元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

タイの日本語学校 経験談

気さくで素直な生徒さんが多い

公開:2016/08/15

パクチー(女性・39歳) 
日本語教師歴 2.8年 (2013年~2016年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(アークアカデミー)
タイの日本語学校
経験詳細
  • 地域:バンコク郊外
  • 月収:64,000円(20,000バーツ)
    現地で生活をするのに十分
  • 専任講師(正規雇用)
  • 1年(2013年~ 2014年)
    *現在は退職

この国の人の気質は大まかに言うと、大らか、大雑把、時間にルーズ、他人にも自分にも寛容、日本人とは正反対の部分が多いという印象でした。

生徒さんが授業に遅刻するのは日常茶飯事。学校のスタッフが遅刻し学校が開いていないこともありました。

理解できず戸惑うこともありましたが、人に寛容、細かいことを気にし過ぎないところなど、自分も見習いたい部分もありました。

気さくで人懐っこい人も多く、和やかな雰囲気で授業ができたり、昼休みに一緒にご飯を食べようと誘ってくれたり、生徒さん達の人柄に支えられていたところも大きいです。

生徒の皆さんとは良い関係を築け、日本語教師になって良かったと実感しています。

ただ、とても残念だったことは、赴任先の学校が、良い学校だと思えなかったことです。給料や休日などの待遇面では不満はありませんでしたが、学校の運営の仕方が納得できませんでした。

学校の利益優先で、生徒さんに不利益を被るようなやり方だったので、何度も抗議し改善を試みましたが、叶いませんでした。意見に耳を傾ける、他人を尊重する姿勢を持ってもらいたかったです。

学校については良い印象はあまりありませんが、日々の授業には良い思い出がたくさんあります。

出会った時は一言も日本語を知らなかった生徒さんが、クラスの最終日には、日本語で自分の言葉でメッセージをくれたこと。生徒さんが職場の日本人と会話したと喜んで報告してくれたこと。


クラスの最終日に記念撮影


「ありがとう」など書かれていました

たくさんの感動をもらい、日本語教師になって良かったと何度も思いました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

私が受け持った生徒さんは、ほとんどが会社員の方でした。長時間の授業や、仕事の後に受けられる授業の場合、眠くなって集中できない方もいました。

また、会社が授業料を払い会社から勉強させられていてモチベーションの低い方もいました。

そのような方にも、しっかり授業に参加してもらう為に、興味のある話題で発話を促したり、文字を使ったゲームを取り入れたりして、授業が単調にならないように心がけていました。


使用教材は、みんなの日本語タイ版です

日本から持ってきた小袋入りの飴やチョコレートなど、安い小さな物でも、ゲームの景品にすると喜んでくれました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

地域の人々や生徒さん達は皆良い人ばかりでしたが、学校の運営の仕方が納得できませんでした。

グループレッスンの場合、先にレベルチェックをしてレベルに合ったクラスに入ってもらうのが通常です。しかしその学校では、グループの人数集めの為に明らかにレベルの違う人達を1つのクラスにすることもありました。

また通常は50時間で終えるような内容を100時間かけて教えるようなカリキュラムもありました。学校の利益優先で生徒さんのことが全く考えられていませんでした。

何度も抗議しましたが、聞き入れてもらえず。本当に悔しかったです。

このような学校は稀だと思いますが。幸い私の後任に経験豊富な方が見つかったとのことでしたので、契約更新せず退職しました。

給与・待遇

月収 月収:64,000円
月収内訳 基本給:64,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    48,000円(15,000バーツ)
  • 最低限必要な月収
    38,000円(12,000バーツ)
基本労働時間 1日7時間 週6日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 保険(社会保険。指定病院にて無料受診できる)
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

基本給が20,000バーツで、住居費は自己負担でした。アパートの家賃(ワンルーム、エアコン、家具、冷蔵庫、WIFI有り)が4,800バーツ、光熱費約500バーツ、自分で契約した携帯電話月々約400バーツ。

現地の物価は、麺類ご飯物など1皿40バーツぐらい、文具や日用品などは日本と同じぐらいか少し安いぐらい。 旅行や大きな買い物、贅沢な外食などせず、生活するだけであれば、月20,000バーツでやっていけると思います。

住んでいる環境によるところも大きいと思います。私の住んでいた地域は少し田舎だったので、娯楽や買い物する所も少なく、あまりお金を使いませんでした。

もし都会に住んでいれば、いつでも便利に買い物や外食ができるので出費が多く、この給与では足りないと感じていたかもしれません。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

給与は、だいたい20,000バーツぐらいの所が多いようですが、プラス住居費支給がある、週休2日か1日、渡航費ビザ申請費自己負担など、学校によってかなり変わってきます。

私のいた学校では、その時々の需要によって休みが削られたり増えたり変動がありましたが、1日の拘束時間が短かったので、その割には良い給与だったと思います。

大学や高校は土日祝日が休みで、夏休みなど長期休暇の日程も決まっているので、予定が立てやすいと思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス 3 - 6人
  • プライベートレッスン
  • 企業研修
学習者の年代 社会人
1日の時間割
  • 9:00~12:00  
    企業研修
  • 空き時間  
    拘束なし 授業準備など自由に使える
  • 15:00~16:00  
    プライベートレッスン
  • 空き時間  
    拘束なし 学校の雑務などがあれば対応する
  • 18:00~20:00  
    初級クラス
休日 週1日と祭日
*繁忙期で1ヶ月ほど休みがない時や、閑散期で週2.3日休みがある時など 変動がありました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

赴任先の学校は、忙しいときは1ヶ月休みがなかったり、暇なときは週2.3日休みがあったりと、スケジュールの変動が多かったです。

なお赴任当初、授業のスケジュールが詰まっていて十分な準備の時間が取れませんでした。そこで練習問題や宿題など、日本語教育関連のウェブサイトのものを利用したりしました。

その後は余裕のある時にストックを作っておくようにしました。テストや宿題など、沢山あるに越したことはないと思います。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
日本語教師のN2et   
みんな日本語初級の教案や中級の文型、お勧めの書籍 など詳しく丁寧に書かれています。経験に基づいたアドバイスも、教案や教材を作る際、非常に役立ちます。
参考になる書籍
みんなの日本語初級Ⅰ 初版 教え方の手引き   
対象者:初級
みんなの日本語1-13課までの指導手順。教師初心者でも指導できるように詳しく解説されています。教案作りの際参考にしています。
みんなの日本語初級Ⅱ 初版 教え方の手引き   
対象者:初級・中級
みんなの日本語14-25課までの指導手順。
教案作りの際参考にしています。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

授業でスーパーの食品売り場の写真を見せた時、「マンゴーが1つ300円!?この国では50円ですよ!」と皆驚いていました。道路を走る車の写真や、駅の駐輪場の写真なども、マナーの良さに感心し興味を示していました。

観光地の写真も喜んで見てくれましたが、日常の生活に関心がある生徒さんも多かったです。生活に密着した写真をもっと色々撮っておけば、各課の話題の中で活用できたと思います。

日本の紙幣と硬貨を全種類用意して授業の中で使いましたが、皆初めて見る日本のお金に興味津々で楽しんでくれました。

店のチラシや旅行のパンフレットなど、現地で手に入らない生の教材も、もっと日本から持ってくれば良かったと思いました。

就職活動

国選びで重視した点
  • 親日国
  • 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 必須資格
応募時に
必要とされた資格
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

この地域では、日系企業が多く進出しており、日本に興味を持っている人が多かったです。私が受け持った生徒さんも、ほとんどが日系企業で働く会社員の方達でした。


学校から会社へ派遣される事もありました

職場で日本語を使えるようになりたくて自ら勉強に来られている方や、日本へ研修で派遣される前に日本語を勉強している方など、皆さん仕事のために日本語を勉強されていました。

日本語ができる人材を求めている会社も多く、まだまだ不足しているという印象を受けました。今後も日本語教育の需要はあると思います。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

ほとんどの学校で四年制大学卒業以上が採用の条件になっています。私の場合、日本語教育と関係のない学科卒でしたが特に問題視されませんでした。

四大卒プラス養成講座420時間修了で採用されました。大学で働きたい方の場合は、日本語教育学科や日本文学科卒、大学院卒であれば尚良いと思います。

語学レベルは、現地語はできなくても日常会話程度の英語ができないと、スタッフとの業務連絡など苦労すると思います。

私の赴任先は日本人が自分一人で、最初は現地語もわからなかったので、スタッフとは日常会話レベルの英語で何とかやりとりしていました。現地語は徐々に覚えました。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • 日本語教師の集い
    国内、海外の日本語教師求人を多数掲載
  • 日本村
    国内、海外の日本語教師求人を多数掲載
    都道府県、国ごとに検索できる
その他求人情報
日本の人材斡旋業者:学校と応募者の間に業者が入り、採用までサポートしてくれる。採用が決まれば、料金を業者に支払うシステム。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

未経験者でも応募可能な求人が少なく年齢制限などもあり、なかなか仕事が見つからなかったので、人材斡旋業者に問い合わせ、学校を紹介していただきました。

都市部と違い、田舎の方は応募する人があまりいないので、応募条件のハードルは低く採用されやすいと思います。
私の場合は、都会より田舎に興味があり、給料や勤務条件なども納得のいくものだったので働かせていただくことになりました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

仕事で日本に来ている外国人や留学生と知り合う機会があり、時々日本語を教えていました。

どうやって説明したら良いのかわからないことも多く、日本語を教えることの難しさを知り、日本語教師の仕事に興味を持つようになりました。

立派に日本で生計を立てている外国の友人達と関わる中で、自分も海外で働きたい、挑戦してみたいという思いも湧いてきました。

そういう思いもありつつ、長い間他の仕事に就いていましたが、家庭や周りの状況など、行動できる条件が整ったので、思い切って海外での日本語教師に挑戦してみました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

特に海外で日本語教師をして良かったと思うことは、日本と異なる生活習慣や文化、色々な考え方や価値観を知り、視野が広がったことです。

また、この国の視点から日本を観察することで、日本人のマナーの良さや思慮深さ、社会のシステム等、改めて日本の素晴らしさに気づくこともできました。

それらを伝えることも日本語教師としての役割であると考え、授業の中でも、ゴミの捨て方や人との接し方などエピソードを交え、日本の社会や日本人の性質などを紹介するようにしていました。

多くの生徒さんは感心し、見習いたい、などと理解を示してくれました。

そのような時には、日本語教師になって良かったと心から思いました。彼らの考えや世界を広げる役に立つかもしれない、日本語教師は私にとって本当に魅力のある仕事です。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

ありません。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
これから大学を選ばれる方は、日本語教育学科や国文学科に進まれた方が、就職の際、応募できる選択肢が広がると思います。大学の日本語教師など、そのような条件を挙げているところもありますので。

また大学卒業後すぐに日本語教師になる道もあると思いますが、会社に就職し社会経験を積んでから、日本語教師を目指しても決して遅くはないと思います。会社員の方への授業など、社会人としての経験が役に立ちます。

【社会人の方へ】
日本語教師養成講座の受講は強くお勧めします。

私が講座を受講していた学校では、働きながら土日だけ受講して無事に修了されている方もいました。

養成講座では実践的な内容が学べますし、経験豊富な先生から現場の体験談も聞けますので、是非とも受講された方が良いと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

赴任当初は、知らない土地で言葉もあまり通じず、やっていけるだろうかと不安でいっぱいでした。

人の気質も習慣も違うし、戸惑うことも色々ありましたが、周りの人々に助けられ自分自身も新しい事を吸収し、環境に馴染んでいくことができました。

日本語教師を目指す方は授業に対する不安も大きいと思います。私も初めての授業は物凄く緊張しましたが、回を重ねる毎に落ち着いてできるようになりました。

また、自分のやり方で大丈夫なのかという不安もありましたが、アンケートで生徒さんの声を聞くことにより、授業を見直し改善していくこともできました。

最初は上手くできなくても、人の意見を聞き、自省し、日々成長していけばよいと思います。

それに、この国の人は気さくで親切な人が多いので、次第に打ち解け、楽しく授業ができるようになると思います。

この国が好きな人、興味がある人なら、経験がなくても言葉がわからなくても、新しい環境に飛び込む勇気と日本語教師としての熱意があれば、やっていけると思います。

 

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