元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

中国の日本語学校 経験談

苦労も達成感もしっかり実感できる仕事です

公開:2016/05/24
こた丸(女性・48歳) 
日本語教師歴 2年 (2011年~2013年)
*専業主婦
資格・課程 中国にある日本語教師養成講座
中国の日本語学校
経験詳細
  • 地域:香港
  • 月収:40,000円(4,000香港ドル)
    それだけでは生活は難しい
  • 非常勤講師(非正規雇用・コマ/時間勤務)
  • 2年(2011年~2013年)
    *現在は退職

育児がひと段落し、海外にいる間に働いてみたいと思ったことがきっかけで、語学学校の日本語教師養成講座に参加しました。

その後、採用が決まってから2か月弱の研修を受け、まずは一コマだけクラスレッスンを担当するところから始めました。

2年間の間に1時間15分のレッスンが週2回のクラス、2時間半のレッスンが週1回のクラス、プライベートレッスン、企業へ赴いて行う出張レッスン、子どもクラスとひととおりのクラスを担当しました。

ひとクラスの人数や生徒の職業、モチベーションなどは様々でしたが、教える日本語のレベルは初級のみでした。

非常勤勤務でしたので、私の希望で担当クラス数を抑えていただいたこともあり、時給でいただくお給料は生活できるほどの額ではありませんでした。クラスを多数受け持てばある程度まとまった金額はいただけるようですが、下準備にかなりの時間を割く必要があるため、決して楽に稼げる仕事ではありません。

最大規模の21人のクラスを受け持つと、各自のレベルや興味の差に配慮しつつのクラス運営に四苦八苦するし、遅刻者の多いクラスだと臨機応変な段取りが求められるし、常にターム最後の試験範囲のノルマに追われるしと落ち込むことだらけの日々でした。

けれども、大人の生徒さんは総じてやる気にあふれ日本文化に好意的で、用意したゲームが盛り上がったり、生徒さん同士の輪が広がったり、休み時間や放課後の会話でお互いの理解を深めたりといったささやかな喜びが原動力になりました。


初めての生徒です。高校生が雰囲気を盛り上げてくれました。

生徒の成績や教師への評価といった具体的な物差しで達成感を得ることができるやりがいのある仕事だと思いました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

授業準備に時間がかかり、家事との両立に苦労しました。そして、その時間給や材料費は出ない…。最低限の教材は学校の共用部に準備されているので、それを使えばいいことですから当然です。

ですが、生徒に合わせてこういうことをしてみようか…と教材を手作りすることもしばしばでした。


教材を手作りしました。楽しい作業でした。

また、パワーポイントを日常的に使っていましたので、パソコンやプロジェクターなどの機械が不調の時は、段取りが狂うこともあり冷や汗が出る思いでした。

生徒のほとんどは中華系でしたが、遅刻する、ものを食べる、あからさまに授業とは違うことをする、カップルでいちゃつくなど、「遠慮する」文化がないという点で驚かされることが多かったです。

けれども、裏返せば、こちらも遠慮なく接することが許されるということなので、経験を積むうちに伝えたいことを伝える強さを身につけることができ、戸惑うことはあってもそれほどストレスには感じなくなりました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

実家の事情で日本に一時帰国することが増えたため、継続的なクラス管理は無理と判断して退職することにしました。

また、一旦立ち止まって、日本語教育やクラス運営についての知識をきちんと身に着けてから再開したいという思いもありました。

給与・待遇

月収 月収:40,000円
月収内訳
  • 時給:1,700円
  • 交通費:3,000円(派遣時のみ、その都度定額)
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    200,000円(20,000香港ドル)
  • 最低限必要な月収
    150,000円(15,000香港ドル)
基本労働時間 1日1コマ 週1日勤務から
残業(時間外労働) 1ヶ月合計4時間
  • 授業の準備
  • 事務作業
  • 自宅での教案・教材作りは1コマにつき最低でも2時間程度かかる
待遇
  • 交通費
  • MPF強制積立金制度(政府主導の積み立て制度)
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 タームとタームの間の休み:14日 
クラスの長期休暇中の
給与保証
給与保証がない  

非常勤の時給制だったため福利厚生は一切ありませんでした。たくさんの授業をこなせば生活できるレベルの収入を得ることも可能だと思います。

正社員の先生方は給与体系が全く違い、生活するに十分なお給料と福利厚生があったと思われますが、担当クラス数も事務作業量も非常勤とは比べ物にならないほどあり決して楽な仕事ではないので、4~5年で退職されるケースも少なくない印象でした。

ベテランになると非常勤講師でも時給も上がるし単価の高い企業派遣などの数をこなすことができるようになるので、労働と収入のバランスが取れるようになるようです。日本と香港と両方の事情をご存知の方によると、日本語教師としての時給は香港のほうが高いそうです。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

日本企業だったため、待遇も契約にかかわる諸対応もきっちりした納得のいくレベルのもので、香港の同業者の中では最も信頼できる民間学校だったのではないかと思います。

ただ、それだけにジャケット着用や定期的な教師のレベルチェック、教案・教材の統一などがあり、他校に比べ自由度は低かったと思います。

ほかに、大学をはじめとする現地の公・私立教育機関で日本語を教える日本人もいましたが、香港人と結婚した永住組がほとんどで、労働条件等も現地式、実力・経験重視だと思われます。

外国人の多いお国柄なので条件さえあえば誰にでも同等に門戸は開かれている印象でした。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス20人
  • プライベートレッスン
  • 企業研修
  • 子どもクラス
学習者の年代
  • 小学生
  • 中学生
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
1日の時間割
  • 9:00~15:00  
    自宅にて授業の準備(合間に家事)
  • 18:50~19:20  
    学校にて別日の授業の教材作成、今日の教材・宿題のコピー、事務処理など
  • 19:20~22:10  
    初級クラス(週1回のクラス)授業
休日 火曜日、土曜日、日曜日(祭日)
休日に取り組んだ仕事:休日はプライベートに使ったが、しばしば授業準備に取られることも。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

教案・教材ともにマニュアル完備でしたが、教案の内容も、導入・例示・応用・実践練習のネタも、クラスにあわせて練り直す必要があるので、すでに経験済みの単元でも準備にかなりの時間がかかったことが何より大変でした。

また、授業の需要は夜間の時間帯に集中するので、家族の晩御飯を用意してから出かけ、23時回ってから帰宅するというサイクルも子持ちの主婦にはきつかった点でした。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になる書籍
初級を教える人のための日本語文法ハンドブック   
対象者:初級
参考書として。文法項目から検索できるので確認したい時、まず開いてみる。巻末の主要教科書との対応表も数種教科書マニュアルを参考にするときに便利です。
日本語コミュニケーションゲーム80   
対象者:初級
学習項目の定着のための活動集。そのまま使えるものはなかなかありませんが、アイデアのヒントになり、いろいろな活動に応用できます。
日本語文法 学習者によくわかる教え方―10の基本   
対象者:初級
教えるときに解釈を間違えがちな文法項目について詳しく解説してあります。まず一読しておき、実際に教える段階でもう一度読み直すと失敗を減らすことができるでしょう。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

採用後の集中研修やレベルアップ研修、すぐに教えてもらえる環境など整ってはいましたが、日本語教師に必須とされる資格や知識がないままに飛び込んでしまったため、日本語の文法的知識、教授法、クラス運営のテクニックはやはり事前に必要だったと痛感する毎日でした。

一方で、日本と滞在地の違いや日本の外から見た日本文化・日本人の特徴についてなど、現地での生活で培ってきた感覚や現地の文化や言語に対する知識があったからこそ生徒に寄り添った授業ができたという自負はあります。

最終的に一番必要なのは経験を積むこと。「継続は力なり」「机上の空論よりも実践」「臨機応変」です。

就職活動

国選びで重視した点 元々滞在していた。治安が良いからできた。
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 必須資格
  • 使用されている教授法
  • 時間帯、担当時間数など希望を聞いてもらえた
応募時に
必要とされた資格
勤務する語学学校の日本語教師養成講座の受講(有料)
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外(現地)

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

留学先や就職先として人気があるのは、やはりイギリス、カナダ、オーストラリアといった英語圏の国なので、外国語の習得という点で全体数における日本語の割合で考えると、需要は決して高いほうではないという印象です。

日本企業に関係のある仕事をしている人や日本のアニメや旅行先としての日本に興味がある人など、一部の人たちが習いに来る、といった感じです。

けれども、日本企業の数もまだまだ多い上、習い事にお金をかける富裕層が多い国でもあるため、常に一定の需要はありましたし、日本語教師の入れ替わりも激しく教師不足の感はありました。

近年の円安爆買いブーム前から年に複数回日本に旅行に行く、という生徒さんが何人もいました。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

志望理由、経歴、英語や広東語などの運用能力、希望の勤務時間や回数など。

特にプレッシャーを感じるような面接ではなく、専任講師のトップの方と非常勤講師の取りまとめ役の方お2人と世間話なども交えながら、アットホームな雰囲気での面接でした。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

もちろんすぐに使えるベテランの教師が望まれていますので、日本なり他の国なりで経験がある方は有利なはずです。

でも、研修や授業チェック、個人指導と、講師の教育も熱心にしてくれたので、教授法の違いやいろいろな制約をすんなり受け入れることができる初心者も積極的に採用しようという雰囲気は感じました。

必要な資質は「純粋な情熱」と「度胸」「向学心」でしょうか。直接法の学校でしたので授業に必要な語学能力は特に必要とされませんでしたが、できないよりできたほうが、自分が楽です。

初級クラスは特に、まず英語、できれば広東語運用能力があれば、生徒との仲が深まりネタも拾いやすいです。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • JEGS
    海外での日本語教師求人情報が閲覧できる。
  • 香港ポスト
    日本語のフリーペーパーのWEB版。求人広告あり。
その他求人情報
  • Concierge(コンシェルジュ香港):日本語のフリーペーパー。養成講座の広告あり。
  • PPW:上に同じ。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

日本語教師には昔から興味があったところに養成講座の広告を見つけ、香港にいる間にいつか受けようと早い段階から思っていました。

一番下の子が小学校高学年になり時間的余裕ができたときに受講。日本では検定試験合格や420時間の養成講座終了が条件として提示されていることを知っていたので、ここで採用されれば近道になると思い、契約を希望しました。

当時、養成講座を開催していた学校がもう1校ありましたが、こちらの学校の講座はタイミングが良かったことと、学校母体の規模が大きかったことがこの学校を選んだ主な理由です。

オフィスもきれいだし、生徒数も多く、活気にあふれ、スタッフの恰好や態度なども学校というよりも企業的できちんとしていたのが好印象でした。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

台湾、香港と夫の駐在について滞在する中で、現地の言葉習得のため、語学学校や家庭教師の生徒になるという経験をしてきました。

生徒として授業を受けることはとても楽しかったので、自分も同じように教える機会があったら楽しいだろうと思いましたし、日本語を教えるという具体的なイメージも自分なりに持っていました。誰かの役に立てる、自分には向いている仕事だという思いがありました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

語学学校に来る生徒は自主的な参加が基本であるため、やる気に満ち溢れ、上達するために一生懸命で素直な生徒がほとんどです。

初級クラスでも日本のアニメやドラマで覚えた片言を授業の間に挟んでくる生徒も多く、「かわいい~」「愛してます」「山Pかっこいい~」「ジャッキー・チェンはスケベ男」など、どんなことばでも積極的に参加してくれるとクラスもほぐれるし活気づいて助かります。

習った文法で「わたしより先生のほうが美人です。」などとたどたどしく言われにこっと微笑まれると、かわいくて仕方ありませんでした。

通常のクラスは、連続して同じ生徒を受け持つことはめずらしいですが、企業派遣やプライベートでは長期にわたり受け持つためかなり親しくなれます。

退職するときに受け持っていた企業のクラスのメンバーが送別会を開いてくれ、香港の思い出にと香港の風物詩を描いたポップアップ絵本をプレゼントしてくれました。


退職する時に開いてくれた送別会でいただきました。


写真とメッセージカード。今でも連絡をくれます。

そのメンバーとは今でもメールのやりとりが続いていますが、「先生、この文章は正しいですか?“きのう、私は…”」「先生、日本語検定試験に受かりました!」と連絡してきてくれるのはとてもうれしいです。

生徒たちの日常の中に日本語が生きていて、その手伝いができるという感覚は大きな達成感を与えてくれます。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

なんの知識もないまま飛び込んだことが原因で、初めてクラスを持った直後からしばらく、クラスが終わるたびに、思うように進められなかった授業を思い出し足取り重く家路につく日々が続きました。

思っていたほど楽な仕事ではなく、正直すぐにでも辞めたいくらいでしたが、生徒たちとのやりとりは楽しかったですし、経験を積むことに意味がある、今は修行だと自分に言い聞かせながら続けることができました。

生徒の「意味が分からない…」という反応に落ち込んで、盛り上がった会話に喜んで、生徒のドロップアウトにショックを受けて、クラス全員進級に自信をとりもどして…。

「辞めたい」と「がんばろう」の狭間でいつも揺れながら2年間を過ごしました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
結局戦力になるのは始めてからの経験値なので、王道の、専門の学校で学ばれた後学校に就職という進路をとられてもいいし、ほかの進路をとられてもいいだろうと思います。

教えるための基礎知識のほか、社会的な経験や一般常識も絶対的に必要になってきます。そういう意味では資格は取っておいて、社会経験を積んだのちに教師となったほうが、実は自分が楽かもしれません。

「教える」という職種的に年齢に関係なく始められる、続けられることも魅力の一つですから。でも、流行に敏感で若い感性は大切だと思います。

【社会人の方へ】
時間もお金もかかりますが、検定試験合格なり、420時間の講座終了なり、一般に要求される実績は得たほうがいいですね。機会と可能性が広がり、自信にもつながるはずです。

でも、それはあくまでも“一番大切なスキル”ではなく“手段”です。“手段“を身に着けたら、あとは飛び込むだけです。飛び込んだ後の「努力」と「根性」が”一番大切なスキル”習得のための「経験」につながっていくのだと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

決して楽な仕事ではありませんが、間違いなくかけがえのない経験と達成感とやりがいが得られる仕事です。

異文化を面白いと思える人、日本を魅力ある国だと思える人、分かり合うための努力を楽しいと思える人、肉体的にも精神的にもタフな人、そういう人たちであれば大丈夫。そうじゃない人たちはそうであることを目指してください。

少なくとも香港という場所は、来るもの拒まず去る者追わず、特別もてなしもせず、干渉もしない。

主張すべきことは主張しなくてはいけませんから時にしんどいかもしれませんが、香港人に負けないエネルギーさえあれば、活気にあふれ便利でなんでも手に入る場所です。

治安も悪くない、日本にも近い、生活の質も変わらない、海外で働くには良い条件がそろった場所でしょう。案ずるより産むが易し、です。

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