元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

カナダの日本語学校 経験談

様々なバックグラウンドを持つ生徒がいる

公開:2017/05/18
まくら(女性・36歳) 
日本語教師歴 14年 (2003年~2017年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 大学 日本語教育主専攻
カナダの日本語学校
経験詳細
  • 地域:トロント
  • 月収:85,000円( 1,000カナダドル)
    なんとか生活できる
  • 非常勤講師(コマ/時間勤務)
  • 5年(2012年~2017年)
    *現在も就労中

トロントから日本は飛行機で14時間ほどかかる遠い国ですから、日本のイメージは「一生に一度は訪れてみたい国」という感じです。よって、実際に日本語の勉強を始める段階にある人はそれなりのはっきりした理由や目的があり、かなり熱心です。

トロントで教え始めて一番初めにびっくりしたことは生徒のバックグラウンドの多様性です。カナダは移民国家ですから、英語に加えて自分の両親の国の言葉を話すなど、複数の言葉を話す人がほとんどです。日本語を学習するときにも既習の言語が影響しますから、レッスンを始める前には必ず話せる言葉を確かめなければなりません。韓国語やタミル語、トルコ語を話せる生徒は文法的に共通点が多く、上達も早いです。

日本語教師としての生活はミドルクラスになると思います。フルタイムで勤務できる学校を探すのは難しいので、掛け持ちをしている人やフリーランスで生徒を取っている人がほとんどです。私も非常勤としてある学校で働いていますが、そのほかにフリーランスとしても教えています。合計した収入はちょうどカナダ人の平均収入と同じぐらいになります。生活の安定度は低いですが、教えることに集中できる環境は非常にありがたいです。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

日本やアジアの国で教えていた時は、アジア人ならではの「遠慮」を感じることが多かったです。例えば授業中に疑問点があっても、授業をとめたくないから授業の後で質問に来る生徒が多いということなどです。

しかし、こちらでは「分からないものは分からない」とその場ですぐ質問する生徒がほとんどです。

概ね良いことなのですが、クラス分けがあまりうまく行ってない時などは、授業についていけない生徒でも遠慮なくどんどん質問するので、余裕のある生徒を飽きさせないようにすることが非常に大変です。

給与・待遇

月収 月収:85,000円
月収内訳 時給:1,600円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    250,000円(3,000カナダドル)
  • 最低限必要な月収
    170,000円(2,000カナダドル)
基本労働時間 1日4.5時間 週3日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計3時間
授業の準備
待遇 賞与(年間50,000円)
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

私が勤めている学校は非常に小さな学校なので基本的に福利厚生はありません。私は夫の会社の保険でカバーされる部分が多いので助かっていますが、そういう選択肢が無い場合はもしもの場合に備えて薬代などを常日頃から貯金しておいた方がいいでしょう。(州の健康保険があるので、基本的な医療費は無料です。)

また有給もないので日本に長期帰国する際には収入がなくなることになります。その代わり、自分の好きな時に好きな期間休暇が取れるのは自由度が高いので気に入っています。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

大学などの公共機関に勤めない限り、どこも待遇は同じだと思います。収入や安定を目指すならば大学での講師を目指すべきだとは思いますがかなりの狭き門です。今勤めている学校は比較的新しいので福利厚生はありませんが、今後規模が大きくなったら有給などの検討もしてもらえるようなのでそれに期待しています。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス3人ぐらい
  • プライベートレッスン
学習者の年代
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
1日の時間割 月曜日
  • 9:00~10:30  
    初級クラス1コマ
  • 14:00~15:30  
    プライベートクラス1コマ
  • 15:30~17:00  
    プライベートクラス1コマ
木曜日
  • 9:00~10:30  
    中級クラス1コマ
  • 14:00~15:30  
    プライベートクラス1コマ
  • 15:30~17:00  
    プライベートクラス1コマ
金曜日
  • 9:00~10:30  
    上級クラス1コマ
  • 14:00~15:30  
    プライベートクラス1コマ
  • 15:30~17:00  
    プライベートクラス1コマ
休日 土・日
一日休めていました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

JLPT(日本語能力試験)の前になるとそれ対策をして欲しいという生徒が増え、時には21時ごろまで授業が入ることもありました。その反面、JLPTの後はクリスマスホリデーに入るのでお休みをする生徒が多く、ほとんど授業が入りません。

毎年かなり忙しい11月、かなり暇な12月という感じになってしまうので、仕事のバランスや割り振りに戸惑いました。これはどうしようもないことなので、今は割り切って12月は長期休暇を取り、日ごろはなかなか時間が取れない教材研究に当てています。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になる書籍
  • みんなの日本語   
    対象者:初級・中級
    特別なことがない限りは、「みんなの日本語」をメインテキストとして使用しています。細かい点での不満はありますが、総合的にみて今一番優れていると思われるテキストだからです。また、一切英語が使われていないのも生徒にとっては「勉強をしている!」という雰囲気がでて良いのではないかと思っています。
  • 初級日本語 げんき I   
    対象者:初級・中級
    英語の解説があるためか、「げんき」をメインテキストとしている学校がトロントには多いです。私は個人的にはほとんど使用しませんが、途中から学校を変わる生徒のために参照することがあります。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

日本語の文法についてはインターネットで何でも検索できるのですが、レアリア(生教材)はこちらではほとんど手に入りません。

観光案内の地図、スーパーのちらし、時刻表、フリーペーパーなどはいくらあってもいいと思います。私も日本に帰るたびにたくさん持ってかえっています。

就職活動

国選びで重視した点
  • 治安
  • 気候
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 通勤時間
応募時に
必要とされた資格
なし
選考方法 紹介のため試験なし

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

今は関わっていませんが、継承教育としての日本語教師の授業は高いです。現在教師として働いている人は、子どもの保護者だったり、日本語教育の経験がない人だったりするケースが多いので、専門的な知識を持っている人は歓迎されます。ただ、授業が行われるのが基本土曜日の午前中だけですので、給料も月に3~4万円ほどにしかならず、それだけで生計を立てるのは不可能です。

カナダ国内で日本語が必要になる機会はほとんどありませんので、教える生徒としては、日本で就職したいという人、日本が好きで旅行する時に困らないようにしたいという人が中心になります。

今まで多かった生徒のケースは、日本で働く時に仕事はエンジニアなので英語環境だけど、日常生活で困らないレベルの日本語が必要だというケースです。仕事まですべて日本語環境という生徒は珍しいです。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日本では大学の学部と職業が必ずしも一致しない人が多いですが、こちらでは大学で学んだことを仕事にするのが一般的です。ですから、日本語学部を出ているとそれだけで信頼度が上がります。

語学レベルですが、やはり英語は必須です。細かいところの説明はどうしても英語になりますし、授業以外のやり取りは英語です。上級レベルまでは必要ありませんが、日常生活レベルには達しておいたほうがいいでしょう。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • e-maple
    日系の情報があつまります。継承校講師の募集広告も出ることがあります。
  • bits
    日系の情報があつまります。継承校講師の募集広告も出ることがあります。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

この学校の先生と偶然知り合ったところから勤務することになりました。カナダは就職も知り合いからの紹介やコネクションで決まることが多く、日本語教師も人づてで決まることが多いです。実際に、今でも年に1度か2度ほど、「○○学校で働いてみない?」といった声かけをもらいます。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

高校生の時に習っていた国語の先生が退職される時に「退職後は中国に渡って日本語教師になるのが夢だ」と語ってくださったのが日本語教師という仕事を知るきっかけです。

それまでは漠然と教える仕事がしたいと思ってはいたのですが、中学の国語教師になるか高校の国語教師になるかぐらいしか考えていませんでした。

その後、日本語教師について本格的に調べ始め、大学も日本語学部へ進みました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

初めは日本語が全く話せなかった生徒と日本語だけでコミュニケーションが取れるようになった瞬間、やっていてよかったとしみじみ思います。それも授業中の会話練習のような内容ではなく、もっと事務的な「来週は出張があるので日本語のレッスンにでられません。すみません。」のような内容を日本語でメールをもらえたりすると、しっかり伝えたいことが日本語で伝えられるようになったな、とうれしく思います。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

日本語教師として稼げる額には限界があると実感する時に、他の仕事をした方がいいのではと思うことがあります。

日本語教師だとどうしても時給やコマ単位の待遇になります。有給があるところも珍しいので、そのような福利厚生はほぼ望めません。教えることが好きなのでこれが天職だとは思っていますが、現実はなかなか厳しいです。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
海外で働こうと思っているのであれば、日本語関連の学科を卒業しておくことは非常に有利です。大卒の資格があれば就職やビザ申請に有利になることが多いですし、日本語関連であるとなお良いです。また、経験が重視されますので、学生のうちにボランティアでも何でもいいので、履歴書に書けるような経験を積んでおいてください。

【社会人の方へ】
私は養成講座を受けたことがありませんので、どれくらい現場で役に立つか分かりません。ただ、実際に教えることで上手くなる面もあるので、機会を見つけてたくさん教えること、そして上手な先生の授業をたくさん見学することだと思います。私は日本で社会人経験がないので、社会人経験がある先生が会社での具体的なやりとりなどを教えているのを見るとうらやましく思います。今の社会人としての経験を活かせる先生を目指してください。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

日本語に関する知識ももちろん必要ですが、英語の勉強もしっかりしてきてください。話せなくてもなんとかならないことはないですが、困ることが多いと思います。また、英語の文法を知っておくことで生徒のミスの解説もしやすくなります。

あとは、コネクションが大切なので「日本語教師になりたい8です!」と機会があるごとにアピールしておくことが大切です。チャンスはどこからやってくるかわかりません。

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