元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

中国の日本語学校 経験談

苦労も吹き飛ぶ、学生の成長がやりがい

公開:2017/05/19

masa雅(男性・48歳) 
日本語教師歴 7年 (2010年~2017年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程
中国の日本語学校
経験詳細
  • 地域:天津
  • 月収:75,000円(5,000元)
    現地で生活をするのに十分
  • 専任講師(正規雇用)
  • 2年(2010年~2012年)
    *現在は退職

私は、2年間、中国・天津で日本語教師をしておりました。

日本語教師を志したきっかけは、40歳目前に人生残り半分をどう過ごすかを考えた折に、海外生活を経験してみたいということからでした。そこで、ヒューマンアカデミーで日本語教師養成講座を受講。その修了時に、同じくヒューマンアカデミーが運営する中国・天津の日本語学校の求人があり、赴任に至りました。

学生の大半は10~20代です。日本のアニメやドラマ・音楽等から、とても日本語に興味を持っています。ただ、そこは若者。教科書をなぞったような授業をすると、だれてしまいます。


万国共通!?不真面目くんたちは後ろの席

そこで、私は俳優の経験を活かし、演技レッスン法を取り入れた授業を行いました。


時には演技も取り入れて授業を展開

笑顔や無表情、仕草などによっても相手の受け取り方が違ってきます。ただ単に、日本「語」を覚え、使うだけでは、本来のコミュニケーションのために使うべき「言葉」として機能しません。いかに覚えた言葉で、よりよいコミュニケーションを取り、人生に活かしていけるかを考え授業を行っておりました。

しかし、赴任当初は授業準備が大変です。初級であれば、50課。それを一周するまでの3ヶ月間が肝です。3コマ3時間として、その2倍の時間は費やします。その基礎準備が出来上がって、ようやく前述したような教案を組み立てられるようになってきます。この3ヶ月間は苦労しましたが、先輩教師に多くのアドバイスをいただき、また、シフトや休日なども考慮いただき、とても助かりました。

生活レベルは、現地生活を不自由なく過ごせる待遇はありました。給与は現地で平均的な5,000元/月(75,000円)と、日本円に置き換えると少なく感じますが、住居費付与、食費物価は日本の1/3程度で、貯金ができるほどでした。


給与は現金で受け取り。厚みに驚きます


給与明細が細長く中国ならでは

様々な苦労もありましたが、修了後、数年後に学生と会うと、成長した姿がとても誇らしく、微笑ましく感じます。
これこそが日本語教師のやりがいです。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

優秀な学生ほど、語学としての日本語を習おうとしてしまいがちです(これは、日本の英語教育とも等しいと思いますが)。そんな学生に、ネイティブ教師の授業では、いかに使わせるか、話させるか、さらに、日本語を使って、よりよいコミュニケーションが取れるようになれるかを教えることが重要になってきます。

しかし、優秀な学生ほどまじめなため、話すこと(声に出すこと)を戸惑ってしまいます。自然と発話を促していくように教案を考えることが必要です。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

辞めた理由は、単純に契約期間が満了したためです。1年契約を一度更新し、計2年間勤めました。その後も、継続可能な状況ではありましたが、やはり中国に来たからには、首都である「北京」で活動をいたしたく、退職にいたりました。

給与・待遇

月収 月収:75,000円
月収内訳
  • 基本給:42,000円
  • 家賃:30,000円
  • 交通費:3,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    75,000円(5,000元)
  • 最低限必要な月収
    75,000円(5,000元)
基本労働時間 1日8時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 残業なし(赴任当初の授業準備に費やす時間は、残業として換算せず。プロとして、能力不足なだけのため)
待遇
  • 残業代
  • 有給
  • 交通費
教育機関が
用意してくれたもの
  • 住居提供
  • ビザ申請費用
  • 日本との往復航空券(年1回分)
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

中国は、住居価格が高騰しており、大半の支出は家賃になります。しかし、大半の日本語学校では、家賃全額付与ないし寮完備(無料)のところが多く、給与の手取りが少なくても食費が安いため、普通の生活を送ることは可能です。


18Fの高層で夜景もきれいでした!

  • 家賃支払いありの場合:5,000元
  • 家賃全額付与または寮完備の場合:3,000元

というのが、現地で日本語教師を雇う際の一般的な給与目安になっております。

つまり、これが雇用主からすれば、「十分に生活が出来る」という給与設定なのでしょうし、ようはそれで、「何とか生活を送ることが出来る」と見積もっているということだと思います。

この給与でも、現地生活のなかで「十分に生活が出来る」人なら楽しめるでしょうし、「何とか生活を送ることが出来る」レベルだと感じてしまう人もいるでしょうし。

これで、「何とか生活を送ることが出来ない」人は、途中で辞めてしまう人もいるでしょう。

例えば、私の場合は、家賃全額付与で、5,000元(75,000円)の給与でしたが、食費は、朝10元(150円)、昼15元(225円)、夜20元(300円)、ジュース等5元(75円)=1日50元(750円)×30日=1,500元(22,500円)、他遊興費・諸雑費等として1,000元(15,000円)を使っても、給与の半分の2,500元(37,500円)は貯金ができておりました。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

民間学校は、大体同じ待遇・条件です。大学になると、寮完備(無料)で、3,000元(45,000円)の給与というところが多いらしいですが、大学の場合は、食費も支給(学食にて)のため、例えば、遊興費・諸雑費等として1,000元(15,000円)を使っても、2,000元(35,000円)は貯金やその他に使えるレベルだと思います。

現地でお勧めする日本語教師の勤務先(教育機関)は、特にありません。自分がそこで働いておらず、「お勧め」するまでの根拠がないためです。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス20人
  • プライベートレッスン
  • 企業研修
  • 高専:高校卒業資格が取れ且つ日本語教育をしていた学校 ※赴任時の終盤に廃校
学習者の年代
  • 中学生
  • 高校生(高専)
  • 大学生(通常のクラス授業、プライベートレッスン)
  • 社会人(通常のクラス授業、プライベートレッスン、企業研修)
1日の時間割 月曜日
  • 9:00~12:30  
    初級クラスを3コマ
  • 午後(授業準備等。慣れてくると自宅でも可)
火曜日
  • 9:00~12:30  
    中級クラスを3コマ
  • 午後(授業準備等。慣れてくると自宅でも可)
木曜日
  • 18:00~21:30  
    初級クラスを3コマ
金曜日
  • 13:00~16:30  
    初級クラスを3コマ
  • 18:00~21:30  
    企業研修を3コマ
日曜日
  • 9:00~12:30  
    初級クラスを3コマ
  • 13:00~16:30  
    中級クラスを3コマ
休日 水・土
流動的である

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

多い時は、10クラスが同時進行で開講され、4名いた日本語教員がシフトで入りますが、クラス毎の授業進度が違うため、各課目の準備をしないとなりません。

また、他の教師がおこなっていた事前の授業が、こちらが準備していた課目まで到達せず、戻ったところから進めないとならない場合もあります。進行表に記入し引き継ぐのですが、それでは追いつかないため、予定通りに進行しなかった場合は、即連絡を取り合い対処していました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
  • みんなの教材サイト
    文法項目別に授業進行案があり、その時々に使う写真・イラスト集などもあるので、それを参考に教案に使用していました。
  • エリンが挑戦!にほんごできます。
    日本の一般的な学校風景や住居風景などを基に進行しているドラマがあるので、それを参考教材にしていました。
参考になる書籍

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

日本の普通の生活における物をたくさん準備しておくとよいと思いました。例えば、スーパーのチラシや、雑誌、バイト誌、一般生活写真など。

前述紹介のサイトや教材の写真やイラストもよいのですが、やはり教材のため、「教材風」は否めません。その点、一般的な物のほうが、若い学生たちは興味を引きます。特に、授業がだれている時などは、目の色が変わるのがわかるため、再び授業に集中させる時にも役立ちます。

就職活動

国選びで重視した点
  • 日本との距離
  • 紹介だったため、特になかったというのが実情です。
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 紹介だったため特になかったが、初渡航・初海外生活でしたので、スタッフさんが、ビザ取得や住居の手配など、親切丁寧に進めてくれたところが安心でした。
応募時に
必要とされた資格
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

反日としてマスコミ等で取り上げられる中国ですが、学生の大半である若者には、特に反日的感情はありません。それよりも、アニメ・ドラマ・映画・音楽・食・観光など、日本に興味を持っている若者たちが多くいます。

ただし、教育機関自体が、政治・政府の動向をどうしても鑑みなければならず、積極的に日本語学習を教科目にできない事情もあるように感じます。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

職歴は、特に職種に関わらず、幅広く経験されているほうが強みになると思います。

私の場合は、俳優経験がありましたので、演技レッスンを応用して授業をしていました。例えば、初級第一課で習う「こんにちは」。無表情と笑顔で発した時の差、大きな声と小さな声の差、好きな人と嫌いな人に言う時の差。相手に伝わる印象が全く違います。言葉は「覚えて話す」ことが重要なのではなく、相手に伝わるかが大事です。

特に、日本人は挨拶を大事にします。合わせて、おじぎなどの所作・文化も含めて教えることが、日本「語」教師とはいえ、必要だと思い教授しております。このような「活きた」授業に学生は興味を持ちます。

また、現地の言葉は極力覚えないほうがよいと思います。ある程度、語学力を持ってしまうと、どうしても授業で困った時になど、現地語で説明してしまいます。そのほうが目の前の進行はスムーズになるのですが、ネイティブ教師の意義がなくなってしまいます。

海外で教える場合は、ティーチャートークが大事です。学生の多くは、目の前にいる教師が初めて接する日本人。教科書に沿った内容を教えるだけではなく、生の日本語に多く触れさせることが大事だと思います。学生のレベル(語彙・文法など)に合わせたティーチャートークを心がけるのは大変ですが、授業中に話しているネイティブ教師の日本語が学生にとっては勉強になるものです。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

その他求人情報
ヒューマンアカデミー:学校の掲示板や求人情報ファイルがおいてありました。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

私の場合は、ヒューマンアカデミーで日本語教師養成講座を受け、その修了時に、同じくヒューマンアカデミーが運営する中国・天津の日本語学校の求人があり、ある意味エスカレーター式で勤務するに至りました。

中国は、初渡航・初海外生活でしたが、それまでに関係値があった、ヒューマンアカデミーのスタッフさんが親身にビザや住居などの手配を進めていただき、安心してお任せすることができました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

わたしは、広告代理店に勤めておりましたが、40歳手前になり、金と欲望にまみれる業界に嫌気がさしておりました。人生半分を迎えるにあたり、今後の人生をどう過ごすかを考えた折、幼少の頃からの夢であった海外生活にチャレンジしてみたくなり、そのための職業として、手に職をつければどの国でも需要がありそうな日本語教師という職業を知り、目指すことになりました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

やはり学生の笑顔しかありません。飽きてきた時にだれてしまうのもかわいいのですが、そこを工夫して興味を引くように教案を組み立て、目の色が変わるくらい食いつきだし、そして、授業の終わりでは笑顔で挨拶して帰っていく。この瞬間に、準備の苦労などは吹き飛びます。


学生の笑顔で、準備の苦労も吹き飛ぶ

また、長年やっていると、修了した学生が大人になり、日本への留学先で再会したり、また、結婚する学生も出てきたりで、成長を見守るのも誇らしく、微笑ましく、日本語教師としてだけではなく、学生の人生の過程も見守っていけるところが、とても楽しいと感じるところです。


教え子の結婚式。人生の過程を見守れる

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

特にありません。ただ、全体的に待遇が低く辞めてしまう(辞めざるをえない)方も多くいると感じます。これは、日本語教師だけに関わらず、「教職」全般にもいえることではないでしょうか。日本語教師を経験したおかげで、日本の保育員さんや小中高の教師さんの待遇の低さも実感できるようになりました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
養成講座や検定試験は必須ではないでしょうか。最低限の知識は身につけておくべきだと思います。また、学生さんの場合は、社会経験も必須だと思います。アルバイトもしかり、多世代・他業種の方との交流など、日本語教師として「日本」を教えることにも関連しています。自分の見識だけでは狭くなりがちですので、もっと幅広く「日本とは」を経験しておくべきだと思います。

【社会人の方へ】
上記同様に、養成講座や検定試験は必須ではないでしょうか。最低限の知識は身につけておくべきだと思います。あとは、身辺整理・調整。現地での生活には不自由しない程度の待遇はありますが、将来まで含めた待遇はありません。日本語教師をやりたいという希望と、将来設計とのバランスがポイントになると思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

中国で日本語教師、ぜひお勧めだと思います。日本における中国の情報と、現地での実体験における情報とはかなり差異があると感じることができます。

学生とは、授業中もプライベートでも、基本的に日本語で会話をしますが、それでもれっきとした中国人です。1年でトータルすれば数百人の学生=中国人と懇意になれます。これは、一般企業の駐在員として赴任するよりにも、とても多くの経験ができると思います。

また、漢字や文化など、数多くの物事において、中国と日本は深い関わりがあり、日本語や日本文化の成り立ちなど、日本語教師を通して、逆に、学び知ることも多いと思います。

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