元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

タイの大学 経験談

自分にも学びがあるタイの大学の日本語教師

公開:2018/08/22

マサ先生(男性・36歳) 
日本語教師歴 3年 (2013年~2016年)
*フリーランスになる
資格・課程
タイの大学
経験詳細
  • 地域:バンコク
  • 月収:10万円(3万2000バーツ)
    なんとか生活できる
  • 専任講師(正規雇用)
  • 3年(2013年~2016年)
    *現在は退職

タイの首都バンコクの国立大学で日本語教師をしていた私の体験談です。日本語教師をこれから目指す方に現地での仕事のやりがい、生活面、大変なところをお伝えします。

主に日本語を教えることはタイの国立大学でも日本の日本語学校でも変わりません。しかし違うところもたくさんあります。

例えば日本の学校は外国から日本にやってきた色々な国の外国人が生徒になります。しかし海外の教育機関では仕事をする国の学生だけです。私の場合はタイの大学でしたから教える学生はタイ人だけでした。ですから文法はタイ人がタイ語で教え、会話は日本人が分担して教えることが多かったです。

日本の学校なら外国人を受け入れる側です。しかしタイの場合は私は受け入れられる側です。ですから一方的に日本語を教えるだけではなく現地でタイの文化を学生から教わることも多かったです。

学校の中ではタイ人が日常的に日本語を話す機会が増えるように、できるだけ外国人教師である日本人は日本語を学生に話すことが求められました。しかし、それ以外の事務手続き等は英語やタイ語を使ったやりとりが必要になることもあります。

日本の学校よりも海外の現地の文化や慣習を勉強することができるので日本語を教えるだけではなく海外の文化も現地で積極的に吸収したい・学びたい人には良い環境です。

私は初めて大学を訪問した時、タイ人の学生から「ワイ」と呼ばれる手を合わせた挨拶を笑顔でされました。手を合わせられると恐縮する反面、頑張らないと!と当時、思いました。

生活面についてはタイ人の一般的な公務員の初任給よりはいただけました。タイで日本の生活をそのままもってこようとすると赤字になることもあると思いますがタイ人の一般的な生活レベルで暮らせば十分だとも思います。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

大学だったので「みんなの日本語」だけでなく文化や観光、工業、歴史といった大学ならではの科目を受け持つことも多かったです。

日本語の直接法で観光や工業等を教える方法は日本語教師養成講座では、あまり 学ばないところなので自分で何をどう教えるか考えるのが大変でした。また教材を集めるのも日本より大変だったので使えそうなデータや教材は日本から持っていくと良いと思います。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

大学の仕事自体は楽しいし満足していましたが現地で日本人の女性と婚約し結婚するために帰国することになりました。

結婚するとなると相手のこともあるので海外でずっと働くのが難しいと思ったので帰国という選択肢をとりましたが今でも当時の教え子が日本にやって来て私の住んでいるところまで遊びに来てくれます。

私は、とてもいい思い出を残せて大学を去ることができたので辞めはしましたが良い経験をさせていただいたと思っています。

給与・待遇

月収 月収:10万円
月収内訳
  • 基本給:8万3000円
  • 住宅手当:2万7000円
基本労働時間 1日8時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇
  • 有給休暇
  • 保険(医療保険)
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 夏休み:30日
クラスの長期休暇中の
給与保証
  • その教育機関で給与が発生する仕事がある
  • 仕事はないが、給料は支給される

給与・待遇面ですが一般的なタイの公務員に準ずる額+家賃補助という名目で30000B前後からスタート
することが多いです。

参考までに挙げておくとタイ人教師は修士卒でも20000B前半ぐらいからスタートするのが一般的なようです。大卒の一般的なタイ人の新卒給よりも高いので現地で暮らせないことはないと思います。

ただ日本の民間企業の現地採用だと労働省の管轄で最低賃金50000B程度はもらえるので、タイに住んでいる日本人同士で比べてしまうとお給料が相対的に安いのは否めません。日本での暮らしをタイに持ち込もうとするとお金がかかるし赤字になるかもしれません。

しかしタイ人と同じ目線で同じ暮らしをする分には困ることもないと思います。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

給与面・待遇面については公的機関も民間の日本語学校も大差ないと思います。ただ民間の日本語学校の方が講義数が多いこと、「みんなの日本語」を使った指導が多くなると思います。

大学ですと直接的な日本語の指導以外の観光や文化といった大学特有の教える科目を受けもつことも多いと思います。現地の教育機関は各学校ごとにカラーがあるので面接する時は良く話し合っておけばミスマッチは少なくなると思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス30人
学習者の年代 大学生
1日の時間割 月曜日
  • 8:30~12:30  
    初級クラス1コマ (1コマで3〜4時間程度)
火曜日
  • 12:30~16:30  
    ビジネス日本語
水曜日
  • 教材研究・準備の日でフリー
木曜日
  • 8:30~12:30  
    観光日本語
金曜日
  • 12:30~16:30  
    日本史
休日
  • 土曜日:休めていました。ただ、たまにタイの日本語教育勉強会に参加することが推奨されていました。
  • 日曜日:一日、休めていました。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

1回の講義が長く(180分〜240分)、長い講義時間を如何に学生を飽きさせずに勉強してもらうかを意識した講義づくりをしていました。そのため一つの講義にかかる教材研究の時間が長くなりがちでした。

なるべく予定を前倒しして早めに2週先・3週先の教材をつくり先の見通しをたてながら教材づくりをしていました。

早めに先の講義の教材を作っておけば現在進行中の講義で学生からの反応や苦手なところを踏まえた資料や内容を反映させる余裕が生まれます。早めに講義の準備をしながら現在進行中の講義の反応を踏まえた実態に応じた教材をつくりやすくなると思います。

先を見通しつつ早め早めにタスクをこなしていくと余裕が生まれ、いい講義をできる精神的な余裕も生まれるのではないでしょうか。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • 東外大言語モジュール
    みんなの日本語に沿って教えるだけでは、飽きがきてしまうので参考にすることがありました。
  • 国際交流基金-日本語教育
    最近の日本語教育の動向を知るには国際交流基金の発信情報はチェックした方が良いと思います。日本語指導そのものよりも他の科目を教える時に参考にすることもありました。
参考になる書籍

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

サブのパソコンや周辺機器を持っていくと安心だと思います。タイでは輸入品は高いためパソコンも安くないです。キーボードも日本語ではなくタイ語キーボードです。タイでもパソコンは買えますが少し不便かもしれません。

また日本語関連の教材はバンコクの日系大型書店でも買えますが、日本よりも割高なのでよく使う教材はなるべく日本で買って持っていった方が安心だと思います。郵送で日本から送ってもらおうとすると税関で止められて荷物を受け取るのに余分なお金を払わないといけないこともあるようです。

就職活動

国選びで重視した点
  • 親日国
  • 渡航経験があった
現地における
日本語教師の需要
  • 人気があり、一定数の学校で求められている
  • 今は人手不足で海外にわざわざ出ようとする日本人も減っているのでタイ現地では人が足りていないとよく聞きます
教育機関選びで
重視した点
  • 通勤時間
  • 学習者が学生
応募時に
必要とされた資格
選考方法 面接
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

タイは親日国で昔から日系企業が数多く進出しているので日本語が話せる人材の需要は一定数あると思います。例えば旅行代理店や生産拠点をタイに持っている工場や外食等。日本にいくというよりはタイ現地にある日系企業に就職する人が多いです。それに伴い日本語教育需要も一定数あると思います。

ただ最近は日本語が話せる以外にも別の特技やスキルが求められることも増えてきました。ただ日本語が話せる以外のスキルを磨くことも大切だと思います。よく大学に日系企業就職フェアのブースを誘致していました。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

  • どうしてタイで日本語を教えようと思いましたか?
  • 大学院を出ていないようですが本当に日本語を教えることができますか?
  • 日本語をタイ人に教える情熱はありますか?
  • みんなの日本語第8課をどう教えますか?
  • 学生との課外活動に積極的に参加できますか?
  • 周りと協力して仕事をすることができますか?
  • 外部の勉強会に積極的に参加することができますか?
  • 研究を積極的にして学会で発表することができますか?

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

小学校の教員免許をもっていたこと、国語指導の経験があったこと、学級担任をもっていたことが評価されました。やはり何か教えていた経験や学級運営をしていた経験等があると評価されやすいと思います。

タイの大学では日本語教育専攻の修士卒以上が有利です。軍事政権に変わってから学位重視になり院卒が採用されやすくなっています。ただ大学でも日本語の副専攻を受けもつ場合等は学士でも特に問題がないようです。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • 日本語教育学会
    国内外の大学の求人が多い。しかし民間の学校の求人掲載も増えてきています。
  • 日本村
    日本語教師の有名な求人サイトの一つ。民間の学校中心ですが公的な機関の求人掲載も多いです。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

知り合いからスカウトされました。タイに住んでいた頃の知り合いが大学に採用され、教職経験もある私に話をもってきてくれたのがきっかけです。ご縁があったので現地の大学の学部長のもとに行き面接をして内定しました。国内の小学校だけでなく他の国で他の人種・世代に私のやり方が通用するのか試してみたかった思いもあり仕事を引き受けました。

日本語教師に関する全般の質

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

実は私は日本語教師を目指していたことはなくて日本の小学校で教えていた経験しかありませんでした。

しかし大学で教える機会に恵まれたので内定をいただいた後に資格を取りに行きました。私の場合、必要に迫られて資格を後からとることになったわけです。しかし、小学校で指導をしていた経験がいかせたので比較的スムーズに資格をとることができました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

日本語が苦手な学生が笑顔で日本語で話しかけてくれるようになった時が嬉しかったです。

日々の授業で学生が成長していく姿を見るのが楽しかったです。また笑顔で廊下を歩いているときに声をかけてくれたり信頼関係が築けたと思えた時はやっていてよかったと思いました。

また、帰国した後もわざわざ私が住んでいる石川県に学生が遊びに来てくれた時は、お金では買えない信頼関係を得ることができてよかったと思えました。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

やりきったという思いがありました。しかし大学の場合は研究もしなければならず日本語教育は楽しかったのですが日本語の文法の研究等に自分の一生を捧げるよりは新しいことをしたいと思いました。

日本国内の日本語学校で働く選択肢もありましたが民間の日本語学校にはあまり興味がありませんでした。

アルバイトで忙しくてなかなか授業に集中できない学生も国内には多く私には海外の教育機関の方があっていると思いました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
民間の日本語学校で働きたい方は新卒でいきなり日本語教師になるよりは会社に一度入って社会人経験を積んだ方がいい気がします。日本語学校では日本語を教えるだけではなく日本のビジネスマナーを教える機会も多いからです。また、いきなり日本語教師になってしまうと他業種への転職が難しくなる気がします。社会人経験を経た上で養成講座に通うか日本語教育能力検定に合格するのが良いのではないでしょうか。

大学で研究者になりたい、大学で日本語教師をしたい人は日本語教育専攻の学部・大学院に行くことをおすすめします。最近は海外でも修士以上で且つ日本語関連の分野を専攻した人が大学では採用されやすいからです。

【社会人の方へ】
お金と時間がなければ日本語教育能力検定をとり、時間とお金に余裕があれば養成講座を受講するのが良いと思います。しかし、最近では検定合格も420時間も両方もっている方が採用に結びつきやすいので長く日本語教師で働きたい人は最終的には両方必要になると思います。

また何かを教えた経験がない場合は授業をすること自体が難しいかもしれませんので養成講座にいくことをお勧めします。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

日本語教師は仕事そのものは楽しいと思います。外国人と関わりながら異文化交流もできますし学生との関係が良好ならば良い思い出もたくさんつくれると思います。

しかし現実的にお給料はそんなに高くないです。また国内の日本語学校に通う留学生はアルバイトに明け暮れ学校では疲れてしまって、せっかく教材準備をしたのに全然、話を聞いてくれないといった悩みを抱えている方も多いです。中には外国人留学生を見るのも辛くなってしまう先生もいます。決して楽しいことばかりではないと思います。

それでも外国人に日本を好きになってほしい、せっかく日本に来てくれたのだから留学生には良い思い出を残して欲しい、そんな情熱を持ち続けることができる人が日本語教師を続けられると思います。

ただ、外国人に日本語を教えてみたい・・・というだけでしたら長く続けることは難しいのですが留学生の視点で物事を考え指導に情熱が持てる人には日本語教師は良い仕事ではないでしょうか。

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