラスを開講したいというお話でしたので引き受けました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

元々、外国語の勉強が大好きで、大学時代は英語や中国語を勉強していました。民間企業のOLを得て、結婚・出産後、ライフスタイルの変化に応じて、柔軟に働くことができる、かつこれまでの外国語の勉強暦も生かすことのできる日本語教師の職に魅力を感じ、飛び込んでみました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

生徒さんから、「日本の旅行に行くから、そのスケジュールを立てたい」と相談を受け、旅行のプランニングそのものを、授業内容として扱いました。「美味しいラーメンが食べたい」「富士山はどこで見るのがいいか」等、ユニークなトピックがたくさん出てきましたが、旅行を終えてイギリスに戻った後、日本への旅行がとても楽しかったことや授業が役立ったことを感謝され、嬉しく思いました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
まずは、一般企業に就職して社会人経験を積みながら、やはり日本語教師の夢があきらめきれないと感じたら、働きながら日本語教育能力検定試験や、420時間講座で資格を先に取得してみてはどうでしょうか。日本語学校に就職するにも、企業での社会人経験は、非常に高く評価されます。

【社会人の方へ】
もし、時間的に、また金銭的に許されるのならば、大学院へ行くことを強くおススメします。日本語教育学の修士号があると、日本語学校だけでなく、大学などの高等教育機関で職を探すことができますし、海外で教える機会もぐっと増えます。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

日本語教師として働くのに定年はありません。本当に好きな仕事を長く続ける場があるのは有難いことだなと思って、海外でも日本でも仕事を続けています。教室では常に新しい出会いがあるので飽きることがありませんし、教育内容も自身の知識が深まるほど、「もっとこういう授業がしてみたい」という気持ちが自然に湧いてきます。いい教師が増えることで、世界の日本語学習者が増えることを願っています。

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