元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

アメリカの私立大学 経験談

学生が日本語を勉強する目的と動機付けの難しさ

公開:2018/2/21

ケイ(女性・31歳) 
日本語教師歴 7年 (2011年~2018年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程
アメリカの私立大学
経験詳細
  • 地域:南部
  • 月収:24万円(2,300ドル)
    なんとか生活できる
  • 常勤講師(非正規雇用・フルタイム)
  • 4年(2013年~2018年)
    *現在も就労中

まず、アメリカで日本語教師になったきっかけですが、私は結婚が理由の移住組ではありません。日本語教師としてビザを大学から発行してもらい、渡米しました。もともと外国語教育を専攻していて、主専攻は英語だったのです。その傍ら日本語教育も勉強し、大学院まで日本で過ごしていました。その間アシスタントをしたり、ボランティアも数多くしました。その後、アメリカの日本語教師情報サイトで日本語教師の仕事を探した次第です。

大学の時8か月カナダに留学した経験があったので、カナダもいいかなと思ったのですが、カナダの場合、学校数も少なく、なかなか仕事は見つかりませんでした。結果アメリカの今の大学にきまり、一年契約の条件で渡米、最初は1年のつもりだったのですが、その後2年、3年とそのまま残してもらえました。

勤務体系は、アメリカならではの勤務形態なのですが、完全に各インストラクターが個々で指導する形です。上下関係もあまり厳しくなく、自分の仕事が終われば家に帰るというのが基本です。服装も比較的自由で、おしゃれがしたい人は好きにおしゃれが出来ます。他にも、ミーティングがとにかく少なく、必要なければ集まりません。ミーティングも集まってご飯を食べながらのミーティングが多く、世間話もたまにします。

やりがいですが、これは大学のレベルによります。レベルの低い大学であれば、苦労しますし大変ですが、やりがいはその分大きいと思います。レベルの高い大学だと、学生の質も高く、教えやすいのですが、JLPTの知識や、ビジネス日本語の知識も要求されるので、それはそれで大変です。

またプロジェクト等自由にやらせることができるので、実力があれば多くの仕事を任せてもらえます。それを使って、学会発表をしたりも出来るのでキャリアとして、本当にいいです。ただ、実力主義の厳しいところは、契約が厳しいというところです。例えばPCが苦手で仕事にならないということがあれば、一年で契約を打ち切られてしまいます。そうなると、残念ながら、帰国しかありません。

少し苦労話になってしまいますが、アメリカの日本語教育の課題の一つは、中級、上級にレベルが上がるにつれて、学生数が劇的に減ってしまうことです。多くの学生がアニメやマンガが好きだから日本語を勉強したいと日本語を初級から始めるのですが、その動機だけで中級、上級へとステップアップすることは難しいです。

日々、アニメや漫画以外の日本語の面白さを伝えようと頑張るのですが、日本文化や伝統芸能の話になってしまうと、どうも興味が持てないし、将来日本で働いてみたいという学生も少ないので、どうやったら中級、上級のクラスを面白くさせることができるか考えるのに苦労します。苦労があるからやりがいを感じるというところもあるので、日本語教師として、いろんなことに挑戦してみたいという方には、いい環境だと思います。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

私がアメリカで日本語を教える上で、戸惑ったことは学生にとって日本語を学ぶ目的がなかなか明確にならないことです。経済的には強い日本ですが、その学習者の中心は韓国、中国、タイなどアジア圏にあるということは皆さんもご存知かと思います。

しかし、英語母語話者の多いアメリカでは、初級の間は、アニメを見たい。会話を楽しみたいというニーズがあるのですが、中級に上がる目的がなかなか見つけられないようです。結果中級までは取らなくてもいいか、と辞めてしまう学習が多いのです。なぜ上のレベルのクラスを取らないのかと学生に聞くと、これ以上日本語を勉強する目的が見えない。特に日本で仕事をするわけでもないので、もう十分だ。という声もありました。

また、語学を専攻するという学生が少なく、副専攻またはただ授業を取っているだけという学生がほとんどです。英語圏なので、日本語が手に職になるということはないことは、当然の事、専攻となる他の科目が忙しくなれば、学生は日本語を履修するのをやめてしまいます。これは仕方がないことかもしれません。

これを解決する方法は、はっきりとみえていないのですが、中級への学習に対する動機付けが必要なのかなと思っています。日本語が単なる言語でなく、そこに付加価値があるというようなアピールをもっと教師がしていかないといけないのかなと、時々思います。

給与・待遇

月収 月収:24万円
月収内訳 基本給:24万円
基本労働時間 1日6時間 週4日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 なし
教育機関が
用意してくれたもの
ビザ申請費用
クラスの長期休暇
  • 夏休み:3か月
  • 冬休み:1か月
クラスの長期休暇中の
給与保証
長期休暇中は別の仕事をしている 

給与23-4万というと、実は日本語教師の中では、高いほうかもしれませんが、物価も高く、家賃も日本よりはるかに高いです。なので場合によっては給与の半分が家賃に消えていくという状況です。保険も高く、内容も充実しているとはいえないので、病気になっても病院に行くのを躊躇するほどです。

さらに、車社会なので、車を買うと年間給料がすべてそれに当てられるという現状です。何とかローンを組んで買うか、一年貯金をして一括で買うかのどちらかになります。ローンの場合は、一応できることはできますが、基本一年リースという感じでお金を払うのは大変です。月8万ほどさらに給与がなくなるわけですから。ほとんどの場合一括で中古の車を買う感じだと思います。私も中古で車を買いました。生活の基盤となるものなので、1年お金を貯めて、一括で買ったということです。

日本では、まあ車がなくても、電車で通えばいいと思うかもしれませんが、アメリカでは車がないと外を歩くのも安全ではありません。歩道もあまりないので、何をするにも車です。アパートの敷地も広いので、大家さんのところまで行くのに車で行くほどです。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

アメリカの日本語教育機関というと、正式なものは大学か高校、日本人学校が主になります。大学の場合、給与はどこも似たり寄ったりで、差はありません。

日本人学校というのは、補習校にあたるもので現地の日本人が通う学校です。高校や中学校の資格が必要な場合もあります。そうでない時もありますが。待遇はあまりよくないかもしれませんが、働くためには市民権か永住権が必須です。ビザのサポートもありません。

高校も同様で、現地の高校で働くためには、資格が必要です。アメリカは基本的に州の教員免許があるので、その州で教員免許を取得しないと働けません。最低2年は現地の大学院に入らないといけないと思います。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス15人
学習者の年代 大学生
1日の時間割 月曜日
  • 11:00~14:00  
    初級2コマ
火曜日
  • 11:00~14:00  
    初級2コマ
水曜日
  • 11:00~14:00  
    初級2コマ
木曜日
  • 11:00~14:00  
    初級2コマ
金曜日
  • 自宅勤務  
    ○付け シラバスの改定
休日 土曜日
  • テストのある時は、5時間くらい働きます。テスト作成や○付けがあるので。
日曜日
  • テストのある時は、5時間くらい働きます。テスト作成や○付けがあるので。

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

アメリカの大学は、場所にも寄りますが、天気が悪いとすぐに休講になります。その場合、遅れたクラスを取り戻さないといけないので、大変です。4年前、新米の時ですが、2週間雪で学校が休みになりました。

その時は、本当に大変でした。学生によって取っている授業時間がバラバラなので、補講は出来ません。だから、補講無しで、乗り切りました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
GENKI
教科書の付属のサイトです。ここにリスニングの練習問題や、ひらがな カタカナのクイズもあります。
参考になる書籍
お助けタスク    
対象者:初級
挿絵がたくさんあり、活動別に挿絵と使い方の説明も入っています。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

日本の広告やビデオ等です。色々ネットで使えるものもあるのですが、やはり日本から持ち込んだ方がいいものもあります。

折り紙や習字セットも、日本のほうが安いのでいいです。あと100円均一で色々買い込んでいった方がいいと思います。たとえば、ひらがな表や縦線の入った用紙、封筒や手紙など日本らしいものはたくさんあります。

わけのわからない看板や標識も実は日本独自のものなので文化を教えるのには、ピッタリなのです。禁止を示すサインなども役にたちます。

就職活動

国選びで重視した点 その国の母国語が得意
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
学習者が学生
応募時に
必要とされた資格
大学 日本語教育主・副専攻
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 日本国内:(電話)

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

需要はあまりありません。大学の講師として働く需要はありますが、修士号、博士号を持っていることが前提です。なので、基本的に日本からアメリカに日本語教師として働く場合は、きちんと日本でもいいので、大学院に行くことを勧めます。大学にビザのスポンサーになってもらうということは、それだけスキルと資格が求められるということです。現地の日本人学校で働きたい場合ですが、ほぼ現地採用がすべてです。ビザが下りないので働くことはできません。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

経験やどんな活動をクラスでやったことがあるのかを、聞かれました。苦労した事や、それをどう乗り切ったのかという質問でした。また、こういった文型を教える時どうやって教えるかという説明も求められました。使った教材も聞かれたと思います。20分くらいだったので長くはなかったのですが、緊張しました。最後に、働くときに気を付けることや、現地の生活についてどう思っているかを聞かれたと思います。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

英語はもちろんの事、中国語や韓国語もわかればいいかなと思います。中国系韓国系の学習者もクラスにいるので。実際教えるために英語を使うことはあるのですが、そこは基本会話で乗り切れます。英語レベルは、どうして必要かというと、生活のためです。基本的に、アパートを探したり、買い物に行ったり、ドライバーライセンスを取ったり、手続きはすべて自分でします。なので、英語力は必要かと思います。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
AATJ
アメリカ全土の大学の求人がここで見られます。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

元々、大阪の大学院で日本語を専攻していました。その後アメリカで働きたいと思い、現在の大学に申し込みをしました。もちろん狭き門だったのですが、先輩が働いていたこともあり、採用していただきました。その先輩は、大学院で日本語を専攻し、その後アメリカ人と結婚した次第です。そこで現地採用されたようです。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

元々言語を教えたいと思っておりました。でも高校の時は、英語は得意でしたが、話すのは得意でなかったため、専攻に悩んでいました。そんな時、日本語を教えるコースがあるということで履修をしました。日本語なら、母語なので出来ると思ったからです。

よく日本語教師の方は、日本語が話せるだけじゃ、教師にはなれない。というと思います。でもそこが始まりでもいいかなと思います。私も日本語が話せるから日本語教師になろうと思ったまでです。肝心なのはそこからの努力で、その後修士号を取って、教えるのは難しいということもわかりました。でも、勉強したからこそ続けたいと思うようにもなりました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

学生がスピーチコンテストで賞を取った時です。毎年アメリカ南東部のスピーチコンテストが開かれるのですが、そのコンテストで学生が賞を取った時は、本当に自分の事のようにうれしいです。レベルが3レベルに分かれていて、それぞれ学習年数を考慮して学生は申し込みをします。

毎年あるので、過去に教えた学生が上のレベルのコンテストでスピーチをしているところをみると、この子本当に成長したな、と感動します。不思議なのですが、そういう学生については、だいたいクラスでどんな様子だったか、どんなところを間違えていたか、よく覚えているものです。ある年は、学生が2等賞を取ったことがあり、その時は本当に学生と共に喜びを分かち合いました。その時もスピーチを聞きながら、まだその学生が初級だった時のことを思い出していました。

もう一つ、日本語教師をやってよかったと感じるときは、学生が「日本を勉強してよかった」と言ってくれた時だと思います。久しぶりに過去に教えた学生に会って、あの時日本語の勉強を続けて本当に役にたったと言ってくれた時はうれしいです。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

辞めたいと思ったのは、どこからどこまでが仕事だかわからないというところです。教師なら当たり前なのですが、○付けと資料作りは、やってもやらなくても給与は発生しません。でもやらないといけないのでやります。土日を返上して○付けをしているときはよく普通の企業に就職したらよかったなと思ってしまいます。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
定番の420時間コースを取って、教育能力検定を取ったほうがいいと思います。学生の場合、真剣に職にしたいと思っているかもしれないので、修士か博士までとって、日本語教師専門家までなったほうがいいと思います。そうすれば、大学勤務、国際交流センター等の仕事もあるので、一応ですが、安定した職に就く可能性は上がります。

【社会人の方へ】
とにかく、420時間の修了書と教育能力検定を取得して、どこでもいいから日本語教師として、給与が払われる仕事についたらいいと思います。転職の場合戦力が必要なので、やはり経験をどこかで積むというのが優先されます。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

アメリカでというと、国際結婚してから、という方が多いかもしれません。またはアメリカ生活がしてみたいから。という人もいるかもしれません。どちらの場合もアメリカの大学等で働くなら、現地の大学か大学院を卒業しないと生計は成り立ちません。このレベルは専門職なので。資格が必要と言えば、必要です。特に大学にビザのスポンサーを頼むのであれば、専門職でないとビザが下りないので、修士は最低必要です。

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